[第5章]ノーザンダンサー系が発展した理由(ノーザンダンサー編) 過去の名馬

・優秀な後継種牡馬の数々

これから触れる予定のノーザンダンサー系の種牡馬を紹介しておきたい。

まずはノーザンダンサー系の中で、最初の系統を確立したと考えられるニジンスキー系。
ニジンスキーと同時期に登場したヴァイスリージェント系。
豊富なスピードの代名詞でもあるダンジグ系とダンジグ産駒のデインヒル系。
高い潜在スピードを持っていたことでは同じだが、切れもあるダンジグ系と違い、スピードの持続力に秀でていたのはヌレイエフ系。
ディープインパクトの母系にいることでも知られるリファール系はスピードがあるだけでなく、柔軟性にも優れていた。
突出したスピードと、もろ刃の剣になる激しい気性を抱えたストームバード系、その産駒のストームキャット系はディープインパクトのニックスとして、日本にも数多く繁殖が入ってきている系統だ。
そして、現在の欧州競馬を牛耳っているサドラーズウェルズ系の特徴はスタミナ。
日本の芝には合わないとされたサドラーズウェルズ系だが、最近はサドラーズウェルズの名を日本馬の血統表にも見るようになった。
世界が狭くなってきたことの証明とも言えるだろう。

あまりに多彩であり、あまりにも偉大過ぎるラインナップだ。
どこから手を付ければいいのか、と頭を悩ますほどの大種牡馬ばかり。
これこそがノーザンダンサーの偉大なところであり、前回までの連載で取り上げていたノーザンテーストとの大きな違いでもある。
ノーザンダンサーはオールマイティーではあったが、そのすべてが平均点という馬ではなかった。
そのすべてがトップレベルだったのだ。
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手を思い描いてもらうと、イメージが湧きやすいかもしれない。
投手でもトップレベル、打者でもトップレベル。
走らせれば、足も速い。
ノーザンダンサーもまるで同じ。
それこそがノーザンダンサーの凄さであり、産駒の特徴が多岐に渡るノーザンダンサー系の魅力でもあるのだ。

・ノーザンダンサー系が繁栄したもう一つの理由

しかし、自身が調教師として管理してきた馬たちを思い返してみたとき、ノーザンダンサーの直仔はもちろん、その種牡馬にも世話になった記憶がない。
その一番は経済的な理由。
ノーザンダンサーの血を持つ種牡馬の産駒は一様に高額で、前述に名を挙げたような馬の産駒を手に入れることは、望んでもできなかった。
だからこそ、私は母系に彼らの血を入れることにこだわったのだ。
ダンスパートナー、スペシャルウィークはニジンスキーの血を持っている馬で、オースミジェットもそうだ。
彼の血を重視した理由については後述させてもらうつもりだが、ニジンスキーこそが私の最も入れ込んだノーザンダンサー系の馬だった。

ノーザンダンサー系の血が血統表の何処かに入ってくると、それだけで底力が違うと言われた時代があった。
それは事実であったと思うし、おそらくは現在も変わっていないだろう。
ただ、ノーザンダンサー系の血が増え過ぎてしまったことで、その特徴は埋没されてしまった。
現在、この世界中で走っている馬のほとんどが、勝負に必要な底力を兼ね備えていると言ってしまっていいのかもしれない。
ノーザンダンサーの血を持つ馬は、現存する競走馬の八割にも達すると聞く。
その状況で個性を生かせ、と言うのは無理な話なのだが、それでも派生していった系統には様々な特色があるのだから、これもまたとてつもないことだろう。

ノーザンダンサーの凄さは優秀な種牡馬を生み出しただけではない、と私は考えている。
言うなれば、ニックスを生み出す能力。
ミスタープロスペクター系の発展は、ノーザンダンサー系と相性が良かったことに尽きるが、ノーザンダンサー系はあらゆる系統との間にニックスを成立させた。

サンデーサイレンス系との間にもニックスが成立している。
ダンシングキイが出ていた繁殖セールの場に私がいたことは、すでに多くのメディアによって知られていることだが、その年のブリーダーズカップで実際に見ていたサンデーサイレンスとの配合を、この時点でイメージしていた。
ノーザンダンサー系はヘイルトゥーリーズン系ともニックスが成立するはず…。
ダンスパートナーでの成功は、ノーザンダンサー系とのニックスを読み切ることができたからこそのものだったのだ。

ヘイルトゥーリーズン系とノーザンダンサー系とのニックスについて、改めて皆さんに伝えたい話がある。
その話を次回はさせてもらいたい。

(※次回に続く)


【過去の連載馬】
[第1章]稀有な能力の持ち主(ネオユニヴァース編)
[第1章]ドバイワールドCを勝った馬(ヴィクトワールピサ編)
[第1章]ゼンノロブロイの印象(ゼンノロブロイ編)

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