先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

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    【12月2日・3日開催】チャンピオンズC、ステイヤーズSほかレース解説

    〈古馬GI〉 12/3(日) 中京11R ダ1800m チャンピオンズC 2月のフェブラリーSに続き、ゴールドドリームがJRAのダートGIを連勝。最優秀ダートホースの座をほぼ確実にしたが、それだけのパフォーマンスは見せたと思う。 ゲートに問題を抱えている馬のようで、それが人気を落とした理由になっていたようだが、大きなビハインドにならない程度のスタートを切ると、道中は中団よりも少し後方。前残りの展開を覆して差し切ったレース内容は、他馬との力の違いをまざまざと見せつけるものだった。 ゲート練習に時間をかける調整は太めが残りやすく、体を絞りにくい冬場は特に難しい。実際、今回のゴールドドリームの馬体重は前走比から14キロ増。パワーアップしたような馬体には見えなかっただけに、少し余裕のある馬体だったのは確かだろう。体が締まってくれば、今回以上の切れを使える可能性が高く、来年のフェブラリーSでも好勝負必至と判断していい。 だが、ドバイへの遠征となるとどうだろうか。ダートに戻した現在のメイダンはアメリカのそれに近く、パワーのある先行馬に向いた馬場となっている。出遅れを挽回して差し切った今年のアロゲートのような馬は稀だ。末脚の爆発力を武器にするゴールドドリームでは、ドバイを攻略するのは難しいだろう。 テイエムジンソクは惜しい競馬だった。コパノリッキーを行かせ、2番手から余裕十分のレース。これはしっかりと捕まえているのだが、決め手に欠けるクロフネ産駒の宿命というべきか、最後はサンデーサイレンス系の決め手に屈してしまった。GIでも通用する能力を持っているのは確かだが、勝ちきるためのワンパンチが欲しい。来年に期待だ。 〈古馬重賞〉 12/2(土) 中山11R 芝3600m ステイヤーズS この路線は新陳代謝が進まず、メンバーが薄いのは確か。3歳馬どころか、4歳馬の出走もなかったのだから、今後に繋がるようなレースではなかったと思う。しかし、同一重賞を3連覇したアルバートの偉業は讃えるべきという気持ちに変わりはない。 狙ったレースをしっかりとモノにすることは、周囲が考えるほど簡単な仕事ではなく、この1戦に向けて馬を仕上げてきた厩舎もさすがなら、3600mという距離を無駄なく走らせたムーア騎手の手腕もさすが。道中は調教のように馬をリラックスさせて追走。力を使ったのは最後の数百メートルだけだ。このような競馬ができるからこそ、長距離馬は息の長い活躍をする馬が多い。状況によってはノーブレスで走ることを要求されるマイル前後の距離では、こうはいかない。1戦毎のダメージははるかに大きいのだ。 長距離になればなるほど、騎手の技術の差が浮き彫りになってくるが、今回は上位の3頭すべてが外国人騎手。これも今回のレースの顕著な傾向だろう。もちろん、馬の能力も考えなくてはならないが、彼らが能力を余すところなく引き出しているからこそ、このような結果になる。彼らを起用したくなる馬主サイドの気持ちも理解できるだろう。競馬に大事なのは結果なのだ。 12/2(土) 阪神11R 芝2000m チャレンジC 2着のデニムアンドルビーを挟む格好で3歳馬がワンツーフィニッシュ。来年に繋がるという意味では、ステイヤーズSよりも収穫があったレースと言えるかもしれない。 勝ったのはサトノクロニクル。鞍上のM.デムーロ騎手のエスコートが素晴らしかったにもかかわらず、2着との差はわずかにクビ。この部分に物足りなさを感じる声もあるかもしれないが、果たして今回のサトノクロニクルは完璧な状態だったのだろうか? 10キロ減だった馬体は腹が上がって見えたし、パドックでもチャカついて落ち着きがなかった。前走の菊花賞は極悪馬場のタフなレース。この疲れが残っていたのではないかと勘ぐらせる状況のように私には見えた。 それでも、勝ちきったのは能力が高いからこそで、賞金をしっかりと加算したことも来年に向けて大きかったと思う。馬体を回復させ、落ち着いてレースに臨んだときにどのようなパフォーマンスを見せるのか。この1戦でGIレベルの確証は持てなかったが、今後の成長次第で…と思わせる競馬ではあった。 〈新馬戦〉 3頭のディープインパクト産駒が新馬戦を勝ち上がったので、今回はこの馬たちについての話をしたい。 12/2(土) 阪神5R 芝2000m メイクデビュー阪神 まずは土曜の阪神芝2000mを勝ったヴェルテアシャフト。スローペースを利しての逃げ切り勝ちに見えるだろうが、この馬はスタートから最後の直線に向かうまでのほとんどで耳を立てており、まるで集中して走っていない。それでも、追い出された瞬間に後続を突き放し、最後は手綱を抑える余裕のフィニッシュだった。走破時計はいくらでも詰めることができるだろうし、490キロ台の馬格も3月4日という生まれも理想的。もちろん、血統のバックボーンも文句なしだ。クラシックの乗ってくる素材だと思う。 12/3(日) 阪神5R 芝1600m メイクデビュー阪神 日曜の阪神芝1600mを勝ったアンコールプリュは、直線で進路が狭くなりそうなシーンもあったが、わずかな間隙を突いて一気に抜けてきた。この瞬発力こそがディープインパクト産駒の武器であり、小柄な馬体と合わせて、いかにもディープインパクト産駒らしい馬と言うことができると思う。ディープインパクト産駒には珍しい4月17日の生まれでもあるので、今後の成長も期待できそうだ。GIレベルではないかもしれないが、昇級でも能力は通じる馬だと思う。 12/3(日) 中山6R 芝2000m メイクデビュー中山 日曜の中山芝2000mでは宝塚記念を勝った名牝マリアライトの全妹にあたるエリスライトが登場。勝負どころのひと捲りで決着をつけ、最後は後続に5馬身差の楽勝だった。相手に恵まれたように感じたのは確かだが、スッと上がっていく瞬間の速さ、雰囲気は走るディープインパクト産駒のそれ。期待の膨らむレース内容だったと思う。距離が延びていいというだけでなく、晩成傾向もある血統。まずはオークスがターゲットになるだろうし、それ以降は姉も制したエリザベス女王杯あたりを狙うことになると思う。 〈条件戦〉 2歳戦を2つ取り上げる。 12/2(土) 阪神9R 芝1800m シクラメン賞 最初は土曜の阪神で行われた芝1800mのシクラメン賞。2着のダノンフォーチュンもまずまずの素質馬だと思うが、この馬に4馬身もの差をつけたオブセッションの能力はクラシックレベル。レコードタイムの1分45秒6は掛け値なしに速いが、あまりにも飛びの大きい走りのせいか、それほどの時計が出ていたようには感じさせなかった。このような馬はなかなかでてくるものではない。 しかも、510キロの馬体をまだ持て余している現状で、勝負どころで少しモタつくような面を見せていた。それもそのはず。この馬は4月20日の生まれで、他のクラシック候補との比較で成長が遅れている。3代前に名牝ヘヴンリープライズがいる血統も文句なしなら、ダービー候補の登場と持ち上げても問題ないだろう。次走が楽しみだ。 12/2(土) 中京10R ダ1400m 寒椿賞 次に取り上げるのは中京土曜のダート1400mで行われた寒椿賞。前走時に「GIを勝てる馬」と断言したミスターメロディが登場し、単勝1.1倍の圧倒的な人気に推されたが、驚いたことに2着に敗退してしまった。 だが、勝って楽をさせたのがはっきりとわかる10キロ増の馬体重。それでも、スピードの違いは歴然だったレースぶりを見れば、評価を落とすに値しないと思う。少なくとも、勝ち馬との0秒2差は2頭が正しい能力差ではないと思うのだ。 ただし、勝ったメイショウオーパスが予想以上に強い馬であったことは確か。1分24秒3のレコードは文句なしに速く、ゆえに3着以下は大きくちぎられてしまった。この馬の良さは父メイショウボーラーの淡白な部分を引き継いでいないところで、マイルまでは十分に持ちそうな印象を持った。いずれにしろ、2頭ともにダートの短距離路線を大いに盛り上げていく馬になると思う。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【11月25日・26日開催】ジャパンC、京都2歳Sほかレース解説

    〈古馬GI〉 11/26(日) 東京11R 芝2400m ジャパンC ハナを切る形になったキタサンブラックにとって、ディサイファが絡んでくる展開は想定外だったに違いない。1000m通過は60秒2だが、この800-1000mのところで11秒8という速いラップを刻まされている。瞬発力勝負よりも持久力戦に強いキタサンブラックであっても、このような展開になると厳しいと考えることもできるが、キタサンブラックほどの馬ならば、しのげたのではないかとの思いを実は持っている。 直線の動きを見てほしい。追い出しを開始したときは右ムチを入れていたが、ゴールが近づくに連れて武豊騎手は左ムチに変更。馬が左へと寄っていってしまっていることが理由だと思うが、彼が左ムチを入れてもシュヴァルグランと体を併せるシーンはなし。ここまでフラついているキタサンブラックは実に珍しい。そのほとんどで真っ直ぐに走っているイメージがキタサンブラックにはあったのだが…。 極悪馬場との表現がぴったりだった天皇賞(秋)を走ったダメージ。パドックに登場した時点のキタサンブラックにそれは感じなかった。しかし、落ち着き払ったパドックの周回は彼の精神力の高さがさせているもので、実際は疲労が蓄積されていたのではないか。このレース内容を見て、改めてそんなことを感じた次第だ。 落鉄があったとの報道があり、実際にそれを敗因としている声も多い。だが、競馬雑誌などに掲載されているゴール前の写真を見ればわかると思うが、キタサンブラックの左前は落鉄していない。おそらくはゴール後、もしくは引き上げの際に落鉄したのではないだろうか。もちろん、走っているときから違和感があった可能性は否定できないが、キタサンブラックは裸足で走ったから負けたわけではないが私の結論だ。 有馬記念は余力がどこまで残っているのかを競う部分もあるレースだ。激戦を2回続けたあとのキタサンブラックが、これから状態を上げていくことは無理だろうと私は考えているし、普通に考えれば巻き返しは難しいと思う。ただし、サトノダイヤモンドやレイデオロなどは出走しないとのことなので、あとは枠番次第ということになるのだろうか。 3着だったキタサンブラックに多くの行数を割いてしまったが、勝ったシュヴァルグランと2着レイデオロの話もしっかりとするつもりだ。 まずはシュヴァルグラン。結果的に京都大賞典からジャパンCに直行するというローテーションが大きかったと思うし、2カ月の日程があっても馬を緩めず、マイナス体重で出走させることができたのも勝因のひとつと言えるだろう。だが、それでも勝因は最内枠を引けたこと、それによりキタサンブラックを3馬身ほど前に見る絶好の位置を取れたボウマン騎手の騎乗にあると私は思う。 私は常日頃から「東京の2400mという舞台であっても、10番手以内で競馬をしないと苦しい」と言い続けているが、それはGIというハイレベルレースに出走してくる馬はどれも能力が高く、それなりのペースで行ったとしても簡単に止まりはしないと考えているため。もちろん、例外的なレースもなくはないが、問題はその確率。ペースを作ることも出来ず、コース選択の自由さえもない位置からの競馬はギャンブル的な要素があまりにあり過ぎる。できることなら、そのような競馬は避けてほしいものだ。 だからこそ、最内枠を生かして位置を取りにいたボウマン騎手の騎乗は「さすが」と思えた。もちろん、それを可能にしたシュヴァルグランの機動力も誉めておく必要があるだろう。ゆえに次走の有馬記念も枠番次第、鞍上の騎乗次第としておきたい。勝てる力は十分にある。しかし、有馬記念が行われる中山2500mは枠番の有利不利が今回の舞台よりもはるかに大きい。今回のように運を味方に付け、それを生かせるかどうかだ。 2着のレイデオロはキタサンブラックやシュヴァルグランと比べ、パドックでの仕草に幼さを感じた。やはり3歳馬なのだ。もう少しゆったりと構えることができれば、競馬に対しても楽に向かうことができるはずで、このあたりが今後の伸びしろ。スタートひと息の競馬から徐々にポジションを上げ、キタサンブラックは捕まえたレースの内容は立派だったと思う。今シーズンは終了ということで、それ自体は残念ではあるのだが、来年の主役となれる器であることは示したレースだったと思う。 差のない3番人気に終わったサトノクラウンは10着に終わった。私はこの馬の走りからも「天皇賞のダメージが残っている馬は少なくない」との気持ちを強くしている。来週の香港を走るキセキは菊花賞を極悪馬場で走った。この馬のレースぶりには同様の意味で注目しているし、それ以外の天皇賞、菊花賞組の動向にも気を配るようにしている。それが有馬記念でのキタサンブラックの取捨に繋がるような気がしているのだ。 〈古馬重賞〉 11/26(日) 京都12R 芝1200m 京阪杯 勝ったネロは58キロの斤量を背負って逃げ切った。これ自体は評価すべきことだと思うのだが、問題はその後ろについて回った好位勢のだらしなさ。このペースで行って、前を捕まえられないどころか、後続の差し込みを許してしまうのだから、そのパフォーマンスはあまりに低い。重賞レベルの1戦ではなかったと解釈しているし、今後に繋がることもないだろう。GIでどうこうの話ができるレースではなかったと思う。 〈2歳重賞〉 11/25(土) 京都11R 芝2000m 京都2歳S 1番人気だったタイムフライヤーを前に見る形で進めたグレイルが勝利。一見すると追うものの強みを感じたレースと思えるが、そんなに簡単なものではない。グレイルのほうが資質は上と私は感じた。 パドックの周回を見てほしい。タイムフライヤーは「尾を巻き込む」ように歩いており、このような歩き方をする馬はトモに力が入っていない場合が多い。最も力が必要な場面で、それを伝達することができないのだから、伸び負けするような形になって当然だ。 グレイルはキャリア1戦で、当然ながら馬体は完成していないものの、そのようなマイナス面を持ってはいなかった。胴も長く、いかにもハーツクライ産駒といった感じの馬。距離延長にも問題なく対応すると思うし、今後の伸びしろも十分にある。これ以降、2頭の差は開いていくのではないだろうか。 ただし、1週前に行われた東京スポーツ杯2歳Sと比較すれば、インパクトという点で見劣る面は否めない。クラシックの有力候補ではあるかもしれないが、最有力ではない。これは頭に入れておく必要があると思う。 〈条件戦〉 11/26(日) 京都10R 芝1400m 渡月橋S ジャパンCに関する総括が少し長くなったので、ここでは1鞍だけを手短に紹介する。京都日曜の渡月橋Sを勝ったモズアスコット。この馬はとにかく強い。抜けてくる瞬間の速さ、脚の回転の速さが1600万下までクラスが上がってもまるで違った。重賞はもちろん、大きいところを狙う馬だと思う。父フランケル、母父はヘネシー。距離には限界があるだろうが、マイルくらいまでなら、相当な活躍が見込めそうだ。今後も注目したい。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【11月18日・11月19日開催】マイルCS、東スポ杯2歳Sのレース解説

    所用により、先々週の総括をすることができず、読者の皆様にご迷惑をかけてしまったことをお詫びしたい。1週遅れになってしまったが、まずは京都競馬場で行われたマイルCSの振り返りから始めたいと思うので、お付き合いをお願いします。 〈古馬GI〉 11/18(日) 京都11R 芝1600m マイルCS 私は結果を知った状況でレースを見たのだが、ファンの皆様はどう感じたのだろうか? 仮に結果を知らず、この1戦をフラットな気持ちで見ていたとしたら、私はこう思ったに違いない。「大外枠発走の馬が、どのようにして内からさばいてきたのか」と。 3コーナーまでの距離がある京都の1600mであっても、18頭立ての大外枠は間違いなく不利だ。それは手綱を取ったミルコ・デムーロ騎手も十分に理解していること。ゆえに彼はまずまずのスタートを切ったにもかかわらず、位置を取りに行くことはせず、少しでも早く内へと誘導していくことを優先した。これこそが今回のレースのキーポイントであり、外国人騎手と日本人騎手との大きな違いと言える。 外国人の騎手は馬群の外を回っていく競馬を嫌う。能力の高い馬が集まるレースになればなるほど、彼らはその気持ちを強く持って騎乗する。わずかな距離のロスが結果にどれほどの影響を与えるのか──。それを十分に理解しているからだ。 勝負どころの時点で、ペルシアンナイトはサトノアラジンやグランシルクと似たようなポジションにいた。それらの馬がどのような進路取りを見せたのかは、すでに多くの方がご存知の通り。直線に入り、レッドファルクスの内に行くのか、外へ行くのかに迷ったようなシーンもあった。しかし、それは「勝負ができる位置」にいるからこその話。 大外枠から大外を回すような淡白な競馬をしていたら、そのような選択をすることすらできなかっただろう。そのポジションを狙って取りにいく姿勢こそが、今回の勝利を呼び込んだ。デムーロ騎手の手腕があればこそのレースと言えるだろう。 もちろん、勝ったペルシアンナイトという馬も強い。ゴール前での伸びを見れば、この路線の主役になれる器であるとも思う。私も3歳のときにアグネスデジタルをマイルCSに挑戦させ、見事に勝利を飾ることができたが、古馬を相手にGIを勝つことは、すなわち来年以降もGI路線で活躍できることを意味する。大外枠を克服できたのは騎手の手腕による部分が大きいが、それを可能にさせた馬の能力も同様に評価しておきたい。 2歳時からGI級と高い評価をし続けてきたエアスピネルはハナ差の2着。今回も結果を出すことはできなかったが、このレースに関して言えば、ムーア騎手の騎乗にミスはひとつもなかったと思えるし、パドックを歩く姿もVTRでチェックさせてもらったが、落ち着き十分なうえに馬体に張りもあった。この状態で出走させ、この騎乗をして負けてしまったのだから、陣営も納得の1戦と考えているのではないだろうか。 武豊騎手からムーア騎手に鞍上をスイッチした細かい経緯はわからないので、この件に関して深く追求することは避けたいと思う。しかし、GIに人気馬を出走させる立場の調教師からすれば、前の日の騎乗をキャンセルし、レース当日の週から復帰するという状況に対し、小さくない不安を感じて当然だ。レース後に「ここをこうしておけばよかった」というような悔いを残したくない。不安材料をひとつでも取り除くことが、調教師の仕事であることも理解してほしい。 3着のサングレーザーは私の注目馬の1頭だった。結果論ではあるが、札幌から使ってきたこともあり、他の馬よりも上がり目に乏しい状態だったかもしれない。とはいえ、この馬も勝ち馬と同じ3歳馬。一線級を相手に差のない走りを見せたことで、今後が確約されたとも言える。体重増にも好感が持てたと最後に付け加えておきたい。 4着レーヌミノルは今回のレースで「距離適性」がいかに重要であるかということを改めて知らしめる存在となった。ダイワメジャーにタイキシャトルという血統構成。誰もが指摘していたようにマイルでこその馬…もしかしたら、マイル以下の距離でも走れるくらいの馬かもしれない。いずれにしろ、この路線の注目株となることは間違いないだろう。この馬も3歳馬なのだから。 〈2歳重賞〉 11/18(土) 東京11R 芝1800m 東スポ杯2歳S ダービー候補の呼び声が高いワグネリアンとモーリスの全弟として注目が集まっているルーカスが登場。少頭数ながら、注目度の高い1戦という前評判だった。実際、結果もその2頭によるワンツー決着。逃げた馬が1000m通過58秒5のハイペースで飛ばしてくれたことで、現時点の能力差がハッキリと出るレースになっている。 勝ったワグネリアンは素直に強かった。2着ルーカスとの着差は3馬身。これは完勝と言うべきレベルで、何度走っても着順は入れ替わらない。それほど決定的な差だった。 もちろん、これは現時点での完成度の違いもある。ワグネリアンのパドックは少し気合いが入り過ぎている印象で、この部分に成長の余地を感じさせはしたのだが、レースでの動きはすでに完璧。4コーナーから直線に入り、前を捕まえる際の速さが他馬とはまるで違った。モタモタする面を見せたルーカスとは対照的だった部分でもある。 抜け出してからの伸びも実にしっかりとしたもので、ここも追ってフラつくような面を見せたルーカスとはずいぶんと違う。この差を詰めるのは簡単ではなく、例えばダービーまでに形勢逆転することは厳しいのではないだろうか。それくらいの差があった。 だが、それ以降なら──。ディープインパクト産駒は早生まれの馬が多く、このワグネリアンも2月10日の生まれ。ディープインパクトという金額の高い種牡馬を付けるのであれば、ダービーをひとつのピークにしたいと生産者サイドが考えるのも当然で、それが「ディープインパクト産駒には成長力がない」とされる理由にもなっている。当たり前のことだ。あえて早熟の馬を生産者が作っているのだから。 ワグネリアンの馬体重は454キロだった。ディープインパクトの仔ならこれでいいと考えることもできるだろうが、本音は「あと20キロは増えてほしい」。だが、前述したように早生まれのディープインパクト産駒には、過度の成長を期待できないのだ。 一方、2着のルーカスは晩成傾向の強いスクリーンヒーローの産駒で、生まれも3月20日と標準。5月18日とかなりの遅生まれだったゴールドアクターと同列に扱うのはどうかと思うが、全兄のモーリスは3月2日の生まれ。古馬になって大成した兄と同じ軌跡を歩む可能性がある。 だからこそ、私は「現時点で」という言葉を何度も使った。この1戦が2頭の潜在能力の違いを示したレースではないということは頭に入れておきたい。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【特別編】「GI競走・先取りチェック!」

    有料メンバーの皆様こんにちは。 編集部スタッフです。 この秋のGIシリーズの大きな変更点は、2歳重賞「ホープフルS」のGI格上げ。これにより、年内に行なわれる平地GI競走の半数は2歳GIです。 古馬と違い比較の難しい2歳戦。「ジャパンCやチャンピオンズCは買う馬を決めた」という方でも、2歳戦の場合はどうでしょうか。 そこで今回は、阪神JFまで約2週間となりましたので、これまでの【調教師の着眼点】から「阪神JF」の主な出走想定馬の前走内容を再ピックアップいたします。 早い段階から、いま一度、白井先生の視点より各ポイントをご確認いただくことで、2歳馬への視野を広げていただき、レースをより深くお楽しみいただければと思います。 ========= 今回のピックアップ馬 ロックディスタウン ラッキーライラック ベルーガ フィニフティ ※出走日順 ※『 』内は【調教師の着眼点】より抜粋 ロックディスタウン 札幌2歳Sに出走(9/2) 『今年の2歳が産駒デビューだったオルフェーヴルが早くも重賞勝ち馬を誕生させたわけだが、彼の産駒の重賞勝利について、私の考える今回のポイントは2つある。 オルフェーヴルは歴史に残る名馬だ。そんな彼が期待されたほどの産駒を送り出せないのであれば、それは競走馬としての性能が問題なのではなく、ステイゴールドから受け継いでいた激しい気性が能力の発揮を妨げてしまうからではないか──。 彼の産駒がデビューする前の段階で、私はそのようなことを考えていた。それこそが種牡馬・オルフェーヴルの泣きどころになるのではないか、と。で、ロックディスタウンだ。 彼女の母父はストームキャット。この馬の血統構成を初めて見たとき、ストームキャットの存在を無視しては語れないと私は思った。オルフェーヴルだけでなく、ストームキャットも燃えやすい気性を内包し、その気性が競走能力を阻害してしまうことが少なからず起こる。 私が管理したメイショウボーラーは母父がストームキャット。激しい気性がネックとなり、晩年には苦しい競馬を続けた彼は、その典型のような馬だった。気性面が最大の課題と考えていたオルフェーヴルにストームキャットという掛け合わせ。少しでも血統に興味を持つ人間ならば、この配合で大丈夫なのかと不安に思うだろう。 しかも、彼女は牡馬よりも繊細な牝馬なのだ。今回のポイントは「2つ」と冒頭に述べた。母父ストームキャットの問題が1つ目だとすれば、もう1つはロックディスタウンが牡馬ではなく、牝馬であるということ。燃えやすい気性とリンクすることではあるのだが、ステイゴールドの産駒は牡馬のほうが安定した成績を残しやすいと私は思っている。 一般的な傾向として牝馬は牡馬よりも気性の難しい馬が多く、そこに燃えやすいステイゴールドの血を入れてしまうと、さらにカッカした馬になりやすい。GIを勝っているステイゴールド産駒の牝馬もいるが、一線級で活躍する期間は短い。テンションの高まりをおさめるのが難しいからだ。馬格のない馬が出てしまうのもステイゴールド牝馬の弱みになっていると私は思う。 しかし、今回のロックディスタウンは私の考えていた不安要素をすべて吹き飛ばしてしまった。今回が2回目の実戦。レースはともかく、パドックでは燃えやすい一面を見せるのではないかと考えていたが、そんな不安は杞憂に終わった。これは大人びたレースぶりよりも、はるかに意外なことだった。 今回の馬体は490キロ。牡馬のような馬格を誇り、落ち着いた周回を見せたパドックでの姿はステイゴールドの血を持つ馬に思えなかった。ステイゴールド産駒と同じようにオルフェーヴルの産駒も牝馬より牡馬。そんなイメージを漠然と持っていた私にとって、彼女の存在は嬉しい誤算となったわけだ。 今後、これまでに述べてきたような不安が出てくる可能性はある。次走以降の走りには十分な注意が必要だろう。だが、仮にこのままの精神状態のままでクラシックを迎えることが出来るようなら、彼女は有力なヒロイン候補となるはずだ。その適性は桜花賞よりもオークス。私のイメージを超える存在になってくれることを期待している。』 ラッキーライラック アルテミスSに出走(10/28) 『ラッキーライラックが夏の新潟以来のキャリア2戦目で重賞制覇を果たした。着差以上に強い内容だったと感じたし、2歳戦のうちは掛かり気味に行くくらいのスピードとパワーがなければ、上のレベルに上がったときに通用しない。このような馬場を苦もなくこなしたあたりは、父オルフェーヴルの血と言うべきなのだろうか。 札幌2歳Sを勝ったロックディスタウンに続く2頭目の重賞制覇になったオルフェーヴルだが、その2頭がいずれも牝馬という点は興味深い。父のステイゴールドがそうであるように、気性の激しい面があるオルフェーヴルの性格を産駒が受け継ぐのなら、より繊細な牝馬のほうが影響は受けやすいと考えられたからだ。 しかし、オルフェーヴルの産駒にはステイゴールドの産駒のような激しさが見られず、この馬のパドックは落ち着きがあって、どっしりとしている印象を受けた。馬格があるのもステイゴールド牝馬との大きな違いだろう。もしかしたら、父のステイゴールド以上の種牡馬になるのでは…。産駒がデビューする前までは想像していなかった同馬の可能性を感じているところだ。 ちなみにラッキーライラックの母系はダイヤモンドビコー、ミッキーアイル、アエロリットなどを輩出したステラマドリッドの系統。走る馬というものは、出てくるべきところから出てくるものなのだ。』 ベルーガ ファンタジーSに出走(11/3) 『ハナを切った馬が2着に粘っており、実際に最初の600mは36秒3のスローペース。追い込みが決まるような展開ではなかったと思うが、勝ったベルーガはそんな状況を苦もなくクリアしてしまった。ここでは能力が違ったとの認識でいいだろう。 デビュー戦が1200mで、父はスプリントGI馬のキンシャノキセキ。今回は1400mの距離をクリアしたわけだが、これ以上の距離延長を危惧する向きもあるだろう。名牝ヒシアマゾンを輩出した一族とはいえ、祖母のホワットケイティーデッドからはスリープレスナイトというスプリンターズSの勝ち馬が出ており、トータルではスピード色の強い馬のほうが多い。ここも不安に感じる部分だ。 ただし、京王杯2歳Sのときも説明したように、一本調子の走りをしないタイプは適性よりも長い距離に対応する可能性がある。父キンシャサノキセキのようにガツンと来るところはなく、直線でスピードを爆発させる瞬発力型の競馬をする馬。1600mまでは克服できるように私には見えた。』 フィニフティ 京都・新馬(11/12) 『ステファノスの全妹にあたる同馬は馬体の成長が欲しい現状ではあるものの、その走りっぷりやフットワークに高い競馬センスと能力を感じさせた。ディープインパクトがフレンチデピュティと相性がいいのは良く知られているが、その息子であるクロフネとの相性もいいのでは…と実は考えている。 この馬はシーキングザゴールド産駒でダートの重賞路線で大活躍したゴールドティアラを祖母に持っており、血統のバックボーンは十分。距離延長にも対応しそうな雰囲気があるのもいい。大きいところに行くかもしれない。』 ========= 現時点では上記4頭をご紹介しました。 なお、オフィシャルサイトでは、レース週に前走内容を簡単に確認いただける【着眼点・登場馬メール】をお送りしています。他馬については、そちらで配信予定ですので合わせてご確認ください。 ※「朝日杯FS」、「ホープフルS」で【特別編】は予定しておりませんが、金曜日の夜にお送りしている【着眼点・登場馬メール】よりサイトにアクセスいただくことで、出走馬の「前走見解」を確認いただけます。 ※「着眼点・登場馬メール」は該当馬がいないときを除き、毎週配信しています。

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    【重要】お知らせ

    ※【調教師の着眼点】、【血統診断】、【馬体診断】に関するお知らせ 平素より、白井寿昭オフィシャルサイトをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。 ■今週のサイト更新に関するご案内 今週、11月23日(木)-11月25日(土)の期間は、 【調教師の着眼点】(有料) 【血統診断】(無料・当週のみ) 【馬体診断】(無料・当週のみ) 【GI競走・先取りチェック!】(有料) の各コラムを公開予定でしたが、諸事情により、公開は以下の日程となります。 ----------------- ・11月23日(木)公開 ◆「アカデミック連載・オルフェーヴル編の第3章」(有料メンバー限定) ・11月25日(土)公開 ◆【GI競走・先取りチェック!】(有料メンバー限定) ----------------- いつも楽しみにいただいている皆様にはご迷惑をお掛けしますが、アカデミック連載のオルフェーヴル編の「第3章」や近々に迫る【GI競走・先取りチェック!】を、どうぞお楽しみください。 ※次週からは通常通りの公開となります。 引き続き、白井寿昭オフィシャルサイトをよろしくお願い致します。

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    【11月11日・12日開催】エリザベス女王杯、デイリー杯2歳Sほかレース解説

    〈古馬GI〉 11/12(日) 京都11R 芝2200m エリザベス女王杯 1000m通過が62秒0。それ以降のペースも上がらず、およそGIとは思えないレースとなった。淡白なレースになったことは確かでも、それを非難するのは筋違いで、このような競馬ができる先行馬の自在性こそを評価すべきだと私は思う。最も強い馬が勝ったかとなると疑わしい。しかし、上位陣の好走は素直に讃えるべき──。それが今回の1戦の総論になる。 では、何頭かをピックアップしての総括をしていこう。まずは勝ったモズカッチャン。好枠を生かし、先行勢のすぐ後ろをキープしたM.デムーロ騎手の手腕はさすがで、それに応えた馬の頑張りも評価したい。古馬相手のGIを3歳で勝ったという意味は大きく、来年以降も活躍を期待できる馬だと思う。やや切れを欠くハービンジャー産駒。パンパンの馬場での瞬発力勝負に対応できるかどうかが、これからの課題になるか。 2着のクロコスミアは2番手に控える競馬でも問題なく力を出した。この馬は5月17日の遅生まれ。4歳秋を迎えた現在こそが成長期と考えることができそうだ。取り上げたいのは騎乗した和田騎手。春はモズカッチャンの主戦騎手でもあったので、今回は悔しい1戦になったかもしれない。しかし、積極的な競馬で結果を出し続ける今年の彼は充実したシーズンを送っており、久々のJRAGI勝利も時間の問題に思える。 3着ミッキークイーンは休み明けだったが、パドックでの周回は堂々としたもので、さすがにGIを2つも勝っている馬は違うと感心した。前述した展開はミッキークイーンにまるで適さないものだったと思うが、直線では目の覚めるような脚を使って上位2頭に肉薄。牡馬相手でも好走できる能力を持っている馬で、本質的に叩き良化型のタイプでもある。次走に最も注目した馬だ。 5着ヴィブロスは外枠から好スタートを切ったことで前に壁を作れず、最初のコーナーから折り合いを欠いてしまった。勝ち馬とほぼ似たような位置からレースを進めたものの、あそこまで折り合いを欠いてしまうと余力を残して直線を向くことは難しい。状態が良過ぎたからこそのレースだったかもしれないし、この1戦で評価を下げる必要はないだろう。今シーズンは休養らしいので、来年の巻き返しを期待したい。 私が期待していた3歳馬のディアドラは12着に完敗した。位置取りが悪すぎたのは確か。しかし、勝負どころで思ったほど進んでいかなかったのは予想外だった。パドック気配は決して悪いと思わなかったのだが、夏の北海道から使い込んでいた馬。見えない疲労があったのかもしれない。 〈2歳重賞〉 11/11(土) 京都11R 芝1600m デイリー杯2歳S 勝ったジャンダルムは母ビリーヴに似た切れを持っているが、距離に融通性がありそうなのがいい。キャリア2戦目での重賞挑戦は能力がないとできないもの。今後も重賞路線を賑わす存在となるだろう。若駒らしい体の柔らかさがあり、フックラと見せた馬体はまだまだ締めていけそう。上がり目も十分だ。 2着のカツジも2戦目でいい競馬をした。最後に少し外に逃げてしまったようだが、キャリアの浅い馬だけに仕方がない。あまりに長い距離だと壁に当たりそうだが、マイル近辺の距離なら十分に活躍できる馬だと思う。 3着ケイアイノーテックは母ケイアイガーベラの絡みもあって、最も注目していた馬。休み明けで22キロ増の太め残り。勝負どころの反応が鈍かった理由もそれだろう。最後はジリジリと伸びており、能力の一端は見せた。次走で大きく変わってくるならこれだろう。 〈古馬重賞〉 11/11(土) 東京11R ダ1600m 武蔵野S 4コーナー2番手から押し切ったのは7歳馬のインカンテーション。このクラスのマイル重賞にしてはペースが流れておらず、追い込み馬に難しい展開となったのは確かだが、インカンテーションのような競馬ができる馬の自在性こそを評価すべきなのであって、これは同じくスローで流れたエリザベス女王杯にも共通する考え方だ。 芝よりもダートのほうが直線一気の競馬が難しい。ゆえにポジションを取れる馬というのは、それだけで大きな武器を持っていることになる。インカンテーションの今回のレースぶりは完勝と呼ぶべきものと私は考えているが、それは展開が向いたからではなく、展開を作れたことが理由。持っている能力は確かなものがある馬であることを考えれば、復活した現在の状態ならチャンピオンズCでも侮れない存在になるのではないだろうか。 11/12(日) 福島11R 芝2000m 福島記念 1番人気のサンマルティンがまともに折り合いを欠いてしまったことで、レースの質が見えにくくなってしまったのは確か。4コーナー手前から動いて勝ったウインブライトの勝利に一定の評価はするものの、2着以下との着差や出走メンバーのレベルを考慮すれば、今後の活躍も安泰とはさすがに言えない。すぐにでもGIで…という馬ではないだろう ただし、5月12日の遅生まれであるという事実は本馬にとって大きな希望。父は晩成傾向のあるステイゴールドで、母父アドマイヤコジーンは2歳王者ながら、6歳春にも安田記念を制している馬。3代母のミスゲランもなかなかの存在感を放っている。予想以上の伸びを見せても不思議のない背景があることは、追記しておきたい。 〈新馬戦〉 11/12(日) 京都4R 芝1600m メイクデビュー京都 日曜京都の2鞍を取り上げる。まずは牝馬限定の1600mを勝ったフィニフティ。ステファノスの全妹にあたる同馬は馬体の成長が欲しい現状ではあるものの、その走りっぷりやフットワークに高い競馬センスと能力を感じさせた。ディープインパクトがフレンチデピュティと相性がいいのは良く知られているが、その息子であるクロフネとの相性もいいのでは…と実は考えている。この馬はシーキングザゴールド産駒でダートの重賞路線で大活躍したゴールドティアラを祖母に持っており、血統のバックボーンは十分。距離延長にも対応しそうな雰囲気があるのもいい。大きいところに行くかもしれない。 11/12(日) 京都5R 芝1800m メイクデビュー京都 芝1800mを勝ったのも同じディープインパクト産駒のダノンフォーチュンだが、こちらはまだモッサリとしていて、緩いと感じるくらいのパドックの気配。一見して「おっとりとした気性の馬」と思ったほどだった。そのフットワークは大きく、鞍上も長手綱で馬をまるで締めていない。まだまだ伸びていく馬だとは思うが、その一方で「次走も確勝」と思えなかったのは確か。まだ完成にほど遠い状況だからだ。距離が延びてよさそうな走りをするので、長い目で見てあげることが重要ではないかと思う。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【11月3日・4日・5日開催】アルゼンチン共和国杯、みやこSほかレース解説

    〈古馬重賞〉 11/5(日) 東京11R 芝2500m アルゼンチン共和国杯 ダービー2着のスワーヴリチャードが56キロのハンデを克服して完勝。誰が見ても力が違うと感じる内容だったわけだが、この勝利が近々のGI路線での活躍を決定づけるものではないということは認識しておきたい。 2着のソールインパクトはハンデキャップホース。3着セダブリランテスは3戦3勝の重賞勝ち馬だが、スワーヴリチャード同様に今回が休み明けの3歳馬で、古馬との対戦も初めてだった。実績で見劣る存在だったのは否めないところだ。 そもそも、成長期にある4歳馬の出走がなかった時点で、今回のメンバー構成には疑問符が付いた。この相手に勝ったからといって、例えばキタサンブラックのような古馬GI馬、同世代のダービー馬レイデオロに追いつき、追い抜いたと力説することは不可能。そのような馬たちを相手にした場合は、やはり伏兵の1頭という立場になってしまうと思う。 もちろん、まるで通じないと言っているわけではない。10キロ増だった今回の馬体重はほぼ成長分と感じたように、ハーツクライ×アンブライドルズソングという血統背景を持つ馬。本格化は古馬になってからという印象が強い。次走は有馬記念ということだが、この1戦の結果に対し、そこまでこだわる必要はないように思う。順調なら、来年以降のGI路線を引っ張っていく1頭になってくれるはずだ。 11/5(日) 京都11R ダ1800m みやこS ワンサイドという言葉がぴったりの内容で、テイエムジンソクが重賞初制覇を飾った。馬群の外を回されることになる8枠16番はなかなかの不利枠で、これが響くのではないかとレース前は考えていたのだが、馬なりで外を捲っていったレース内容は強烈。2着ルールソヴァールとの差は2馬身半だが、それ以上の力の開きを感じるレースぶりだった。 父のクロフネは自身がそうであったように、ダートで圧倒的な強さを見せる種牡馬だが、意外にも重賞では結果を出しておらす、これまで輩出したGI馬はすべて芝のレースだった。クロフネの産駒は外からひと捲りのような単調な競馬をする馬が多く、父のような圧倒的な能力差がないことには大レースを勝つのはなかなか難しい。それがダートのGIを勝てない理由ではないかと考えているのだが、このテイエムジンソクは大きいところを勝てるかもしれない。 JBCを見て感じたのだが、一時期に比べると現在のダート路線はメンバーの質が少し落ちてきている。絶対的な存在がいなくなり、ほとんどの馬がキャリアの終盤。この状況を生かすことができれば、クロフネのような大雑把な競馬をするテイエムジンソクにもGIを勝てるチャンスがあるという考え方だ。今週の武蔵野Sには生きのいい3歳馬もいるようなので、そのレースの結果次第でチャンピオンズCの最有力馬がどの馬なのかを考えたいと思う。 〈2歳重賞〉 11/4(土) 東京11R 芝1400m 京王杯2歳S 最内枠から好スタートを切り、道中は無理をせずに脚をためていたタワーオブロンドンの競馬はソツがまるでなかった。あれほどの完璧なレース運びをすれば、さすがにラストも切れる。2着には函館2歳S勝ち馬のカシアス、3着は小倉2歳S勝ち馬アサクサゲンキ。2頭のステークスウィナーを従えての2馬身差なら、その能力の高さも含めて高い評価をする必要があるだろう。 2、3着馬の前走は1200m。京都1600mのデイリー杯2歳Sの時期がズレたこともあり、以前よりもスプリント色が強くなっている印象の京王杯2歳Sだが、この馬自身はマイルくらいまでは十分に守備範囲だと思う。今回のレースを見てもわかるように、この馬は道中で無駄に力むようなところがなく、幅の広いレースができるタイプ。脚をしっかりとためることの出来る馬は、その適性よりも長い距離で走れるものだ。 父レイヴンズパスはともかく、その父イルーシヴクオリティはスプリント系の種牡馬。スピード色が強い血統なのは間違いないだろう。だが、祖祖母にドフザダービーがいる血統はなかなか重厚で、この血統からは英ダービー馬のジェネラスも出ている。GIでもクラス負けしない底力を持ち、距離延長にも対応できると考える理由がこれだ。 十分過ぎるほどの馬格を持ち、輸送も苦にしない馬。すでに阪神コースで走っている点も心強い。朝日杯FSでも有力馬の1頭として注目すべきだろう。 11/3(金) 京都11R 芝1400m ファンタジーS ハナを切った馬が2着に粘っており、実際に最初の600mは36秒3のスローペース。追い込みが決まるような展開ではなかったと思うが、勝ったベルーガはそんな状況を苦もなくクリアしてしまった。ここでは能力が違ったとの認識でいいだろう。 デビュー戦が1200mで、父はスプリントGI馬のキンシャノキセキ。今回は1400mの距離をクリアしたわけだが、これ以上の距離延長を危惧する向きもあるだろう。名牝ヒシアマゾンを輩出した一族とはいえ、祖母のホワットケイティーデッドからはスリープレスナイトというスプリンターズSの勝ち馬が出ており、トータルではスピード色の強い馬のほうが多い。ここも不安に感じる部分だ。 ただし、京王杯2歳Sのときも説明したように、一本調子の走りをしないタイプは適性よりも長い距離に対応する可能性がある。父キンシャサノキセキのようにガツンと来るところはなく、直線でスピードを爆発させる瞬発力型の競馬をする馬。1600mまでは克服できるように私には見えた。 〈新馬戦〉 11/4(土) 東京5R ダ1300m メイクデビュー東京 先週に行われたすべての競馬の中で、私が最も衝撃を受けたのは土曜東京の新馬戦。ダートの1300mでレコード勝ちをしたミスターメロディは相当なレベルまでいく馬だ。 持ったままで後続をちぎり捨てていくレースぶりはけた違いのひと言。残り数百メートルでは耳を立てて走っていたほどで、この猛時計での勝利も能力を出し切ったものではない。映像を見ていない方は、ぜひ確認をしてほしい。「ダートの強い馬はこういうもの」という私の意見を理解してもらえるはずだ。 父はヨヘネスブルグ産駒のスキャットダディで、母父はデピュティミニスター。距離に限界を見せて不思議のないスピード血統なのは間違いない。しかし、スピードの違いでハナに行ったが、折り合いを気にする素振りはまるで見せなかったレース内容から、マイルくらいまでは十分に持つと考えている。よほど条件の合わないレースを走らない限りは次走も確勝級。さきほど、相当なレベルまでいくとの話をしたが、相当なレベルというのはGIレースのことだ。時期尚早かもしれないが、それほどの走りをこの馬は見せたと思う。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【10月28日・29日開催】天皇賞(秋)、アルテミスSほかレース解説

    〈古馬GI〉 10/29(日) 東京11R 芝2000m 天皇賞(秋) この世界に身を置いて長い私でも記憶にないほどの不良馬場で行われた先週の菊花賞に続き、今回の天皇賞も想像を絶するような雨馬場での1戦となった。これほどの状態になると、走れない馬はまるで走れず、道悪が得意とされる馬でも多少の影響はある。大敗した馬の評価を無理に落とす必要はないだろう。何頭かの馬については度外視していいレースだった。 では、レースを振り返ろう。ほとんどの騎手は内を大きく開けて走っていたわけだが、「ここまで悪化すれば、どこを通っても同じ」が私の見た感覚。むしろ、距離を大きくロスしたコース取りのほうが馬に負担をかけてしまうようにも思えたのだが、実際のところはどうなのだろうか? そんなことを考えたのは、キタサンブラックに騎乗していた武豊君が外を回さずに、他の騎手が避けた内からポジションを上げていく競馬を選択したからにほかならない。最初に断っておくが、パワーが豊富とはいえ、大きなフットワークで走るキタサンブラックは道悪をプラスにする馬ではない。加えて、スタートで出遅れたことにより、いわゆる「枠なり」の競馬をする必要もなくなった。つまり、距離ロスのない内に行くか、安全策の外を回すのかの選択を自分で決断できる状況下で、彼は内を通る選択をしたわけだ。そして、これが今回の競馬のすべてだったように私は思う。 もちろん、キタサンブラックが傑出した能力の馬であることが前提としてある。しかし、彼が外を回すコースを選択していたとしたらどうだろう。サトノクラウンとの差はわずかにクビ。距離のロスが多い競馬をしても勝てたと考える人間は少ないはずだ。 パトロールを確認すればわかると思うが、豊君も内ラチ沿いを回ってきたわけではない。ここなら負担にならないのではないかと思えるギリギリの場所。道中はサトノクラウンと同じような部分を選んで走ってきている。彼らはわかっているのだ。どの場所ならば、能力発揮に支障がないのかということが──。それが外を回すしかなかった馬との違いと言えるかもしれない。 そういう意味では、外枠からのスタートだったにもかかわらず、内に潜り込む競馬をしたグレーターロンドンの田辺君は、勝負を賭ける乗り方をしたと言えるだろう。この馬のイメージにまるでない騎乗だったかもしれないが、悪化した馬場を逆手に取り、思い切った騎乗をできる騎手は少ない。9着という結果はともかく、一発を狙っていることが誰にでもわかる乗り方だったのではないだろうか。 今回のパドックを見て改めて思ったのだが、威風堂々とした表現がぴったりとくる堂々とした歩きをし、ツル首でほどよく気合いの乗った周回は1頭だけ突出していた。精神面がこれほど安定している馬というのは本当に珍しい。素晴らしい馬だ。もちろん、これだけの名馬を管理しながら、しっかりとした状態で出走させてくる清水調教師の手腕も賞賛したい。そのプレッシャーは並大抵のものではないと思うが、今回も馬に緩みはなかった。本当に大したものだと思う。 順調なら次走はジャパンCになるだろうが、これほどの馬場で走ったあと。ダメージが残っているかどうかの確認が最大にして唯一の懸念材料になる。能力を発揮できる状態が整えば、結果はついてくるはず。キタサンブラックの強さに魅了されている私の気持ちとしては、そうあって欲しいと願っている。 ちなみに天皇賞(春)が終わった直後、私は北島三郎さんに「こういう馬は凱旋門賞に行ってみるべき」との話をさせてもらったのだが、今回の結果を受けて「やっぱり凱旋門賞に行ってほしかったな」という思いが強くなった。この馬なら、ヨーロッパの馬場も苦にせず、力で押し切ってしまったのでは…。そんなシーンを観ることが出来ずに終わってしまうことが、少し残念ではある。 〈2歳重賞〉 10/28(土) 東京11R 芝1600m アルテミスS ラッキーライラックが夏の新潟以来のキャリア2戦目で重賞制覇を果たした。着差以上に強い内容だったと感じたし、2歳戦のうちは掛かり気味に行くくらいのスピードとパワーがなければ、上のレベルに上がったときに通用しない。このような馬場を苦もなくこなしたあたりは、父オルフェーヴルの血と言うべきなのだろうか。 札幌2歳Sを勝ったロックディスタウンに続く2頭目の重賞制覇になったオルフェーヴルだが、その2頭がいずれも牝馬という点は興味深い。父のステイゴールドがそうであるように、気性の激しい面があるオルフェーヴルの性格を産駒が受け継ぐのなら、より繊細な牝馬のほうが影響は受けやすいと考えられたからだ。 しかし、オルフェーヴルの産駒にはステイゴールドの産駒のような激しさが見られず、この馬のパドックは落ち着きがあって、どっしりとしている印象を受けた。馬格があるのもステイゴールド牝馬との大きな違いだろう。もしかしたら、父のステイゴールド以上の種牡馬になるのでは…。産駒がデビューする前までは想像していなかった同馬の可能性を感じているところだ。 ちなみにラッキーライラックの母系はダイヤモンドビコー、ミッキーアイル、アエロリットなどを輩出したステラマドリッドの系統。走る馬というものは、出てくるべきところから出てくるものなのだ。 〈古馬重賞〉 10/28(土) 京都11R 芝1400m スワンS この日の京都も馬場が悪かった。多くの馬が影響を受けたと思うし、どの馬も内を大きく開けたコース取りをしていたが、外枠から外を回した馬はかなりの距離ロスがあっただろう。難しい1戦になったと思う。 勝ったサングレーザーは瞬発力を武器にしているディープインパクト産駒で、本来は軽い芝に向いたタイプだと思うが、それでも勝ちきってしまったあたりは、この馬が持っている能力の高さがあるからこそ。マイルCSに出走してもチャンスのある馬と考えていい。このような3歳馬が台頭してきたのは嬉しい限りだ。 ちなみに騎乗していたのは先週から短期免許を取得したクリスチャン・デムーロ騎手。彼の通ってきたところはギリギリの場所だと思うが、結果的に内を通った馬が上位を占めたのだから、好騎乗と評価していいのだろう。いい馬に騎乗する機会も多いだろうし、かなりの活躍をしそうだ。 〈オープン特別〉 悪化した馬場で行われた先週も明確な評価を下すことはできないと考え、新馬戦の振り返りは遠慮させてもらうことにした。その代わりというわけではないが、2歳OPの「萩S」とGIレベルの馬が勝ったと思われる1戦をピックアップして話をしたい。 10/28(土) 京都9R 芝1800m 萩S まずは萩Sを制したタイムフライヤーについて。母のタイムトラベリングはダートのGI路線で活躍したタイムパラドックスの全妹。ダートもこなすパワータイプのブライアンズタイム産駒というだけでなく、母父にはアルザオまで入っている。能力差を痛切に感じさせる内容だったのは間違いないが、血統的に道悪競馬が合ったように思う。 父ハーツクライなら距離延長に問題はないはずなので、今後は軽い芝の瞬発力勝負に対応できるかどうかだろう。その部分をクリアできれば、重賞に手が届いてもいい。 〈条件戦〉 10/28(土) 東京12R ダ1600m 3歳上500万下 先週のハイライトは土曜の東京12Rを勝ったイーグルバローズのパフォーマンス。札幌の1700mで勝ってきた馬だが、父ヘニーヒューズはスピード豊富なヘネシー産駒で、母父クワイエットアメリカンもスピード馬ファピアノの子。3代前にいるスペクタキュラービッドはGIを13勝もした名馬だが、この馬の最大の武器もスピードだった。どのラインを取っても傑出したスピードばかりが目につく血統。ゆえにコーナーが2回の1600mでも持ったままで先頭に立ってしまう走りができるのだろうし、距離を短縮してもパフォーマンスは大きく変わらないと思う。馬格も十分にあって、4月29日というほどよい生まれもいい。 さすがに2月のフェブラリーSは間に合わないかもしれないが、いずれは大きいところを勝つ馬という認識を改めて持った。ぜひ、注目して欲しい。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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