[第4章]多様な後継種牡馬たち(デインヒル編) 過去の名馬

・最初に成功した後継種牡馬

最初に成功したデインヒルの後継種牡馬と問われれば、おそらくはデインヒルダンサーではないか、と私は答える。
しかし、デインヒルダンサーに対する現役時代の知識は乏しい。
デインヒルダンサーはアイルランドの2歳GIを2勝しているが、当時の記憶はほとんどない、と答えるしかないのだ。
種牡馬となり、その結果によって自身の存在を世間に知らしめた馬。
それがデインヒルダンサーに対する私の認識。
しかし、これはデインヒルダンサーに限った話ではなく、父のデインヒルも似たようなものだろう。

現役時代はそれほどでなくても、それ以降のことを考える。
種牡馬ビジネスが確立している背景があるからこそ、彼のような馬も登場してくる。
それが血統の面白い部分でもあるわけだ。

デインヒルダンサーの母系にはスピード豊富なカロの名がある。
ダンジグの血を引く父のデインヒルだけでなく、この母系の影響も大きかったのではないか、と私は考えている。
デインヒルダンサーの産駒は牝馬に活躍馬が多く、コロネーションSを勝ったリリーラントリーは、自身がGI2勝馬だっただけでなく、母としてGIを7勝もするマインディングという名牝を産み落とした。
ガリレオ産駒でありながら、マイルから2400mまでをこなしたマインディングの成績を見れば、そこにデインヒルダンサーの影響があると考えるのは当然のことだろう。

昨年のジャックルマロワ賞で強い勝ち方を見せたアルファセントーリは、デインヒルダンサーの後継種牡馬として知られるマスタークラフツマンの産駒だ。
ロイヤルアスコット開催の主要レースでもセントジェームズパレスSなど、GIを4勝しているマスタークラフツマンは、母父にブラックタイアフェアーを持ち、その先にリファール、リボーの名が並ぶ血統の馬。
基本的にはアルファセントーリのようなスピードタイプを出してくる種牡馬だろうが、仏ダービーを勝ったザグレイギャッツビーは中距離以上を主戦場とした馬。
キングストンヒルという馬はセントレジャーを勝ち、凱旋門賞でも4着という結果を残している。
デインヒル、デインヒルダンサーの産駒と比較したとき、マスタークラフツマンの産駒のほうが、こなせる距離の幅が広いのかもしれない。

・様々な後継種牡馬が出る理由とは

ダンジグよりも胴長だったグリーンデザートの後継種牡馬には、ケープクロスのような距離をこなす産駒を出すタイプもいた。
同じダンジグの系統であるデインヒルも同様だ。
デインヒルから派生している後継種牡馬たちも多様な発展をし、異なった特徴を見せ始めていると考えていいだろう。

実際、デインヒルの後継種牡馬は実に多彩で、各々の馬体から受ける印象も違う。
これまでに何度も足を運び、私自身が撮った写真もあるリダウツチョイス。
筋肉質な彼の馬体は見るからにスプリンターだ。
彼の産駒も基本的にはマッチョであり、そのほとんどが距離を克服できない。
しかし、同じデインヒルの後継種牡馬でもデインヒルダンサーはそうではないし、愛ダービーを勝ったデザートキングもそうではないだろう。
ハービンジャーの父であるダンシリはマイル近辺の距離で走っていた馬だが、その産駒は芝の中・長距離に適性を見せている。

そのような状況が起こっている理由は、デインヒルがシャトル種牡馬であったことに関係していると私は考えている。

当然ながら、競走馬の配合とは種牡馬だけの特徴だけを考えるのではなく、むしろ繁殖相手とのマッチングによって、様々な可能性が広げるもの。
結果の出やすいスプリンターを求めるオーストラリアと、距離の幅が欲しい欧州とでは求めているものが違い、それは掛け合わせる繁殖牝馬のキャラクターの違いとして出ていたのだろう。
土地柄と表現すれば、わかりやすいだろうか。
様々な場所で、様々な可能性を試してきたからこそ生まれたデインヒル系の多様性。
これもクールモアスタッドの組織力が生んだ結果ということだ。

(※次回に続く)


【過去の連載馬】
[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)
[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)
[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)

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