[第1章]現役種牡馬の最高峰に挑む(ディープインパクト編) 過去の名馬

・現役種牡馬を考察する理由

一口に「種牡馬」と言っても、現役で種付けを行っている馬と、すでに種牡馬を引退してブルードメアサイアー、ないしは3代前、4代前にいる馬とでは、我々も扱いを大きく変えなければならない。
もちろん、優秀な種牡馬はブルードメアサイアーという立場になっても、強い遺伝力を持っているものだが、代を経て、自身の名が血統表の先へと進めば、おのずと評価は変わってくるし、仔馬を評価する際の優先順位も、当然ながら下がってしまう。
なぜ?  競走馬の値段は、父親の名前で決まるところが大きいからだ。

ニジンスキー、ヌレイエフなどの偉大な種牡馬を、私は実際に見てきた。
そのような体験を持つ調教師は、そこまで多くない。
歴史的な種牡馬を検証し、私だからこその考えで、現代競馬の最深部に迫ってみたい。
そんな思いもあった。

しかし、4月も半ばに入り、多くの若駒がセールへの上場を待っている季節。
予算も決めずに競走馬を購入する人間はおらず、その際に最も重要な部分が現役種牡馬への評価だ。
この時期だからこそ、現役で活躍する種牡馬に対する私の意見を、皆様に伝えるべきではないかと考えた。

一人でも多くのファンが競馬に対する知識を深め、これまで以上の愛情で競馬に接してほしい。
それこそが、積極的にメディアで活動させてもらっている理由。
ならば、この瞬間に求められているものを、私は提供したい。

競走馬を選考する際、私が主軸にしていたのは馬体と血統。
新しい種牡馬が登場し、そのたびに私も自身の考えを更新してきた。
日本だけでなく、アメリカ、ヨーロッパにオーストラリア。
現在進行形で進む私の考えを参考にし、週末の競馬、これから行われるセールへの興味を、より深めてもらえれば幸いだ。

・ディープインパクトに対するイメージ

現在の生産界の中心にいるのはディープインパクト。
この事実は疑いようがない。
あまりにも種付け料金が高額になり、この馬の産駒を購入できる層は限られてきたが、それでも、現役の種牡馬に限定して話をするのなら、どの馬よりも先に、同馬を取り上げなければならないだろう。

とにかく、傑出した存在だ。

いくつかのメディアで口にしてきたことだが、種牡馬としてのディープインパクトに対し、私は懐疑的だった。
あまりにも小柄な馬体。それが理由。
ノーザンダンサーに代表されるように、小柄でも種牡馬として大成功した馬はいる。
しかし、種牡馬にとって大事な要素は能力だけではない。

大種牡馬になるために必要なもの。それは体力。
どれほどの能力を持ち、どれほどの強い遺伝力を持っていても、数を打つことができなければ、リーディングサイアーにはなれない。
私はその部分に不安を持っていたのだ。

競走馬としては素晴らしい。
しかし、私のような職業の人間は、競走馬の現役時代から、すでに種牡馬としての可能性をイメージする。
あまりにも華奢な馬体だったディープインパクトは、私にとって魅力的な馬ではなかった。

だが、ディープインパクトは私の予想をはるかに超える活躍を見せている。
規格外の馬というほかない。

・第2章はコチラ

【過去の連載馬】
[第1章]「ボーラーとの出会い」(メイショウボーラー編)
[第1章]「血を追い求めて」(ダンスパートナー編)
[第1章]「名物オーナーとの出会い」(フサイチパンドラ編)

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