【4月27日・28日・29日開催】天皇賞(春)、青葉賞ほかレース解説 2019年 レース

〈古馬重賞〉

4/28(日) 京都11R 芝3200m
天皇賞(春)

この日、私は京都競馬場のパドックにいたのだが、実際にこの目で見たフィエールマンは「実に柔らかい」。そんな印象を持つ馬だった。柔軟性がある。そんな表現のほうが適当かもしれない。

彼の体型はステイヤー然としたものではなかったが、現代競馬で必要なものはスピード。そして、そのスピードを表に出し過ぎず、コントロールすることが可能な馬であれば、距離は克服できる。そのような馬は往々にして、柔軟性に富んだ、非常に柔らかい体をしているものだ。

そのレースぶりも含め、今回の1戦はポジティブなものが多い。3歳で結果を出したディープインパクト産駒が、古馬になっても変わらずに力を誇示することは稀。彼の産駒はピークが早く来過ぎてしまう印象も持っていた。しかし、フィエールマンはキャリアも浅く、これまでも結果を出し続けてきた現4歳世代の代表とも言うべき馬。今後も見通しは明るいと思う。

だが、それだけで話を締めてしまってはつまらない(苦笑)。ゆえに、今回は私の考える不安材料を、あえて指摘しておきたい。重箱の隅を突くようなものになるかもしれないが、それが本当に的中することもあるのだから。

フィエールマンの強みは、レースの間隔を開けても馬体をしっかりと作れるところにある。今回のレースを見て、そのような解釈をする方もいるだろう。その見解は間違っていないが、私のアプローチは逆。先週の馬体診断でも指摘したことだが、フィエールマンの前肢は曲がっている。連戦に耐えることができるか、と問われれば、私は「微妙なタイプ」と返答すると思う。

もちろん、これまでと同じようにレース間隔を開け、放牧先と厩舎が密な連携を取りながら、仕上げていく分には問題ないだろう。しかし、報道にあった凱旋門賞挑戦に踏み切るのであれば、前哨戦の選択だけでなく、調整の仕方にもひと工夫が必要になってくるはずだ。

レース間隔の詰まるフォワ賞を選択することは難しいだろう。例えば、拠点をイギリスにおいての挑戦を模索するか、もしくは前哨戦なしのぶっつけ。彼のような馬を調教する場合、ニューマーケットの坂路のようなコースが適当になるのかどうか。そのようなことまで頭を巡らせなくてはならない。

前述したように、フィエールマンは柔軟性に富む馬で、このようなタイプであれば、欧州の競馬にも上手に対応してくれるのではないか、と私も期待を寄せている。だが、好走するための要因はレースよりも前。そこにこそ課題がある。

フィエールマンが力を出せる状態で出走できるかどうか。それが一番のポイントになってくるはずだ。

2着グローリーヴェイズも勝ち馬と互角の素晴らしい競馬をしたと思う。この馬もフィエールマンと同じディープインパクト産駒。母系はメジロ牧場にゆかりがある。ステイヤーとしての資質はこちらが上。そんな報道もあったと思うが、正直に告白すれば、この馬の母系が取り沙汰されているほどのレベルにあるのかどうか? 私は疑問に感じていた。

確かにルーツはメジロラモーヌだが、この馬の母父はスウェプトオーヴァーボードであり、母のメジロツボネはスウェプトオーヴァーボードと同じ芦毛であることから、メジロ牧場の特徴であるスタミナを同馬が内包しているかどうかはわからない。そんな疑念を持っていたのだ。

結果、私の心配は杞憂に終わり、グローリーヴェイズは自身の毛色が示すように、母父スウェプトオーヴァーボードの影響が薄い「隔世遺伝」タイプの馬だったわけだが、このような考え方、推測ができるからこそ、血統というのは奥が深く、簡単に答えが出るものでもないということ。

それを再認識できただけでも良かったと考えるべきだろうか。

最後に4着のエタリオウ。鞍上のM.デムーロ騎手にどのような考えがあって、あの乗り方を選択したのか。それは私にはわからない。しかし、現代競馬において、あれだけ離された最後方からレースを進めるという行為は、あまりにもナンセンスだ。

後方一気でも勝ち負けできた時代は、すでに昭和で終わっている。マラソンでもそうだろう。スピード化が進み、ラップタイムが最後まで落ちないレース展開において、少しでもポジションを下げた選手は、追い上げるために無理なペースで走ることを強いられる。それが自分のペースを守った結果であったとしても、勝利につながる選択ではないのだ。

勝者となることができる選手は、最初から先頭集団にいる人間のみ。それがスピード化の進んだ現在の競走スタイル。競走馬の世界も同様だ。全体的な時計だけでなく、レースの上がりも比例して速くなっていることを認識しなくてはならない。能力の高い馬が集まるレースは、その傾向がさらに強くなっていることを考えなくてはならない。

私は常に前で競馬をできる優位性を説いてきたが、それは現代競馬の傾向を考えれば、至極当然のこと。競走馬のスピードは限られている。その持続力も限られている。だからこそ、最後の手綱を任された騎手は、極端なレース運びが必要のない負担を馬に強いていることを認識してほしいのだ。仮に私の管理馬であったなら、怒鳴り散らしていたところだ(苦笑)。


4/29(月) 新潟11R 芝2000m
新潟大賞典

鞍上のD.レーン騎手を私はよく知らなかったのだが、ずいぶんと達者な騎手のようだ。好位から脚を持たす騎乗は、現在の競馬のスタイルに合っている。すぐに結果を出したので、今後は騎乗依頼も殺到するだろう。

ハンデ重賞の結果を受け、GIうんぬんを語るのは早計。私は常にそう考えているが、今回の勝ち馬は5月26日の極端な遅生まれの4歳馬。今後の成長を大いに期待できるはずだ。母父にはサンデーサイレンス。ずいぶんと長きに渡って活躍しているな、と感心させられたとともに、その影響力の強さを改めて知った結果だった。

2着は実力馬のミッキースワローで、3着は売り出し中のロシュフォール。先ほど、ハンデ重賞の結果に一喜一憂しないというニュアンスの発言をしたが、新潟の長い直線は能力がストレートに出やすい舞台。同じハンデ重賞でも小回りのそれよりは、今後の可能性を感じる結果だったと言えるだろう。


〈3歳重賞〉

4/27(土) 東京11R 芝2400m
青葉賞

勝ったリオンリオンと2番手以降にいた馬たち。VTRでレース映像を確認できると思うので、その走りの違いをぜひチェックしてみてほしい。ハナを切ったリオンリオンは、早い段階で耳を立て、リラックスした状態で走っているのに対し、2番手にいたアドマイヤスコール、その後ろのランフォザローゼスは耳を絞っている。舞台はタフな東京の2400m。この差が大きいということを知ってもらいたい。

最終的に2着馬との差はハナ。前述したような状況を考えれば、ランフォザローゼスのほうが能力は上の可能性もある。しかし、仮にそうであったとしても、ダービーでの勝利を期待するのは難しいだろう。

私も管理馬を青葉賞に出走させ、権利を取ってダービーへと向かわせたことがあるが、ダービーまでの間隔が短い青葉賞は、前哨戦として機能させることが、実に難しいレースだ。

海外の前哨戦のように、超スローペースで上がりだけしか走らないのであれば、また違うのかもしれないが、青葉賞は「どうしてもダービーに出したい」と考える陣営が、必死になって調整し、権利を取りにくるレースだ。しかも、東京の2400mは非常にタフなコース設定。内容がハードなだけでなく、馬への負担も相応のものになる。

ゆえに状態を上げることはもちろん、維持することさえも難しい。青葉賞組が振るわない一番の理由は、その日程面にあると私は考えている。しかし、東京開催の時期を早めることは無理だろう。この傾向は今後も続きそうだ。


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