過去の名馬から海外の競馬事情までを網羅した、読みごたえ十分のオリジナル・コラム!

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    [第6章]グリーンデザートの多様性(ダンジグ編)

    ・凱旋門賞馬を生み出す理由とは ダンジグ系の中でも重要な存在となっているグリーンデザート。 彼に対しての考察は非常に興味深いものだ。 グリーンデザートの産駒は、ダンジグのそれと同じようにスプリント戦で強さを見せる。 スピードに偏ったレースぶりは、ときに「淡白」と表現されることもあるほどだ。 では、グリーンデザートの後継種牡馬たちはどうだろうか? もちろん、彼らの根底には偉大な種牡馬ダンジグのスピードがある。 しかし、ケープクロスから出現したシーザスターズにゴールデンホーンといった凱旋門賞の勝ち馬たちはスピードタイプの種牡馬ではなく、対極のスタミナタイプとして認識されている。 これも非常に興味深いところだ。 前回、私はケープクロスのような種牡馬が出現した背景についての考えを示した。 それはグリーンデザートの母系にあるのではないか、と。 グリーンデザートの産駒はダンジグのそれと同じように、短い距離を得意とする馬が多い。 しかし、私が見たグリーンデザートはダンジグよりも胴の伸びた体型をした。 そして、このような体型になった理由として、私はグリーンデザートの母系にいるサーアイヴァー、ネヴァーベンドといった長い距離をこなす馬の名をあげた。 隔世遺伝が目に見える形として、そこに表れていたのだ。 そのような考え方をすることにより、グリーンデザート系に対する多くの疑問への答えを見つけられるのではないだろうか。 ・可能性の塊 グリーンデザートの産駒が走っていた当時、私は彼の産駒が距離をこなすと思っていなかった。 むしろ、スピードタイプのグリーンデザートに何を掛け合わせるか? スピードにスピード? それとも、配合の基本であるスピードにスタミナのほうが合うだろうか? それだけを考え、それ以外のことは意識しなかった。 おそらくは誰もがそうだっただろう。 もしかしたら、現在もそうかもしれない。 ケープクロスが出ても、彼がシーザスターズのような馬を出しても、その考えを変えない、変える必要がないと考えている。 ダンジグ産駒のグリーンデザートに対する偏見にも似た先入観を、多くの人間が持っているからだ。 しかし、改めて思う。 グリーンデザートを初めて見たときに感じた私の印象。 あれこそが正解ではなかったのか、と。 「まるっきりの短距離馬ではないな」。 そんな気がした。 あの印象を優先させても良かったのではないか、と思うこともあるのだ。 グリーンデザートの名を血統表に見れば、誰もがスピードをイメージするだろう。 実際、グリーンデザートの重要な後継種牡馬となっているインヴィンシブルスピリット。 すでに彼の後継種牡馬を世界中の生産者が探し始めている。 それはインヴィンシブルスピリットが優秀なスプリンターとしての影響力を持っているからであり、2017―18シーズンのオーストラリア・サイアーランキングで2位になっているアイアムインヴィンシブルは、典型的なダンジグ系のスプリント種牡馬として活躍もしている。 しかし、例えば、インヴィンシブルスピリットが輩出した初めてのGI勝ち馬ローマン。 彼は自身がダービーを勝ったフランスの地で、オークス馬を輩出した。 名マイラーとして名を馳せたキングマンは、インヴィンシブルスプリットのイメージよりも少し長めの距離で結果を出している。 彼の産駒は日本にも入ってきているが、それはダンジグやグリーンデザートの産駒よりもこなせる距離の幅が広いと購入者が感じているためではないだろうか。 活躍するフィールドは多岐に渡る──。 イメージと異なる多様性こそがグリーンデザートの可能性の大きさであり、発展していく一番の理由でないか、と私は考えている。 そして、そのすべてはグリーンデザートの馬体、血統で説明できることだったというわけだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]ブライアンズタイムの魅力(ブライアンズタイム編)[第1章]神に選ばれた馬(ラムタラ編)[第1章]現役種牡馬の最高峰に挑む(ディープインパクト編)

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    [第5章]グリーンデザートの魅力(ダンジグ編)

    ・ダンジグとグリーンデザートの違い 実際に見たグリーンデザートの馬体は、ダンジグに感じたそれと少し違っていた。 長距離体型とまでは言わない。 しかし、ダンジグよりも明らかに胴が伸びた体型に、私は「このような馬体の馬がスピード馬を出すのか。興味深いな」と思った。 そう感じてしまったのだ。 グリーンデザートにはスピードがある。 これは否定できない部分だ。 しかし、彼の母系に改めて目を転じてほしい。 グリーンデザートの母父はサーアイヴァーであり、その先にはネヴァーベンド。 距離を克服して不思議のない馬たちの名が、そこに並んでいることに気付くだろう。 何度も言うが、グリーンデザートの最大の武器はスピードだ。 これがあるからこそ活躍できる。 彼の代表産駒の多くはスプリント路線で名を残している。 日本で活躍した馬の名を出すなら、高松宮記念を制したシンコウフォレスト。 半弟に英ダービー馬ニューアプローチがいる同馬でさえも、活躍するフィールドはスプリント戦に限られた。 ダンジグ→グリーンデザートの影響が強く出ていたためだ。 ・ケープクロスに感じるイメージの違い しかし、グリーンデザートを父に持つ種牡馬。 例えば、シーザスターズの父となったケープクロスについて考えてみたい。 現役時代はロッキンジSという8ハロンのGI勝ちが目立つ程度。 ロッキンジSの勝ち馬にはフランケルの名もあるが、そこまで重要視される1戦でなく、叩き台のように使われることまであるレースだ。 そのくらいの実績しか残せなかったケープクロスが、種牡馬として素晴らしい名馬を送り出していくのだから、これも血統の面白さ、素晴らしさと言えるだろうか。 英ダービーに凱旋門賞を勝ったゴールデンホーン。 英オークスを筆頭にGIを7勝したウィジャボード。 どちらもクラシックディスタンスで活躍した馬であったことは、実に興味深い事実と言えるだろう。 考えてもみてほしい。 グリーンデザート×アホヌーラというケープクロスの血統構成は、簡単に言えばスピードとスピードの掛け合わせ。 前述したシンコウフォレストと同じ配合でもある。 なぜ、このような種牡馬から2400mをこなす馬が出るのか? それはグリーンデザートの母系に理由があるのではないか、と私は考えている。 繰り返し述べてきたことを今回も言いたい。 ノーザンダンサー系が発展した大きな理由は二つある。 ノーザンダンダー系の持っているスピードが、極めて高いレベルにあったこと。 自身の特徴だけを押し出すのではなく、掛け合わせる相手の特徴も上手に引き出したこと。 この二つの相乗効果により、ワンパターンな血統にならかったことが大きかった。 ニジンスキーとリファールは違う。 リファールとダンジグも違う。 これから取り上げる予定のストームキャットとサドラーズウェルズは、対極と呼べるほどに違う。 それがノーザンダンサー系の素晴らしさであり、ゆえに長い時間をかけて掘り下げているわけだ。 ダンジグ系の根本はスピードだ。 しかし、ダンジグ系とひと括りにされる彼らの特徴も、実は微妙に違っている。 そこには血統にとって非常に重要な母系の存在があるのだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]トニービンの印象(トニービン編)[第1章]ブライアンズタイムの魅力(ブライアンズタイム編)[第1章]神に選ばれた馬(ラムタラ編)

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    [第4章]ダンジグと日本競馬(ダンジグ編)

    ・日本におけるダンジグ産駒 ダンジグの血統は瞬く間に世界中へと広まった。 それは日本も同じだが、我々の国がダンジグの血を取り込もうと動き出したのは1980年代の後半。 ダンジグ産駒が日本の競馬を走っていたのは、ダンジグにとって後期の産駒になる90年代だった。 導入するまでに時間を要した理由は、前回の連載で述べたとおりである。 フランスとイギリスのGIを勝ったアグネスワールド。 彼は母父にシアトルスルーを持つダンジグ産駒で、ノーザンダンサーの2×4というインブリードを持った馬だった。 これが豊富なスピードを持っていた理由かもしれない。 1994年に最優秀3歳牝馬(現在の2歳女王)のタイトルを獲得したヤマニンパラダイス。 彼女も好景気に沸いた日本経済の恩恵を受けて登場した1頭と私は記憶している。 浅見秀一厩舎の管理馬だった彼女は母父にアリダーがいるダンジグ産駒。 キーンランドセールで80万ドルの値を付けた高額馬だった。 ちなみに私はその現場を目撃した一人。 凄い馬が日本に入ってくる。 そんなことを思ったのと同時に、現在の日本の景気は異常かもしれない。 そんな感想も持った。 前回の連載でも話をしたが、1980年代後半から90年代にかけての主役はバブル景気に沸いていた日本だった。 この異常な好景気の影響で、多くの名馬や血統馬が海を渡り、日本でスタッドインしている。 サンデーサイレンスもそうだろうし、ラムタラやダンシングブレーヴも同様。 他にも多くの素晴らしい馬が日本へとやって来た。 それだけではない。 取り逃した血を求めた日本の生産界は彼らの後継種牡馬、彼の血を持った繁殖牝馬を買い漁った。 私が求めたニジンスキーの繁殖、すなわちダンシングキイの導入もこのあたりの時期。 ニジンスキー肌だけでなく、ヌレイエフ肌にダンジグ肌と多くのノーザンダンサー系の繁殖牝馬が、海を渡って日本にやって来た。 そして、彼女たちの多くはサンデーサイレンスの配合で、多くの名馬を産み落としていくことになる。 血統を見るときは母系から…と言うが、バブル景気が来るまでの日本は、ベースとなる繁殖牝馬の質が海外のそれに比べて相当に低かった。 それを押し上げたという意味でも、バブル景気に感謝するところは大いにあると思う。 ・ダンジグの後継種牡馬たち ダンジグ産駒で最も著名な馬、重要な後継種牡馬といえば、即答で「デインヒル」となるだろう。 しかし、現在の血統地図において、デインヒルという馬は、あまりにも重要な存在となってしまった。 特にオーストラリアではそうだ。 ゆえにダンジグの系統から独立し、自身の系統を確立しているデインヒルに関しては、ダンジグの後継種牡馬とそれらについての私の見解を述べたあと、改めて後述するつもりでいる。 最初に取り上げる馬はグリーンデザート。 1983年生まれの彼もすでに死亡し、今後の発展は後継種牡馬たちに委ねられているわけだが、すでにデインヒルに匹敵するほどの隆盛を誇り、新たにグリーンデザート系として系統を作りそうな勢いがある。 ダンジグから受け継いだスピードが、グリーンデザートの活躍を後押ししているのは確かだが、現役時代の彼はジュライCという6ハロンのGIを勝っている程度の馬。 しかし、そんな彼が種牡馬となって大活躍することになった。 ノーザンダンサー系の馬はこの手のタイプが少なくなく、それが誇るようなキャリアでなくてもスタッドインさせる理由のひとつであるように思う。 グリーンデザートの特徴はスピード。 読者の方の認識もおそらくはそのようなものだろうし、私も同様な認識を持っている。 しかし、実際に私が見たグリーンデザートの印象。 これがダンジグとは少し違っていた。 それについての話から、次回はスタートしたい。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]サンデーサイレンスの本質(サンデーサイレンス編)[第1章]トニービンの印象(トニービン編)[第1章]ブライアンズタイムの魅力(ブライアンズタイム編)

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    [第3章]ダンジグ産駒導入のきっかけ(ダンジグ編)

    ・世界経済と競走馬 ダンジグが生まれたのは1977年。 いまから40年も前の話だ。 彼が種牡馬として活躍を始めた当時、日本の生産界でダンジグの仔を連れてこようと考える人間は、私の知る限りでは一人もいなかったと思う。 しかし、無知だったわけではない。 先見の明がなかったわけでもない。 むしろ、その逆。 ノーザンダンサーが隆盛の時代に、ダンジグの存在を認識していない生産者は少なかった。 ただ、ダンジグの産駒を受け入れるだけの下地が、当時の日本にはなかった。 それだけの話だ。 競馬の世界は、経済と密接に関係している。 競走馬が経済動物である限り、その関係性に変化はないだろう。 発展していく血統がどの国で生まれ、どの国に求められ、どの国へと伝わっていったのか? その流れを改めて見てほしい。 その流れこそが、世界経済の移り変わりである。 アメリカの景気が良くなれば、血統馬は大西洋を渡る。 オーストラリアの景気が良くなれば、血統馬たちは南下を始めた。 日本の競馬が一気に発展した時期は1980年代の後半。 戦後最大の好景気で、今後も体験することのない異常な状況だった時代。 いわゆる「バブル景気」が、日本の競馬産業を押し上げた最大の功労者と私は考えている。 バブル景気が与えた影響は大きい。 しかし、負の遺産だけを残した「リーマンショック」などと違い、バブル景気には現在もプラスと考えられる功績がある。 サンデーサイレンスを筆頭とする世界レベルの名馬の導入。 名馬たちの血は不況の時代を潜り抜けて、現在の日本競馬にも大きな影響を残しているではないか。 経済の変化に注目せず、競馬産業を語ることはできない。 これは人生のほとんどを競馬とともに過ごしてきた私だからこそ言える、競馬の世界の真実である。 ・生産者の考え方とは ダンジグに話を戻そう。 彼は競走馬としてのキャリアが3戦と少なかった。 そのすべてが圧勝だったらしいが、ダンジグの現役時代のパフォーマンスが世界に知れ渡ったのは、彼が種牡馬として実績を出してからの話。 ダンジグの産駒が走り出し、評判が評判を呼んで「すごい馬がいる」ということになったわけだ。 このコラムを筆頭とした私の拙文を読んでいただいている読者の方は、すでに理解されていると思うが、サラブレッドがキャリアを過多に積むことを私はプラスと考えていない。 競走馬にとって、現役時代の成績を上げることこそが最重要。 そして、私はその最前線にいた人間。 走り続けることに対しての否定はしないが、1頭のサラブレットが競走馬から繁殖馬と用途を変更したとき、遺伝力を残した状態で繁殖に上がった馬のほうが、成功する確率は高い。 これは一貫した私の考え方。 そして、それに合致する典型例のような存在がダンジグだ。 このような馬の産駒が走ることに対し、私は何の疑いも持たないし、積極的に導入したいと考えるタイプだろう。 実際、そのような考えをベースとして行動し、多くのオーナーに馬を薦めてきた。 しかし、生産者の発想はそこまで単純ではないのだ。 活躍馬を出し続ければ、産駒の値段が高くなって行くことは理解している。 だが、不確定要素の多い状況で、手を出すことはリスクを伴う。 海の向こうにいる種牡馬の産駒なら、なおさらのことだろう。 なにせ、実態がつかめないのだから。 インターネットが普及した近年とは違う時代の話。 誰もが慎重だったのだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]スペシャルウィークが名馬である理由(スペシャルウィーク編)[第1章]サンデーサイレンスの本質(サンデーサイレンス編)[第1章]トニービンの印象(トニービン編)

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    [第2章]スピード×スピード(ダンジグ編)

    ・見た目からしてスプリンター 1977年生まれのダンジグが種牡馬として活躍をした1980年代は、私が野心に溢れていた時代にぴたりと重なる。 当時、私は世界中のセリへと足を運び、その度に様々な牧場を訪れていた。 ノーザンダンサー系の種牡馬に限らず、世界中の多くの種牡馬を見ることができた。 その経験は大きな財産となり、あの頃に得た知識が、現在も私の礎になっている。 動けるときに動いておくもの、と心の底から思う次第だ。 もちろん、ダンジグも実物を見ている。 当時、私は目の前にいるダンジグを「スプリンター」と断定した。 理由は血統ではなく、彼の体型。 前回のテーマでもあった血統と馬体に関する話は、このときの体験談につながるものだ。 ダンジグの父ノーザンダンサーは馬格のある馬ではなく、ゆえに迫力もそこまでなかったと聞く。 もちろん、ノーザンダンサーに関しては資料から得た知識でしかないのだが、それが正解であるのなら、私の前にいるダンジグはノーザンダンサーの印象に近い馬だった。 ダンジグからノーザンダンサーのイメージを膨らませたほどだ。 では、ダンジグが他のノーザンダンサー系の種牡馬と異なっていた点。 そして、ノーザンダンサー自身とも違っていたと思われる点。 それは胴の長さ。 胴の詰まった体型の馬はスプリンターになりやすい。 ダンジグの系統が流行る前から誰もが持ち、現在も変わらずに通用する認識。 ゆえに私は「相当なスピードを持っているはずの馬」という感想を、目の前にいたダンジグに持った。 この体型であれば、ノーザンダンサーよりもスピード豊富な馬であって不思議はない。 そう感じたのだ。 ・スピード×スピードの意味 では、ノーザンダンサーを超えるダンジグのスピードは、どこからの影響を受けたものなのか? それを考えるためにあるのが血統だ。 スピードという簡単な言葉で表現されることの多いダンジグの血統を、改めて確認してみたい。 父がノーザンダンサー、母父にアドミラルズヴォヤージ、その先がペティション。 この血統構成に対して、私は「スピード×スピードの掛け合わせ」という認識を持っている なぜ? 血統に詳しい読者の中には、そんな疑問を持つ方もいるかもしれない。 それも当然だろう。 私もそこにひとつの疑問を持ち、その答えを考えたことがある。 前回の連載を覚えているだろうか? ノーザンダンサー系の中でも、スピードに富んだ系統と説明したリファール。 その主軸として、私はファロス、フェアウェイの全兄弟に注目した。 前回の連載で取り上げたばかりなので、今回はサラッと説明するに留めるが、簡単に言えば兄のファロスはスピード系であり、フェアウェイはスタミナ系。 つまり、ノーザンダンサーの祖であるファロス×リファールの母父コートマーシャルの祖であるフェアウェイの掛け合わせはスピード×スタミナと表現すべき。 このような疑問が浮かぶのも、当然のことではないか? ファロスとフェアウェイは、血統構成上は同列の扱いになる全兄弟。 ゆえにファロスとフェアウェイを掛け合わせれば、そこにインブリードが発生することになるわけだが、この兄弟のインブリードについて、私は「スピードに富むファロスの影響が強く働く」という結論をリファールの項で導き出した。 そして、その考え方はダンジグに関しても共通している。 先にあげたペティションもフェアトライアルの産駒。 ダンジグの中にもファロスとフェアウェイのインブリードが成立しているためだ。 しかも、リファールはファロス-フェアウェイの4×4だったのに対し、ダンジグはファロス‐フェアウェイの4×5。 ファロス優位のインブリードとなっている。 ゆえにリファールよりもスピードが増したと私は考えているわけだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]名物オーナーとの出会い(フサイチパンドラ編)[第1章]スペシャルウィークが名馬である理由(スペシャルウィーク編)[第1章]サンデーサイレンスの本質(サンデーサイレンス編)

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    [第1章]スピード優位の馬(ダンジグ編)

    ・ダンジグに対する認識 ダンジグ。 彼はスピードを武器にするノーザンダンサー系の中でも、突出したスピードを持っていた。 これは世界中のホースマンが持つ共通認識。 それは今後も変わらないだろうし、私も同様の考え方でダンジグの血統に接してきた。 改めて言う。 ダンジグはスピード。 決して距離をこなす馬ではない。 そんな認識を改めて確認したところで、これまでに聞いたことのない質問をしてみたい。 ダンジグの特徴をひと言で現すスピード。 これは、どの馬から影響を受けたものなのだろうか? ダンジグの名を聞けば、誰もがスピードに特化した血統と答える。 しかし、それは真実なのか? 単なる固定観念に過ぎないのではないか? スピードのみにフォーカスが当てられているダンジグだが、それ以外の特徴や可能性があったかもしれない。 もちろん、その逆もある。 様々な視点から検証した結果、ダンジグに対する認識に変化がなければ、それはそれでいい。 むしろ、そうであってほしいと私は願っているのだが…。 ・馬を見る二つのポイント 競走馬の特徴を把握するとき、私は二つの視点で考える。 一つは血統。 もう一つが体型だ。 血統に関する本を読み漁れば、前者に対応することは可能だろう。 私も競走馬に関する多くの本を読み、自身のセールスポイントとした。 考えてもみてほしい。 インターネットの普及した現在と違い、船便で海外の競馬雑誌を取り寄せていた時代のことを。 そんな面倒なことを好んで行う人間が何人もいるはずがない。 しかし、それこそがライバルとの差となるわけだ。 だが、私は血統の知識を得ただけでは満足せず、それと同等──あるいはそれ以上に、自分の目で馬を見ることを大切にしてきた。 どのような体型をしているのか? 例えば、胴や脚の長さはどれくらいなのか? トモの格好、蹄の形や飛節の状態はどうか? 1頭の馬を見るとき、私がチェックする項目は多岐に渡る。 ここで馬体と血統をリンクさせる。 目の前にいる競走馬の血統と馬体を見比べ、このパーツは父母のどちらの影響を受けているのか? そんなことを考えるわけだ。 例えば、アーモンドアイ。 彼女が距離をこなす理由として、フサイチパンドラの影響とする声は少なくない。 しかし、アーモンドアイとフサイチパンドラはタイプがまるで違う馬だ。 フサイチパンドラの名を出してもらえるのは嬉しいが、アーモンドアイはフサイチパンドラではなく、もっと他の馬の影響を受けているのではないだろうか? その考えに行き着くために、その答えを探すために馬体を見るのだ。 前置きが長くなってしまったが、この考え方をまずは知っておいてほしかった。 それは本項の主人公でもあるダンジグも例外ではない。 ダンジグはノーザンダンサーに近い馬。 しかし、瓜二つというわけでもないからだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]血を追い求めて(ダンスパートナー編)[第1章]名物オーナーとの出会い(フサイチパンドラ編)[第1章]スペシャルウィークが名馬である理由(スペシャルウィーク編)

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    [第8章]アメリカの馬の難しさ(リファール編)

    ・投資に見合うかどうか 今回は番外編と考えてほしい。 リファール系の連載の中で出たグッバイヘイロー。 彼女の話題から派生したもので、リファールとの関連性は特にないのだが、字面を見ただけではわからない裏話のような内容。 メディアで話す機会も、話す必要もなかったことだが、そのようなことが競馬の楽しみ方にバラエティを加えることにもなるらしい。 そのような意見を聞き、掲載させてもらうことにした。 グッバイヘイローが登場したセール会場に私がいた話はさせてもらったが、当時の私は「こんな凄い実績を残した馬が来るのか」のほかにもうひとつ。 「繁殖牝馬として期待できるのだろうか」との思いがあった。 手を出すのがリスキーな馬。 そんな見立てをしていた。 グッバイヘイロー自身の馬体に不満があったわけではない。 しかし、彼女は余力を残した状態で引退した馬ではなかった。 名声を確立したあとも現役を続け、最後は死力を尽くしたイメージで引退した。 これが気になったのだ。 私が管理した牝馬でいえば、ダンスパートナーにフサイチパンドラも似たような足跡。 タフな現役時代を過ごした。 結果的に彼女たちは重賞を勝つ産駒を輩出し、特にフサイチパンドラはアーモンドアイという希代の名馬を送り出している。 現役時代の成績だけでなく、繁殖牝馬としても成功した馬と言えるだろう。 しかし、そんな彼女たちでも代表産駒を送り出すまでに時間を要したことを思い出してほしい。 なぜか? 競走族になってしまった彼女たちが、心の平穏を取り戻し、繁殖牝馬としての自分を確立するまでに時間を必要としたためだ。 これは競走馬にはよくあることで、牝馬だけでなく、牡馬にも共通すること。 ディープインパクトの引退レースを見れば、引き際が早すぎるではないかと思うだろう。 だが、余力を残して引退したからこそ、彼は何年もリーディングのトップに君臨するスーパーサイアーとなれた。 彼の父であるサンデーサイレンスも3歳で現役生活を終えている。 陣営の本意ではなかったかもしれないが、三冠馬ジャスティファイの早期引退も種牡馬としての可能性を格段に高めたのではないだろうか。 早期の引退をする、古馬まで現役を引き伸ばしたとしても、使うレースの数をセーブする。 これは次のステージを考えたときに大事な要素となるのだ。 1990年代初頭。 私はマチカネアイーダという馬を管理した。 母はアメリカのGIを11勝もし、鉄の女と呼ばれた名牝レディーズシークレット。 しかし、私は乗り気でなかった。 オーナーサイドの強い要望を受け、サラトガまで馬を見に行き、日本に連れてくることになったのだが、やはりダメだった。 この馬は喉に問題を抱えた馬だったのだ。 レディーズシークレット自身に理由があったかどうかはさておき、彼女のような馬は高過ぎる投資に見合わない場合が多い。 このような馬は避けるべき──が私の鉄則。 実績は重要だが、それがどのような過程で得られたものなのかもチェックすべきということだ。 ・アメリカの馬は難しい グッバイヘイローに話を戻そう。 私が彼女の購入をギャンブルと感じたもうひとつの理由。 それはグッバイヘイローがアメリカ発の名馬だったからだ。 アメリカで馬を購入するとき、できることなら庭先で買いたいと私は考えてきた。 誤解を恐れずに言えば、アメリカは馬の“加工”をするのが非常に上手い。 セールに出てくる馬のほとんどは“白塗り”をして舞台に上がる舞妓さんのようなもの。 素顔を見せてないのだ。 例えば、トレーニングセールで馬を購入するとする。 そのときはトラックを走り終わった瞬間に馬を見に行かなくてはならない。 痛み止めを打たれたら終わり。 判断が付かなくなるからだ。 他にも見たい馬がいる。 それが終わってからでもいいだろう。 だが、その僅かな時間で彼らは注射を打ち、本当はガタガタになっているはずの馬が目の前をシャッシャッと歩く。 そんな馬が日本に持ち込んで検疫。 そこで一気に素性が出てしまう。 走るはずのない馬を買わされていたことに気づくわけだ。 アメリカの馬でも注射を打っている厩舎、そうでない厩舎がある。 そして、私はそれを耳にしていた。 動くべきときに動かなければ、大魚を逃すかもしれないが、競走馬は決して安くない。 何度もアメリカへ足を運び、その積み重ねで得た知識が必要。 それができないのであれば、アメリカの地での競走馬購入には手を出さないほうがいいと思う。 ヨーロッパの馬にはそれがなく、ほとんどが素のままで走っている。 安全なのはヨーロッパから馬を連れてくることだろうが、現在の競馬のメインストリームはアメリカのスピードだ。 このジレンマをどう感じるか? 調教師を引退した現在でも、私がアメリカへ視察に行く理由もここにある。 私の行動を理解したうえで、ゼニヤッタやレイチェルアレクサンドラなどの今後に注目してみてほしい。 歴史に名を残した名牝の第二ステージは、日本のそれとは違うかもしれない。 アメリカの競馬はアメリカに行っている人間にしかわからないことが多いのだ。 リファール(牡) 1969年生まれ 米国産 父Northern Dancer 母Goofed 母父Court Martial 通算成績 12戦6勝 主な産駒 ダンシングブレーヴ など ※種牡馬成績は2018年11月時点 【過去の連載馬】[第1章]ボーラーとの出会い(メイショウボーラー編)[第1章]血を追い求めて(ダンスパートナー編)[第1章]名物オーナーとの出会い(フサイチパンドラ編)

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    [第7章]リファール系の価値(リファール編)

    ・ハイクレアの血を呼び起こしたもの ウインドインハーヘアの祖母になるハイクレア。 彼女は1970年代に活躍した馬だ。 ゆえにハイクレアを実際に見た、もしくは映像で見たことのある日本人は少ないと思われる。 歴史上の馬と言っていいかもしれない。 私の知識も文献に基づくもの。 ハイクレアはエリザベス女王の持ち馬であり、英1000ギニーとフランスのオークスを勝っている馬。 競馬史に残る名牝ダリアの2着に好走したキングジョージも競馬史に残る有名なレースと聞いている。 ウインドインハーヘアの母となったバークレアだけでなく、ナシュワンの母となったハイトオブファッションを産み、日本に輸入された種牡馬ミルフォードもハイクレアの産駒だった。 優秀な馬であったとともに、優秀な繁殖牝馬であったことは理解してもらえるだろう。 しかし、ハイクレアの血統と成績は、昔の欧州競馬をイメージさせるスタミナ系。 その潜在能力は確かでも、彼女の力を再現しただけでは、現代のスピード競馬に対応することは不可能だったはずだ。 つまり、なんらかのスピードを注入しなければ、その血を繋げることは難しかった。 そして、その役目を果たした馬がアルザオ──。 それが前回までに述べてきたことだ。 ウインドインハーヘアについて、もう少し補足をさせてもらう。 彼女の母父にあたるバステッドは、クリペロにヴィミーという配合馬だった。 なるほど、キタサンブラックなどに見るしぶとさは、このバステッドの影響があったのかもしれない。 リファールの検証を進め、ウインドインハーヘアについて改めて考えたことで、私の中で一つの結論が出せたのだが、この事象については後述するつもり。 確かなことはウインドインハーヘアの母であるバークレアも、ハイクレアと同じ欧州型のスタミナ血統で、ここまでの流れだけを見れば、ディープインパクトのような馬の出現は期待できなかったということ。 その流れを覆したものこそが大事なのだ。 ウインドインハーヘアに一定の軽さを与えているのはアルザオだが、アルザオの母父はスタミナ豊富なサーアイヴァー。 ゆえにウインドインハーヘアは、自身が持つ4本の血統ラインの3本をスタミナ系の血統で占めている、いわゆる「重い血統の馬」ということになってしまう。 スピードの注入が必要と思われてしまうのも無理からぬところだ。 しかし、母系の特徴を阻害せず、一定の水準までスピード能力を引き上げてくれる。 リファール系にはそんな素晴らしい長所が存在する。 アルザオ自身は単調なスピード馬でなく、サーアイヴァーの力も借りた総合力で勝負する馬だったはずだ。 だが、豊富なスタミナと底力をセールスポイントとしたバークレアに対して、アルザオの中にあるサーアイヴァーのスタミナは足す必要がない。 アルザオのすべきことは水準のレベルまでスピード能力を引き上げながら、母系の特徴であるスタミナと底力をしっかりと残すこと。 つまり、彼はウインドインへーヘアとの配合に際し、リファールの持っているスピードだけを加算してきたのだ。 ウインドインハーヘアの系統はスピード豊富な血統を重ね合わせても単調なタイプにはならない。 その理由はハイクレアが持つスタミナだが、アルザオがいるおかげで「重い」だけの繁殖牝馬にはならなかった。 それが今日の隆盛を築く理由となったわけだ。 ・キタサンブラックの配合に見るリファール系の面白さ では、改めてキタサンブラックの話をしよう。 母父のサクラバクシンオーばかりが取り沙汰されるキタサンブラックだが、彼の配合の最大の特徴はリファールの4×4というインブリード。 明らかにスピード優先の血統構成だ。 だからこそ、距離に課題が残るとの指摘を私はしてきた。 ここで思い返してほしい。 リファール系は一定以上のスピードを確保し、その領域にまで達すれば、それ以降は決して自己主張することはない。 そして、その血統に眠るスピード以外の長所を引き出す鍵の役目を果たしてくれる。 キタサンブラックで言えば、父ブラックタイドの祖母であるバークレアの中に眠るスタミナ、底力ということになるだろう。 これが強く出ることを阻害せず、むしろ前に出るためのサポートをしてくれていたわけだ。 彼にとってのキーホースはサクラバクシンオーでもリファールでもない。 バステッド×ハイクレアという配合のバークレアであると考えれば、スピードの持続力に秀でただけでなく、決してバテることのないスタミナも示したキタサンブラックのパフォーマンスにも説明が付く。 血統を見るとき、なによりも優先すべきは母系。 1年に多くの血を残せる種牡馬と違い、繁殖牝馬は1頭しか産駒を残せず、ゆえに種牡馬よりも数の多い繁殖牝馬のほうが、歴史に名を刻み続けることが難しい。 繰り返しになるが、リファールのインブリードと聞けば、スピードをイメージするだろう。 そして、その考え方は間違いではないと思う。 しかし、リファールの入った配合は、それ以外の配合よりも多くの馬の存在を確認して見なくてはならない。 後世に残すべき存在、強調すべき血を認識し、それを選別しているかのような馬を送り出すリファールの系統。 決して目立つことはないが、彼のような存在が血統に広がりを持たせていく。 その事実に気付けたことは、この連載の大きな収穫であったと言えそうだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]デジタルとの出会い(アグネスデジタル編)[第1章]ボーラーとの出会い(メイショウボーラー編)[第1章]血を追い求めて(ダンスパートナー編)

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