先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

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    【3月25日・26日開催】ドバイワールドCデー、高松宮記念ほかレース解説

    〈3歳戦〉 3/25(土) 阪神11R 芝1800m 毎日杯 まずはGIIIの毎日杯について、振り返ってみたい。 勝ったアルアイン、2着に敗れたサトノアーサーは、ともに池江泰寿厩舎の管理馬。 前者は皐月賞からダービーに、後者はダービーへ直行する予定と聞いている。その舞台で好走できるのかどうかという点も含め、このレースを検証してみたい。 勝ったアルアインは父がディープインパクト、母がチャンピオンスプリンターだったドバイマジェスティという血統背景。距離の壁があるタイプと思われているようだが、1分46秒5の勝ち時計は水準レベルに達しており、同型に競り込まれながらも、失速することなく、最後まで粘り通した内容も濃い。東京の2400mはともかく、中山の2000mをこなせるスタミナは有していると判断してよく、次の皐月賞でも差のない競馬ができるのではないかと私は考えている。 これまでにない自在性を見せたこと。これが理由の1つ。小回りコースの中山では、前に行けるというだけで大きな武器となるからだ。 しかし、なによりも注目すべきなのは、前走比で6キロ増の馬体に余裕があったことだろう。中2週で挑む皐月賞に向け、しっかりとお釣りを残した仕上げで挑んでいたという事実。これこそが重要だと私は思う。 GIを見据えた状態で結果を残した馬と、メイチの状態で勝った馬とでは、その評価も大きく変えるべき。前哨戦は前哨戦と割り切った状態で出走させ、その状況できっちりと結果を出した──。私が考えるような「奥の深さ」がこの馬にあれば、皐月賞の舞台で結果を残すことも可能なはずだ。 器の大きさは2着だったサトノアーサーのほうが上。その走りっぷりを見れば、持っている能力の違いは歴然としている。競馬ファンの多くの方が、そのように感じているのではないだろうか。 では、それほどの馬が2着に負ける理由とは? そのレース内容を改めて確認してほしい。鞍上の川田君が、最初から位置を取りに行く競馬をしていないことが、わかってもらえると思う。馬体に芯が入っておらず、ゆえに後方からの競馬をし、直線のみで勝負している印象のレースぶり。それを如実に感じさせたのが、コーナーから直線に向いた瞬間の同馬の姿だ。 ペースが上がったところで、瞬時にギアが上がっていかない。もちろん、あまりにも飛びの大きいフットワークで、加速が付きにくいという性質もあるとは思う。しかし、鞍上がうながしても、一度は置かれてしまう現在の状況は、腰に力が入っていないために、踏ん張りが利いていないとも感じる。これが現在の同馬のウィークポイントであり、勝ちきれない理由と言えるだろう。 東京の芝2400mという舞台への適性は高いはず。そのようなフットワークで走る馬だ。問題はダービーが行われる5月末までに、その弱点を補えるほどの力を付けられるのかどうか。これに関しては、ダービー週の馬体診断で、改めて触れてみたいと思う。 3/25(土) 中山9R 芝2000m ミモザ賞 3歳戦からはもうひとつ。土曜の中山で行われたミモザ賞を取り上げておきたい。スローペースで流れ、時計も平凡だったが、ほぼ馬なりで勝ったルヴォワールのスケールは大きい。次走はフローラSを予定しているようだが、当然ながら有力視すべき1頭だろう。 キャリア2戦目の馬とは思えない落ち着いたパドックでの佇まい。大型の牝馬で、晩成で知られるハーツクライ産駒。本来なら緩さがあって当然のはずだが、この馬にはそれがない。おそらくは1月の早生まれであることが、その理由になっているのだと思う。 スローペースにもまるで動じない精神力、鞍上の仕掛けにもスムーズに反応する賢さが、この馬にはある。ソウルスターリングを筆頭にした今年の3歳牝馬はレベルが高く、そのメンバーに割っていけるかどうかの確信はまだ持てないが、少なくとも条件で止まるような馬ではないだろう。 〈古馬戦〉 3/26(日) 中京11R 芝1200m 高松宮記念 中京競馬場で行われたGIの高松宮記念は、セイウンコウセイに騎乗した幸君のインサイドワークが光ったレースだった。 どの部分が重要なのかと言えば、スタートしてから3コーナーに向かうまで。好スタートを切ったセイウンコウセイは、鞍上の意思によっては先行争いをすることも可能な状況だったはずなのに、幸君は位置を一列下げた。この決断が大きかった。 内ラチ沿いの芝状態はかなり悪く、それは3~4頭分にも及ぶとの話を聞いていた。 3枠6番からのスタートだったセイウンコウセイが、もしも先行争いに加わっていれば、ハナ争いを演じた2枠4番ラインスピリット、5枠9番シュウジの間に挟まれた状態で、レースを進めていたと思われる。ハイペースに巻き込まれるだけでなく、自分で進路を選ぶこともできない最悪の状況になっていただろう。 だが、幸君は両サイドに馬を置くことを避け、自分から進路を選べる位置をキープした。2着レッツゴードンキ、3着レッドファルクスが内から追い込んできたことで、馬場の差はそこまでなかったのではないかと思った方もいるかもしれない。しかし、それはとんでもない間違い。パトロールビデオを改めて見てほしい。セイウンコウセイが通っている場所、内の2頭が通っている場所の芝状態の違いが、はっきりと認識できるはずだ。 道悪競馬になったことが、セイウンコウセイの追い風になったことは否定できない。 しかし、4歳の同馬はキャリアも浅く、まだ完成したとは思えない馬。幸君の好騎乗も、楽に位置を取れるセイウンコウセイのスピードがあればこそ。この勝利を過小評価すべきではない。私はそう思っている。 2着レッツゴードンキは一時の不振を完全に脱した。3着のレッドファルクスは休み明けでもきっちりと仕上がっていた。この路線での力量上位を示す結果ではあったと思うが、条件とレース展開が今回は向かなかった。評価を下げる1戦でも、評価を上げる1戦でもなかったと私は思う。 中山では日経賞、マーチSの古馬重賞が2鞍行われたが、次回のGIに繋がるという意味で、取り上げたいのは日経賞。勝ったシャケトラの可能性、5着に敗れたゴールドアクターの今後について、考えてみたい。 3/25(土) 中山11R 芝2500m 日経賞 外枠から勝つことが難しい中山2500mで、距離ロスの多い外を回り、なおかつ先行馬が残るようなスローペースを、外から差し切ったシャケトラの強さは別格だった。いずれはGIの舞台で走る馬との認識を持ったが、それが次走の天皇賞(春)かとなると、まだ懐疑的な部分がある。 サトノダイヤモンド、キタサンブラックと違い、シャケトラにはGIの舞台で、強い相手と走ってきた経験がない。それを覆すには一枚上の能力が必要になるが、天皇賞のメンバーは今回と違う。簡単なレースにはならない──が現段階での私の見解だ。 しかし、仮に差のない競馬ができるようならば、それらのレベルの馬を相手にしても五分に戦える日は近いだろう。デビューが遅く、わずかなキャリアしかない4歳馬にもかかわらず、パドックでの周回に雰囲気があった。ハイレベルの1戦で戦えるメンタルの強さを、すでにこの馬は示している。 馬体もいい。走りもいい。足りないのは経験だけ。勝ち負けを度外視すれば、天皇賞で最も注目すべき馬と言えるかもしれない。 一方で、直線での伸びを欠いたゴールドアクターのレースぶりには不満を感じた。いいポジションを取り、直線を向いた段階での手応えも十分。普通に勝つのかなと思ったが、前の馬も捕まえられず、後ろの馬には差される始末。その内容に収穫は1つもない。 思えば、初のGI勝ちだった一昨年の有馬記念は、パドックでの周回でも気合いを内に秘め、素晴らしい雰囲気で歩くことができていた。それが、前走の有馬記念では少しチャカ付き気味になり、今回の日経賞では気負いが目につくほど、うるさい状態になっていた。これは嫌な材料だ。 本来、競走馬というものは年齢を経るごとに精神面が成熟し、それがパドックの周回にも表れる。キタサンブラックが好例。しかし、その逆の状態になってしまっているのがゴールドアクターだ。6歳という年齢を考えても、この状況からの巻き返しを期待するのは難しいのではないか。そんなことを思う1戦だった。 最後に昨年の皐月賞馬ディーマジェスティについて触れておきたい。勝負どころの反応が悪いのはいつものこと。6着という結果もパッとしないが、昨年秋から腹構えがどっしりし過ぎているというか、少し余裕があり過ぎるように感じている。 馬体が絞れ、走れる体型になった状態で、どんなパフォーマンスを見せるのか? 強い内容で皐月賞を勝っている馬。評価を下すのは、そこまで持ち越すべきだと考えている。 〈特別編〉 ドバイワールドCを筆頭としたドバイの国際レースをいくつか振り返ってみたい。 現地時間3/25(土) メイダン9R ダ2000m ドバイワールドC まずはメーンのドバイワールドC。勝ったアロゲートの強さは異次元で、日本の馬ではどうやっても敵わないという印象のレースだった。「世界にはとんでもない馬がいる」との認識を持ったファンの方も多いのではないだろうか? あのような馬を見ることが、私にとっては大きな喜びと言える。 今週の栗東で武豊君に「スパイクは履いたのか?」と質問してみた。アメリカの馬に太刀打ちするために、スパイク鉄を履くことは不可避。しかし、スパイク鉄を履く習慣のない日本馬にとっては、それを履くことが大きな負担にもなる。ゆえに難しい選択を関係者は迫られるのだ。 彼の答えは「5ミリのスパイクを使用しました」だった。その背景にはアウォーディーのオーナーでもあるチーム・ノースヒルズの高い野望が見てとれる。 日本で競馬をする時と同じようにする──。その表現は聞こえこそいいが、チャレンジの欠如だと私は思う。両刃の剣かもしれないが、明らかにパフォーマンスを上げる武器がある。なのに、それを使わないという選択肢を選ぶ。そのような選択しかできない馬が、強いアメリカの馬に勝てるはずもない。 ノースヒルズの前田オーナーは、アメリカでのGI制覇を目標の一つに掲げている方だ。そのために何をすべきか? それを理解されていると私は思う。 世界最強と呼ばれるアロゲートに挑み、勝ち負けまで持ち込むことができなかったアウォーディー。しかし、彼はこれまでになく前向きに、最後までしっかりと走りきっていた。これ以降の活躍に今回の経験が生きてくると思うし、生きてほしいと思う。 現地時間3/25(土) メイダン7R 芝1800m ドバイターフ ドバイターフを制したヴィブロスの活躍には素直に驚いた。騎乗したモレイラの凄さを改めて感じると同時に、私が強調したいのはドバイへの挑戦を決めた佐々木オーナーのチャレンジスピリット。これに敬服した。 ジェンティルドンナにウオッカ、ブエナビスタ、レッドディザイア。これまでもドバイに遠征した牝馬はいたが、そのほとんどが牡馬相手のGIでそれなりのパフォーマンスを見せ、誰もが認める現役最強レベルの馬だった。ゆえに私たちもドバイでの活躍を期待したのだ。 しかし、ヴィブロスは違う。秋華賞を勝っているものの、牡馬相手の大レースの結果を出したこともなく、前走の中山記念も5着でしかなかった。この馬で足りるのか──。そう思ったファンは少なくないだろう。なによりも彼女は420キロしかない小柄な牝馬だ。海外遠征のダメージは普通の馬よりも大きい。素直に国内の牝馬限定GIで…と考えるのが、一般的だと思うのだ。 しかし、常識に捕らわれず、世界レベルのGIにチャレンジした対価は大きかった。 4億円という賞金だけの話ではない。世界レベルの能力を示したヴィブロスは、繁殖牝馬としての価値をも大きく上げた。繁殖に上がった際の彼女の仔に、世界中のバイヤーが注目することになる。ただでさえ、クズが出ないとされる血統だ。全姉のヴィルシーナ、半兄のシュヴァルグランなども注目度が上がるだろう。彼らの価値を引き上げたという意味でも、このチャレンジがもたらした成果は大きい。 私は何度も言ってきた。「町内運動会で満足している時代は終わった。世界に出て行かなければ、これまで以上の成功は望めない」と。ヴィブロスの陣営が見せてくれたものは、素晴らしいレースだけでなく、高みを目指した精神。それこそを賞賛したいと思う。 現地時間3/25(土) メイダン8R 芝2410m ドバイシーマクラシック サウンズオブアースが出走したドバイシーマクラシックは少頭数だったが、まずまずの顔ぶれが揃った1戦だった。このレースを見た私が思ったことは1つのみ。 「このレベルの馬をジャパンCに連れて来なければならない」。 海外の馬券を発売し、そのレベルで走っている海外の馬をファンは知るようになった。彼らが日本で走る姿を、ファンも見たいと思っているはずだ。 「なぜ、彼らは日本の競馬をスキップするのか?」 そんなことをファンに思わせてはいけない。これまで以上の頑張りを、JRAには期待したいところだ。 現地時間3/25(土) メイダン4R ダ1900m UAEダービー 最後にUAEダービーで惜しい2着だったエピカリスについて。この敗戦を受けて国内のレースに戻るのではなく、積極的にアメリカの競馬に挑戦するという姿勢に感銘を受けた。 正直、今回の1戦を持って、かの地で通用するとの確信は持てない。しかし、地方交流レースでタイトルを増やし続けたところで、飽和状態になっているサンデーサイレンス系の種牡馬の上位に入ることはできない。 ヴィブロスやエピカリスが出した今回の結果を受けて、世界の目は改めてサンデーサイレンスの血に向かうだろう。彼らのような馬が日本ではなく、世界に舞台を移して戦うことは、競馬産業という観点において、実に意義深いこと。その流れを止めるような番組を、JRAには作ってほしくないと私は思う。

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    【3月18日・19日・20日開催】スプリングS、フラワーCほかレース解説

    〈3歳戦〉 GIが間近に迫り、クラシックの勢力図も固まり始めたなかで行われたトライアルレース。今回はレースの中身よりも、本番での可能性について言及してみたいと思う。 先週は皐月賞のトライアルレースが2レース。中山のスプリングSと阪神の若葉Sがそれで、結論から先に言えば、本番で主役を張れるような馬は、今回も登場しなかった。 3/19(日) 中山11R 芝1800m スプリングS まずはスプリングS。GI馬のサトノアレスが出走し、それなりのメンバー構成ではあったと思う。1000m通過タイムは60秒3。まずまずのペースで流れており、道中が中だるみになり、1000mの通過タイムが63秒2の超スローペースになった弥生賞と比べれば、本番に近いラップ構成でもあった。 しかし、どの馬も目一杯の競馬をしたように見えたにもかかわらず、勝ち時計は1分48秒4。1分47秒台に突入することはできなかった。もちろん、この数字でも遅いわけではない。しかし、仮に残りの200mを12秒で走った場合、2000mの走破時計は2分を超えてしまう。数字は正直なもので、あとひと伸びが利いたかどうかも、このラスト1Fを見れば、大体のところがわかるものだ。 果たして、このレースを走った面々は、皐月賞で2分を切ることができるだろうか? これが、本番でも勝ち負け当確と言えない理由。有力視されるかもしれないが、私は強く推せない。 では、上位馬を順にチェックしていく。まずは勝ったウインブライト。ステイゴールド産駒らしい気性の難しさを、パドックの周回から見せており、12キロ減の馬体が示すように、腹回りのラインも今回の時点でギリギリ。勝ったという事実は評価したいが、本番への上積みは期待しにくい。馬体を維持することのみに専念する調整では、クラシック制覇は難しいと思う。 2着のアウトライアーズはウインブライトよりもいい馬体をしており、踏み込みも力強かった。しかし、パドックの周回からそうだったが、まだ頭が高い。一流と呼ばれる馬は、水平首で周回するもので、この点では弥生賞を勝ったカデナのほうが上と判断できるだろう。 朝日杯FSの勝ち馬サトノアレスは4着。出遅れもあったが、もうひと伸びして欲しかったというのが正直なところだ。この馬もパドックで少しうるさい面を見せており、この1戦を使ってのガス抜きができるのか、それとも次走も似たような状態で本番を迎えるのか。それで評価も大きく変わってくる。前走から増減なしの馬体は、ほぼ仕上がったと考えてよく、極端な上積みは見込めないだろう。今後は気持ちの問題が重要になってくるはずだ。 朝日杯FSで2着だったモンドキャンノは10着に惨敗。前に壁を作れなかったとはいえ、まともに行きたがってしまった。父はキンシャサノキセキで、母父はサクラバクシンオー。この状態になってしまうと、1800mの距離をこなすのは厳しい。1600mに距離が短縮される次走でも、力を入れずに走れるかどうかがポイントになってくるだろう。 3/18(土) 阪神11R 芝2000m 若葉S 阪神の若葉Sはアダムバローズがハナ差で勝利。2番手から流れに乗った競馬ができ、レース内容としては文句のないものだったと思う。これで2着馬を2馬身ほど突き放していれば、素直に「本番でも」と言えるのだろうが、ゴール前の脚色はすでに一杯。激戦になる皐月賞でも、同じように粘り込めるとは、到底思えなかった。 素質だけを言えば、キャリア2戦で2着に好走したエクレアスパークルのほうが上と考えている。しかし、この馬も最後は勝ち馬と似た脚色に。皐月賞までは中3週──。時間が足りないというのが、この馬に対する印象だ。 いずれにしろ、スプリングS組よりも落ちるメンバーで行われるのが若葉Sの傾向。圧倒的なパフォーマンスをする馬でなければ、本番で勝ち負けに持ち込むことは難しい。 前述したカデナのほかに、共同通信杯を勝ったスワーヴリチャード、暮れのホープフルSを勝ったレイデオロ。これらが上位人気を形成することになるのだろうが、やや小粒な印象であることは否めない。波乱の可能性もありそうだ。 3/18(土) 中京11R 芝1400m ファルコンS 中京で行われたファルコンSは、NHKマイルCの前哨戦的な意味合いのレース。正直、レースそのものにインパクトがなく、本番で主役に推せるような馬もいなかったが、現段階でNHKマイルCに向かう馬で断然と呼べる存在はいない。ゆえに、このレースの上位馬でも好勝負に持ち込めてしまう可能性がある。 勝ったコウソクストレートは、1400mへの距離短縮が勝因のように思われるかもしれないが、父がヴィクトワールピサで母系は三冠牝馬のメジロラモーヌへと繋がる。1600mをこなせないはずのない血統なら、前々走のシンザン記念14着の理由は、それ以外にある可能性が高い。結果の出ている左回りでなら、また違う走りを見せるのではないだろうか。 だが、この馬以上に私が期待して見ていたのが、2着に惜敗したボンセルヴィーソ。 ダイワメジャー産駒らしいスピードはこの日も健在。無理に主張することなく、3番手で収まっていたレースぶりも良かったと思う。最後はコウソクストレートに決め手負けした格好だが、当時の中京の芝は、外のほうが伸びる馬場だったように見えた。 勝ち馬と互角の評価を与えてもいいだろうし、本番での逆転も十分にありうると私は考えている。 3/20(月) 中山11R 芝1800m フラワーC さて、ここまで3つのレースを振り返ってきたが、先週の3歳戦を振り返ったとき、絶対に忘れてはならないのは、月曜の中山で行われたフラワーCだ。戦前から勝つだろうとは思っていたし、実際に5馬身差で楽勝したパフォーマンスも素晴らしかったのだが、それでは「遅れてきた大物」ファンディーナが、次走以降も勝ち続けることができるのか? この点について、私なりの見解を示したいと思う。 まず、ファンディーナが持っているポテンシャル。これは誰が見ても明らかなようにGIを勝つレベルだ。あの大きなフットワークも中山のような狭いコースより、阪神外回りや東京のような広いコースに向く。ゆえに桜花賞の舞台を苦にすることはないだろうと思ってはいたのだが…。それでも、桜花賞でソウルスターリングを逆転するまでは至らないと私は考えていた。 能力の問題ではない。課題になってくるのは体調面。詰まった間隔で、しかも、この馬の場合は、中山への遠征をした直後の中2週になる。レースの翌週は運動しかできず、1週前も15-15程度か、それよりも少し強め程度が限界。当然ながら、まともな追い切りは桜花賞の週しかできないわけだが、その週もメイチで追い切ることは不可能。要するに現状維持が精一杯でのレースになるのだ。 中山に初めての輸送をしたことが影響したのかはわからない。しかし、当日のパドックで少しうるさい面を見せていたのは事実だ。レースでは問題なく折り合っていたが、大勢のファンがやって来るGI当日のパドックは、普段と違う異様な雰囲気になる。これに対応するための精神力。輸送競馬をした直後に、それを求めてもいいのだろうか? この馬の過去3戦は、いずれも楽な形で勝ってきた。しかし、桜花賞は違う。ソウルスターリングのマークは厳しくなるだろうし、アドマイヤミヤビのような後方で脚をためている実力馬もいる。極めてレベルの高い1戦に、万全の状態で出走できないのであれば、ここをスキップしてオークスに──。 そんな発想もありだと思っていたし、私が関係者であれば、進言をするかもしれない。この日程での桜花賞参戦は、それくらい厳しいものだと考えていたのだ。 レース後は不透明だったファンディーナの去就だが、桜花賞の出走はどうやら見送るという。賢明な、なおかつ勇気のいる判断だ。 言うまでもなく、桜花賞は3歳牝馬にとって最も華やかで、最も重要なレース。その1戦をチャンスのある馬でパスするのだから、悔しい思いもあるだろう。しかし、あれだけの飛びの大きいフットワークを持ち、レースでもゆったりと走ることを教えてきたファンディーナにとって、マイルの速い流れを、GIの舞台で経験させることは得策ではない。中距離以上のレースで、これまでと同じようにゆっくりと走らせてあげること。そのほうが馬のためにはいい。 しかも、日程に時間の余裕ができれば、体調のアップさえも期待できる。万全の状態で対戦できるのなら、ソウルスターリング、アドマイヤミヤビといった馬たちが相手でも、臆することはない。彼女もそのレベルの馬なのだから。 私は菊花賞にダンスパートナーを出走させた経緯がある。本当にトップレベルの馬であれば、牝馬でも十分に通用するものだ。今年は牝馬のレベルが異常なほどに高く、逆に牡馬はそれほどでもない。牡馬相手のダービーに挑戦してみるのも、面白い一手と言えるのではないだろうか。 〈古馬戦〉 3/19(日) 阪神11R 芝3000m 阪神大賞典 取り上げるべきレースは阪神大賞典。勝ったサトノダイヤモンドの強さに舌を巻くばかりで、馬体が絞れ、これまで以上に反応が良かったシュヴァルグランも、まるで相手にならなかった。 サトノダイヤモンドが勝つだろうと戦前から思ってはいたが、シュヴァルグランがサトノダイヤモンドを負かすなら、今回ではないかという考えも少しは持っていた。有馬記念では2キロの斤量差があったが、今回は同斤量の57キロ。勝負どころの反応もシュヴァルグランのほうが良かった。こちらのほうが馬を作ってきている印象があったのだ。 しかし、レースでは完全な子ども扱い。母系にスプリンターが入っている血統面を気にしたこともあったが、母父サクラバクシンオーで天皇賞(春)を勝ったキタサンブラックがそうだったように、この馬も距離に関しての不安を今後は考えなくていい。 これについては、血統論者の私も首をひねるばかり。常識を超える馬というのは、血統の概念をも飛び越えていくのかもしれない。 堂々としたパドックの周回も素晴らしかった。3歳クラシックでもイレ込むような面を見せず、常に落ち着いた精神状態を保っていた馬だが、今回は王者としての風格までも身につけていたように思う。これは昨秋のジャパンC、有馬記念でのキタサンブラックの佇まいにも似たものだ。 水平首なうえ、無駄な肉がまるでなく、必要な箇所のみがビルドアップされているサトノダイヤモンドの見栄えは、理想のサラブレットそのもので、この点ではキタサンブラックを凌駕していると言えるだろう。天皇賞(春)はもちろんのこと、無事でありさえすれば、今シーズンの主役となるべき馬。この1戦で、それを確信した。

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    【3月11日・12日開催】フィリーズレビュー、金鯱賞ほかレース解説

    〈3歳戦〉 先週は東西で桜花賞へのトライアルレースが行われたが、チューリップ賞を制したソウルスターリングを脅かすほどの存在は出現しなかった。 3/11(土) 中山11R 芝1600m アネモネS 土曜の中山で行われたアネモネSを勝ったのはライジングリーズン。不利とされる中山マイルの外枠を克服した勝利は、馬場の荒れていないコースを通れたことを差し引いても評価すべき。そう思う反面、1勝馬が多数を占める1戦の価値が、どれほどのものなのかも考えなくてはならない。 ブラックタイド×キングカメハメハという配合で、牝馬にしては馬格のあるライジングリーズン。すでに重賞を勝っている馬ではあるが、決して早熟なタイプではなく、この先も期待できる素材であると私は考えている。 しかし、桜花賞に色気を持っているのなら、どうして本番と同じ舞台を使わないのか? チューリップ賞は単にレベルの高いレースというだけでなく、本番と同じ距離、コースを経験できることが大きい。ソウルスターリングがチューリップ賞でマークした1分33秒2の勝ち時計は、桜花賞と同じ条件でマークしたからこそ、本番にメドが立つ数字。そこに意味があるのだ。 桜花賞へと向かうルートは多い。クイーンCからはアドマイヤミヤビ、今週のフラワーCを使うファンディーナも桜花賞へ向かうかもしれない。ソウルスターリングのライバル候補として、桜花賞ウィークでは注目されるだろうし、実際に私も注目している。しかし、それでもソウルスターリングの優位は動かないだろう。そう考えている理由──それは阪神のマイル戦を2回も走った経験値。これは、何物にも変え難いものなのだ。 3/12(日) 阪神11R 芝1400m フィリーズレビュー 日曜の阪神で行われたフィリーズレビューは距離が1400m、コースも内回りでは、本番に直結する要素があまりに少ない。これも評価を下げる材料になっている。 勝ったカラクレナイは強かったと思う。ゴール前でひと伸びも見せた。しかし、それはあくまで1400mで見せた脚だということを、忘れてはいけない。実際にこの馬は1400mしか走ったことがなく、レースを見た私の印象も短距離の差し馬。マイルでも同じような脚が使える保障はどこにもないのだ。 しかも、好騎乗を見せたM.デムーロ騎手は、クイーンCを勝ったアドマイヤミヤビで桜花賞に参戦すると聞く。本番で騎乗予定の田辺騎手は上手な騎手だが、大一番での勝負強さという意味では、彼の実績に敵わない。プラス材料が乏しい状況で、ソウルスターリングのライバルと持ち上げることはできないだろう。 この1戦の振り返りとして、2着だったレーヌミノルの斜行について、私なりの見解を述べておきたい。と言っても、浜中騎手の騎乗の話ではなく、これだけの斜行をしてもなお、着順の入れ替わり──すなわち、降着がなかったということについて。馬券を買ったファンにとっても受け入れ難いことだと思うが、レースに出走させている関係者も、その思いは同じだ。 例えば、今回の1戦で4着に敗れたジューヌエコール。すでに重賞を勝っているこの馬は、4着でも桜花賞には出走できる。だから、大きな問題にならなかったのかもしれない。しかし、この馬が単なる1勝馬で、桜花賞の権利を持っていない馬だとしたら? もし、私がこの馬の管理調教師なら、文句のひとつも言いたくなるところだ。 あの不利さえなければ、3着に入っていた可能性がある。レーヌミノルが降着処分を受け、ジューヌエコールよりも下の着順になれば、桜花賞の出走権利を獲得できる3着。この形こそが、最もスムーズな決着ではないだろうか。単に馬券を発売しているだけではない。桜花賞への優先出走権がかかっていたレース。この問題をもっとクローズアップさせてもいい。浜中騎手を騎乗停止にして終わりで済むことではないはず。降着制度の問題は常に難しいが、ファンはもちろん、関係者の気持ちを汲むものであって欲しいと思う。 〈古馬戦〉 今週は2つの重賞に加え、気になったレースを取り上げたい。とりわけ、中山で行われた東風Sは今後にも繋がる1戦だったのではないだろうか。 3/11(土) 中京11R 芝2000m 金鯱賞 まずは大阪杯の前哨戦として、3月開催に施行時期を移動することになった金鯱賞。 勝ったのは1番人気に支持されていたヤマカツエースで、そのレースぶりも堂々としたもの。ジョッキーが自信を持って騎乗しているのが、レース映像を見ただけでも分かった。 では、この馬が本番でも主役を張れるのか? その質問に関しては答えに窮してしまう。力を付けているのは間違いない。ラブリーデイがそうだったように、古馬になって爆発的に成長する馬が、キングカメハメハの産駒にはいる。この馬も同じである可能性は決して低くない。 しかし、GIを勝つだけの爆発力を身に付けたのかどうか──それは、この1戦を見ただけでは分からない。この馬は中京が得意。一方で、大阪杯が行われる阪神の実績は皆無だ。確かに有馬記念では頑張っていたが、GI級を相手に勝ち負けの競馬をしたわけではない。 キタサンブラックに京都記念、中山記念から本番に挑んでくる馬たちはレベルが高い。それらの馬たちと五分の評価をすることは、まだまだ難しいように私は思うのだ。 一方で、8キロ増だった今回の馬体は、本番に向けてのお釣りを残していた。この部分での上積みがどれだけあるか…。レース週の追い切り、当日の気配をチェックして結論を出したいと考えている。 決して悪くないメンバーだと思っていた金鯱賞だが、ヤマカツエースを除いた馬のパフォーマンスはインパクトを欠いた。特に拍子抜けだったのはステファノス。内でスムーズさを欠いたルージュバックや行きたがっていたプロディガルサンと違い、上手に流れに乗れていただけに…。これが2年以上も勝ち星から遠ざかっている理由なのかもしれない。 3/12(日) 中山11R 芝1800m 中山牝馬S 日曜の中山で行われた中山牝馬Sを勝ったのはトーセンビクトリー。内枠をフルに生かした武豊君の好騎乗があってのもので、すぐにでもGIを勝てるという手応えこそ残さなかったが、父にキングカメハメハ、母がトゥザヴィクトリーという血統馬の奥深さは、落ち着き払ったパドックの周回から感じさせた。ヌレイエフの4×3というクロスがスピードの源で、本格化を果たした際には大舞台でもスピード負けすることはないだろう。将来が楽しみな馬といえそうだ。 3/12(日) 中山10R 芝1600m 東風S しかし、この日の中山の注目馬は、重賞を勝ったこの馬ではなく、その前の10R東風Sを制したグレーターロンドン。今回の勝利で連勝は5まで伸びたわけだが、どれほど強い馬であっても、勝ち続けることは容易ではない。今後、ますます注目を集める存在になるのではないだろうか。 重賞でも間違いなく通用する──そう言い切りたいところだが、今回の1戦は1000m通過が62秒5のスローペース。いわゆる、上がりだけの競馬で厳しさが何もなかった。そこが、なんとも気になるところだ。 差し馬に向かない展開を差し切った。それは間違いのない事実で、強いと言えるのだが、その一方で、GIのような高いレベルの1戦では当たり前の“厳しさ”を、オープン初戦となる今回のレースでも経験できなかった。完勝だった今回の1戦で、残念に感じた唯一の部分がここだ。 後ろの脚が前の脚に触れてしまいそうなほどの深い踏み込み。パドックで見るこの馬の姿は他馬と一線を画し、持っている能力は間違いない──そう思わせるものがある。それだけに、早い段階で厳しい競馬を経験し、それを克服してほしい。それが大成への一歩となるはずだ。 3/11(土) 阪神10R 芝1600m うずしおS スケールは少し落ちるが、土曜の阪神10Rで行われたうずしおSを勝ったジュールポレールも、今回の勝利で3連勝。半兄にマイルCSを勝ったサダムパテックを持つディープインパクト産駒で、操縦性が非常に高い。内からスパッと抜け出したレースぶりも上々なら、上がり3Fの数字も32秒8と優秀。牝馬限定戦なら、オープンでも楽に通用するだろう。覚えておいて損はないはずだ。

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    【3月4日・5日開催】チューリップ賞、弥生賞ほかレース解説

    〈3歳戦〉 3/4(土) 阪神11R 芝1600m チューリップ賞 先週は東西で重要なレースが行われている。まずは土曜の阪神で行われたチューリップ賞の総括をしたい。桜花賞の最も重要なトライアルレースとして知られる1戦。予想されたことではあるが、上位陣の顔ぶれは豪華で、ゆえに出走してくる頭数は多くならなかった。桜花賞への優先出走枠は3つしかなく、この1戦で権利を獲得するのは難しいと考える陣営が出てくるのも当然。この手のレースは少頭数になりやすいものだ。 勝ったのは昨年の阪神JFを制したソウルスターリング。今回の勝利で誰もが認める桜花賞の最有力候補となったわけだが、その強さの秘密を私なりに分析してみたい。少なくとも、このレースからソウルスターリングを逆転できる馬はいない──そのように感じた根拠を伝えたいと思う。 まずはパドック。少しチャカつくような面もあった前走時のパドックは、初めての場所に来たことによる“力み”が感じられた。しかし、前走の経験が生きた今回は違った。余計なところに力が入っておらず、内に闘志を溜め込んでいる。そんなイメージだ。1度の経験を糧にできる、極めて学習能力が高い馬と言っていいだろう。水平首の周回は、実に見栄えが良く、トモの踏み込みもしっかりしていた。他の馬とはレベルが違う──パドックの段階で、すでに感じたファンも少なくなかったのではないだろうか。 レースでのパフォーマンスも、また完璧だった。スタートして2番手。そこから先も無理せず、好位をキープし続けた。天性のスタートセンスがあるがゆえに、どの馬よりもいいポジションを簡単にキープできる。これは強みだ。道中の追走も非常に楽だった。まるで掛かることなく、じっと我慢できる。仕掛けのタイミングが、鞍上の意のままなのだから、騎手の立場からすれば、これほど競馬のしやすい馬もいないだろう。 残り1Fであっさりと抜け出したソウルスターリングの姿を、映像で改めて確認してみた。すると、ひとつのことに気が付いた。ゴール寸前の彼女の耳を見てほしい。耳をピンと立て、すでにリラックスしている状態で彼女は走っているのだ。1分33秒2という水準以上のレベルにあったレースをしても、彼女には余力がまだまだ残っている。他の馬とは次元が違う。私にはそう見えた。 改めて競馬センスの高い馬だと感じた。楽に好位を確保できるスピード。これは父フランケルの影響だと思う。モンズーンを父に持つ母スタセリタは、長い距離で活躍した馬で、ソウルスターリング自身もマイラーの体型ではない。これほどまでのスピードを持った馬とは、札幌のデビュー戦を見た直後は想像もできなかった。同じフランケル産駒でも、池江厩舎のミスエルテのほうが秀でていると私は考えていたほどなのだ。 取り口が上手で、崩れるシーンをイメージできないソウルスターリングの正体は、恐ろしくレベルの高いオールラウンダー。レース内容と血統を加味した私の結論がこれ。距離延長でどのようなパフォーマンスを見せるのか? 周囲の興味が桜花賞よりも先に移ってしまうのも、ある意味では当然に思える。 ミスパンテールは札幌以来のキャリア2戦目で2着。レース間隔があいたにしては、テンションを上げるところを見せず、いい仕上がりで出走してきたと思う。直線での脚に見どころがあったのも確かだ。しかし、直線で軽く流したソウルスターリングに対し、0秒1しか上がりタイムで上回れなかった事実を見逃すことはできない。本番での逆転は極めて難しい。そう言わざるをえない根拠がここにある。 ソウルスターリングと人気を分ける格好になっていたリスグラシューは3着。パドックではゆとりのあるいい歩様をしており、小さい馬体を大きく見せていた。走れる態勢にあったと思う。ゆえに今回の1戦で、2頭の能力差は明確になったと言えるのではないだろうか。確かに前走の阪神JFでは、2頭の通ったコースに大きな差があった。しかし、私の見解は当時から違った。昔の阪神コースとは違う。スタートしてから3コーナーまでの距離が十分にあり、直線も長い現在の外回りコースは、能力さえあれば、取り返しのできるコース。あのレースの0秒2差は、すでに決定的な能力差であったのだ。今回の結果はそれを証明するものであり、同時に桜花賞での逆転を期待するのは酷という結論に繋がる。 2戦目でチューリップ賞2着と健闘したミスパンテールには連下争いをできる力はあり、リスグラシューも時計的には連下争いに加われる能力の馬。もちろん、見限ることはできない。しかし、ソウルスターリングを打破するには、一瞬の切れが必要で、この2頭はその武器を持っていない。フラワーCに出走を予定しているファンディーナであり、クイーンCを勝ったアドマイヤミヤビがソウルスターリングの対抗馬として浮上してくるのだろうが、彼女の牙城を崩すことができるだろうか? 輪郭がはっきりした状況で、桜花賞当日を迎えることになる。私はそう考えている。 3/5(日) 中山11R 芝2000m 弥生賞 日曜の中山で行われた弥生賞。牝馬戦線と違い、牡馬路線は主役不在。まだ混沌としている状況とあって、チューリップ賞よりも新星誕生が望まれたレースと言えた。 結論から先に言えば、皐月賞も当確と思わせた馬は出現しなかった。 もちろん、勝ったカデナのレースぶりにケチを付けるところはない。前哨戦としては最高のレースだった。1000m通過が63秒2という超スローペース。折り合いを欠きそうで欠かず、最後まで辛抱できていた。本番のほうがペースは速くなるはずで、カデナにとっては速いペースのほうが流れに乗せやすい。合わない展開を覆した事実は、素直に賞賛すべきだと思う。 数字の増減はなかったが、馬体にはゆとりがあった。次走をにらんだ仕上げと言っていいだろう。これにも好感が持てた。初めての中山競馬場にも、ソワソワする仕草を見せず、ゆったりと構えていた。このような周回をパドックでできる馬が、GIという大舞台で勝ち負けを演じることができる。ソウルスターリングもそうだが、この日のカデナもそうだった。 では、なぜ皐月賞の主役確定とすることができないのか? それは今回のレースが、特異なペースで流れた特異なレースだったからだ。 耳を立て、リラックスした状態で逃げたマイスタイルは、楽な競馬をした典型的なタイプの馬だ。外から一気に突き抜けたカデナは強かったが、勝ち時計の2分3秒2は弥生賞のイメージにそぐわないもので、実際に2~4着馬は内の経済コースを通った馬ばかり。流れが合わずに行きたがった馬、流れに逆らって外から早仕掛けをした馬──能力を発揮できずに終わってしまった馬も、少なからずはいたと考えられる。 私が今回の1戦でカデナと同じくらい惹かれた馬。それは5着のサトノマックスだった。パドックでの集中力がひと息。それが現時点でのカデナとの違いになるわけだが、踏み込みは実にしっかりしていた。素直にいい馬だった。 カデナよりも後ろから競馬を進め、キャリア1戦がゆえに一気のペースアップにも戸惑うシーンも。4コーナーでは、カデナの2頭分は外を回していたほどだった。相当な距離のロス。しかし、それでもカデナから0秒3差で、3着のダンビュライトとはタイム差なし。1勝の同馬が皐月賞に出てくる可能性はゼロに近いが、ダービー路線の新星が現われた。そんな印象すら持った。 主役不在とされる牡馬路線には、このような隠れた存在がいるかもしれない。少なくとも、これまでに行われてきた王道路線のレースが絶対ではない。今回の1戦を見た私の感想がこれ。ゆえにカデナを大本命馬と祭り上げることができないわけだ。 3/4(土) 阪神6R 芝1800m 3歳500万下 土日の阪神で行われた2つのレースからも、その状況を推察できると思う。 土曜の6Rで行われた芝1800mの500万下。勝ったクリアザトラックは朝日杯FSで3番人気に支持されていた馬で、2着のプラチナムバレットはスマートレイアーの半弟という血統馬。3着のバルデスも母に名牝ディアデラノビアを持つ良血だ。どのレースに出走したとしても、次走で注目を集めること(毎日杯を予定している勝ち馬は1番人気にならないだろうが)になるのは必然。そんなメンバー構成だった。 もちろん、クリアザトラックは見た目に気になるほどの立ち繋で、プラチナムバレットは10キロ減でもまだまだ太め。バルデスは相変わらずのゲート難を見せるなど、どの馬も課題を残してはいる。だが、勝ち時計の1分47秒4は翌日のオープン特別より0秒3遅いだけで、水準レベルには達していた。戦前の評判に耐えうる1戦だったと思うのだ。 3/5(日) 阪神5R 芝1800m 3歳未勝利 しかし、日曜の未勝利戦に登場した1頭の馬が、そのレースの存在を消してしまった。同条件の阪神芝外回り1800mに出走してきたアドミラブル。ディープインパクトを父に持つ馬が、このレースで叩き出した時計は1分45秒8というとてつもなく速いものだった。 ペースの違いは考えなくてはならない。しかし、これだけのハイペースを追走しながら、アドミラブルは11秒5-11秒6という速いラップで、ラスト2Fを突き抜けてしまった。右手前のままで直線を走りきってしまった。これは能力の裏づけなしにはできない芸当だ。 パドックで見た印象も良かった。バレークイーンに通じる母系も、筋が通っている。今回の1戦がノドの手術明けだったと聞いているが、ノドに問題を持つ馬にとって厳しいハイペース。それを克服してしまった。クラシックレベルの能力を有している馬かもしれない。たった1戦で与えた衝撃はかなりのものだった。 しかし、出てくる時期が遅すぎた印象もある。皐月賞への出走は現実的に厳しい。ダービーを目指すとしても、数はそこまで使えない。同じ条件の毎日杯か、それとも日程にゆとりを持って京都新聞杯に行くのか──。青葉賞はプレシャスソングで2着の経験があるが、東京の2400mという条件は、前哨戦のペースであっても厳しい。短い間隔で東京への輸送を、この時期の3歳馬に2回も強いるのは無理があるのだ。「ダービーを狙うなら、このレースはパスすべし」が私の考え。ゆえに選択肢はそこまで多くならない。 まだ1勝馬。出走できるところを選ばなくてはならない陣営も難しいところだろう。仮に私なら、時間にゆとりを持つ選択をせず、早めに勝負に出るかもしれない。まずはゲートインをさせる。それでダメならあきらめもつくからだ。ノドの再発さえなければ、同条件の500万下を走っていた、どの馬よりも魅力を感じる馬だ。どのレースを選択したとしても、次走に注目したいと考えている。 〈古馬戦〉 3/4(土) 中山11R 芝1200m オーシャンS 土曜の中山で行われたオーシャンSは、中京開催の最終週にある高松宮記念の最後の前哨戦。これまでに実績を上げてきた馬が引退、もしくは回避してしまったことで、今年は高松宮記念に出走を予定している馬のレベルが高くない。だからこそ、1番人気に支持されていたメラグラーナの走りに注目が集まっていた。 結果は完勝。大外から一気に突き抜けたレースの内容にもインパクトがあり、この1戦のメンバーからメラグラーナを逆転できるような馬も見つけられなかった。ただし、問題は走破時計。1分8秒3はGIで当確と言える数字ではなく、できることなら7秒台をマークして、他馬とのスピードの違いをアピールして欲しかったというのが正直なところだ。有力馬の1頭という評価が、本来は妥当なところだろう。 ただし、この馬が高松宮記念の最有力馬になって不思議がない2つの側面がある。 ひとつは8月の遅生まれであるということ。南半球産の活躍馬ではキンシャサノキセキが有名だが、早い段階から頭角を現した彼も、本格化したのは6歳の秋。スワンSの勝利を皮切りに4連勝し、高松宮記念を制した。新聞に表記されている年齢よりも、南半球産の成長は半年ほど遅く、表記的には5歳のメラグラーナも現時点での成長度は4歳秋程度と考えるべき。それは競走馬が最も脂の乗ってくる時期でもある。わずかな期間で急上昇してくる可能性も小さくないのだ。 もうひとつの理由。それは今年の高松宮記念のメンバー構成にある。この路線を引っ張ってきた馬が引退、もしくは戦線離脱をしてしまった。次代のエースとして期待されていたシュウジも、前走の阪急杯で凡走してしまった。小粒なメンバーになりそうなことで、GIで主役を張れると言い切れない同馬に、スポットライトが当たってしまいそうな気がするのだ。 改めて、メラグラーナ自身について、私の持っている印象を話しておきたい。 この馬の活躍により、ファストネットロック産駒が日本の条件でも走ると世界的に認知されるのは、とても喜ばしいことだ。すでに実績がある血統なら、日本の競馬に参戦する意欲も持ちやすい。世界レベルの馬が活躍することは、日本の競馬と世界の競馬の距離を近づける役割もある。そういった意味では、メラグラーナのGIでのパフォーマンスには、大きな期待を寄せている。 パドック映像で見た彼女は、牝馬と思えないほど、どっしりとした佇まいで周回していた。この馬はスプリンターにありがちな胴の詰まった馬体ではなく、テンションも上がらない。精神面のゆとりを感じさせる同馬の本質はスプリント戦ではなく、それ以上の距離にあるかもしれない。そんなことも思った。少なくとも、距離にこだわるような馬ではないのでは? ファストネットロック産駒の中には距離をこなす馬もいる。その1頭である可能性を、私はこの馬に感じている。

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    【2月25日・26日開催】中山記念、アーリントンCほかレース解説

    まずは読者の皆様にお伝えしておきたいと思います。 今週から、この「先週のレース解説~調教師の着眼点~」をホームページにアップするタイミングを、これまでよりも少し遅くさせていただくこととなりました。 レースから日数が経ってしまうことで、記事の“鮮度”が落ちてしまう。それは私も理解しています。 しかし、この記事に求められているのは「どれが勝った、どれが負けた」のニュース的な意味合いのものではなく、元調教師の視点で見たレースの本質、内容や血統などを吟味したうえで、今後に向けた課題や可能性などを探っていくことだと思うのです。 レース直後の総括となれば、どうしても私自身のインスピレーションに頼ったものになってしまう。翌週になれば、次走も明らかになるはずなのに、その部分さえもグレーな状態で、皆様にお話しすることになってしまう。それでは記事の価値も半減でしょう。 今回の変更は、その部分を考慮した結果のものです。 ぜひ、ご理解をしていただきたいと思います。 〈3歳戦〉 2/25(土) 阪神11R 芝1600m アーリントンC 土曜日に阪神で行われたアーリントンCは、1番人気に支持されたペルシアンナイトが3馬身差で快勝した。その圧倒的な内容に「マイル路線の主役が登場した」と思った方も多いだろうが、レース後の陣営はクラシック参戦を表明したと聞く。しかし、この内容に血統背景を考えれば、その選択は至極当然のことのように私には思えた。 それなりの活躍馬は出しているものの、まだ大物は登場していないハービンジャー産駒の評価は難しい。ワンパンチ足りない印象を持ちかねない種牡馬なのも事実だろう。しかし、2着に11馬身という大差をつけ、勝ち時計もコースレコードだったキングジョージのパフォーマンスは、能力の裏付けなしにできないもの。ハービンジャーの母父であるベーリングもレコード勝ちをしていた実績を持っていた。内包するスピードは、世界トップレベルの血統なのだ。 加えて言えば、サンデーサイレンス系の繁殖の配合相手として選ばれたハービンジャーには、良質の繁殖牝馬が多く集まっている。祖母に名繁殖のニキーヤを持つ母系のペルシアンナイトは、登場するべくして登場した馬と言えるだろうし、前述したようにハービンジャー産駒に距離の壁はなく、むしろ適性は中距離よりも先にある。ゆえにクラシック参戦も“当然の選択”となるわけだ。 マイル重賞を勝てるくらいのスピードがある馬でなければ、高速化した現在のクラシックを勝てない。そんな考えもある。その見地からすれば、実際にマイル重賞を制して見せた同馬は、本番でも有力な1頭になりうるのではなかろうか。 次走の皐月賞では、ハービンジャー産駒のイメージを覆すようなパフォーマンスを期待したいところだ。 3馬身差の2着はレッドアンシェル。この馬はテンションが課題になるタイプのようだが、母父がストームキャットと聞けば、それも仕方がないように思う。 テンションが上がるのは、ストームキャットの影響と考えるのが自然。ゆえに陣営にはなんらかの工夫が求められることになる。パドックの周回を見てもらえば、私の言いたいことが理解してもらえるだろう。2人で曳き、リップチェーンを装着。気性が激しい馬というのが容易に想像できた。 レース前の段階でスタミナをロスしてしまうのが一番怖い。この手のタイプは距離延長に踏み切るのも勇気がいるものだ。1400~1600mの距離がベスト。これが現状の同馬に対する私の見立て。いい踏み込みをしている馬で、瞬発力にも秀でている。この路線ならチャンスもあるのではないか。 3着ディバインコードはキャリア6戦で〈2.2.2.0〉。4着以下が1度もない堅実な馬だ。しかし、追ってから頭が高くなるのがマイナス材料で、それが詰めの甘さの遠因になっている気がする。直線の長いコースでは、今後も決め手を欠くかもしれない。 父マツリダゴッホは有馬記念を勝っている馬だが、産駒はマイルくらいの距離で走る馬が多い。母父のヘクタープロテクターはスピードこそあるが、少し淡白な走りをする。その前にいるダンシングブレーヴはクラシック路線での活躍を期待されていた種牡馬だが、リファールの影響が強すぎたのか、産駒は短い距離のほうに適性を見せた。この馬がいるという理由だけで、距離の壁はないと判断するのは危険だろう。この馬の適性もマイル前後と考えてよさそうだ。 折り合いを欠き、ガス欠してしまったミラアイトーンは8着だった。周囲の評価は下がってしまうだろうが、ダンジグにシーキングザゴールド、ティズナウと入る母系は、インリアリティにミスタープロスペクターというニックスまで取り入れている素晴らしい血統。父ロンロも万能性に富む優秀な種牡馬だ。今回の1戦は度外視し、次走以降も引き続き注目してみたいと思っている。 キョウヘイは道悪のシンザン記念を制したが、馬体のない牡馬で少し迫力に欠ける馬。良馬場では厳しいという戦前の見立て通りの結果(7着)となった。今後もリーチザクラウンのサポートを受けられる馬場でのみ、ピックアップすればいいのではないだろうか。 2/26(日) 阪神9R 芝2200m すみれS 日曜の阪神で行われたすみれS。新星登場を期待したレースだったが、全体的に低調な印象だった。 勝ったクリンチャーは2着に4馬身差。完勝といえる着差ではある。しかし、2分14秒1という勝ち時計が平凡なだけでなく、厳しいラップが1度もないレース内容が凡庸。ダラダラと走ってきたように私には見えたのだ。瞬発力も求められるクラシックでの好走はどうか? 私には厳しいと見る。 父のディープスカイについて話をする機会はあまりないので、少しだけ触れておきたい。この馬の母はチーフズクラウンを父に持つアビ。この馬の初子であるガリレオ産駒を、私は牧場に見に行ったことがあるのだ。もちろん、自分で管理したいという気持ちもあってのものだったのだが、結局は見送った。最終的には1000万下くらいまでの馬だっただろうか。思ったようなスピードを持った馬ではなかったし、そのジリッぽさはディープスカイ産駒にも共通しているように思う。その特徴は今回の勝ち馬クリンチャーにも通じるものかもしれない。 2/26(日) 阪神6R 芝2000m メイクデビュー阪神 先週の新馬戦ではエクレアスパークルという素質の高そうな馬が勝ち上がっている。この馬についても、軽く触れておきたい。 祖母アイルドフランスの持ち味はスピード。ストームキャット、クワイエットアメリカン、スペクタキュラービッドと並ぶ馬名が、この母系の素晴らしさを物語っているわけだが、この手の配合パターンは、ディープインパクト産駒が得意にしてきたものだ。それをハーツクライで行っていることが実に興味深い。 ディープインパクトほどの瞬発力はないかもしれない。しかし、距離に対する不安はないうえに、その成長傾向は晩成。長く活躍する可能性、古馬になって大きく化ける可能性は、ハーツクライのほうが高いと考えていいだろう。この馬はそのモデルケースと言える存在だ。 正直、時計の遅い今回のレースだけで理解することはできない。しかし、ゴール寸前の同馬の姿を見てほしい。耳を立てているのは、走ることに集中できていない証拠。本来、ゴール前の馬は耳を絞っているものだ。 この馬には伸びしろがタップリとある──。ゴール前の姿を見るだけで、そんなことまで想像できるのだから、字だけで競馬を理解することは難しいと言うことを理解してもらえると思う。 〈古馬戦〉 2/26(日) 阪神11R 芝1400m 阪急杯 まずは阪神で行われた阪急杯について。結論から言えば、高松宮記念に通じる結果とは思えなかったのだが、そんな凡戦になった理由は、1番人気に支持されたシュウジが折り合いを欠いてしまったことに尽きる。これほどのパワーを持っている馬が、前半の3Fほどもまともに引っ掛かってしまえば、直線を迎える段階でエネルギーはすでに残っていない。4コーナーの同馬の姿を見て、直線で伸びることは難しいと感じてしまった。 シュウジの馬体重は8キロ増。乗り込んでいたようだが、少し太めが残ってしまい、それが理由でイレ込んでいたのだろう。カッカカッカしていたパドックの周回は、見た目に危険な香りがした。 高松宮記念の課題もこの1点に尽きるだろう。今回と同じように太めが残ってしまい、レース前のテンションが上がってしまうようなら、距離が1200mになっても、末脚を残せないかもしれない。それまでの調教過程よりも、当日の気配こそが重要な馬。そう覚えておきたい。 勝ったトーキングドラムは経済コースを上手に通っていた。しかし、1200mのGIの前哨戦と考えた時、あのポジションではどうなのか? 昨年の勝ち馬ビッグアーサーは好位からの抜け出し。1分7秒台が必要になるであろう1戦だ。2着、3着馬も含め、本番での好走は難しいと判断したい。 2/26(日) 中山11R 芝1800m 中山記念 日曜の中山で行われた中山記念は、GIに昇格された大阪杯の前哨戦でもあり、ドバイへの壮行レースでもあった。阪急杯よりも遥かに豪華なメンバー構成だったと言っていい。 勝ったネオリアリズムは1番枠から好スタートを切り、見事に流れに乗りきった。鞍上の手腕も大きかったと思うが、15キロ増の馬体重でもまるで太いという印象を受けなかった。つまりはパワーアップをしているということだ。 メドウレイクにインリアリティという血を母系に持っている馬。晩成のイメージを持てない血統だが、大事に使われてきたことが良かったのだろうか。札幌記念に続くGII制覇で、いよいよトップクラスの1頭に入ってきたな、という印象を持った。 2着はサクラアンプルール。少し繋が硬い感じもしたパドックだったが、鞍上が最高に上手く乗ったことで結果が出た。上がり3F33秒8は4着アンビシャスと並ぶ出走馬最速。しかし、2頭の通ったコースは大きく違う。どちらが強い競馬をしたか。それは言うまでもないだろう。 ネオリアリズムを基準に考えた場合、アンビシャスなら逆転は可能だが、それ以外の馬では難しい。ゆえに中山記念からの最有力馬はアンビシャスと言う結論になるわけだ。 パドックの周回から馬の雰囲気は1番。本数はそこまで乗っていなかったかもしれないが、馬体もできていた。スローの展開が合わず、また外を回し過ぎたコース取りもあって、今回は馬券対象にもなれなかったが、脚はしっかりと見せた。期待通りの走りをしたと私は思う。次走も乗り方次第だ。 ドバイ遠征を予定している2頭は明暗を分けた。 ヴィブロスは10キロ増。しかし、太いのではなく成長だ。負けはしたが、牡馬混合の重賞でこれだけ走れば十分。ドバイで勝ち負けになるかはともかく、今後に向けての視界は開けたと言えそうだ。 リアルスティールはしっかりと乗っての4キロ減。体はできていただけに、見せ場のない今回の8着は厳しい結果かもしれない。昨年のドバイで勝っており、コースへの適性は高いと思うが、3着から遠征した昨年よりもトーンが下がってしまったことは否めない。

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    【お知らせ】

    『更新日の変更について』 今後の【新たなサイトコンテンツ】の公開に向けた対応の一環として、月曜日の更新から『木曜日更新』に変更となります。 皆様の競馬ライフに役立つコンテンツ作りに励んでいきますので、次回更新まで楽しみにお待ちください。 引き続き、白井寿昭オフィシャルサイトを、よろしくお願いいたします。

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    【2月18日・19日開催】フェブラリーS、ダイヤモンドSほかレース解説

    〈3歳戦〉 2/19(日) 東京9R ダ1600m ヒヤシンスS 日曜の東京ではダートのオープン戦・ヒヤシンスSが行われた。圧倒的な支持を受けたエピカリスが勝ち、2着には2番人気のアディラート。非常に堅い決着となったが、現段階では2頭の力が抜けていたということだろう。 勝ったエピカリスと2着のアディラートとの差は0秒1差だったが、2頭の能力差はもう少しあるかもしれない。エピカリスはこれで4戦4勝。ヒヤシンスSの勝ち馬はその後も活躍することが多く、この馬も今後のダート界を背負って立つ存在となると考えている。3番手の内で追い出しを待てた競馬の内容も優秀だった。 2着のアディラートはルーラーシップ産駒。ダートに適性を見せたのは意外だったが、ストームキャットを父に持つ祖母ストームティグレスの影響が出ているのかもしれない。エピカリスに完敗の形だったとはいえ、この馬も今後の活躍を期待できそうだ。 2/18(土) 東京9R 芝2000m フリージア賞 土曜の東京で行われたフリージア賞はトリコロールブルーが差し切って2勝目をマーク。今回が3カ月の休み明けで、ステイゴールド産駒らしい気性の難しさをパドックでは見せていたのだが、1頭だけ決め手が違ったという内容だった。 父ディープインパクトの半兄ダノンジェラートは5勝、同じくディープインパクト産駒の半兄ワールドインパクトは休養期間が長く、2勝しか挙げていない馬だが、青葉賞で2着の実績を持っている。血統的な裏付けもある馬と言っていいだろう。 2/19(日) 京都9R 芝1800m つばき賞 日曜京都のつばき賞は圧倒的な人気で登場したファンディーナが、1000m通過64秒1のスローで逃げたタガノアスワドを直線でアッサリと捕らえて見せた。デビュー戦を回顧したときにGI級の素材と絶賛させてもらったが、その見立てに間違いはなかったようだ。 ヌレイエフ系のピヴォタルを母父に持ち、エーピーインディにミスタープロスペクター、ヘイローと大物種牡馬ばかりを重ねた母系はかなり優秀。ディープインパクト産駒の牝馬ながら、512キロと馬格が十分にあるのも母系の影響が強いからだろう。マイルの距離に対応できるスピードは十分に持っており、どこかで権利を取って、桜花賞の舞台に立ってもらいたい。 〈古馬戦〉 2/19(日) 東京11R ダ1600m フェブラリーS 日曜の東京では今年初のGIであるフェブラリーSがあった。私もアグネスデジタル、メイショウボーラーでフェブラリーSを勝っているが、メイショウボーラーのときは不良馬場のアシストがあってのもので、このレースをスピードだけで乗り切るのはなかなか難しい。スピードに加えてマイルを乗り切るスタミナ、GIレースを勝つための決め手などがなければ、制することのできないレースだ。 勝ったゴールドドリームのレースぶりは完璧だったし、よほど東京のマイル戦が合うのだろう。着差はクビだったが、完勝と言っていい内容だったと思う。ゴールドアリュールにフレンチデピュティという配合なら、1800mもこなせるはずだとは思うが、一方でスピード競馬に強いパフォーマンスは砂の深い地方競馬には合わない可能性もある。賞金を加算し、出走するレースが限られてくるであろう今後の課題を挙げるなら、その部分になるだろうか。 ちなみに同馬は名牝スペシャルの4×5というインブリードを筆頭に、ニジンスキーなどの底力溢れるクロスも持っている。まだ完成の域に到達したわけではなく、さらにレベルを上げることも可能なはずだ。 2着のベストウォーリアは常に安定して走る馬。7歳になっても力を維持しているのは大したものだと思う。さらなる伸びしろを期待するのは難しいが、今後もマイル前後の距離で力を発揮してくれるはずだ。 3着カフジテイクが勿体ない競馬だった。末脚の切れは確かに素晴らしい。だが、GIという舞台で、4コーナー最後方から全馬を差し切るというのは難解なミッションだ。騎乗した津村騎手には悪いが、前走の手綱を取った福永騎手が戦線を離脱した時点で、同馬は運に見放されてしまったのかもしれない。 2/18(土) 東京11R 芝3400m ダイヤモンドS 土曜の東京で行われたダイヤモンドSは1番人気に支持されたアルバートが豪快な差し切り勝ち。2番手にいた馬が2着に残り、それ以降も好位にいた馬が上位を占めたレース。上がり3ハロン33秒4という長丁場らしからぬ末脚を駆使した同馬は、トップハンデタイの58キロを背負っていた。R.ムーアの手腕も大きかったとはいえ、このメンバーでは地力が違い過ぎたと言っていいだろう。母父ダンスインザダークの血の力もさすがだな、と感じたレースだった。 ただし、今回の1戦で天皇賞(春)の有力馬になったのかと聞かれれば、それに関しての答えはノー。今回の出走メンバーを改めて見てほしい。7歳、8歳、9歳…。高齢馬ばかりではないか。重賞と呼ぶようなメンバーではなく、この相手に勝ったところで、次走に向けての手応えは得られない。サトノダイヤモンド、キタサンブラックといった超一線級とは明確な力量差がある。それが現在の私の考えだ。 2/18(土) 京都11R 芝1400m 京都牝馬S 土曜の京都では牝馬限定の京都牝馬Sが行われた。勝ったのはレッツゴードンキ。一昨年の桜花賞以来となる勝利だったが、道中でハミを噛むシーンがありながら、外から一気に弾けたレース内容はかなり強いものだったと思う。 今回の馬体重は502キロ。前走比で10キロ増ではなく、デビューからの比較で50キロ以上も増えたことになる。太りやすい冬場という時期的な問題もあったとは思うが、パドックで見た彼女の馬体は決して太いと感じさせなかった。坂路で好時計を連発し、調教をハードにやっての体重増。パワーアップの証明だろう。もうひと花咲かせる可能性は十分にありそうだ。 2/19(日) 小倉11R 芝1800m 小倉大賞典 最後に日曜の小倉で行われた小倉大賞典。1000m通過が57秒6。その後もラップを緩めずに逃げ切ったマルターズアポジーのパフォーマンスは素直に評価したい。 本来なら前崩れになってしまう展開を持ちこたえたのだから、このレベルでは力が違ったのだろうが、この馬の勝利で改めてクローズアップされるのが有馬記念のレベルの高さ。もちろん、マルターズアポジーにとって2500mの距離は長かったのかもしれないが、アルバートとともに有馬記念の惨敗組が次走であっさりと重賞を勝つ──。GIの価値の高さを思い知った週末だった。

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    【2月11日・12日開催】京都記念、共同通信杯ほかレース解説

    〈3歳戦〉 2/11(土) 東京11R 芝1600m クイーンC クラシックに直結しそうな2つの重賞が東京で行われ、どちらもGIで有力視される馬が勝利した。まずはこの両レースを振り返り、今後の可能性についても言及したい。 土曜のクイーンCを制したのはアドマイヤミヤビ。今回が3カ月の休養明けだったわけだが、前走の百日草特別で2着に負かしたカデナが、重賞の京都2歳Sを勝ち、3着のアウトライアーズはひいらぎ賞を完勝した。そのアウトライアーズがひいらぎ賞で負かしたウインブライトも、年明けの若竹賞を楽勝。自分の管理馬が負かした馬たちが、次々に活躍していくのは気分のいいもので、それと同時に自分のところも目標に向かってしっかりと馬を作り、その力を証明しなければ──という気持ちにさせる。今回のアドマイヤミヤビが置かれた状況はまさにそんな感じだったと思うが、彼女は満点のパフォーマンスで、その期待に応えて見せた。 1000m通過は59秒1。このペースに置かれることもなく、4コーナーでは6番手のポジション。距離短縮には問題なく対応していたと思う。勝ち時計の1分33秒2は、昨年のメジャーエンブレムがマークした1分32秒5にこそ及ばないものの、過去10年で2番目に速い好時計。ラスト3Fがすべて11秒台という速い上がりが、この速い時計を作り出しており、その中で出走馬最速の上がり33秒6をマークしたのも、他ならぬアドマイヤミヤビ。その強さばかりが目立ったレースだった。 祖母のライクザウインドは、ディープインパクトの母として知られるウインドインハーヘアにデインヒルを配合して生まれた馬で、これにクロフネを付けたのが母のレディスキッパー。その方向性は瞬発力よりも持久力。一瞬の脚では見劣るはずの血統の馬が、最も鋭い脚を使ったこともアドマイヤミヤビの能力の高さを感じさせる要因となっている。 ハーツクライとの配合となったアドマイヤミヤビの距離適性は、陣営が公言しているようにマイルよりも中距離以上にあるだろう。それだけに速い時計の決着に対応した今回の勝利は、賞金加算に成功しただけでなく、クラシックでも活躍できることを裏付けるもの。前途は洋々だ。 アエロリットは前走のフェアリーSに続いての2着。差し馬の流れになった前走で2番手から踏ん張っていた力が本物だったことを示したわけだが、レースの質に関して言えば、馬体が絞れて素軽さを増していた今回のほうが上だろう。前走の内容ではクラシックでの活躍を期待しにくかったが、このパフォーマンスなら大きな舞台で活躍する可能性も見えてきたと言えそうだ。 正直、今回のレースは完敗だ。アドマイヤミヤビとの能力差ははっきりとしており、次走以降の逆転も普通は考えられない。しかし、この馬は5月17日の遅生まれ。アドマイヤミヤビは晩成と言われるハーツクライ産駒だが、実際は1月14日の早い生まれの馬。この時期の競走馬にとって4カ月の生まれの差は想像以上に大きいものだ。 これは3着だったフローレスマジックにも言える。アドマイヤミヤビの対抗馬として差のない2番人気に支持されていた馬で、それだけに直線で伸びあぐねた内容は少し物足りなかった。ディープインパクト産駒は早熟な馬が多いとされることも、評価を下げたくなる理由になるだろう。しかし、この馬も4月15日の生まれで、アドマイヤミヤビとは3カ月の差がある。全姉ラキシスと全兄サトノアラジンは古馬になってから重賞を勝っており、元来が晩成傾向にある血統と考えれば、見限るのはまだ早い。春の逆転は難しくても、秋になって、古馬になっての逆転は十分にありえるはずだ。 4着はレーヌミノル。1600mでもそれなりの競馬はできるが、その血統背景を見れば、いずれは距離に限界が出てくる。1400mのGIIフィリーズレビューこそが、同馬のベストパフォーマンスを発揮できる舞台となりそうだ。 2/12(日) 東京11R 芝1800m 共同通信杯 日曜の共同通信杯もハーツクライ産駒のスワーヴリチャードが制した。同馬の母父はアンブライドルズソングで、この馬は非常に多様な馬を出す。汎用性の高い種牡馬というのが、この馬に対する私のイメージだ。 現在のアメリカ競馬の頂点に君臨するアロゲートの父もアンブライドルズソング。スピードと勝負根性を兼備した同馬と、今回の勝ち馬であるスワーヴリチャードはタイプが違うが、スペースが開いた一瞬を突き抜けたあの一瞬の脚は、長くいい脚を使うハーツクライではなく、アンブライドルズソングの影響だと私は思う。そして、あの一瞬を見逃さずに伸びることができた脚こそが、クラシックで戦うことを考えた際の大きな武器になってくるはずだ。 大外から一気に突き抜けるような競馬は見た目こそ爽快だが、信頼度はそれほど高くない。ある程度の位置に付け、馬群の中でも問題なくレースを進められるセンスを見せたこと──それまでの3戦で末脚が確実であることは証明していた馬だが、今回の勝利で同馬の武器が末脚だけでないことも明らかになった。この事実が大きいのだ。 この2戦で東京向きのイメージを誰もが持っただろう。しかし、仮に中山へと舞台を移しても、この馬のパフォーマンスはそこまで変わらない。安定した走りを見せてくれると思う。クラシック最有力とまでは言わなくても、それなりの位置にいる馬。今回の1戦はそれくらいの存在感を見せたレースだと思う。 スワーヴリチャードとともに人気を分けた馬についても、少し話をしておきたい。1番人気のムーヴザワールドは3着。勝ち馬に伸び負けした内容は物足りなかったが、今回は珍しくパドックでうるさい面を出していた。レース前に消耗していたと考えれば、まだ見限るのは早い。馬の形、走るフォームは素晴らしくいい馬。素質は高いはずだ。平常心で臨むことができれば、巻き返しはあると考えたい。 ロックオブジブラルタルを父に持つ母スターアイルの影響が強いのか、タイセイスターリーは残り200mで辛抱することができなかった。今回の1戦だけを見れば、血統的な距離の壁があるのかもしれないとも思う。だが、この馬は2回目の1600mで結果を出しているように、経験を積んで変わる余地のある馬のようだ。少なくとも、この1戦だけで決めつけるべきではないと思う。 3番人気だったエアウィンザーは6着。伸びそうな雰囲気はあったが、伸びきれなかったレースだった。前を抜く気持ちがないとの話も聞くが、少なくとも兄のエアスピネルのような馬ではないというのが現時点での評価。これからも注目を集めていくことになると思うが、過剰な評価は危険かもしれない。 2/12(日) 京都9R 芝1600m こぶし賞 日曜の京都では3歳500万下のこぶし賞が行われたが、このレースを制したマイスタイルもハーツクライ産駒で、今年は同産駒の当たり年のようにも思う。 この馬の母父はフォーティナイナー、その先はダンジグなので、距離が延びていいと言われるハーツクライ産駒でも、この馬のベストはマイルあたりなのかもしれない。 だが、レースそのものはインパクトを感じるものではなかった。勝ち時計の1分36秒2は馬場の影響もあるので、一概に遅いと言えないが、少なくとも重賞で勝ち負けするレベルの1戦ではなかっただろう。勝ち馬はもちろん、2着以下の馬も次走が試金石になると思う。 〈古馬戦〉 2/12(日) 京都11R 芝2200m 京都記念 今後のGIへと繋がるレースは日曜の京都記念。これについて、詳しく述べていきたい。 まずは勝ったサトノクラウン。さすがは香港ヴァーズでハイランドリールを差し切っている馬だけあるな、というのがレースを見た率直な感想だ。 ヤマカツライデンの作ったペースは1000mで60秒2。現在の馬場を考えれば、ペースは淀みなく流れており、能力がダイレクトに出るレースだった。それだけに出走馬で唯一の58キロを背負い、3番手から堂々とした競馬をしたサトノクラウンの強さは、今回の1戦で際立つものだったと言えるだろう。 490キロの馬体重は香港との比較で6キロ増。14着だった前々走の天皇賞(秋)からでは10キロの増加だった。パドックで見た印象は「やや太いな」。だが、馬体診断の項目で話をさせてもらったように、この馬は太いと感じさせるくらいの馬体がベストのようだ。スラッと見せている馬体の時は走れない。それを頭に入れておきたい。 確かにサトノクラウンの成績にはムラがある。しかし、走れなかったレースには、走れなかった理由があるのだ。今後の選択肢がどこであっても、その舞台が大阪杯でも香港であっても、舞台設定ではなく、この馬自身の状態…つまりは馬体の作りが重要になる。そんなことを改めて思った1戦だった。 2着のスマートレイアーはディープインパクト産駒の牝馬にしては、実に逞しい胸前を持った馬で、それが逆に軽さを失っている理由になっているのかもしれないと思っていた。そんな状況だけに、現在の荒れた馬場がマッチした可能性は否定できないが、7歳の牝馬が牡馬のGI馬を相手に2着と好走したのだ。素直に賞賛すべきだと思う。さらなる上昇を見込める年齢ではないが、走れる下地があるレースでは、注目が必要な存在であることを、改めて示したのではないか。 2番人気の支持を集めたミッキーロケットは4着。敗因はスタートの出遅れに尽きるだろう。レースを使っていくことで、ゲートに難が出てしまう馬。こういう癖を持っているタイプは、実に厄介で信用しにくい。最後は差を詰めてきたのだから、成長しているのは間違いないだろうし、能力は持っているのだろうが、悪癖を見せた今回の1戦で、少しトーンダウンしてしまった感は否めない。 さて、マカヒキの話に移そう。凱旋門賞の敗因が何であれ、今回は取りこぼしをしてはいけないレースだったと思う。調教の動きは良かった。当日の気配も素晴らしかった。「これなら大丈夫だな」とパドックを見て、私もマカヒキの好走を疑わなかった。それだけに伸びあぐねての3着は、あまりにも物足りないと言わざるをえない。 今回の馬場がマイナスに働いたことは疑いようのない事実だが、それは超が付く一流馬の敗因ではない。それを理由にしてしまう馬は、すでにスーパーホースではない。世代の頂点に立った馬が、それを理由にして欲しくないと私は思うのだ。 結果的に負けてもいい。だが、サトノクラウンを追い詰め、惜しくも届かないような負け方であれば…の話だ。スマートレイアーの頑張りは賞賛するが、現役馬の頂点を競うような馬が、7歳の牝馬に遅れを取ってはいけない。自身にとって向かない状況であっても、それを克服してくれなければ。仕上がりに不足なしと見えたからこそ、今回の敗戦ショックは大きいと私は思う。 サトノダイヤモンドの最大のライバルはマカヒキ──。しかし、今回の敗戦で一歩後退してしまったのは間違いないだろう。次走の大阪杯で休み明けのキタサンブラックに負けてしまうようなら…。現役最強馬への道は、少し険しいものになるかもしれない。

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