【11月24日・25日開催】ジャパンC、京阪杯ほかレース解説 2018年レース

〈古馬重賞〉

11/25(日) 東京11R 芝2400m
ジャパンC

アーモンドアイが歴史に名を残す素晴らしい馬であり、今回のパフォーマンスがどれほどまでに特別であったのか──それは多くのメディアがすでに報じていることで、そのほとんどの意見に私は同意したい。そのすべてが彼女に対する称賛の声であることを嬉しく思うとともに、このような名馬の母がフサイチパンドラであったことを誇りに感じている。

そう、彼女は私が管理したフサイチパンドラの娘。それが何よりも嬉しかった。ゆえに私は彼女の一挙手一投足に注目するために東京まで足を運んできた。

この目でレースが見たいという衝動を抑えられなかったからだ。

すぐ近くにはアーモンドアイを管理する国枝栄調教師もいて、彼からもアーモンドアイにまつわる色々な話を聞いた。どれも興味深いものばかりであり、国枝調教師がトップ調教師でいる理由を改めて知った気もした。東京まで行った甲斐があったというものだ。

これからする話は私だからこそのジャパンC観戦記。今回が本邦初公開のものばかりだ。ぜひ、楽しんで読んでいただきたい。

ジャパンC当日。アーモンドアイの気配は素晴らしく、東京競馬場の大観衆にも初めての古馬との対戦にもひるむことなく、実に落ち着いた精神状態でパドックを周回している姿に感心もした。

返し馬での姿も私の求める競走馬の理想像。下手に首を下げるでもなく、頭を上げることもない。ちょうどいい頭の位置で走る馬だな──。そのような話を国枝調教師とさせてもらった。確かに馬場入場時に少しテンションの高くなる面はあった。しかし、それも許容範囲。「あれくらいなら問題ない」とのやり取りをしたことも覚えている。その所作の全てが私には完璧に見えたのだ。

しかし、それも牧場と連動し、この1戦に向けて馬を作ってきた陣営の尽力があってこそのもの──だったらしい。

なんでも、秋華賞後のアーモンドアイは激走の反動がひどく、一時はジャパンCの出走を見送ろうかと考えたこともあったと国枝調教師は語ってくれた。アーモンドアイは常に全力で走る真面目な馬。秋華賞のレース後も熱中症のような状況になったと聞いているが、それはジャパンCのレース後も同じだった。

レコードタイムで走ったのだから、息遣いが荒くなるのは仕方がない。しかし、レース後の国枝調教師とスタッフはすぐにアーモンドアイを別の場所に連れて行き、馬体に水をかけて彼女の体温を下げていた。日中の温度が40度を超える夏場ならともかく、この時期のレースではなかなか見られないシーン。それはアーモンドアイという馬の本質を物語っているのではないだろうか。

競走馬は生き物であり、人間の考えた通りに肉体が回復するわけでない。

これまでの三冠馬とは異なるローテーションで結果を出してきたアーモンドアイだが、それは全力で走るがゆえに疲れが残りやすいアーモンドアイの特徴を踏まえてのもの。前哨戦をひと叩きして本番へ──その考えが通用しない馬である理由がこれだ。

すでにドバイ遠征に関しての報道が出ており、前哨戦を使わずに休み明けで挑戦するようなニュアンスだった。私はその遠征プランでいいと思う。むしろ、そのほうが結果に繋がるように考える。

育成牧場の施設、スタッフの技術の進歩は飛躍的に進化しており、トレセンとの関係性はより親密になった。休み明けで結果を出した桜花賞、秋華賞に続き、しっかりと状態を立て直して挑んだ今回のジャパンCで、国枝厩舎のスタッフも牧場のスタッフもアーモンドアイの仕上げに対しての自信をさらに深めたとも考えられる。疲労を回復させる手段の少ない海外でリスクを背負う必要はないのだ。

ドバイ遠征で結果を出せば、その次は凱旋門賞挑戦が現実味を帯びてくるだろう。エルコンドルパサーのような長期の欧州滞在を勧める声もあるようだが、その意見こそが絶対と私は思わない。

海外遠征に対しての常識は大きく変化している。実戦を走った際の反動が気になるアーモンドアイにとって、例えばヴェルメイユ賞のような本番まで中2週のレースが合っているとは思えないのだ。彼女は彼女のスタイルを貫けばいい。ライバルの目を逸らす意味でも、休み明けの挑戦こそが最適なのではないだろうか。そう私は考える。

私はブリーダーズCにも足を運び、エネイブルの走りをこの目で見てきた。彼女は凄い牝馬だ。現役を続行するエネイブルの最大のターゲットは三連覇になる来年の凱旋門賞だろうし、アーモンドアイにとっての最大のライバルであるとも思う。

どちらの馬が強いのか? その質問には答えられない。答えがわからないという表現のほうが妥当だろう。

ただし、来年のエネイブルは現状維持が精一杯の5歳になり、アーモンドアイは成長のピークを迎える可能性が高い4歳で最高の舞台を踏む。これは間違いのない事実。臆する必要はないだろう。

今回の1戦で見せたアーモンドアイのパフォーマンスは、厳しいマークに合うかもしれない凱旋門賞でのレースを考えたとき、大きな手応えを感じさせるものでもあった。

展開に左右されず、自分の力でもぎ取った勝利。それこそ、これまでのエネイブルが見せてきたような競馬で勝利を手にしたことが、日本のみならず、海外での評価を高めているのだと思う。

本当に楽しみだ。来年が本当に楽しみで仕方がない。

レース後は様々な方から「先生、良かったね」と言われた。アーモンドアイの母フサイチパンドラが私の管理馬であったことから、皆さんが祝福してくれていると思うのだが、このような状況だけを切り取っても競馬の素晴らしさを感じずにいられない。

すでに私は調教師を引退し、フサイチパンドラが現役を走っていた時代も昔の話になった。それでも、競走馬の中に名馬の血が流れ続ける限り、その馬に関わった人々の思いは受け継がれ続ける。競馬が単なるギャンブルではないことの証明と言えるのではないだろうか。

あくまで現時点での話だが、アーモンドアイが出走する限り、私はドバイのレースも見に行こうと思っているし、フランスにも行きたいと考えている。アーモンドアイが大舞台を走り続けることで、私は人生の楽しみをもらい続けることができるわけだ。これも本当に素晴らしいこと。アーモンドアイとフサイチパンドラに感謝したい。

2着以下の馬についても少しだけ触れておく。2着に逃げ粘ったキセキのパフォーマンスは素晴らしかったし、アーモンドアイの本当の能力を引き出したのは彼の存在があってこそ。同馬の能力を引き出した川田騎手の騎乗も称賛されるべきものと私は思う。

その川田騎手に今週のトレセンで声をかけたのだが、彼の返答は「フサイチパンドラの子は強すぎる」だった。私が幸せな気持ちで彼の言葉を聞いたことは言うまでもないだろう。

ちなみにキセキは5月の遅生まれで、ようやくキ甲が抜け出したくらいの馬。これからが成長のピークになる可能性は高い。有馬記念に出走してくるようなら、主役候補の1頭として高い評価をさせてもらうつもりだ。

出遅れなどによる消化不良だった前走と違い、現状の力を示す走りを見せたスワーヴリチャードは3着。ゆえにキセキとの間にある3馬身半の着差は決定的なものではないか、と私は考える。有馬記念への出走があったとしても、右回りへ適性に疑問を残す馬。逆転まではないと考えていい。

むしろ、地力を見せる形で4着に押し上げたシュヴァルグランのほうが有馬記念ではいいかもしれない。アーモンドアイの相手本線として期待したサトノダイヤモンドは6着。物足りない結果だったが、彼は1月の早生まれで早熟の可能性もあった馬。これが現状の力と見るべきなのかもしれない。


11/25(日) 京都12R 芝1200m
京阪杯

取り上げるべき存在は勝ったダノンスマッシュのみでいいだろう。彼もアーモンドアイと同じロードカナロアの産駒だが、ハードスパンを母父に持つ彼の適性はスプリント戦。しかし、この馬のようなタイプがロードカナロア産駒のあるべき姿であり、配合の方向性も合っていると私は考えている。

アーモンドアイのような馬を登場させようと思えば、母系にスタミナを持ってくる必要があり、それは時にギャンブルとなってしまう。スピードにスピードの掛け合わせこそが確率の高いパターンであるはずだ。

ダノンスマッシュに関して言えば、淡白な面があるはずのハードスパンの弱点を消し、スピードだけをうまく抽出している印象を持った。サンデーサイレンスの血を持たないダノンスマッシュのような配合の馬でも切れを有しているところがロードカナロアの凄さであり、それこそがリーディングサイアー候補とされる理由。スピードに加え、直線で見せる切れも現在の競馬で必要な要素だ。

ダノンスマッシュには父ロードカナロアと似たような路線で高松宮記念を狙う馬になってほしいし、そうなる可能性は十分にあるだろう。


〈2歳重賞〉

11/24(土) 京都11R 芝2000m
京都2歳S

一枚上の決め手を発揮してクラージュゲリエが勝利。前走はイレ込みの影響が強かったようだが、今回はパドックから落ち着いて歩けていたようだ。厩舎装鞍とした話も耳にしたし、実際にリップチェーンも付けている。難しい馬であるのは確かなようなので、今後も能力を発揮できるように務めることが大事になってくるだろう。

2着のブレイキングドーンは太めが少し残っていた。この状況での2着は素直に評価していいと思う。父のヴィクトワールピサだけでなく、母父にホワイトマズル、その先にはエルコンドルパサーという血統背景の馬。距離が延びて良さが出てくるだろうし、今後も注目しておきたい。

3着のワールドプレミアは予想以上にテンションが上がっていたし、大外を回すコース取りにもロスがあった。まずは落ち着きを取り戻すことが大事だが、持っている能力は高そうな馬。この1戦だけで評価を決めないようにしたい。


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などもお楽しみください。

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