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    [第3章]気性の激しい馬(ステイゴールド編)

    ・現役時代のステイゴールドを評価できなかった理由 私がステイゴールドに脅威を感じなかった1番の理由。 それは彼の馬格にある。 現役時代の最高馬体重は436キロで、410キロを割り込んだこともあった。 牡馬にしてあまりにも小さい。 スタミナを必要とされる長距離であれば、話も多少は変わってくるが、この小さな体では大舞台を勝つために必要なパワーを生み出すのは無理。 ゆえに善戦はできても勝ちきるまでには至らないと私は考えていたのだ。 実際、彼は勝ち味に遅く、ときには「シルバーコレクター」と揶揄されることもあった。 その考えに間違いはないと当時は思っていた。 加えて、彼は気性があまりに激し過ぎた。 サンデーサイレンスの血統は気性の激しい馬が多い。 父のサンデーサイレンス自身がそのような性格の馬だったこともあり、仕方がないと割り切って考えられることが多かったし、私の管理したダンスパートナーも難しいタイプだった。 しかし、物には限度というものがある。 サンデーサイレンス産駒で気性の悪い馬の双璧はステイゴールドとネオユニヴァース。 好意的な表現をすれば「野生的」となるのだろうが、矯正する側はたまったものではない。 おもむろに立ち上がり、二足歩行を繰り返していたと聞く。 騎乗者を振り落とすためにしていることなのだろうが、そのようなことをする馬は自己主張がとても強いのだ。 「オマエの自由にはならないぞ」。 しかも、ステイゴールドは体が小さく、動きが他の馬よりも速いので余計に厄介だ。 ・自己主張の強さとは 片側だけのブリンカーを着用する馬がいる。 集中力を高めるための着用がブリンカーのそもそもの役割なのだが、それが片側だけとなると意味合いは少し変わってくる。 例えば、回りの問題。 左回りと右回りで走りが大きく変わってしまう、回りによってモタれ癖に大きな差が出てしまうタイプなどに着用させるのだ。 モタれる側を見えなくすることにより、そちらに行かないように矯正する。 他馬がうんぬんではなく、あくまで自分自身のための矯正だ。 晩年のステイゴールドは片側だけのブリンカーを着用していた。 これも彼が突き抜けた成績を残せなかった理由のひとつではないだろうか。 すなわち、競走馬として成熟する年齢になっても、自己主張の強いステイゴールドの性格は変わらなかったということだ。 ちなみに引退レースとなった香港ヴァーズでも、彼はモタれる面を見せていた。 それでもGIを勝ってしまうのだから、傑出した能力の持ち主であったのだろうな、と現在では思うのだが(苦笑)。 気性は目に見えるものではないが、その性格は産駒にもしっかりと遺伝する。 ステイゴールドのようにキャラクターがはっきりとしている馬であれば、なおのことだ。 オルフェーヴルにゴールドシップ、ナカヤマフェスタ。 彼の代表産駒が総じて「激しい」と表現される性格の持ち主だったことを思えば、私が感じていた不安もあながち間違ってはなかったと思うのだが、ステイゴールドは私が思っていた以上の能力を小さい体に秘めていた。 それがわかるひとつの事象から、次回は話を始めたいと思う。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]世界最高峰の種牡馬(ガリレオ編)[第1章]デジタルとの出会い(アグネスデジタル編)[第1章]ボーラーとの出会い(メイショウボーラー編)

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    [第2章]思い出に残る1戦(ステイゴールド編)

    ・現役時代のステイゴールド ステイゴールドの産駒で当たりを引くのは簡単な作業ではない。 根本的な能力を見極めるだけでなく、それ以上に大事な部分も考慮に入れての選別。 人間でもそうだが、目には見えない部分──性格を判断することは難しいことなのだ。 彼の性格を紐解く前に、現役時代のステイゴールドについて、改めて振り返ってみたい。 前回の連載で述べたように、ステイゴールドは私が管理したアグネスデジタルとともに香港へと遠征している。 2001年12月16日。 その日は日本競馬界にとってエポックメーキングな1日と呼ぶことができるだろう。 香港ヴァーズをステイゴールド、香港マイルをエイシンプレストン、香港カップはアグネスデジタル。 行われた4つのGIのうちの3競走を日本馬が制してしまったのだから。 香港ヴァーズが初めてのGI制覇だっただけでなく、引退レースでもあったステイゴールド。 有終の美を飾ったこの1戦を彼のベストレースに推す声は多く、彼に関わる多くの人たちにとっては、それで正解なのかもしれない。 しかし、私にとってのベストレース──彼にとってはベストではないかもかもしれないが、ステイゴールドという馬の存在を強烈に意識し、思い出として残っているレースは違う。 私にとってのステイゴールドは1999年の天皇賞・秋。 私の管理するスペシャルウィークが状態面の不安を一掃し、これまでにない追い込みで勝ってくれた1戦。 このときのクビ差2着だった馬がステイゴールドだった。 ・脅威を感じたレース 失礼を承知で言わせてもらえば、私はステイゴールドをスペシャルウィークのライバルと認識したことはない。 クラシックで覇を競ったセイウンスカイにキングヘイローだけでなく、グラスワンダー、エルコンドルパサーといった信じられないほど能力を持った外国産馬が同世代にはいた。 スペシャルウィークのライバルは彼らであって、ステイゴールドはそのレベルの馬ではないという認識を、当時の私は持っていたのだ。 先に抜け出したステイゴールドにスペシャルウィークが襲いかかり、ゴール前で測ったように捕まえた──。 あの天皇賞・秋はそのような競馬だったと思っていた。 しかし、この連載を始めるにあたり、改めてレースを振り返ってみると、それは私の錯覚であったことがわかる。 ステイゴールドが抜け出そうとした瞬間、スペシャルウィークはすでに並びかけ、これを交わしに入っていた。 スペシャルウィークの切れを持ってすれば、スッと交わしさって当然。 だが、彼はステイゴールドを引き離せなかった。 結果的にはクビ差の際どい着差になった。 しぶとい。想像していたよりもはるかにしぶとい。 そして、イメージしていたよりも切れる馬であったのかもしれない。 ゆえにスペシャルウィークは、彼をなかなか振り切れなかったのだ。 当時はそこまで気にして見ることもなかったステイゴールド。 だが、彼の成績やパフォーマンス、当時に感じていた馬の印象を重ね合わせていくと、ステイゴールドの本当の姿が見えてくる。 大きな期待をしていなかったステイゴールドが種牡馬として大成功した理由についても。 次回はこの部分を深く掘り下げてみたい。 ・次章はコチラ 【過去の連載馬】ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)[第1章]世界最高峰の種牡馬(ガリレオ編)[第1章]デジタルとの出会い(アグネスデジタル編)

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    [第1章]ステイゴールドの立ち位置とは?(ステイゴールド編)

    ・サンデーサイレンスの重要な後継種牡馬 17歳の若さで早世したにもかかわらず、生産界の地図を書き換えてしまうほどの活躍を見せたサンデーサイレンスは、初年度産駒のフジキセキを筆頭に、多くの後継種牡馬を残した。 この連載でも何頭かの産駒をすでに紹介し、検証もさせてもらったが、競走馬としての成功のみならず、種牡馬としても最も成功したサンデーサイレンス産駒。 それがディープインパクトであるとの意見に異論を挟む人物は、この世界にいないだろう。私もそうだ。 ディープインパクトの存在しない日本競馬を想像することはできず、彼が種牡馬を引退したのちも大きな影響を及ぼすのは必至。 大種牡馬とはそういった存在だ。 では、種牡馬・ディープインパクトのライバルとは? その筆頭候補に上がるのはキングカメハメハだろうか。 確かに彼の実績は素晴らしい。 しかし、キングカメハメハは体内にサンデーサイレンスの血を持たない馬。 彼の成功はサンデーサイレンスの血を持つ繁殖牝馬たちの力を利用できたことが大きく、キングカメハメハ自身の能力だけで成功を掴み取った種牡馬とは言い難い。 そのような背景までも考慮すると、キングカメハメハはディープインパクトの純粋なライバルと言えないような気もする。 ディープインパクトと同じサンデーサイレンスを父に持ち、ディープインパクトと同じように大舞台へと産駒を送り込む種牡馬──。 今回の連載の主役・ステイゴールドこそが、それにふさわしい存在と言えるかもしれない。 彼はディープインパクトと同じ池江泰郎厩舎の管理馬で、現役時代には私の管理した馬たちとも対戦している。 アグネスデジタルとともにチーム・ジャパンの一員として香港にも遠征した。 馴染みの馬とも言える存在でもあるのだが、だからこそ今日の成功を私は予見することができなかった。 第2章以降の連載では、私がそう考えていた理由について詳しく述べていくつもりだ。 ・希代のホームランバッター ステイゴールドはアベレージヒッターではなく、産駒の当たり外れが大きいイメージがある。 三振か、ホームランか──どこかの外国人スラッガーのような表現になってしまうが、しかし、当たったときの破壊力は想像を絶するもので、すでに自身の競走成績をはるかに超える産駒を何頭も送り出している。 これはディープインパクトにはない部分だろう。 もちろん、2頭の競走実績が大きく違うのだから、単純な比較は意味をなさないが、それを考慮してもステイゴールドが輩出した活躍馬のラインナップはもの凄い。 三冠馬のオルフェーヴルを筆頭にゴールドシップやフェノーメノ、ドリームジャーニーにナカヤマフェスタ。 すでに種牡馬入りし、産駒デビューも果たしている彼らはステイゴールドの血をさらに発展させていく可能性が高く、その筆頭候補がオルフェーヴルであることは言うまでもない。 しかし、そのオルフェーヴルに対しても、ステイゴールドが種牡馬入りしたときと同じような不安を私は持っているのだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)[第1章]世界最高峰の種牡馬(ガリレオ編)

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    [第4章]イメージを固定しない(ガリレオ編)

    ・違う視点から見れば フランケルはダンジグ系の影響を強く持ったスピードタイプ。 前回までの連載では、そのように力説してきたし、それが現実的な評価だとも思う。 では、フランケルには誰もが予想するような距離の限界があるのだろうか? 以前はそれほど注目していなかったのだが、視野を広げる意味もあり、最近の私はドサージュ指数にも関心を持つようにしている。 この件に関しては、いずれ詳しく話す機会があるだろうが、私がここで伝えたいのは、あらゆる馬の可能性を排除しないという考え方。 サクラバクシンオーが母父にいるというだけで、キタサンブラックの距離適性を疑ってしまった反省も多少は含まれているが、以前とは比べ物にならないほどに進化した現代競馬に対し、血統へのアプローチもそれなりに変化していかなければならないということだ。 突出したスピードのコントロールが課題のような評価をしてきたフランケル。 しかし、ドサージュが算出した指数によれば、ディープインパクトやドバイワールドC勝ったアロゲートのほうが、フランケルよりも潜在スピードが優った馬であり、逆にフランケルは一介の短距離馬ではなく、長距離とのバランスが取れているのだという。 一般的な見識とずいぶん違うが、スピードの持続力に秀でたレース内容が、豊富なスタミナに裏打ちされたものだとすれば、これはフランケルという種牡馬の可能性を根底から考え直すものとなるだろう。 ・クールモアグループの力 ガリレオに話を戻そう。 ガリレオが優秀な種牡馬であることは疑いようがないが、これほどの成功を収めたのはクールモアグループのバックアップがあったからこそ。 クールモアは日本でいうところの社台グループと思ってもらえれば、そのイメージも描きやすいだろう。 いまや、社台グループの存在なしに日本の生産界が回らないように、ヨーロッパの競馬もクールモアが牛耳っている。 そして、彼らはガリレオの生産をコントロールし、いずれ来るであろうガリレオ肌の繁殖牝馬に関してもコントロールしている状況だ。 ガリレオが種付けする繁殖牝馬はどれも優秀で、仮に産駒が失敗したとしても、その血統的な価値は十分に残る。 未勝利馬でありながら、高額で取引されるガリレオ肌の牝馬は相当数になるだろう。 そのような馬からも世界を制する名馬が登場するのだから、やはり血統は奥が深いと言うべきだろうか。 クールモアの時代はまだまだ続きそうだ。 ガリレオ(牡) 1998年3月30日生まれ 愛国産 父Sadler's Wells 母Urban Sea 母父Miswaki 主な勝ち鞍 英ダービー(01年) 愛ダービー(01年) キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(01年) 通算成績 8戦6勝 主な産駒 フランケル ファウンド ハイランドリール ルーラーオブザワールド ナサニエル ウィンター オーダーオブセントジョージ ユリシーズ チャーチル マインディング ほか多数 ※種牡馬成績は2017年10月時点 【過去の連載馬】[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)

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    [第3章]フランケルの可能性を探る(ガリレオ編)

    ・ガリレオの凄さとは フランケルがガリレオの代表産駒になるのは仕方がないだろう。 GIを10勝し、無敗のまま引退した成績は、優秀な馬が多いガリレオ産駒の中でも傑出している。 彼の代表産駒を挙げろと言われれば、私もフランケルの名を出すと思う。 しかし、フランケルはイレギュラーな存在で、一般的なガリレオ産駒のイメージにそぐわない馬であるのも確かだ。 フランケルはガリレオではなく、母父であるデインヒル、もっと突っ込んで言えば、デインヒルの父であるダンジグの影響が強く出ている馬。 迫力満点の馬体、スピードで押していくパフォーマンスもそうだ。 もちろん、これは現代競馬に必要な要素で、フランケルが大活躍できた最大の理由ではあるのだが、ゆえに彼の存在を持って、ガリレオの特徴を語るのは難しいと言うべきか…。 フランケルという馬を見て私が思うのは、ガリレオが自身の長所を伝達するだけでなく、それ以上に配合された繁殖牝馬が持っている特徴を存分に引き出してくる種牡馬だということ。 ほとんどの大種牡馬が持っていた能力を、ガリレオも持っているという事実だ。 ガリレオという馬についてのみ語るのならば、その適性は2000m以上の距離にあると考えるのが一般的だろう。 彼の産駒でマイルをこなす馬は少なくないが、それはガリレオが母系の長所をしっかりと引き出したがゆえであって、ガリレオ自身がマイルへの適性を持っているわけではない。 だが、この部分こそが重要。 自身のコピーばかりを生み出すのではなく、配合する相手によって産駒のキャラクターを変えられるからこそ、ガリレオは大種牡馬になりえた。 その特徴をフランケルも持っているのかどうか? この部分に対し、私は小さくない疑問を感じている。 ・フランケルは後継種牡馬になりえるのか 前述したようにフランケルは父のガリレオではなく、母系の影響が色濃い馬。 レインボークエストにデインヒルの掛け合わせなら、中距離程度までの距離に可能性があっていい。 実際に同馬の初年度産駒であるソウルスターリングも2400mのオークスを制している。 ソウルスターリングの母はヴェルメイユ賞を勝ったスタセリタなのだから、母系のサポートさえあれば、距離に対しての対応を見せるのはガリレオと同じと考える人もいるかもしれない。 しかし、ソウルスターリングのパフォーマンスを見て、フランケルの影響を考えないのは難しい。 2400mの距離を克服はしたが、あくまで同世代の牝馬限定戦。 能力で凌駕してしまった可能性のほうが高いと私は考えている。 彼女の走りは母のスタセリタよりもフランケルに近い。 あの1戦でフランケルに対しての距離不安が吹き飛んだわけではなく、仮にフランケルがマイルまでの種牡馬で、自身の色のみを伝えるタイプだとすれば──。 彼が父のガリレオを超えることは難しいだろう。 だが、フランケルの可能性を感じさせる説が実はある。 それも含めて、次回ではガリレオという種牡馬についての総括をしたいと考えている。 ・次章はコチラ 【過去の連載馬】[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)

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    [第2章]優秀な血統背景(ガリレオ編)

    ・母は名牝アーバンシー ガリレオは英・愛ダービーの2カ国ダービー制覇を成し遂げ、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSではファンタスティックライトを退けて優勝した。 競走馬としても非常に優秀な馬だ。 しかし、現在では彼の優秀な競走成績について触れられることも少なくなり、彼の偉大さはガリレオが輩出してきた多くの名馬によって、語られることのほうが多くなった。 その代表産駒がフランケル。 デビューから14戦無敗。 GIを10勝した同馬については、のちに触れさせてもらうが、最初に私が伝えておきたいのは、その血がフランケルの体内にも流れている名牝アーバンシーについて。 彼女こそがガリレオの活躍を説明する馬と私は考えているからだ。 実際の彼女をドバイで見たことがある。 すでに凱旋門賞を勝ったあとで、リフレッシュもかねてドバイで調教されていた。 素晴らしい馬体をしている栗毛馬。 現在も当時の記憶は鮮明で、凱旋門賞を勝つ牝馬とはこのような馬かと思ったものだ。 アーバンシーの父はミスタープロスペクター系のミスワキ。 同馬は種牡馬として大成功しただけでなく、ブルードメアサイアーとしても存在感を示した。 快速馬として知られたサイレンススズカの母父もミスワキだったと知れば、親近感を持ってもらえるだろうか。 余談だが、サイレンススズカが種牡馬として活躍することができていれば、現在のディープインパクトと同等以上の実績を残していたのではないかと思うことがある。 それほどまでに傑出した馬だったわけだが、栗毛だった彼はサンデーサイレンスではなく、同じ栗毛のミスワキの影響を強く受けていた。 このことからもミスワキの素晴らしさを理解してもらえると思う。 ・サドラーズウェルズのベストパートナー アーバンシーの母であるアレグレッタは、アーバンシーだけでなく、キングマンボとの配合で2000ギニーを勝ったキングズベストという名馬も出した。 アーバンシーだけが特別な存在だったのではなく、アレグレッタに繋がる血統そのものが優秀だったと考えるのが自然だろう。 この母系の素晴らしさは、違う種牡馬を配合してもアベレージが落ちないところで、それは娘のアーバンシーにも遺伝している。 アーバンシーはシーザスターズという凱旋門賞馬を輩出しているが、この馬はダンジグ系のグリーンデザートを父に持つケープクロスとの配合。 彼は凱旋門賞だけでなく、2000ギニー、ダービー、エクリプスS、インターナショナルS、愛チャンピオンSなどの主要なGIを軒並み勝ちまくる活躍を見せた。 ゴールデンホーンやウィジャボードなど、多くのGI馬を送り出しているケープクロスだが、その代表産駒は同馬と言っていいだろう。 現在では信じられないことだが、短距離血統というケープクロスのイメージを覆した最大の功労者はアーバンシー。 この事実だけでも競馬史に残る繁殖牝馬だということが、わかってもらえるだろう。 多くのGI馬を送ったサドラーズウェルズは、多彩でハイレベルな繁殖牝馬と配合されてきた。 だが、私は思う。 アーバンシーこそがサドラーズウェルズのベストの配合相手ではなかったかと。 アーバンシーの素晴らしさをしっかりと認識したうえで、次回はガリレオ自身の凄さを考えていきたい。 フランケルに関しての私見も、ここで話したいと思う。 ・次章はコチラ 【過去の連載馬】[第1章]晩成タイプの馬(ハーツクライ編)[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)

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    [第1章]世界最高峰の種牡馬(ガリレオ編)

    ・ガリレオという存在 今回は世界最高峰の種牡馬として認知されているガリレオを取り上げてみたい。 日本というフィールドだけで見れば、成功しているとは言い難いサドラーズウェルズの直子。 ガリレオ産駒に興味を持つ必要は特にないと思う。 ディープインパクトやキングカメハメハの産駒のほうが、より現実的な選択肢と言えるだろう。 しかも、ヨーロッパを席巻するガリレオ産駒を手に入れることは難しく、現在では市場に出回る馬の数も多くはない。 仮にセールに上場されていても、ガリレオの産駒は総じて高値で取引されるため、日本人が日本の競馬で走らせるために、同馬の産駒を購買することにはリスクが伴う。 商業的な側面からも、積極的に狙う理由はほぼ皆無な種牡馬だ。 だが、それでもガリレオという種牡馬を無視することはありえないことと私は思う。 世界最高峰の種牡馬であるガリレオには、彼に見合った優秀な繁殖牝馬しか配合されておらず、一口にガリレオ産駒といっても、そのタイプは多岐に渡る。 思い出して欲しい。 サンデーサイレンスが日本の競馬地図を塗り替えていった時代を。 ディープインパクトとダイワメジャー、ハーツクライを同列で考える人がいるだろうか? 同じサンデー系であっても、彼らには様々な特徴があり、得意とする条件も狙うべきカテゴリーも違う。 そして、彼らを区別するのは自身が見せたパフォーマンスだけでなく、配合された繁殖牝馬の能力と血統背景に拠るところが大きいのだ。 ゆえにガリレオが送り出す個々の産駒の活躍を見定め、繁栄し続けているガリレオの系統の特徴を誰よりも早く認識する──。 これは我々だけでなく、競馬ファンの方々にも通じる考えではないだろうか。 ・ワールドワイドな視点で 昨秋から海外競馬の馬券が発売されるようになり、これまでは知るチャンスの少なかったガリレオ産駒のトップホースを、グリーンチャンネルのような日本の放送局でも取り上げるようになった。 それは競馬史に残る瞬間に立ち会っているのと同じことで、実際に昨秋の凱旋門賞ではガリレオ産駒がワンツースリーを決めている。 私たちはそのレースを簡単に目撃できる機会を得たのだ。 近くない将来──。 ガリレオ系の種牡馬とガリレオ肌の繁殖牝馬を世界中で見ることになる。 サンデーサイレンス系とガリレオ系の掛け合わせを見ることもあるだろう。 もし、この掛け合わせがニックスとして認知されれば、世界中で産駒の取り合いになるかもしれない。 それくらいの可能性を持つ系統と多くの競馬関係者が考えている。 ゆえにクールモアも手放さないのだろう。 私は一人でも多くの方に世界の競馬に興味を持ってもらい、その奥深さを感じてもらいたい。 その入り口として、ガリレオは最もふさわしい存在と考える。 なぜなら、ガリレオは突然変異で生まれた馬ではなく、その体内に優秀な血統を持っている馬だからだ。 ・次章はコチラ 【過去の連載馬】[第1章]晩成タイプの馬(ハーツクライ編)[第1章]イメージと違う馬(マンハッタンカフェ編)[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)

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    ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)

    ・イメージとのギャップ 正直に告白すると、私はドイツの馬や血統について、そこまで詳しくない。 しかし、世界の一線級で活躍した馬に関しては、その名やレースぶりくらいは覚えている。 ノヴェリスト。 国際GIを4勝している彼だが、その名を世界中に轟かせたのは2013年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSだろう。 勝ち時計の2分24秒60は、2010年にハービンジャーがマークした2分26秒78を大幅に更新したレコードタイム。 この勝利が日本で種牡馬入りする理由となったのは誰もが知るところで、確かにその内容は素晴らしかった。 だが、一方で多くの方はこうも考えたのではないだろうか。 アスコットの2400mでマークしたレコードに、それほどの価値はない。 スタミナに優るヨーロッパの中長距離馬が、日本の速い芝に対応できるとも思えない。 そこに大きな不安があると。 血統を見てもそうだ。 ドイツのリーディングサイアーだった父のモンズーンは、ヨーロッパでも長距離馬として認知されている馬。 今年のオークスを勝ったソウルスターリングが距離を克服できた理由の一つに、母父のモンズーンという存在があったことは、私が念押しするまでもない。 しかも、ノヴェリストの母系にはイルドブルボンまで入っている。 彼もキングジョージ6世&クイーンエリザベスSとコロネーションCに勝った長距離馬で、その産駒も長いところに実績があった。 アスコットのレコード勝ちはあっても、日本の芝ではスピードが不足する。 そう考えられても無理からぬところだ。 私も実際にノヴェリストを見るまでは、長距離専用のステイヤータイプと思っていた。 しかし、彼を見た瞬間にそのイメージが間違っていたことに気付く。 素晴らしい馬。これが最初の印象。 マッチョではなく、流線形のスラッとした馬体が、いかにも日本向きに見えた。 なによりもバランスが素晴らしかった。 これほどまでにしなやかな馬なら、相応のスピードも切れも持っているに違いない。 そのように思えたのだ。 飽和状態になっているサンデーサイレンス系に対し、そのニックスを築ける種牡馬の発掘が、現状の最優先課題になっている。 すでに導入されていたハービンジャーが、その代表的な存在だろう。 そして、あくまで私の私見にはなるのだが、このノヴェリストはハービンジャーよりも一枚上のランクの種牡馬ではないかと思う。 サンデーサイレンスとニックスの関係にある馬、もしくはニックスの関係を築こうとしている馬。 キングカメハメハもハービンジャーもそうだが、彼らはサンデーサイレンスのシャープさを求めている。 しかし、ノヴェリストは違うタイプなのではないか。 サンデーサイレンスにも似たしなやかさを、ノヴェリスト自身が持っている。 これは前記した馬たちと大きく違うところで、彼の背景にある血統のイメージとも違う。 サンデーサイレンス系の相手をしてきた馬に、このようなタイプの種牡馬はいなかった。 ゆえに私は彼が産駒をデビューさせる前から、短い距離でも走れると予言した。 しなやかな彼の馬体を見れば、ダートで活躍する産駒を出す可能性は低い。 芝でこその種牡馬となりそうで、リーディングを争うところまではいかないかもしれない。 しかし、サンデーサイレンス系とのマッチングに優れ、ニックスを持つこれまでの馬よりも決め手に優れるノヴェリストなら──。 GIをいくつも勝つような大物を輩出する可能性も十分にある。 産駒が大活躍をする前こそが、大物を釣り上げるチャンスかもしれない。 ノヴェリスト(牡) 2009年3月10日生まれ 愛国産 父Monsun 母Night Lagoon 母父Lagunas 主な勝ち鞍 キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(13年) バーデン大賞(13年) サンクルー大賞(13年) ジョッキークラブ大賞(13年) 通算成績 11戦9勝 主な産駒 2017年産駒デビュー ※種牡馬成績は2017年8月時点 【過去の連載馬】[第1章]キングカメハメハの本質を探る(キングカメハメハ編)[第1章]晩成タイプの馬(ハーツクライ編)[第1章]イメージと違う馬(マンハッタンカフェ編)

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