[第1章]競走馬の根本は血統(ノーザンダンサー編) 過去の名馬

・血統に対する尽きることのない情熱

この世界には多くの種牡馬がいる。
年間に200頭も種付けをする馬もいれば、わずか数頭しか繁殖相手を集められない馬もいる。
頭数を制限し、ブラックタイプの繁殖牝馬としか交配しないガリレオのような特殊な馬もいれば、ディープインパクトの全兄という血統背景を武器にし、キタサンブラックのような名馬を出してしまったブラックタイドのような種牡馬もいる。
そのすべてを完全に理解することは難しいとしても、可能な限りの知識を求め、自分の糧としていくことは愚かしいことではない。
むしろ、その積み重ねこそが競馬に対する理解力を高める要因になると私は思う。

この連載では数多くの種牡馬の話をしてきた。
以前から抱いていた自身の考えを述べるだけでなく、これまでとは違う視点から改めて考察することで、新しい発見もずいぶんとあったように感じる。
そのような行為は競馬の世界で何十年とキャリアを積んだ私にとっても、非常に意義深いことだった。

時間の進みが人間のそれよりも早い競走馬の世界において、新しい知識、正しい認識はなによりも大きな武器であり、ゆえに私は色々な書籍を読み漁り、様々な場所へと足を運ぶ努力をしてきたわけだが、その行為にも限界がある。
人間の記憶は時に曖昧で、勘違いしてしまったまま、それが正しいと思い込んでしまうことも少なくなかった。
そんな私の世界に変化をもたらしたのは、インターネットの発達だ。
「なるほど、これはこの馬の気性が影響していたのか」とか、「この馬の特徴は何代も前のこの馬から受け継いだものだったのか」など。
それまではイメージのみで語っていたものが、パソコンのキーボードを叩けば、多くの馬の血統表や豊富なレース映像をすぐに確認できるのだから、これほど便利で確実なものはない。
インターネットが私の知識を増幅、もしくは刷新させてくれたのだ。

もちろん、インターネットの中のみで、私の世界が完結することはない。
インターネットは私に新しく、正しい知識を与えてくれたが、自分の目で確認することが調教師時代からの本分。
実は今秋、久々にアメリカで多くの種牡馬を見学し、同時にビッグレースを観戦しようと計画している。
私を突き動かしているのは、七十歳を超えても衰えることのない競馬に対する探究心。
血統の追求は終わりのない旅のようなものだが、それは更新されていく血統を追いかけるだけではなく、その先にあるもの、次に来るものを予測することだと私は思う。
それこそが、無二の楽しみであり、私の最大の武器であるのだから。

今年のアメリカ競馬では無敗で三冠馬となったジャスティファイが登場しているが、彼だけでなく、アロゲートにガンランナー、カリフォルニアクロームなど、競馬の将来を担うかもしれない馬たちがたくさんいる。
私は誰よりも先に新しい競馬の地図を描きたいのだ。

・古きを訪ねて新しきを知る

現在は細分化し、その名を聞く機会も減ってしまったが、ジャスティファイは世界中に数多くいるノーザンダンサー系の1頭だ。
父のスキャットダディは、日本で繋養されているヨハネスブルグの産駒。
ジャスティファイに似通った血統の馬は日本にもいるだろうし、作ろうと思えば作れるかもしれない。
そのイメージも浮かびやすいだろう。
しかし、多くの競走馬の祖となったノーザンダンサーとはどのような馬だったのか?
1961年生まれの彼の現役時代を知るものは少なくなり、彼の直仔でさえも現在は種牡馬生活をしていない。
ノーザンダンサーの特徴をスラスラと答えられる競馬関係者は多くないと思う。

時代遅れの血統を追いかけることに意味はない。
しかし、ノーザンダンサーのような50年以上も前の馬が、現在も影響力を残し続けていることもまた事実だ。
血統の世界に必要なものは新しい知識と述べたが、それはベースとなる基礎的な知識があってこそ、と私は考える。
特にノーザンダンサー系とミスタープロスペクター系に関しては、現在の競馬ファンの方も知っておくべき重要な系統。
名付けるなら「温故知新シリーズ」。
競走馬のルーツを知り、その各々の特徴を改めて考えてみる時間を作ってみたい。
そこには実馬を見たり、産駒を管理したり、あらゆる馬の様々な噂を聞いた私の実体験も反映させたいとも思っている。
私にとっても初のチャレンジ。
ぜひ楽しみにしてもらいたい。

(※次回に続く)


【過去の連載馬】
[第1章]クロフネの持つイメージ(クロフネ編)
[第1章]種牡馬実績はすべてダート(ゴールドアリュール編)
[第1章]豊富なスピードが武器(ヘニーヒューズ編)

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