先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

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    【6月16日・17日開催】ユニコーンS、青梅特別ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 6/17(日) 東京11R ダ1600m ユニコーンS 出遅れをまるで問題にせず、距離ロスを無視してポジションを上げたレースぶりは、力が一枚、ないしは二枚は違うとの確信がなければ出来ない芸当。4コーナーではすでに前を射程圏に捕らえていたルヴァンスレーヴのレース内容は、力が明らかに抜けている馬のそれだった。 もちろん、2着のグレートタイムの進路取りがもう少しスムーズであれば、勝ち馬との着差は詰まっていたかもしれない。だが、そこまでだ。最終的に結果は変わらない。圧倒的な力量差を見せつけた勝ち馬の将来性は、相当に明るいと断言していいだろう。 ルヴァンスレーヴは父がシンボリクリスエスで母父はネオユニヴァース、その先はティンバーカントリー。ダートへの高い適性は、おそらくティンバーカントリーから来ているのだろうが、今回のような心臓の強さを感じさせるレースぶりから、シンボリクリスエスとネオユニヴァースの影響も十分に受けていると考えていいだろう。距離延長は歓迎材料となるだろうし、適性は今回のマイルよりも中距離のほうにあるかもしれない。 課題があるとすれば、地方交流競走へと駒を進めた場合。地方の競馬場でも大井のような広いコースなら、大きな問題はないだろう。しかし、小回りコースで今回のような大雑把な競馬をすれば、足元をすくわれる可能性もある。上手なレースをマスターできるかどうかで、どの競馬場でも力を出せるオールラウンダーとなれるかどうかが決まりそうだ。 〈条件戦〉 6/17(日) 東京10R ダ1600m 青梅特別 ユニコーンS組ではルヴァンスレーヴに勝てる可能性がないだろうが、その前に行われた1000万下条件の青梅特別。この1戦を勝ったのは3歳馬のシヴァージで、2着に下したワイルドカードはオープン入りも目前だった1600万下からの降級馬。自身の周囲にいた先行馬が総じて失速してしまったレース結果から、展開が向いたどころか、むしろ厳しい展開を克服してしまった印象のほうが強かった。最後は流す余裕を見せての1分35秒2も、ユニコーンSの勝ち時計と0秒2しか違わないというのだから、これは文句なしに大物だ。 もちろん、ユニコーンSのルヴァンスレーヴが56キロの斤量を背負っていたのに対し、古馬相手のシヴァージは54キロ。単純な数字の比較ができないのは承知の上だ。しかし、スピード能力はシヴァージのほうが圧倒的に上。ルヴァンスレーヴのように道中から動かしていく必要もなければ、無駄に距離のロスがあるコース選択をしなくてもいい。仮にユニコーンSに出走していれば、勝っていた可能性まである──それくらいの評価を私はしている。 父のファーストサムライはジャイアンツコーズウェイにディキシーランドバンドという血統を持つ馬で、この馬の影響が出れば距離は克服できる。しかし、この馬のスピードがインエクセス産駒であるインディアンチャーリーから来ているのだとすれば…。マイルまでが守備範囲の馬ということになるかもしれない。 いずれにしろ、ルヴァンスレーヴとはタイプの異なる馬。それだけに2頭のぶつかるシーンを見てみたいものだ。 〈新馬戦〉 開幕週に続き、2週目にもクラシックを沸かすような馬が登場。目の離せない状況が続いていた2歳新馬戦だが、先週は少し小休止といったところだろうか。すべてのレースをチェックしてみたが、大物と呼べるような馬は現れなかった。 6/17(日) 阪神5R 芝1600m メイクデビュー阪神 配合的に楽しみにしていたのは、日曜阪神の芝1600mに登場したショウリュウイクゾ。母は重賞勝ち馬と言うだけでなく、サンデーサイレンスの3×4というインブリードを持ち、サンデーサイレンス系の種牡馬であるオルフェーヴルと母父キングカメハメハとの間にニックスまで成立させていた。このような馬がどのような姿でパドックを歩き、どのようなレース運びをするかに興味があったのだ。 パドックでは予想よりも落ち着いていたし、馬の格好も良かった。使い込んで馬がシャキッとしてくるのか、それともテンションが上がってくるのかが今後の焦点になるだろうが、この段階では合格点だったと思っている。 出遅れを克服して勝った点も賞賛したい。しかし、クラシック級の馬であれば、それくらいの状況は克服して当然で、その状況でもなお、余裕を残して勝つくらいでなくてはならない。出遅れをモノともせずに差し切り、最後は流していたアウィルアウェイ、一度は前が狭くなりながら、あっという間に馬群を抜けてしまったサートゥルナーリア。先々週の阪神で勝ち上がった2頭のように、だ。 勝負どころで手が動き、最後まで一杯一杯に追われたショウリュウイクゾには、前述した2頭に共通した“底知れない感覚”がなかった。そして、上に行く馬にはこれこそが必要だ。 6/17(日) 東京5R 芝1600m メイクデビュー東京 東京の3鞍もパッとしなかった。クラシックということを考えれば、芝1600mを勝ったトーセンギムレットなのだろうが、この勝利は自身のパフォーマンスが凄かったのではなく、2着馬ベルクワイアが思ったほど弾けきれなかった印象のほうが強い。4コーナーの手応えからすれば、押しきらなくてはいけない競馬だったはずだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』 などもお楽しみください。

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    【6月9日・10日開催】2歳新馬、エプソムCほかレース解説

    〈新馬戦〉 注目度の高さを優先し、今回は2歳の新馬戦を中心に話を進めていく。 6/10(日) 阪神5R 芝1600m メイクデビュー阪神 まずは日曜日の阪神芝1600mを勝ったサートゥルナーリア。私が声を大にして言う必要もないだろうが、クラシック級の器であることを証明した1戦だった。 馬体も良かったし、抜けてくる脚も速い。ただし、これだけの力量の違いがあれば、もっと安全にレースを進めてもよかったかもしれない。急にギアを上げたり、進路を変更したりといったレースは、体の出来きっていない2歳馬にとって、負担となる場合があるからだ。持っているポテンシャルは間違いがないので、上手に競馬ができれば、今後も結果は付いてくるだろう。 ちなみに同馬の母であるシーザリオは、私が管理したスペシャルウィークの産駒。スペシャルウィークは他にもブエナビスタといった名馬も輩出しているが、残念ながら牡馬の傑出馬を出すことができず、後継種牡馬に恵まれなかった。 だが、シーザリオの仔が走ることにより、ブルードメアサイアーとしての存在感を高め、その産駒であるエピファネイア、リオンディーズが種牡馬入りしたことで、スペシャルウィークの血が後世にも伝わっていく道筋ができた。これは非常にうれしいことだ。サートゥルナーリアの活躍で、その可能性がさらに広がってくれれば、と思う。 6/9(土) 阪神5R 芝1200m メイクデビュー阪神 土曜の阪神芝1200mを勝ち上がったのは、今年が種牡馬デビューとなるジャスタウェイ産駒のアウィルアウェイ。出遅れをものともせず、余裕十分の差し切りを決めたパフォーマンスには大物感があった。今回の距離が適距離ではないだろうし、今後は距離を延ばしていくことになるだろう。1600mはあったほうがいいように私は思う。 リアルインパクト、ネオリアリズムを輩出したトキオリアリティーを祖母に持つ母系は優秀で、この血統の豊かなスピードはトキオリアリティーの父であるメドウレイクから受け継がれたものと私は考えている。 今回のパフォーマンス自体が重賞レベルに達しているように見えたが、母系からくるスピードに、成長力のありそうなジャスタウェイという配合を加味すれば、さらに上の舞台での活躍を期待してもいいだろう。セレクトセールを前にしたこの時期に、最高の結果を残してくれたように思う。 6/10(日) 東京R 芝1800m メイクデビュー東京 日曜東京の芝1800mを勝ったアガラスにも好印象を持った。少し行きたがるような面は見せたが、1000mの通過が63秒9の超が付くスローペース。このようなペースでも楽に折り合ってしまう馬では、上のクラスのスピードに対応するのが難しいと、これまでに何度も言ってきた。むしろ、行きたがるくらいのスピードを見せてくれたことが、今後に向けての可能性になると考えてもらいたい。 この馬の父であるブラックタイドは弟のディープインパクトと違い、切れはそこまでないものの、スピードの持続力に秀でている。また馬っぷりがいいタイプを出すのも特徴の一つだ。馬体の見栄えが良く、フットワークも綺麗なアガラスはキタサンブラックにも似たタイプの馬ではないだろうか。 キタサンブラックの父は短距離馬のサクラバクシンオーだったが、この馬の父も短距離で活躍したブラックホーク。このようなパターンの配合がいいのかもしれない。 〈古馬重賞〉 6/10(日) 東京11R 芝1800m エプソムC 道悪は合わないと言われていたサトノアーサーが勝利。ただし、予想に反して道悪適性があったわけではなく、外枠のスタートから、馬場のいい外をスムーズに追走するコース取りが、今回のような結果に結びついたと考えるべき。ゴール前ではノメるようなシーンもあった。良馬場が合うタイプという考えは変える必要がないと思う。 先週の馬体診断でも述べているように、サトノアーサーは父のディープインパクトよりも母父のリタウツチョイスが強く出ている馬。ディープインパクト産駒にしてはコンパクトに見えるのもそのためだ。距離には限界があるタイプだろうし、おそらくは2000mまでに絞った活躍になるだろう。 今回の勝利は適性と違う道悪馬場でのもので、それ自体は賞賛に値するものなのだが、その一方で、秋の大舞台でも活躍できると太鼓判を押せるほどの確信を持つことはできなかった。もう1戦、ないしは2戦のパフォーマンスを見てから、正しい評価を出したい。 阪神のマーメイドSは残念ながら、重賞のレベルに達しておらず、上位に入線した条件馬たちは、自己条件に戻っても確勝級とはならないだろう。検証する価値はほとんどなしと判断して、今回は割愛させてもらう。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』 などもお楽しみください。

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    【6月2日・3日開催】安田記念、鳴尾記念ほかレース解説

    〈古馬GI〉 6/3(日) 東京11R 芝1600m 安田記念 前々走のマイラーズCではエアスピネルを3着に退け、サングレーザーの2着に走っていたモズアスコット。当時の走破時計も1分31秒5と優秀で、高速決着に強い下地もあった。勝って不思議のない能力を持っており、ルメール騎手が騎乗しての9番人気という評価は、やはり低過ぎたと言うべきなのかもしれない。 だが、誰もが評価を落とす理由となった前走の敗戦と連闘策。これは私も気になった。結果として、当日の馬体に悪い印象を持つ部分はなかったが、パドックに出てくる前までの段階で、状態面に確信を持つことは難しかっただろう。となれば、本来は難しいはずの連闘策で成果を出したモズアスコット陣営を称えるべきレース。このような結論としたい。 あえて言うなら、モズアスコットを管理する矢作調教師には、連闘の盛んなオーストラリアで競馬を学んだ背景がある。連闘策に対してのネガティブイメージが、それほどなかったことも大きいのではないだろうか。オーストラリアには私も足を何度も運んでいるが、日本の競馬と違う部分も多く、特に競馬に向かうまでのアプローチには学ぶ部分が多い。今回の勝利には、そのような側面もあったかもしれない。 モズアスコットは父がフランケルで母父がヘネシー。スピードを前面に押し出した血統構成になっており、これ以上の距離延長に対する可能性はあまり高くないだろう。完成の早い血統でもあり、キャリアの浅さほどの成長力があるかどうかも微妙なところだが、今回の勝利により、賞金を考えて日程を組む必要性がなくなった。このクラスのトップホースとして、秋も存在を示してくれると思う。 惜しかったのは2着のアエロリット。テレビを見ていた私は、彼女が落鉄していることにすぐに気づいた。落鉄をしていると踏ん張りが利かず、今回のような追い比べに大きな影響を及ぼす。落鉄が続いたことに対しての反省は必要だろうし、このような状況にならない対策も考えなくてはならないだろう。 牡馬と混ざっても体格負けしておらず、東京のマイルという条件も合うアエロリットは今後も注目に必要な馬だ。前で競馬ができる強みを活かせれば、2つ目のタイトルを獲得するチャンスも十分にあると思う。 1番人気に支持されたスワーヴリチャードは3着。敗因はマイルへの適性ではなく、道中で行きたがってしまったところにあると思う。あの状況でも3着に粘っているのだから、この距離もこなせる範囲と考えていいだろうし、速い時計の決着にも一応は対応している。今回の馬体重はマイナス10キロ。馬が少しでき過ぎていたと考える向きもあるようだが、そこまで影響はなかったと私は思う。いずれにしろ、現役を代表するトップホースであることに変わりはない。秋競馬での活躍に期待だ。 4着に以下の馬についても少しだけ。サトノアレスは出遅れと大外を回す距離ロスが響いたもの。2歳チャンピオンの威光を取り戻しつつあると思う。 5着のサングレーザーも結果的に外枠から外を回すロスに泣いた。勝ち馬との差は0秒2。トップクラスの能力は示したと言えるだろう。 6着のペルシアンナイトは直線の進路取りに苦しんだ。スムーズであれば、もう少し上位に入れただろう。この馬までが秋競馬での可能性を感じる面々で、それ以下の馬がマイル路線で頂点に立つイメージはない。新しく参入してくる3歳馬との力量比較を間違えなければ、そこまでの波乱も起きないはずだ。 〈古馬重賞〉 6/2(土) 阪神11R 芝2000m 鳴尾記念 ローカル重賞の域を出ないメンバー構成。ここから宝塚記念のイメージを持つことは難しいが、夏場のレースは状態面の影響を受けやすい。勝ったストロングタイタンは暑さに強いタイプということなので、一応は次走も注目としておく。これまでと違い、内をすくって勝ったレース内容も評価していいとおもう。 2着はトリオンフ。一瞬は「勝った」と思えるレースぶりで、勝ち馬と互角の評価をしてもいいと思う反面、まだ大レースで勝ち切るほどの力量はついていないとも感じた。ちなみに今回の1戦はレコード決着だったが、これは高速馬場の恩恵によるもので、評価を上げる材料にはならないと考えている。 〈新馬戦〉 6/3(日) 東京5R 芝1600m メイクデビュー東京 飛び抜けていたのは日曜東京の芝1600mを勝ったグランアレグリアで、これは誰が見てもクラシック級の素材だと思う。その内容について多くを語る必要はないと思っているので、ここでは同馬に対する私の考え方のみを紹介したい。 現在の生産界、特に社台グループのような大手の牧場では、クラシックに乗せたい血統は意識的に早期の種付けをし、早生れのアドバンテージを活かす戦略を取っている。グランアレグリアだけでなく、2着のダノンファンタジーもディープインパクト産駒で1月の早生まれ。牝馬に生まれたのは偶然でも、1月に生まれたことは偶然でないのだ。 一般的に牝馬は牡馬よりも早熟で完成も早く、1月生まれでもある上位の2頭は、この部分でも相当に有利。遅生まれの他馬が、来春までに差を詰めることが難しいだろう。ゆえに私は1月生まれの彼女をクラシック候補とした。勝ちっぷりだけではない理由を理解してもらえただろうか? 6/3(日) 東京6R 芝1400m メイクデビュー東京 日曜東京芝1400mを勝ったのは1倍台の人気になったアカネサス。苦しい状況から差し切った内容を評価する向きもあるだろう。母父はスペシャルウィークで母系も悪くない。しかし、本当に強い馬というのは、外から楽な手応えで悠々と走るもの。それこそグランアレグリアのように、だ。そのような意味もあって、私はそこまで高い評価をしなかった。 6/2(土) 阪神5R 芝1600m メイクデビュー阪神 それは土曜阪神の芝1600mを勝ったジャミールフエルテも言える。内で脚をためたレースぶりはいい。馬群から抜けてくるときの脚も悪くなかったが、仮にクラシック級の馬であったとのならば、ルメール騎手はもっと簡単に乗ってくるだろう。 誰が乗っても勝てる──。名手がそんな競馬をしたときこそ、レベルが違う馬と判断するべきなのだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』 などもお楽しみください。

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    【5月26日・27日開催】日本ダービー、目黒記念ほかレース解説

    〈3歳GI〉 5/27(日) 東京10R 芝2400m 日本ダービー 30頭近い頭数で行われた昔と現代とでは、いわゆる「ダービーポジション」の言葉の意味合いは大きく違う。しかし、実際に結果を見てみれば、位置を取ることの重要さがわかってもらえるだろう。「東京の直線は長い」と悠長に構えているようでは結果を出せるはずもなく、そんな考え方が通用するはずもない。キズナが直線一気を決めてからまだ5年。だが、その5年間で日本の競馬も変化を遂げた。この事実を認識できない人間は、ごく近い未来に淘汰されてしまうのではないだろうか。 厳しい言い方をすれば、ワグネリアンの力が傑出していたからこその勝利ではない、と私は思う。もちろん、皐月賞では1番人気に支持されたほどの馬で、デビューから一貫してダービー候補の評価もされてきた。勝てる能力を持った馬であったことは否定しない。だが、それでも私は断言する。今回の勝因は外枠から果敢に位置を取りに行った福永騎手の好騎乗であり、さらに言えば、それを可能にした陣営の馬作りにこそある、と。 パドックの所作を見ればわかるように、ワグネリアンはテンションの高いところがある馬。壁を作れない外枠からのスタートで、積極的に位置を取りに行けば、馬が行く気になってしまい、暴走してしまう可能性もある。ゆえにテンで勝負するのが怖い。仮に福永騎手が控える競馬をしたとしても、それを責めることはできなかったと思うが、そのような騎乗をしていたら、今回のような結果は出せなかった。これも間違いのない事実だ。 彼は1コーナーの入りまでにポジションを取りに行き、コーナーの手前の段階で、すでに距離ロスの少ないところまで馬を入れていった。これが目に見える1番の勝因で福永騎手の功績。この地点に至るまでに馬が行きたがる素振りを見せなかった。これは厩舎の手腕。こういう乗り方でなければ勝てないという乗り方をし、このような乗り方ができる馬を作り上げた。そして、このような競馬のスタイルが今後のダービーのスタンダードになっていくと私は思う。 今年のダービーは福永騎手のダービー初制覇として記憶に残る1戦となるだろう。だが、その背景に何があったのか、ということも記憶しておきたい。「馬よりも人が主役のダービー」。この言葉の意味をしっかりと理解しておくことが重要だ。 皐月賞は展開の恩恵が大きく、続けての好走は難しいと思っていたエポカドーロの2着には素直に驚かされた。見込み違いというか、GIを勝った馬の能力は侮ってはいけないな、と改めて思い知らされた次第。この馬の良さは鞍上の指示に従順なところで、折り合いを欠くようなシーンがまるでない。体型的に距離延長は微妙のような気もするのだが、今回のような競馬ができるのであれば、おそらくはノープロブレム。今後も大舞台で走っていく馬になるだろう。 3着コズミックフォースは16番人気、4着のエタリオウは13番人気。波乱のダービーを象徴する大駆けをした2頭だったが、今後に向けての注目は出遅れを克服し、上位馬の中で後方から追い込んだ唯一の馬となったエタリオウ。正直、私は青葉賞2着のこの馬を全く相手にしていなかったのだが、これだけの走りを見せられれば、評価しないわけには行かない。父ステイゴールドならスタミナ面の不安は皆無。菊花賞戦線を賑わす馬となるだろう。 5着のブラストワンピースは先週の馬体診断で懸念を示した通り。10キロ増の馬体は余裕が残っていた。極限の仕上げが必要なダービーでは致命的で、それがスムーズな競馬ができなかった理由になってしまったと思う。能力は高いのだろうが、今回はそれを生かせなかったという印象だ。 私の本命馬でもあり、ファンも1番人気に支持したダノンプレミアムは6着。直線で抜けてくるだけのスペースはあったと思うが、そこで加速することができず、最後は苦しがっているようにも見えた。パドックでの二重メンコだけでなく、レースでもメンコを着用。敏感になってしまう面を陣営は憂慮していたのかもしれない。ただし、一頓挫あっての出走であっても、仕上がり面に関してのマイナスはほとんどなかったと思う。パドックで見た馬体の作りは悪くなく、これなら走れると私は思った。ゆえに敗因を求めるのなら、2400mの距離ということになるのだろうか。今後、どのような路線を進むのかはわからないが、ダノンプレミアムの適性舞台は2000m前後と私は考える。自身に合うレースを選択していけば、頂点に君臨することも難しくないはずだ。 〈古馬重賞〉 5/27(日) 東京12R 芝2500m 目黒記念 惜しかったのは4着のポポカテペトル。外枠から位置を取りに行ったところまでは良かったのだが、コーナーの部分でどうしても距離をロスしてしまう。これが最後の最後に響いたようだ。直線では「このレースも金子オーナーの馬か」と思ったのだが、そこは遠慮してもらったということだろうか(苦笑)。 上位の馬の通過順や通ったコースを見ればわかることだが、内枠の馬が枠の利を生かして好位置を取り、距離ロスのないレースぶりをして最後はさばいた印象。これが現代競馬のスタイルなのかもしれない。勝ったウインテンダネスの父はカンパニーで、これが産駒の重賞初勝利。マイルから中距離で活躍した父のイメージと違う2500mでの勝ち鞍は意外だったが、母系の良さも出してくる種牡馬ということなのかもしれない。 〈3歳重賞〉 5/26(土) 京都11R 芝1200m 葵S 京都内回りの1200mはある程度のポジションを取ることが重要なコースで、追い込みも決まる1400mとは似て非なるものと考えていい。このコースにおける「行った行った」の決着は実力上位であることの証明にはならず、ゆえに今回の1戦で私が強調したいのも上位の2頭よりも、その下の着順に負けた馬たち。 外枠と展開に泣いた3着トゥラヴェスーラはその該当馬だが、この馬以上にもったいなかったのは1番人気で5着だったアサクサゲンキだ。出遅れはともかく、そこから進んで行かなかったし、がむしゃらに手綱を押すシーンもなかった。武豊騎手らしくない消極的な競馬だったと言えるかもしれない。最後はしっかりと伸びてきただけに、前半のロスが余計に目立ってしまった。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【5月19日・20日開催】オークス、平安Sのレース解説

    〈3歳GI〉 5/20(日) 東京11R 芝2400m オークス 私が管理したダンスパートナーもそうだったが、出遅れ癖のある馬がスタートを五分に出ると、それだけで勝つ確率はグッと上がる。最大の不安点であったスタートを五分に出たことで、これまで以上に楽な状況になっただろうし、目標が近くにいることで競馬もしやすかったと思う。余力をたっぷりと残しての追い出し開始も、それまでのアドバンテージがあればこそ。アーモンドアイが見せた今回のレースぶりに隙はなく、誰もが認める完勝だったのではないだろうか。 勝ち時計の2分23秒8も優秀なら、上位4頭の上がり3ハロンはすべて33秒台と瞬発力も要求されたレース。実力を持った馬でしか上位に来ることの出来ない展開で、1頭だけ抜けた強さをアピールしたアーモンドアイに対し、私は近年でも最強レベルの馬ではないか、という可能性まで感じた。 三冠制覇の可能性はかなり高いだろう。注目すべきは牡馬を相手にすることになる秋華賞以降のレースかもしれない。仮に私がアーモンドアイの関係者なら、凱旋門賞への挑戦をぶち上げたくなるところだが、とにかくそれほどの強さを秘めた馬ということ。今後の競馬界を引っ張っていく存在となりそうだ。 多くの方がご存知と思うが、アーモンドアイの母であるフサイチパンドラは私が管理した馬。ゆえに、この血統を持つアーモンドアイには、他の馬にない思い入れも持っている。関口房朗さんが自身で買ってきた何頭かの馬を私に見せ、その中から気に入った馬を私がチョイス。その馬こそがフサイチパンドラだった。誰もがサンデーサイレンス産駒の牡馬を欲しがる時代で、見せてもらった馬のほとんどがサンデーサイレンス産駒の牡馬だったのだが、選択馬の中で唯一の牝馬だった彼女を私は選んだ。懐かしい話だ。 牡馬を凌ぐ素晴らしい馬体をしていたこともあったが、彼女を選んだ1番の理由は産駒にトライマイベスト、エルグランセニョールといった2頭の種牡馬と関わりを持っていたセックスアピールを祖母に持つ血統。セックスアピールの血をもっているからこそ、私は彼女を選んだ。フサイチパンドラがGIを勝ち、その娘もGIを勝ったのだから、私の見る目は正しかったということだろうか(笑)。 娘のアーモンドアイは母に似ていない。だが、それは決して残念なことではなく、逆にフサイチパンドラ自身が見せなかった彼女の可能性を、繁殖牝馬として発揮してくれたことを嬉しく思っている。 フサイチパンドラはサンデーサイレンスの産駒でありながら、祖父ヌレイエフのスピードが全面に出た馬で、瞬発力に欠ける印象があった。一方、娘のアーモンドアイはロードカナロアにフサイチパンドラといったスピード色の強い父母を持ちながら、母父であるサンデーサイレンスの影響を強く感じる切れを持っている。私はアーモンドアイを見ると、フサイチパンドラではなく、ダンスパートナーを思い出すのだが、それはレースぶりに限ったことではなく、馬房にいるときの顔の表情とかも似ている。とすれば、アーモンドアイはサンデーサイレンスの隔世遺伝を受けた馬ということになるのだろうか。 そして、もう一つ。これまでのフサイチパンドラはキングカメハメハ、ハービンジャー、シンボリクリスエスと長めの距離に不安がない、もしくは長い距離こそ強いと思われる種牡馬を付けてきた。だが、彼女に必要なものが、そこでなかったということをアーモンドアイは証明してくれた。 フサイチパンドラ自身に豊富なスタミナがあり、実際に発揮することはなくても、サンデーサイレンス産駒らしい瞬発力も内包していた。とすれば、彼女に足りなかったもの──。それは高速馬場にも対応できる絶対的なスピードということになる。 その扉を開いたのが、父のキングカメハメハよりもスピードに特化しているロードカナロアだ。現代競馬に必要なものはスピード。2400mという距離であっても、それは変わらないと私は考えてきた。 アーモンドアイの今回の走りを見て、その思いを一層強くしたし、産駒の結果が配合ひとつで、馬の特徴が大きく変わることも改めて思い知った。そのような意味においても、収穫の大きいレースだったのではないだろうか。 血統の奥深さ、面白さを再認識し、そこに自分の関わった馬がいることに喜びを感じている次第である。 2着はリリーノーブル。ついにラッキーライラックとの立場を逆転させたわけだが、父ルーラーシップの距離適性だけでなく、攻めの姿勢で挑んだ陣営の仕上げのほうにも注目してあげたいと思う。東京への輸送を控えた牝馬が、レースの週にCWで80秒を切る時計を出すのは勇気がいること。馬格のある馬だからこそできたと思うが、それでも難しい判断だ。レース運びも含めて、何の不足もない状態で完敗したのだから、相手が悪かったと言うほかないだろう。 これは3着のラッキーライラックにも言える。いい仕上がりで挑み、いい位置を取って、いいタイミングでスパートした。折り合いを欠いたわけでもない。それでいて、2着を捕まえきれなかったのだから、周囲が思うほどにリリーノーブルとの力量差はなかったのだろうし、距離の適性を高くなかったのだろう。もっとも、この馬でも例年なら勝ち馬にふさわしいパフォーマンスをしていた。残念ながら、生まれた年が悪かったのだ。 〈古馬重賞〉 5/19(土) 京都11R ダ1900m 平安S 圧倒的な支持を集めたグレイトパールが5着、テイエムジンソクが6着に沈み、馬券の配当的には波乱の結末ということになった。確かに人気馬2頭のパフォーマンスは低調で、何かがあったのかと思うようなレースだったと思う。 テイエムジンソクはまだいい。パドックからイレ込んでいたし、道中のリズムも良くなかった。馬群の中で我慢をさせる競馬をさせていたが、フットワークの大きい馬。マイナスにしか働かなかったと思う。休み明けで58キロという斤量もあった。いくつかの敗戦理由が見つけられる競馬は、そこまで後を引かないものだ。 グレイトパールは違う。絶好調時には及ばなかったとしても、長い休み明けをひと叩きした上積みは確実にあっただろうし、パドックでの雰囲気も決して悪いと思わなかった。力を出せる状況であったにも関わらず、同じ位置にいて、同じタイミングで上がっていったミツバの後塵を拝してしまった。ダート転向後の唯一の敗戦は、今後に多少の不安が残る内容。次走が試金石となるかもしれない。 しかし、その一方でこのような見方はできないだろうか。勝ったサンライズソア、2着のクイーンマンボはともに4歳馬。実績では劣っていた彼らが、単純に強かっただけではないか、という考え方だ。 特に牝馬でありながら、最後の伸び比べで他の馬を制したクイーンマンボは、直線のほとんどを右手前のままで走ってきたことも含めて、今後にかなりの可能性を感じる走りを見せたと思う。牝馬限定の交流重賞で、それなりに距離のある舞台なら連戦連勝のレベルだろう。今後が非常に楽しみだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【5月12日・13日開催】ヴィクトリアマイル、京王杯SCほかレース解説

    〈古馬GI〉 5/13(日) 東京11R 芝1600m ヴィクトリアマイル 上位の着差は順にハナ、クビ、半馬身とわずかなもの。昨年3着のジュールポレールが、GⅠを勝っても不思議のない実力を持っている馬であることを認識したうえで、今回の1戦は上手に立ち回ったものにチャンスの大きかったレースと言っておきたい。 私が期待していたミスパンテールは、勝ち馬と同じような位置で競馬をしていたが、しっかりと折り合っていたジュールポレールに対し、ゲートで少し立ち遅れたミスパンテールは引っ掛かり気味の追走。直線での反応が鈍くなってしまった理由もここにあると思うし、決して力負けだったわけではないだろう。能力を出し切れる競馬ができれば、いずれチャンスは来るはずだ。 先ほども言ったように、ジュールポレールは道中のポジションから直線で仕掛けるタイミング、そこに至るまでのリラックスした追走と、無駄がまるでなかった。枠も絶好の2枠4番。ここに運もあったのだと思う。この血統は父がフジキセキの兄サダムパテックもマイルCSを勝っており、改めて母系の重要さを示す結果となっている。 2着リスグラシューも競馬の形は完璧だったと思う。ただし、ジュールポレールと違い、この馬の枠は8枠16番。無理をして位置を取りに行けば、そこで無駄なスタミナを使ってしまうし、枠なりの競馬をすれば、今回のように少し後ろの位置になってしまう。武豊騎手は後者を選択し、最後はすごい末脚で追い込んできたわけで、結果的に運がなかったというほかないだろう。 3着のレッドアヴァンセは状態が良かっただけでなく、母エリモピクシーの底力を見たというか、この血統は左回りのマイル戦は本当に得意だな、という印象を改めて強く持った。この母の産駒だけで4頭の重賞勝ち馬を出し、今回のように重賞を勝っていない馬でもGⅠで好勝負してくる。この母系の素晴らしさを証明する1戦であったとともに、現代競馬でもまだまだ通用するテスコボーイのスピードに驚いている。 〈古馬重賞〉 5/12(土) 東京11R 芝1400m 京王杯SC このレースも上位の差はわずかで、立ち回りの差が明暗を分けたという意味でも、ヴィクトリアマイルに近いレースと言えるかもしれないが、私がこのレースでポイントとして取り上げたいのは、勝ったムーンクエイクに騎乗していたルメール騎手の存在。 ムーンクエイクは非常に難しいタイプの馬のようで、今回でも行きたがる面を上手になだめながら、道中で力をロスしないようにしていた。さすがというべき騎乗だったと思う。それが最後のひと伸びへと繋がっていくのだから、競馬において騎手の担う役目は本当に大きいということだ。 前走で騎乗したバルジュー騎手は同馬をコントロールしきれなかった。だが、これはルメール騎手が上手で、バルジュー騎手が下手ということではない。ビデオやパトロールをどれほど見ても、乗ってみた感触というのは映像と違ってくるものだし、ムーンクエイクのようなタイプの馬は特にその差が大きい。何度もムーンクエイクに騎乗し、また藤沢厩舎の馬に騎乗する機会も多いルメール騎手は、その特徴と対処の仕方を頭と体の両方で覚えているわけだ。私は安易な乗り替わりが好きでなかったが、それは継続して乗ることでしかわからない部分が競馬にはあると思っているからにほかならない。 最後にムーンクエイクと上位馬の今後について。騎手を選ぶ馬であることを考慮に入れたうえで言えば、ムーンクエイクは大舞台でも通用する馬と思う。マイルに距離を延長しても問題ないだろう。もっとも、今回のように我慢をさせることができれば、の話ではあるが。 同馬に迫ってきた3着サトノアレスも大舞台でチャンスのある馬と認識していいだろう。直線での脚にはまずまずの迫力があった。4着グレーターロンドンはもったいない競馬。力はここでも上位のものがあるのに、結局は直線しか競馬をさせてもらえなかった。このような競馬を続けているようでは、大望は期待しにくいかもしれない。 〈条件戦〉 5/12(土) 東京9R 芝2000m 夏木立賞 藤沢厩舎とルメール騎手のコンビで、もう一つ取り上げておかなければならないのが、3歳500万下の夏木立賞を勝ったレイエンダ。昨年のダービーを勝ったレイデオロの弟という血統馬で、今回が骨折による9か月半ぶりのレースだった。10キロ増でも体はできていたし、他の馬のペースに左右されないレースぶり。外から上がっていく脚は重賞級のそれだった。かなりの器だ。 今回でキャリアは2戦目だが、1月30日の早生まれ。完成度が高い可能性はあるし、これからどれくらい伸びていくかはわからない。だが、間違いなく注目され続ける馬であり、持っている能力の高さも疑いようがない。ヴィクトリアマイルで好走した馬たちにも言えることだが、このような馬を立て続けに出してくる血統の確かさには驚かされるばかりだ。この馬は母系にウインドインハーヘアがいる血統。この繁殖牝馬は本当に素晴らしい。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【5月5日・6日開催】NHKマイルC、京都新聞杯ほかレース解説

    〈3歳GI〉 5/6(日) 東京11R 芝1600m NHKマイルC 見応えのある1戦だった。ゴール前で態勢が入れ替わり、追い込みを決めたケイアイノーテックが勝ちながら、先行したギベオンやミスターメロディも最後まで際どいところで粘った。その一方で、直線でスムーズさを欠いたタワーオブロンドンのように、激しい競馬で力を出せずに終わった馬もいた。競馬の色々な部分が凝縮したレースではなかっただろうか。 今回の結果を踏まえ、上位馬の今後について簡単に検証していきたい。まずは勝ったケイアイノーテック。母のケイアイガーベラはダンジグ肌にスマーティージョーンズという配合で、スプリント色の非常に強い馬だったが、この馬はテンで掛かるような面を見せないどころか、押しても前に進んでいかないほど。ディープインパクトの影響が出ているのだろう。母のイメージと違い、2000mくらいまでの距離は普通にこなしてしまいそうだ。秋は中距離路線も視野に入れているとの報道があったが、面白い挑戦になると思う。 2着のギベオンは好位で上手に競馬を進め、直線半ばでは「勝った」と思えるほどの内容の濃い競馬をした。マイルのペースにも楽に追走できるスピードを見せたことは、今後のレース選択に幅を広げたと考えていいだろうが、タイプ的には中距離馬のような気がしている。いずれにしろ、今後も安定して走りそうな馬だ。 3着のレッドヴェイロンは1勝馬。500万下からの再出発になるのだから、自己条件では大人気になるだろう。大舞台で能力の高さを証明した格好になったが、多くの活躍馬を輩出しているエリモピクシーを母に持つ血統馬。終わってみて「やっぱりな」と思う結果と言えるかもしれない。 ちなみに今回の1戦で、最も将来有望と感じた馬は4着のミスターメロディ。外枠だったために道中のタメが利かず、早々に前へと行ってしまう競馬。ギベオンに交わされてしまったときには、あっさりと失速してしまうように思えたのだが、そこから先がしぶとかった。本質的にはスプリンターのはずで、この馬にとって東京の1600mは少し長かったはず。それでも、この着差である。適条件に戻れば、本来のスピードを活かす競馬で勝負になると思うし、彼はダートに舞台を替えても走れる。短距離のオールラウンダーとして、大舞台で活躍し続けてくれるはずだ。 〈3歳重賞〉 5/5(土) 京都11R 芝2200m 京都新聞杯 1000mの通過タイムが58秒5。2番手から進めたステイフーリッシュでも、それなりに速いペースで行っているはずで、にもかかわらず、ラストの600mを11秒3-11秒4-11秒9で走り抜けた勝ち馬の強さには、着差以上のものを感じた。持っている能力が他馬とは大きく違った、との結論でいいかもしれない。 収穫大だったのは、2番手から競馬を進めたことだろう。これまでは末脚一辺倒の競馬しかしておらず、そのスタイルしかないのかと思わせていた。そのような馬では厳しいのがダービーだ。ダービーには“ダービーポジション”と昔から言われる言葉があり、1コーナーを10番手以内で回ることが重要とされている。ゆえに今回の内容はダービーへの展望を開くものとまで、言うことができるわけだ。 このあとに検証するプリンシパルSでも触れるつもりだが、関西馬が短いスパンで東京への長距離輸送をすることは好ましくない。自己条件ならこなせるかもしれないが、ステップアップしてGⅠを狙っていく立場。輸送の距離が短く、直線も平坦な京都新聞杯を走ったほうが、本番での好走を期待できるローテーションなのだ。距離延長に不安のないステイゴールド産駒。詰まった日程を克服できれば、本番での好走も期待できるかもしれない。 〈古馬重賞〉 5/6(日) 新潟11R 芝2000m 新潟大賞典 横一列に馬が並んだ直線はハンデ戦らしいものだったが、あれだけスペースを与えてしまえば、コースのロスなく立ち回った馬が有利になってくるだろうし、1000m通過が62秒3の超がつくスローペース。余計に影響があったはずだ。勝ったスズカデヴィアスは1枠1番からの馬群の内をスムーズに立ち回り、直線でも楽に抜けてきた。快勝と言っていいだろう。 ただし、今後もローカル重賞を走る続けるであろうメンバー構成。次走の好走を確約できる馬もいなかった。ハンデを背負った高齢馬が上位を占めた1戦は、スリリングと呼べるような競馬でなかったようにも思う。 〈オープン戦〉 5/5(土) 東京11R 芝2000m プリンシパルS 着差はわずかでも、自分から前を捕まえにいったコズミックフォースと2着以下の力量差はそれなりにあると思う。最後まで抜かせず、辛抱した内容は1番人気にふさわしいもの。あそこで差されてしまうような馬では、大きい舞台での活躍はもちろん、そこまでも到達できないものなのだ。 とはいえ、プリンシンパルSはダービーのトライアルレースの中でも、最もレベルの落ちる1戦になりやすく、おそらくは今年もそうだろう。関東馬が勝ったことで輸送のリスクは軽減されるが、日程的な厳しさは京都新聞杯と同様。大混戦とされる今年のダービーであっても、本番での好走は難しいと思う。 ちなみに私が考えるダービーへの最も有望な前哨戦は皐月賞。日程面のゆとりが大きいことが一番の理由だ。次が京都新聞杯。ダービーと同じ舞台の青葉賞としなかったのは、この時期の3歳馬が東京の2400mを中3週で走る厳しさを知っているため。青葉賞の勝ち時計だけ走れば、本番でも好勝負可能な馬も少なからず存在した。だが、ダメだった。最もダメージが残るレースは青葉賞なのではないだろうか。プリンシパルSは日程と出走馬のレベルによって、最下位とせざるをえない。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【4月28日・29日開催】天皇賞(春)、青葉賞ほかレース解説

    〈スペシャルウィーク〉 先週金曜日の夕方、私が管理したスペシャルウィークの悲報が飛び込んできた。多くの新聞社から連絡が入り、コメントも発表させてもらったが、私の長い競馬人生の中でも「最高傑作」と考えている馬。簡単に整理できるものではなく、仔馬時代から競走馬となった彼の立ち写真を眺めながら、どれか一つと絞ることの出来ないたくさんの思い出で、心を濡らすことになった。どんな動物でも、いずれは死を迎える。仕方のないことではあるが、気持ちの沈む週末となってしまった。 スペシャルウィークの誕生日は5月2日。ゴールデンウィークの真っ只中に生まれ、ゴールデンウィークが明けるとともに北海道へと飛んだ日が、昨日のことにように思い出せる。本来であれば、今年の5月22日。一つ年を重ねた彼に会いに、彼の生まれ故郷である日高大洋牧場へと訪れるつもりだった。 彼に会えなかったことを残念に思うとともに、改めて感謝の気持ちを送りたい。安らかに眠ってほしいと思う。 〈古馬GI〉 4/29(日) 京都11R 芝3200m 天皇賞(春) 京都の3200mは難しい。そんな感想を改めて持った1戦だった。現代競馬において3000mを超える長距離レースは、特殊なカテゴリーに属していると考えていいが、同じ3000m超のレースであっても、走るコースが替わることにより、動いていくべき場所も、通るべきコースも大きく変わってくる。ゆえに京都の3200mは難しいという発言をしたわけだ。 レインボーラインは前走の阪神大賞典に続き、3000m超のレースを連勝してGⅠ制覇を果たした。しかし、勝負どころで外から進出し、他馬を捻じ伏せるような形でコーナーを回った前走と違い、今回は直線を向いた段階でも今後の進路を選べる位置。最終的に岩田騎手はシュヴァルグランの内を狙ってくるのだが、そのポジションに馬を誘導できたかどうかが結果を決めた、と私は考えている。 レース後の下馬があり、その後が心配されたレインボーラインだが、想定していた最悪の事態は避けられたようで、そこは素直にホッとしている。ステイゴールド産駒らしい小柄な馬体だが、追ってしっかりとしている馬で、前を捕まえようとする気持ちも感じる。人馬ともにいいレースをしたと言えるのではないだろうか。 思っていたよりも楽に3番手の位置を取り、そこで進出の機会をうかがう形になったのが2着のシュヴァルグラン。すでに直線入り口で先頭に立ったボウマン騎手の騎乗ぶりは責められないだろう。3000mを超えるレースでは、脚をためて直線一気のような芸当は非常に難しい。能力のある馬であれば、悔いの残らないように積極的な騎乗をすべきだろうし、私が当事者であるなら、そうしてほしいと思う。最も強い競馬をしたのは同馬だろうし、実際に3着のクリンチャーを抑え込むことはできたのだから、キタサンブラックやレイデオロを相手にジャパンカップを勝った能力を示すことができたと思う。 3着のクリンチャーも上手な競馬をしたと思うが、追ってしぶといキャラクターを活かしきるまではいかなかった。武豊騎手の代打に指名された三浦騎手の技術は確かだが、京都の3200mの経験がそこまで豊富でなく、加えてGⅠにテン乗り。簡単ではなかったと思う。クリンチャー自身に問題はないかもしれないが、このレースはコースの攻略が難しい。シュヴァルグランよりも高い評価をできない理由のひとつに、このテン乗りを私は挙げていた。 サトノクロニクルの川田騎手を筆頭に、トーセンバジルのデムーロ騎手、アルバートのルメール騎手は、道中で動いて行こうという姿勢を見せた。しかし、昔から言われるように「淀の坂はゆっくりと上って、ゆっくりと下りる」がセオリー。外を回らされる距離ロスは避けたいが、下手に動くとスタミナをロスしてしまう。これほどの騎手であっても、外枠からのスタートはマイナス材料になるということだ。 何度も言うが、京都の3200mは難しい。それを改めて感じた1戦だった。 〈3歳重賞〉 4/28(土) 東京11R 芝2400m 青葉賞 2分24秒4の走破時計は悪くなく、このままの数字をスライドできれば、ダービーでの好走も可能ということにはなる。勝ったゴーフォザサミットの父ハーツクライ。母父はストームキャットでも、この距離にまるで不安を持たない馬と考えていいだろう。 だが、それでも本番での好走確率は高くないように思う。この時期の3歳馬にとって、2400mの距離を走ることは簡単ではなく、肉体へのダメージも残りやすい。速い時計が出るようになった近年は特にそうで、ゆえに有力視される馬たちは、ある程度の間隔を取れるローテーションを組むようになっている。前述したような速い時計は能力の証明になる一方で、本番までに疲労を回復させることができないのでは?という不安材料にもなってしまうのだ。 唯一の救いは、勝ったゴーフォザサミットが関東馬であるということ。シンボリクリスエスにゼンノロブロイ、フェノーメノなど、短い期間での長距離輸送を避けられる関東馬のほうが、ダービーでも好走しやすい傾向にある気がする。 青葉賞の2着で権利を取ったプレシャスソングという馬をダービーに出走させた経験があるが、本番までのお釣りを残すことができずに8着と敗れた。関西馬にとって、かなり厳しいローテーションということは、覚えておいたほうがいいだろう。 〈3歳オープン〉 4/29(日) 東京11R 芝1800m スイートピーS 前走は道中で口を割るなど、スムーズな走りができなかったランドネだが、今回は少頭数の外枠スタートということもあり、2番手でもリラックスした追走。このような競馬ができれば、今後に期待は持てるだろうし、飛びの大きいフットワークにスケールも感じる。牝馬でも500キロ近い馬格を有しているところも魅力と言えるだろう。 しかし、それは秋以降のレースを見据えた場合のことであって、中2週で挑まなくてはならないオークスは、さすがに体調の維持が難しいだろう。今回の馬体重は前走から12キロ減。薄いとまでは言わないが、これ以上はさすがに厳しいと思える状態だった。 栗東に戻して、再度の長距離輸送。特に今年は上位陣の層が濃い。苦しい競馬になると思う。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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