[第5章]取り逃がした名馬(デインヒル編) 過去の名馬

・あの名馬にまつわるエピソード

デインヒルの後継種牡馬として活躍しているホーリーローマンエンパイア。
彼の名を聞くと、私は「惜しいことをしたなあ」と思ってしまう。

血統に詳しい方、私の管理馬に詳しい方であれば、この私の言い回しでピンときたのではないだろうか?
ホーリーローマンエンパイアの母はセクレタリアト産駒のルオンバイト。
彼女は私が管理し、京都4歳特別を勝ったビッグバイキングの母だ。
つまり、ホーリーローマンエンパイアはビッグバイキングの半弟という血統の馬。
馬体や血統に見どころがあったからこそ、私はその馬たちを手に入れてきたわけで、当然ながら、彼らの兄弟の動向にも目を配っている。
すでに時間が経った現在だからこそ話せるが、私は若駒のホーリーローマンエンパイアを見るために、欧州へと足を運んでいた。
ホーリーローマンエンパイアを手に入れるチャンスが、私にもあったのだ。

いい馬ではあった。
しかし、いい馬であるがゆえに値段の折り合いが付かなかった。
それがホーリーローマンエンパイアを諦める最も大きな理由になったのだが、一方でビッグバイキングを購入した決め手が彼の父であるシアトリカルだったという事実。
これが二の足を踏ませたことも否定はできない。

ヒシアマゾンにタイキブリザードなど、日本の芝にも適性を見せたシアトリカルに私は好印象を抱いていた。
「これくらいの活躍はしてくれるだろう」
ビッグバイキングは計算の立つ馬だったわけだ。
一方のホーリーローマンエンパイアは細手だったビッグバイキングと違い、スピード豊富な馬体。
デインヒルは悪くないけど、日本の競馬で距離をこなしてくれるだろうか?
そんな不安を持っていたがために、ホーリーローマンエンパイアの購入を決断できなかった。
我々は競走馬として馬を見る。
ホーリーローマンエンパイアのときの同様で、このビジネスは成立するのだろうか?と考えてしまう。
しかし、欧州はそうでないのだろう。

・上を取って下を取らない

ホーリーローマンエンパイアはエイダン・オブライエン厩舎の所属馬として走り、キャリアはわずかに7戦。
2歳のうちに引退しているが、これはデインヒルの後継種牡馬として期待されたジョージワシントンの生殖能力に問題があったため、と後に聞いた。
いわゆる代役だ。
デインヒルの死亡を受け、ジョージワシントンを引退させたにもかかわらず、その馬が使い物にならなかった。
その期待に応えたのだから、ホーリーローマンエンパイアの持っていた資質は、相当なものがあったのだろう。

ちなみに私のような仕事をしてきた人間にとって、「上を買ったのに、その下を買わない」というのは大変な失策だ。
ダービー馬ウイニングチケットを取り逃したことは、私にとって苦い思い出となっているが、ワールドワイドな失敗という意味では、このホーリーローマンエンパイアのほうが大きいかもしれない。
世界中を飛び回りながら、大魚を逃してしまった後悔は、いつまでも心に残ってしまうものなのだ(苦笑)。

(※次回に続く)


【過去の連載馬】
[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)
[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)
[第1章]ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)

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