過去の名馬から海外の競馬事情までを網羅した、読みごたえ十分のオリジナル・コラム!

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    [第7章]デインヒル系との掛け合わせで(デインヒル編)

    ・ロックオブジブラルタルの特徴 ザ・ロックの愛称で有名なロックオブジブラルタルは、多くの活躍馬を輩出したデインヒル産駒の中で最も有名で、最も活躍した馬だろう。 GI7連勝という偉業を達成した彼の最大の特徴は、ダンジグからデインヒルが受け継いでいた豊富なスピード。 ノーザンダンサーの3×3というインブリードが、スピードの持続力に優れる馬を生み出したのだろう。 その一方で、瞬発力が少し足りない馬という印象を私は持っている。 ロックオブジブラルタルほどのスピードがあれば、それだけを武器に勝ち切ることができるかもしれないが、その域に達していない彼の産駒たちは、一転して勝ち味に遅い馬となってしまう。 そのようなタイプの馬が大舞台を勝つまではどうだろうか? 父のデインヒルがそうであったように、ロックオブジブラルタルも日本にシャトル種牡馬として供用された時期がある。 あれだけの実績を残している馬だ。 当然ながら、彼に対しての期待は大きいものだったが、生まれてきた産駒は総じて前さばきが硬かった。 ロックオブジブラルタルの特徴が全面に出てしまう馬では厳しいだろうな、という認識を私は持ったのだ。 サンデーサイレンス系の血は偉大だ。 ゆえにサンデーサイレンス系の血を中心とした配合を普通は組み立てる しかし、逆転の発想をしてみてもいいのではないか、と最近は考えるようになった。 例えば、先ほども述べたロックオブジブラルタル産駒のネガティブ要素。 それを消す存在として、サンデーサイレンス系のしなやかさを加えるという発想だ。 マイルGIを2勝したミッキーアイルは、ディープインパクト産駒にしては珍しい“タメる”ことのできないスピードタイプ。 しかし、彼にはディープインパクトのしなやかさがしっかりと伝わっていた。 ディープインパクト産駒であったからこそ、彼はGIの舞台で活躍することができたと私は考えているのだ。 ・サンデーサイレンス系とのマッチング 現在、日本と世界の生産者の関係性は近い。 サクソンウォリアーの母メイビーはその実績もさることながら、父がガリレオで母父デインヒルという血統背景も話題になった。 この血統構成を持つ彼女と配合し、血のランクを上げられる種牡馬は欧州にいない。 そこで白羽の矢が立ったのが、サンデーサイレンスの最高傑作であるディープインパクトだったからだ。 世界最高峰の生産者であるクールモアスタッドが、それを白日のもとに晒したという事実が見逃せないのだ。 私はメイビー自身を見たことがない。 しかし、仮に彼女が硬さの残る馬であり、ディープインパクトとの配合が、そのマイナス面を取り除こうという視点に立ったものであるのならば──。 それはサンデーサイレンス系の可能性を示唆するものであり、逆にサンデーサイレンス系の血が蔓延している我が国においては、どのような馬を繁殖牝馬として連れてくるかの指針にもなる。 デインヒル系の繁殖牝馬を持つ国ではサンデーサイレンス系の血が、これまで以上に求められるだろうし、デインヒルの入った母系はサンデーサイレンス系の配合相手として、日本で大ブレークする可能性があるということだ。 デインヒル系の勉強を進めることは、日本競馬だけで考えても十分に成果を上げられるものでないかと私は思う。 デインヒルには可能性のある後継種牡馬が多い。 これまでに名前を挙げてこなかった馬で、私が気に入っているのはエクシードアンドエクセル。 ノーザンダンサーのかなりきついインブリードを持つ同馬は、豊富なスピードを伝える種牡馬として重宝され、エクセレブレーションという後継種牡馬も出した。 ちなみに香港スプリントを連覇したミスタースタニングもエクシードアンドエクセルの産駒。 エクシードアンドエクセルのスピードにディープインパクトのしなやかさを加えてみたら、どのような産駒が生まれるのか? 純粋に興味が湧くのだ。 ダンジグ(牡) 1986年生まれ 米国産 父Danzig 母Razyana 母父His Majesty 通算成績 9戦4勝 主な産駒 ロックオブジブラルタル デインヒルダンサー ダンシリ リダウツチョイス ファストネットロック ホーリーローマンエンペラー など ※種牡馬成績は2019年4月時点 【過去の連載馬】ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)[第1章]世界最高峰の種牡馬(ガリレオ編)[第1章]ステイゴールドの立ち位置とは?(ステイゴールド編)

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    [第6章]距離をこなすデインヒル系の馬たち(デインヒル編)

    ・距離をこなすデインヒル系の馬たち 昨年の有馬記念を勝ったブラストワンピースを筆頭に、ディアドラやモズカッチャンなどのGI馬も輩出したハービンジャー。 彼もデインヒルの血を受け継ぐ種牡馬だが、その特徴はダンジグ系のスプリント力ではなく、中距離以上の距離に必要なスタミナを有している印象すらある。 ハービンジャーの母系はベーリングにシャリーフダンサー。 確かに長距離志向に強い馬の名が並んでいるが、母系の影響だけでハービンジャー産駒の適性が決まっているわけではない。 ハービンジャーの父であるダンシリ。 デインヒルの後継種牡馬でありながら、中距離以上の距離に強い適性を示すこの馬こそが、ハービンジャーの活躍を後押ししていると私は考えている。 イルドブルボン、ハイライン、ロベルトといったスタミナ色の強い馬を母系に並べているダンシリには、デインヒルの産駒らしくないスタミナ系の種牡馬というイメージを持っている方は多いだろう。 私も似たような認識を持っているが、それはチーフズクラウンに対しての認識に近いものだ。 アグネスデジタルの購入に際し、チーフズクラウンの存在が大きかったことは、すでに過去の連載で述べた。 しかし、チーフズクラウンが単なるスタミナ系の種牡馬であれば、私は注目しなかった。 彼はダンジグの系統に属する馬。 ベースとなるスピードが他の系統と違うという認識を持てなければ、私はアグネスデジタルを見初めることはなかっただろう。 ダンシリも同様だ。 彼の母系はスタミナで埋め尽くされ、その産駒もスタミナ豊富な馬が多い。 しかし、それらの馬は決してスピード負けすることなく、むしろ究極のスピードを問われるレコード決着などで、結果を残してきた馬もいた。 それはダンシリがスピード豊富なデインヒルの産駒であるからだ。 ・ダンシリの血統から感じるものとは ダンシリにはステークスウィナーとなった弟妹が多数いる。 ビヴァリーDSを勝ったヒートヘイズはグリーンデザート産駒だが、ジャックルマロワ賞を勝ったバンクスヒル、BCフィリー&メアターフを勝ったインターコンティネンタル、マンノウォーSを勝ったカシーク、カナディアン国際Sを勝ったシャンゼリゼはいずれもデインヒルの産駒。 相性抜群の配合であったことは間違いないだろう。 しかし、トップレベルの活躍をするためにはスピードの絶対値が必要。 スタミナ系の種牡馬という認識をされているにもかかわらず、トップレベルのスピードを持つ稀有な血統がダンシリの血統なのだ。 前述したハービンジャーだけでなく、ダンシリは数多くの活躍馬を送り出している。 ディープインパクトが走った2006年の凱旋門賞を勝ったレイルリンクもダンシリの産駒。 世界を股にかけて活躍し、香港ヴァーズなどを勝ったフリントシャー、プリンスオブウェールズSなどGIを4勝したザフューグもそうだ。 彼らの多くは母系にスタミナ系の血を持っており、ダンシリとの掛け合わせはスタミナ×スタミナとなってしまうはず。 しかし、彼らはトップクラスで勝負できるスピードを持っている。 それはダンシリの父であるデインヒルから受け継いでいるもの。 目に見えない隔世遺伝の影響が、ダンシリ産駒の中に存在しているのだろう。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)[第1章]ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)[第1章]世界最高峰の種牡馬(ガリレオ編)

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    [第5章]取り逃がした名馬(デインヒル編)

    ・あの名馬にまつわるエピソード デインヒルの後継種牡馬として活躍しているホーリーローマンエンパイア。 彼の名を聞くと、私は「惜しいことをしたなあ」と思ってしまう。 血統に詳しい方、私の管理馬に詳しい方であれば、この私の言い回しでピンときたのではないだろうか? ホーリーローマンエンパイアの母はセクレタリアト産駒のルオンバイト。 彼女は私が管理し、京都4歳特別を勝ったビッグバイキングの母だ。 つまり、ホーリーローマンエンパイアはビッグバイキングの半弟という血統の馬。 馬体や血統に見どころがあったからこそ、私はその馬たちを手に入れてきたわけで、当然ながら、彼らの兄弟の動向にも目を配っている。 すでに時間が経った現在だからこそ話せるが、私は若駒のホーリーローマンエンパイアを見るために、欧州へと足を運んでいた。 ホーリーローマンエンパイアを手に入れるチャンスが、私にもあったのだ。 いい馬ではあった。 しかし、いい馬であるがゆえに値段の折り合いが付かなかった。 それがホーリーローマンエンパイアを諦める最も大きな理由になったのだが、一方でビッグバイキングを購入した決め手が彼の父であるシアトリカルだったという事実。 これが二の足を踏ませたことも否定はできない。 ヒシアマゾンにタイキブリザードなど、日本の芝にも適性を見せたシアトリカルに私は好印象を抱いていた。 「これくらいの活躍はしてくれるだろう」 ビッグバイキングは計算の立つ馬だったわけだ。 一方のホーリーローマンエンパイアは細手だったビッグバイキングと違い、スピード豊富な馬体。 デインヒルは悪くないけど、日本の競馬で距離をこなしてくれるだろうか? そんな不安を持っていたがために、ホーリーローマンエンパイアの購入を決断できなかった。 我々は競走馬として馬を見る。 ホーリーローマンエンパイアのときの同様で、このビジネスは成立するのだろうか?と考えてしまう。 しかし、欧州はそうでないのだろう。 ・上を取って下を取らない ホーリーローマンエンパイアはエイダン・オブライエン厩舎の所属馬として走り、キャリアはわずかに7戦。 2歳のうちに引退しているが、これはデインヒルの後継種牡馬として期待されたジョージワシントンの生殖能力に問題があったため、と後に聞いた。 いわゆる代役だ。 デインヒルの死亡を受け、ジョージワシントンを引退させたにもかかわらず、その馬が使い物にならなかった。 その期待に応えたのだから、ホーリーローマンエンパイアの持っていた資質は、相当なものがあったのだろう。 ちなみに私のような仕事をしてきた人間にとって、「上を買ったのに、その下を買わない」というのは大変な失策だ。 ダービー馬ウイニングチケットを取り逃したことは、私にとって苦い思い出となっているが、ワールドワイドな失敗という意味では、このホーリーローマンエンパイアのほうが大きいかもしれない。 世界中を飛び回りながら、大魚を逃してしまった後悔は、いつまでも心に残ってしまうものなのだ(苦笑)。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)[第1章]ノヴェリストの可能性を探る(ノヴェリスト編)

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    [第4章]多様な後継種牡馬たち(デインヒル編)

    ・最初に成功した後継種牡馬 最初に成功したデインヒルの後継種牡馬と問われれば、おそらくはデインヒルダンサーではないか、と私は答える。 しかし、デインヒルダンサーに対する現役時代の知識は乏しい。 デインヒルダンサーはアイルランドの2歳GIを2勝しているが、当時の記憶はほとんどない、と答えるしかないのだ。 種牡馬となり、その結果によって自身の存在を世間に知らしめた馬。 それがデインヒルダンサーに対する私の認識。 しかし、これはデインヒルダンサーに限った話ではなく、父のデインヒルも似たようなものだろう。 現役時代はそれほどでなくても、それ以降のことを考える。 種牡馬ビジネスが確立している背景があるからこそ、彼のような馬も登場してくる。 それが血統の面白い部分でもあるわけだ。 デインヒルダンサーの母系にはスピード豊富なカロの名がある。 ダンジグの血を引く父のデインヒルだけでなく、この母系の影響も大きかったのではないか、と私は考えている。 デインヒルダンサーの産駒は牝馬に活躍馬が多く、コロネーションSを勝ったリリーラントリーは、自身がGI2勝馬だっただけでなく、母としてGIを7勝もするマインディングという名牝を産み落とした。 ガリレオ産駒でありながら、マイルから2400mまでをこなしたマインディングの成績を見れば、そこにデインヒルダンサーの影響があると考えるのは当然のことだろう。 昨年のジャックルマロワ賞で強い勝ち方を見せたアルファセントーリは、デインヒルダンサーの後継種牡馬として知られるマスタークラフツマンの産駒だ。 ロイヤルアスコット開催の主要レースでもセントジェームズパレスSなど、GIを4勝しているマスタークラフツマンは、母父にブラックタイアフェアーを持ち、その先にリファール、リボーの名が並ぶ血統の馬。 基本的にはアルファセントーリのようなスピードタイプを出してくる種牡馬だろうが、仏ダービーを勝ったザグレイギャッツビーは中距離以上を主戦場とした馬。 キングストンヒルという馬はセントレジャーを勝ち、凱旋門賞でも4着という結果を残している。 デインヒル、デインヒルダンサーの産駒と比較したとき、マスタークラフツマンの産駒のほうが、こなせる距離の幅が広いのかもしれない。 ・様々な後継種牡馬が出る理由とは ダンジグよりも胴長だったグリーンデザートの後継種牡馬には、ケープクロスのような距離をこなす産駒を出すタイプもいた。 同じダンジグの系統であるデインヒルも同様だ。 デインヒルから派生している後継種牡馬たちも多様な発展をし、異なった特徴を見せ始めていると考えていいだろう。 実際、デインヒルの後継種牡馬は実に多彩で、各々の馬体から受ける印象も違う。 これまでに何度も足を運び、私自身が撮った写真もあるリダウツチョイス。 筋肉質な彼の馬体は見るからにスプリンターだ。 彼の産駒も基本的にはマッチョであり、そのほとんどが距離を克服できない。 しかし、同じデインヒルの後継種牡馬でもデインヒルダンサーはそうではないし、愛ダービーを勝ったデザートキングもそうではないだろう。 ハービンジャーの父であるダンシリはマイル近辺の距離で走っていた馬だが、その産駒は芝の中・長距離に適性を見せている。 そのような状況が起こっている理由は、デインヒルがシャトル種牡馬であったことに関係していると私は考えている。 当然ながら、競走馬の配合とは種牡馬だけの特徴だけを考えるのではなく、むしろ繁殖相手とのマッチングによって、様々な可能性が広げるもの。 結果の出やすいスプリンターを求めるオーストラリアと、距離の幅が欲しい欧州とでは求めているものが違い、それは掛け合わせる繁殖牝馬のキャラクターの違いとして出ていたのだろう。 土地柄と表現すれば、わかりやすいだろうか。 様々な場所で、様々な可能性を試してきたからこそ生まれたデインヒル系の多様性。 これもクールモアスタッドの組織力が生んだ結果ということだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)[第1章]成功の予感(ロードカナロア編)

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    [第3章]日本におけるデインヒル(デインヒル編)

    ・ノースヒルズとデインヒル 日本で走ったデインヒルの産駒が、成功と言い切れるほどの結果を残したかどうか? それに対する私の答えは「ノー」。 しかし、それはデインヒルが残してきた実績を踏まえて考えたものであり、この日本でもGI勝ち馬、レコード保持者などを輩出している。 活躍していないわけではないのだ。 「失敗」「期待外れ」のイメージは、デインヒルが偉大過ぎるがゆえの表現でしかない。 これを理解したうえで、日本におけるデインヒルの立ち位置を今回は考えてみる。 ちなみに私はデインヒルと聞くと、ノースヒルズの前田幸司オーナーを真っ先に思い出す。 常に世界へと目を向け、優秀な血統に対して貪欲な姿勢を見せる前田オーナーが、日の出の勢いだったデインヒルに注目するのは当然の流れだったろう。 実際、ノースヒルズ関連のデインヒル産駒は印象深い結果を残していると私は思う。 外国産馬として走ったゼネラリスト。 彼の重賞勝ちは金鯱賞とシンザン記念のみだが、レコードタイムで勝利したこともある。 デインヒルの特徴がスピードであったことを示した馬だった。 550キロ前後の大型馬だったブレイクタイムは、いかにもデインヒル産駒といった馬体をした馬で、そのレース内容もスピード一辺倒。 デインヒル産駒の在り方を、わかりやすく見せた馬と言っていいだろう。 ダービーで3着に好走したアタラクシアは、母父が凱旋門賞馬のダンシングブレーヴ。 長い距離に対する適性を示した、珍しいタイプのデインヒル産駒だった。 同馬を管理したのは池江泰郎さん。 ディープインパクトの管理調教師として有名になってしまった池江さんだが、実際は馬体のしっかりした馬を好む方で、デインヒル産駒のマッチョな馬体は池江さんの好みに合致していたように思ったものだ。 成績を調べれば、各々の調教師の得意分野が明確になると思うが、それは馬体の好みが大半を占めていると私は考えている。 意外に馬券検討にも役立つのではないだろうか。 ・最も成功したデインヒル産駒 日本で走ったデインヒルの産駒で最も成功した馬と聞かれれば、その答えは決まっている。 伊藤雄二さんが管理したファインモーション。 GI2勝を含む重賞5勝をマークした彼女は、半兄に名馬ピルサドスキーがいる本物の才媛だった。 親しくさせてもらった伊藤先生の管理馬でもあり、私も当時のことをよく覚えている。 デインヒルの産駒でも2000m以上の距離を目指して作られたような血統だな。 最初はそんな印象を持ったが、ファインモーションはデインヒルの特徴であるスピードを隠し切れないレースを繰り返した。 他の馬とは身体能力が違っていたのだ。 あの馬の血が後世に残せていたのなら、日本を代表する牝系がひとつ増えていただろう。 ファインモーションが競走馬としてよりも繁殖牝馬としての可能性を買われ、日本に輸入されたことは有名な話。 彼女の現役時代から私も知っていることだ。 しかし、人間の思ったように物事が運ばないのがサラブレッドの世界。 染色体に異常があったファインモーションは受胎のできない体質により、産駒を残すことなく繁殖牝馬を引退した。 彼女の優秀な血を後世に残せなかったことは、日本競馬の発展を願っている一人の競馬人として、非常に残念なことであったと思う。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]イメージと違う馬(マンハッタンカフェ編)[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)[第1章]ダイワメジャーは大成功しているのか(ダイワメジャー編)

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    [第2章]クールモアスタッドの戦略(デインヒル編)

    ・常に外を見る姿勢 目立つほどの成績を上げなかった馬であっても、クールモアスタッドは可能性を捨てることはしない。 その血統背景を鑑み、何らかの可能性を感じるようであれば、その血を簡単に手放すような行為をしない。 しかし、走るかどうかわからない未知の存在に対し、そのリスクのすべてを自分たちで背負うこともしない。 関西人的な表現をするなら、クールモアは「商売上手」なのだ。 そのためにどうすることが正解なのか? 彼らは自分たちの種牡馬を自分たちだけで大事にするのではなく、他の牧場にアピールすることを忘れない。 もちろん、目の届くところに置くべき馬と、そうでない馬の選別はしているだろう。 しかし、基本的な姿勢は一緒。 その背景には、彼らのこんな考え方が透けて見える。 世界中のあらゆる場所で競馬は行われている。 それぞれが様々な特徴を持っており、ゆえに求められる要素も変わってくる。 この考え方こそが、彼らのビジネスの基本姿勢ではないだろうか? どの場所から枝葉が伸びてくるかわからない。 だからこそ、発展性を求めてクールモアは外へと出て行くのだ。 その先駆けとなった象徴がデインヒル。 オーストラリアへのシャトルは彼の可能性を広げ、自分のフィールドである欧州での活躍にも繋がっていく。 前回の連載でも述べたが、デインヒルは競走馬として成功した馬ではない。 だからこそ、彼の可能性を内外にアピールする必要があった。 クールモアの戦術が功を奏したわけだ。 ・デインヒルを見たときの印象 彼が繋養されているアイルランドのクールモアスタッドで、私はデインヒルという馬を見た。 そこにはサドラーズウェルズ、カーリアンなどもいたと思う。 それらの馬と比較したとき、私は思ったのだ。 「デインヒルはずいぶんとごっつい体をしている馬だな」と。 腹袋も立派なら、トモに幅もある。 相当なスピードを持っているに違いない。 しかし、こうも感じた。 「もう少し華奢なほうが欧州競馬には合うのではないかな」 欧州のみで結果を出すには、デインヒルはマッチョ過ぎるような感じがしたのだ。 欧州で求められる馬には共通点がある。 だからこそ、我々もアメリカ血統と欧州血統を分けて考えるのだが、私の目の前にいたデインヒルは欧州の馬らしくなかった。 一目見ただけの私がそう感じるくらいなのだから、それに近い認識をクールモアが持っていったとしても不思議はないだろう。 だからこそ、彼らはデインヒルをシャトル種牡馬としたのではないだろうか? オーストラリアで大成功することになるデインヒルだが、クールモアは彼を手放すことなく、北半球でも種牡馬生活を続けさせた。 デインヒルは欧州向きではないとの話をしたが、そんなデインヒルでも欧州でリーディングサイアーに輝いた実績がある。 オーストラリアへとシャトルさせたことがデインヒルの可能性と認識を広げ、それを欧州へとフィードバックさせたわけだ。 どのような繁殖と配合させれば、デインヒルの血が活きるのか? デインヒルの血が活きる舞台はどこか? 広い欧州のどのようなコースが合うのかを彼らは考えたに違いない。 ちなみにデインヒルは日本で供用された時代もある。 1996年、デインヒルはイーストスタッドでリースとして種牡馬生活を送った。 際立つような結果は残せなかったが、その事実もクールモアスタッドが日本の競馬も視野に入れていたことの証明と言えるだろう。 クールモアスタッドの目は常にワールドワイド。 私らしい表現をするのなら、彼らは「抜け目がない」のだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]晩成タイプの馬(ハーツクライ編)[第1章]イメージと違う馬(マンハッタンカフェ編)[第1章]恵まれない環境からの脱却(スクリーンヒーロー編)

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    [第1章]ダンジグの血を受け継いで(デインヒル編)

    ・新しい系統を作った馬 この連載の最初の主役はノーザンダンサーだった。 競馬の歴史を変えた彼の存在を無視することはできず、ゆえに丁寧な説明を繰り返してきたつもりだ。 しかしながら、ノーザンダンサーは半世紀も前の馬であり、歴史上の存在となりつつあるのも事実。 3代血統表はもちろんのこと、5代血統表にもその名を確認できない現在の状況を考えたとき、彼らを「ノーザンダンサー系」と一括りで語ることは、あまりに乱暴な行為と私は考える。 ノーザンダンサー系は多種多様な展開を見せているからだ。 それはノーザンダンサーの後継種牡馬に関しても同様だろう。 前回までの主役であったダンジグは、世界の競馬史の中でも重要な馬。 しかし、彼をメインとする時代も過ぎ去り、彼の血を受け継いだ馬たちが現在の生産界を牽引している。 ノーザンダンサーの次の次の馬が系統を作る時代が来ているのだ。 世界の競馬史において、ダンジグは非常に重要な系統。 ゆえに過去に取り上げた後継種牡馬たちよりも、多くの言葉を費やす必要があった。 だが、ダンジグ系の後継種牡馬で最も大事な存在であるデインヒル。 この馬に関しては、ほぼ手付かずで話を進めてきた。 なぜか? それはダンジグ系という枠を超えた存在として、デインヒルが認識されているため。 ダンジグの系統はすでに2代目、3代目へと受け継がれているが、デインヒルの系統も先へと進んでいる。 ダンジグよりもデインヒルの名を出したほうが、イメージしやすい時代になったと考えてもらえばいい。 デインヒルはダンジグの後継種牡馬であると同時に、デインヒル系の祖でもあるのだ。 ダンジグの系統としてではなく、あくまでデインヒル系の特徴や今後について話を進めていくために、私はデインヒルに関しての話を我慢していたわけだ。 私はデインヒルを実際に見ている。 彼が旋風を巻き起こしたオーストラリアは私の大好きな場所。 デインヒルの系統がオーストラリアの地で広がっていった感覚も肌で覚えている。 そんな経験をベースにした私なりの“デインヒル論”を、読者の方々が参考にしてくれれば幸いだ。 ・成績は凡庸だが その成績は9戦4勝。 キャリアの少なさもあるが、勝ったGIもスプリントCのみとなっているデインヒルの現役時代は、特筆するほどの成績を残したわけではなかった。 2000ギニーではナシュワンの3着。 一流に少し足りない程度の成績だが、このような成績の馬から傑出した種牡馬が出現するところに、ノーザンダンサー系の面白さがある。 そして、このレベルの馬をしっかりとキープしているクールモアスタッドのしたたかさ。 それが興味深い。 日本では競走成績が何よりも重視され、そこまでの成績を残せなかった馬に素晴らしい繁殖牝馬が用意されることはない。 そのレベルでしかない馬が、日本最高峰にある社台スタリオンステーションに繋養されることもない。 しかし、クールモアは違う。 彼らは競走成績をあげることよりも、種牡馬ビジネスのほうを重視している。 可能性を広げることを常に考えているのだ。 次回以降の連載では、この部分にもスポットを当てていく。 デインヒルが成功した理由を知ることができるはずだ。 (※次回に続く) 【過去の連載馬】[第1章]キングカメハメハの本質を探る(キングカメハメハ編)[第1章]晩成タイプの馬(ハーツクライ編)[第1章]イメージと違う馬(マンハッタンカフェ編)

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    [第8章]ダンジグの後継種牡馬たち(ダンジグ編)

    ・ウォーフロントのスピード ダンジグの最も著名な後継種牡馬であるデインヒルの話をする前に、ダンジグ系に属する他の種牡馬もチェックしていきたい。 まずはウォーフロント。 現役時代は短距離戦を中心に走り、しかしながら、GIを勝てずに終わっている馬。 現役時代の成績が凡庸で、馬体に見どころがなかったこともあり、スタッドイン直後の評判も高くなかったと聞く。 最初から一流だったわけではなく、産駒が走り出したことによって、自身の価値を高めていった種牡馬というわけだ。 私はウォーフロントを見たことがないのだが、聞くところによると、父ダンジグと同じで目立つような馬体ではなかったとか。 なるほど、ダンジグの影響がとても強い馬であることは間違いないと思うが、ウォーフロントの場合は母系もスピード色が強い。 彼の母父はミスタープロスペクター系の中でも「速い」と表現されることの多いファピアノ産駒のルピアノ。 ダンジグ×ルピアノの掛け合わせなら、スピード特化の馬となるのも必然だろう。 ゆえにダンジグにそっくりとも、どちらの血が強いとも言えないのだが、間違いなく言えることがひとつある。 ウォーフロントの血統構成がスピード全盛の現在の流れに合致していたということだ。 ・ウォーフロントの後継種牡馬 ザファクターにデクラレーションオブウォー。 ウォーフロントはすでに後継種牡馬にも恵まれており、ザファクターは2018年の1年間だけリースで日本にやって来ている。 生産者にとって、ミスタープロスペクターの5×3というインブリードを持っているザファクターは、実に面白い血統ではなかっただろうか。 ミスタープロスペクター系の多重クロスを作りやすいだけでなく、ストームキャットに代表されるスピード優位のノーザンダンサー系は、サンデーサイレンス系との相性がすこぶるいいことでも知られている。 ダンジグやファピアノの血を入れて、顕著なスピード馬を作ることもできるだろうし、それらの馬たちは繁殖での価値も高いはずだ。 ・グリーンデザートとチーフズクラウンの今後 すでに取り上げたグリーンデザートも後継種牡馬に恵まれている。 ケープクロスからは長距離に強いタイプの種牡馬が登場し、インヴィンシブルスピリットの系統はスピードに秀でている。 今後、伸びていくのは後者のほうだろうか。 名牝ミッディを出したオアシスドリームもグリーンデザートの後継種牡馬だ。 同馬の母父はダンシングブレーヴで、その先がミルリーフ。 オアシスドリーム自身がそうであったように、産駒は基本的に短距離タイプ。 しかし、母系の影響によるものなのか、ミッディのように中距離をこなす馬も出してくるので、購入者の期待値も高い。 ノーザンダンサー系らしい特徴を備えた種牡馬と言えそうだ。 チーフズクラウンの後継種牡馬と言えば、グランドロッジだろう。 グランドロッジ自身はGI1勝レベルの馬だが、彼の代表産駒であるシンダーは英愛のダービーを制し、凱旋門賞も勝った。 種牡馬としてもシャワンダ、シャレータという2頭のヴェルメイユ賞勝ち馬も出している。 ただし、チーフズクラウンはダンジグ系の中ではスピードに特化したタイプではなく、グランドロッジもそれに近い。 ダンジグ系の特徴を考えたとき、主流となることは難しいかもしれない。 ダンジグの系統はすでに発展し、ダンジグ自身は3代前、4代前の位置へとポジションを移動させている。 ゆえに後継種牡馬の特徴を吟味することが重要だ。 例えば、サンデーサイレンス系とのマッチングを考えたとき、母父にいるダンジグ系の馬はスピードタイプであったほうがいい。 ディープインパクトなどは、特にその傾向を強く出している種牡馬だ。 この件に関しては、ダンジグ産駒の最高峰であるデインヒルの回で詳しく説明していくつもリである。 ダンジグ(牡) 1977年生まれ 米国産 父Northern Dancer 母Pas de Nom 母父Admiral's Voyage 通算成績 3戦3勝 主な産駒 ウォーフロント デインヒル グリーンデザート チーフズクラウン など ※種牡馬成績は2019年3月時点 【過去の連載馬】[第1章]現役種牡馬の最高峰に挑む(ディープインパクト編)[第1章]キングカメハメハの本質を探る(キングカメハメハ編)[第1章]晩成タイプの馬(ハーツクライ編)

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