【5月4日・5日開催】NHKマイルC、京都新聞杯ほかレース解説 2019年 レース

〈古馬重賞〉

5/5(日) 東京11R 芝1600m
NHKマイルC

コースロスのある外枠は基本的に不利。当たり前のことだろう。スピード化の進む現代競馬において、その傾向は以前よりも強くなっていると思っているくらいだが、状況次第では外枠がプラスに働くこともある。これもまた真実だ。

8枠17番が当たった今回のアドマイヤマーズ。彼の勝利は外枠を引いたことが大きく、仮に内枠からのスタートだったのなら、この鮮やかな勝利があったかどうか。私は疑問に思う。

今回、彼のスタートは良くなかった。二の脚の速さで早々にポジションを挽回できたが、それを可能にしたものこそ、前で進路を塞ぐ馬がいない外枠だ。これが内枠だったのであれば、ポジションを上げることができず、後方で揉まれ込んでいたかもしれない。

勝負どころの動きに関しても同じことが言える。4コーナー7番手というポジションは、これまでのイメージよりも少し後ろ。「大丈夫か?」と思ったファンも多かったと思う。しかし、誰に邪魔されることなく、自分のペースで押上げを開始できたのだから、これはこれで大歓迎だった。

内枠をプラス材料とできず、外を回る馬たちに先手を許した皐月賞と比べれば、今回は立ち回りが実にスムーズ。そして、これこそが今回のアドマイヤマーズに求められていたものだったように思う。

彼は完勝で朝日杯FSを制しているくらいの実力馬。下手に小細工することなく、能力をストレートに出すことさえできれば、今回も好勝負は必至だった。だからこそ、今回の分岐点は枠順にあったと私は言うのだ。

マイル戦は5戦5勝。抜群に切れるわけではないが、いい脚を長く使う。父ダイワメジャーの影響を色濃く感じる馬だ。圧勝するわけでないが、並んでからが実にしぶとい。これも父に似ている。

今回の結果を見て、ダノンプレミアムやアーモンドアイといった古馬のGI馬と互角に戦えるとは思えない。だが、それは現段階でのこと。この馬はまだ3歳で、前述したようなダイワメジャーの特徴も受け継いでいる。このカテゴリーであれば、上のメンバーが相手でも、それがGIで勝ち負けする馬であっても、好勝負できる1頭へと育っていく。そんな可能性もあるはずだ。

今後も大きな期待を持って、アドマイヤマーズを見ていきたい。

2着に好走したケイデンスコールの母はインダクティ。重賞6勝をあげたフェイムゲームの全姉で、成長力に富む血統背景の持ち主だ。ロードカナロアとの配合により、この血統に不足しがちだったスピードの注入に成功。ゆえにマイルの距離で結果を出せる馬になったのだろう。母父にいるハーツクライは厳しいレースで存在感を示す馬。それも好結果を生んだ理由かもしれない。

ハーツクライの産駒は芝の中・長距離というイメージで語られることが多く、その考え方は決して間違っていないのだが、例えば、ワイルドアゲインと掛け合わせたジャスタウェイなど、配合次第でマイルに適応する産駒も出す。

今回の3着馬カテドラルもロックオブジブラルタルというスピード血統と掛け合わせたハーツクライの産駒。ハーツクライとスピード血統のマッチングは、今後も注目の掛け合わせとして、頭に入れておかなくてはならない。

しかも、厳しい競馬となるGIのほうが、ハーツクライの特徴が出やすいときているのだから、この知識を頭の片隅に入れておくだけで、高配当を手にするチャンスが増えるかもしれない。

最後に1番人気で負けたグランアレグリアについて述べておきたい。

実は私もグランアレグリアが勝利に最も近いと考えていた人間の一人。今回の結果にはショックも受けているのだが、これまでのレースを振り返れば、自分の形でレースができたときのみ、強いパフォーマンスを見せてきたタイプであり、今回のような揉まれる競馬になったときは力を出せていない。馬群を割って突き抜けてくるほどの瞬発力を持っているかどうかについて、もう少し踏み込んで考えるべきだった…と思っている。

この馬はディープインパクト産駒にしては繋が立ち気味で、そのレースぶりも含めて、母父タピットの影響のほうが強い──。そのような話を、先週の馬体診断でさせてもらった。それはスピードで押す競馬に強さを見せる一方で、一気にギアを上げる行為は得意でないという意味でもあったのだ。

確かにルメール騎手の進路取りは強引だった。しかし、一瞬のうちにギアをトップへと上げる加速力があったのなら、そこに至るまでの間に、馬群を突き抜けてくることもできたのではないか。そのスペースを探せた瞬間もあった。

高い能力を持っている馬だ。これは疑いようがない。しかし、能力を発揮するための条件が付く。圧勝後のレースであっても、それに変わりはないのだ。常に過信は禁物な馬。このようなスタンスで、今後は付き合っていくつもりだ。


〈3歳重賞〉

5/4(土) 京都11R 芝2200m
京都新聞杯

戦前から出走馬のレベルが微妙ではないか、と考えられていた1戦。勝った馬に対する一定の評価はしたいが、レッドジェニアルだけでなく、2着のロジャーバローズも含め、ダービー本番で勝ち負けできるレベルにはないだろう。これが私の偽らざる本音だ。

これは青葉賞にも言えることだが、出走権利を取るために、あるいは賞金を加算するために前哨戦を使おうと思えば、ダービーを考えた調整、ダービーを考えたレース運びができなくなる。そうなってしまった時点で、そのレースは前哨戦として扱うことができないのだ。

あくまで前哨戦として出走するのであれば、そのレースに勝つことを目的としてはならない。状態、レースぶり、それ以外の全てのことをプラスとしなくてはならない。

例えば、京都新聞杯からダービー制覇を果たしたキズナは、京都新聞杯を勝つ前の段階で、すでに重賞制覇を果たしていた。仮に京都新聞杯を落としても、ダービーの出走権は持っていたのだ。

ダービーを語ることができる馬は、そのような背景を持つ馬。しかし、今回は違う。ありきたりではあるが、皐月賞組が主役のダービーになると思う。


〈海外競馬〉

5/5(日) チャーチルダウンズ12R ダ2000m
ケンタッキーダービー

1位入線のマキシマムセキュリティが降着の憂き目にあった今年のケンタッキーダービー。被害馬が加害馬に先着できたと認定される状況でなければ、着順は入れ替わらない「カテゴリー1」へと移行した当初は、「それではやったもの勝ちではないか」と思ったものだが、今回のように勝ち馬が圧倒的な強さを見せたにも関わらず、その能力に見合った賞賛を受けられない、それが種牡馬としての価値にまで影響してしまうと考えた場合、以前の日本も採用していた「カテゴリー2」の降着基準に対して、「それは競馬の未来のためにならないのではないだろうか」と感じてしまう。

もちろん、被害を受けた馬の言い分が理解できるし、自分の管理馬が不利を受ければ、そのレース内容に文句の一つも言いたくなるだろう。しかし、カテゴリー1の降着基準であっても、NHKマイルCのような降着は存在する。プロと呼ぶにふさわしい方々がジャッジするのであれば、こちらの方がいいような気がした。まあ、あくまで私見であり、参考程度に聞いてもらえばいいことだ。

日本から参戦したマスターフェンサーについても触れておきたい。

直線で見せた脚は素晴らしく、ベルモントSに向けて大きな期待を持った。この馬は日本で最も強い3歳馬でなかったはずだが、それでも遠征に踏み切った陣営の英断には拍手を送りたい。挑戦なくして、結果は得られないということを、改めて感じたレースだった。

個人的に気になっているのは蹄鉄。アメリカならスパイク鉄を履いた可能性もあるが、スパイク鉄に慣れるのは簡単ではない。どのような選択をしたのだろうか? 機会があれば、同馬を管理する角田調教師に質問してみたいと思う。


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