【10月6日・7日・8日開催】凱旋門賞、毎日王冠ほかレース解説 2018年レース

〈海外GI〉

10/7(日) パリロンシャン4R 芝2400m
凱旋門賞

JRAが馬券の発売を開始し、それまでは興味を示さなかったファンが凱旋門賞を間近に感じる時代になった。それは素直に嬉しいと思う。

今回、クリンチャーの挑戦は実らなかったが、世界最高峰の舞台に挑んだ前田オーナーの心意気は素晴らしいし、勝ったエネイブルとほぼ同じ位置から競馬を進めた武豊君の騎乗にはミスらしいミスがなかった。力を出し切った競馬なので、胸を張って戻ってきてほしいと思う。

昨年に続く連覇を果たしたエネイブル。強さを感じたのは昨年だが、価値があるのは今年のレースだ。58キロという重い斤量を背負い、臨戦過程も微妙だった。ゴスデン調教師の卓越した手腕が背景にあればこその勝利だったと思う。

私が注目していたシーオブクラスは馬群を割って追い込んだものの、惜しいところでタイトルを逃した。凱旋門賞は馬群が密集するタイトなレースになりやすく、コース形態からも追い込み一気がハマりにくい。それを考えれば、今回の惜しい2着は勝ち馬にも匹敵すると判断されるだろう。

ただし、先ほども述べたように凱旋門賞は年齢による斤量の差が大きいレース。シーオブクラスとエネイブルとの斤量差は3キロもあった。一方で牡馬と牝馬のアローワンスは1.5キロ。日本のそれは基本的にどちらも2キロ差であることを考えれば、3歳牡馬の挑戦は間違いではなく、ダービーを勝った年に凱旋門賞へ参戦した一昨年のマカヒキは理にかなった挑戦だったのだ。正直、古馬の牡馬での挑戦は、相当に傑出した能力の馬でない限り厳しいと私は思う。行くなら3歳馬だ。

もしも、私に選択権があるのだとすれば──。これは完全に仮定の話になるのだが、今年のアーモンドアイなら面白い競馬になったと思う。3歳牝馬で55キロ。スピードだけでなく、切れも必要な凱旋門賞というレースに彼女のキャラクターが適していたのではないか。

しかし、今年の凱旋門賞は終わり、来年の挑戦では58キロの斤量を背負わなくてはならない。この斤量では無理。この斤量では彼女の長所が消えてしまう。これほどの能力を見せる3歳牝馬がなかなか出現しないことを考えれば、大チャンスを逃したという表現も決して大袈裟ではないように思う。


〈古馬重賞〉

10/7(日) 東京11R 芝1800m
毎日王冠

牡馬の実績馬を一蹴し、楽々と押し切ったアエロリットの前途は洋々。結果的には逃げ切り勝ちでも、無理に行ったわけではなく、ハナに立ったときの同馬は耳を立てていたくらい。スピードの違いでハナに行ったに過ぎず、それほどのスピードを持つアエロリットにとって、1000m通過が59秒0の流れはスローと考えていい。非常に楽なレースで、大きな疲れも残らなかったのではないか。一枚上の強さを見せた1戦だった。

クロフネの産駒はスピードの持続力で勝負するタイプが多く、アエロリットもそのタイプに属する馬ではあるだろう。しかし、他のクロフネ産駒と違い、母父にネオユニヴァースを持つ同馬は、芝の重賞レースでも通用する末脚の切れも持っている。ネオユニヴァースの特徴である柔らかい繋。これを継承していることが理由であり、ゆえにラップ10秒台の脚で後続を突き放すことも可能なわけだ。

折角なので、私の私見をひとつ入れておく。

クロフネ自身の影響が強すぎれば、芝のGⅠで勝てるような切れを持つ馬にはならず、どうしても前さばきの硬いダートに適性があるようなタイプになってしまうだろう。

逆にネオユニヴァースを強調してしまえば、その柔らか過ぎる繋がネックとなって、父のような強靭な肉体を持っていない限りは、その爆発的な瞬発力を発揮する前に馬が壊れてしまう。ゆえに難しいのだ。

ネオユニヴァースは配合相手にアメリカのダート血統を持ってくることが多いが、それはネオユニヴァースの柔らかさが出すぎてしまうことを警戒しているためで、ネオユニヴァースの代表産駒であるヴィクトワールピサの母父もマキャベリアン。サンデーサイレンス系のインブリードなどで切れを増幅させるよりも、ミスタープロスペクター系のスピードと肉体でネオユニヴァースの弱点を防ぐ考え方をした配合と言えるだろう。

父がクロフネ、母父がネオユニヴァースの配合はお互いの弱点を補い合うものであり、実際にネオユニヴァースからの影響を感じる繋を持ちながら、その弱点を補える強靭な馬体を得ている。これはクロフネを相手に選んだことによる恩恵だろう。ベストマッチである可能性がある。

唯一の牝馬でありながら、出走馬で最も重い508キロの雄大な馬体。これは血統的見地から説明できることを覚えておいてもらいたい。

アエロリットという馬の素晴らしさは精神的な部分にもある。ゆったりとしたパドックでの周回は一流馬のそれであり、水平首で脚の運びもスムーズ。これを実際にできる馬というのはそこまでいるわけでなく、重賞レースでメンバーの揃っていた今回でもそうだった。だからこそ、パドックでも一際目立つ存在であるわけだ。

アメリカ遠征を取りやめ、国内に専念することになったと聞いた。距離の壁はあるだろうが、相手関係的なことを言えば、牡馬が相手のGⅠレースでも主役を演じる能力は持っている。どこのレースに出走したとしても、注目が必要な存在だろう。東京コースでの成績がクローズアップされているが、特に右回りがダメとも思えない。京都のマイルCSでも勝ち負けになるだろうし、直線が平坦なコースのほうが逆に押し切りやすい可能性もある。

2着ステルヴィオと3着のキセキについても一言だけ触れておく。2着ステルヴィオの切れはさすがだったし、中距離こそがベストであることを改めて証明したレースと言えるが、パドックでの周回にはアエロリットとの差がはっきりと出ていた。精神面にまだ課題を残している。逆に言えば、この部分が成長してくれば、レースぶりももっと自在になるだろうし、走りも安定してくるだろう。能力は持っている馬だ。

3着キセキの雰囲気は悪くなかった。10キロ増でも太めには見えなかったし、落ち着きもあった。最後は切れ負けした格好だったが、他馬よりも重い58キロを背負ってのもの。次の天皇賞(秋)でも注目が必要だと思う。


10/8(月) 京都11R 芝2400m
京都大賞典

久々の勝利を飾ったサトノダイヤモンドに対する評価がすべてのレースだ。確かにパドックでの雰囲気は悪くなかった。ゆったりと歩けていたし、踏み込みもまずまず。久しぶりにいいな、と感じた。

ゆえにレースでも自由自在。飛ばしている逃げ馬は勝手に行かせ、シュヴァルグランを目標にスパートするレース。そのタイミングも良かった。レース運びに注文を付けるところはなく、後続に迫られはしたが、抜かれそうな感じもしなかった。内容的には完勝だったと思う。

だが、これが普通の馬ではなく、GⅠでの好勝負を期待されているサトノダイヤモンドとなると、もうひとつ上の視点が必要になってくるだろう。

正直、シュヴァルグラン以外のメンバーはそこまで強敵と言えず、次走に予定されるジャパンCのメンバーとは比較にならない。もうワンランク上の状態に持っていくことが必要だと私は思う。

シュヴァルグランは予想外に走れなかったが、今回は昨年のジャパンカップのときのようにパドックでゆったりと歩けていなかった。それが行きたがる面を見せた理由であると思うし、そのような状況下での58キロも応えていたのだろう。

当時の落ち着きを取り戻し、能力をすべて発揮できれば…と思う一方で、今回のメンバーを相手に3着も死守できなかった事実も見逃せない。この馬も本番までにどれだけ状態を上げていけるか、がポイントになってくる。


〈2歳重賞〉

10/6(土) 東京11R 芝1600m
サウジアラビアRC

見ての通りというフレーズがぴったりの楽勝でグランアレグリアが重賞制覇。そのレース内容について多くを語る必要はないだろう。一枚も二枚も力が違ったパフォーマンス。阪神JFの最有力候補であることは間違いないと思う。

では、今回のポイントを2つほど述べていきたい。

まずは18キロ増だった馬体重について。休み明けの1戦で多少の余裕を残していたとは思うが、太めという印象の馬体ではなかった。であれば、その数字のほとんどは成長分ということになる。

阪神JF、桜花賞と関西圏への輸送をすることを前提に考えれば、体はあったほうがいいわけで、牝馬の470キロ台ならちょうどいいと言えるだろう。1月生まれで成長期が他の馬より早いのかもしれない。

もうひとつは血統構成。彼女の母父はアメリカの大種牡馬タピット。スピードが豊富なだけでなく、パワーもある。ディープインパクトのニックスと言えば、ストームキャットが真っ先に上がると思うが、あの馬と違ってタピットには距離の融通性があることが大きい。海外の競馬に少し詳しいくらいの人間なら、タピットの産駒がベルモントSで無類の強さを見せることは知っているはずだ。

日本でのタピット産駒と言えば、最も有名な存在はラニだろう。あの馬はかなり気性の激しい馬だったが、タピットの産駒が総じて気性が激しいかと言えばそうではなく、あの馬は特別な存在だったと私は考えている。

実際、グランアレグリアにイレ込み癖は見られず、レースでも収まりがついていた。タピットの素晴らしい部分だけを受け継いだディープインパクト産駒だとすれば、相当な活躍を期待できるのではないだろうか。

ちなみに翌日の未勝利を勝ったスイープセレリタスは名牝スイープトウショウの子で、走破時計もグランアレグリアのそれよりも速かったが、パドックでの振る舞いからレースでのフットワークなどを私なりに考察した結果、現状では同厩のグランアレグリアのレベルには達していないと判断する。

もちろん、今後の成長次第で逆転する可能性は否定しないし、特にこの馬は6月の遅生まれ。チャンスはあるだろう。しかし、現時点で2頭が競えば、グランアレグリアが勝つはずだ。


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