先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

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    【8月12日・13日開催】関屋記念、エルムSほかレース解説

    〈古馬重賞〉 8/13(日) 新潟11R 芝1600m 関屋記念 高速馬場の新潟が舞台であることを考えれば、マルターズアポジーの逃げは決して速いペースではなかったが、2番手で追いかけたウインガニオンが早めに前を捕まえるには、勝った馬の人気がなさ過ぎた。ウインガニオンの津村騎手が後続の末脚を警戒した騎乗になるのも仕方のないところで、このようなこともレースの流れひとつで起こりうる──。こんな形でしか総括できない1戦に今年の関屋記念はなってしまった。 もちろん、マイル戦に転向して結果を出した勝ち馬、中京記念に続いて今回も一定の結果を出した2着馬にはそれなりの評価が必要。しかし、このレースの結果を受けて「秋のGIの主役が登場した」と考える人間は、さすがにいないだろう。 上位馬が強かったのではなく、人気になっていた他の馬たちがだらしなさ過ぎた。上位の馬の評価を上げるのではなく、これらの馬たちの評価を下げるべきだと私は思う。残念ながら、今年の関屋記念は収穫のある1戦ではなかった。 8/13(日) 札幌11R ダ1700m エルムS あまりにも脚抜きのいい馬場状態で、条件戦でも好時計が続出していた先週の札幌のダート戦。JRAレコードが出たからといって、すぐにGI級との評価は出来ないが、勝ち馬と2着馬に関しては相応の評価をすべきと思う。 勝ったロンドンタウンは4コーナーでの手応えが抜群だったし、直線でスッと外に出した岩田騎手の騎乗も光った。だが、私がなによりも賞賛したいのは、14キロの馬体減でも全く細く見せず、ここを目標にしっかりと馬を作ってきた陣営の仕上げについて。賞金加算をできた事実はとても大きく、これで秋の大きいところを目指す準備は出来た。きっちりと馬を作ったがために、少し間隔を取る必要が出てくるかもしれないが、この1勝は今後への大きな布石になったと思う。 2着テイエムジンソクも負けはしたが、直線を向いた瞬間の手応えの良さは楽勝するかと思えるほどだった。勝ち馬に切れ負けはしたが、こちらも地力アップを証明したレース。素直に評価したい。 なお、今回は特殊な状況で行われた1戦。これほどまでに時計が速くなってしまうと、後方にいた馬では追い上げが難しくなってしまうし、外を回るような距離のロスも致命的なものになってしまう。まるで力を発揮できずに終わった馬もいるはずなので、今回の結果だけを見て、簡単に評価を下げてしまわないようにしたい。 〈新馬戦〉 8/13(日) 札幌5R 芝1800m メイクデビュー札幌 札幌の芝1800mを勝ったフラットレーは藤沢和厩舎の馬で、残念ながら骨折で戦線離脱してしまった同厩のレイエンダの穴を埋めるような楽勝で、初戦を飾ってみせた。 強いのは間違いないと思う。クラシック候補でもあると思うが、私が感じた初戦のインパクトはレイエンダのほうがやはり上。勝負どころで動いてくるときの脚の速さがレイエンダには及ばないように感じたのだ。これがGI級と言い切れない理由でもある。 ただし、父がキングカメハメハで1月30日の早生まれであるレイエンダと、父がハーツクライで4月8日生まれのフラットレーとでは、現時点での完成度にかなりの差があって当然。成長力は後者のほうが上であるはずなので、来春には私の印象を超える馬になっている可能性もあると追記しておきたい。 8/12(土) 新潟5R 芝1800m メイクデビュー新潟 新潟からは2鞍。土曜の芝1800mは前評判の高かったレースで、実際に勝ち時計は1分48秒5となかなかのものだったが、勝ったサクステッドは7番人気で単勝のオッズも約67倍とノーマークに近かった馬。タートルボール産駒でもここまで走るのかとの印象を持ったことは素直に告白しておく。 ただし、潜在能力では2着タニノフランケルのほうが上ではないだろうか。528キロという大型馬にとって、10秒台のラップを必要とする上がりタイムに対応するのは難しかったと思うし、フランケル×ウオッカという血統は切れよりもパワーで押すタイプ。実際のレースぶりを見て、それは確信に変わった。これだけの血統馬。あっさりと勝ち上がってほしかったという気持ちはあるが、前述したように悲観する内容ではない。太めが解消すれば、すぐにでも勝ちあがれると思う。 8/13(日) 新潟6R ダ1800m メイクデビュー新潟 最後は新潟日曜のダート1800m。この1戦こそが先週の新馬戦のハイライトではなかったかと私は思う。出遅れを克服し、馬なりのままで7馬身も突き抜けたルヴァンスレーヴの強さは衝撃的なもので、その強さは先の札幌ダート新馬戦で圧巻の走りを見せたハヤブサマカオーと互角。仮に今後もダート路線を選択していくのなら、重賞級の活躍を見せる可能性の高い馬だと思う。 ただし、父がシニスターミニスターのハヤブサマカオーと違い、父がシンボリクリスエスで母父がネオユニヴァース。血統譲りの足長な馬体である同馬には、芝のレースにチャレンジしても不思議のない要素がある。パドックでの脚さばきが少し硬く、この部分だけを強調すれば、やはりダートなのかな…という気もするが、芝へと路線を変えた場合でもそれなりの評価はしたほうがいいと私は思う。 〈オープン特別〉 8/12(土) 札幌10R 芝1800m コスモス賞 東京の新馬戦を好時計で制したステルヴィオが登場した札幌のコスモス賞に触れておきたい。圧倒的な人気にしては、道営の馬を相手にクビ差の勝利。GIを狙えるようなパフォーマンスではなかったと思うが、そのレースぶりはなかなか興味深かった。 今年が新種牡馬デビューになるロードカナロアの距離適性は1200~1600mというのが一般的な考え方で、距離をどこまで克服していけるのかが焦点になっていると思う。しかし、この日の同馬は1800mという距離でありながら、勝負どころの手応えがそこまで抜群でなく、仕掛けて出していくようなレースぶり。馬場の影響もあったかもしれないが、スピードの絶対値が違うロードカナロア産駒であれば、何もせずに前のポジションをキープし、持ったままで後続を突き放してしまう──。そんな形のレースぶりを誰もがイメージすると思うのだ。 正直、今回のステルヴィオの走りは物足りない。しかし、ロードカナロアの種牡馬としての可能性を考えたとき、距離延長への対応力が予想以上にあることを示したモデルケースとして、重要なレースとなる可能性がある。ステルヴィオの母父はファルブラヴ。決して長い距離を得意としない母系とあれば、なおさらのことだ。 ※次回の【調教師の着眼点 -先週のレース解説-】は8月24日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【8月5日・6日開催】レパードS、小倉記念ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 8/6(日) 新潟11R ダ1800m レパードS 騎乗していたルメール騎手も決して油断をしたわけではないのだろうが、スタート直後から前へ行かずに競馬をすることを決めていたような乗り方をし、それが最後に響いた形で進路を失った今回のレースは、エピカリス陣営にとって残念なレースだったに違いない。なぜ? それは今回の1戦が賞金加算を第一の目的としたものだったからで、本来は使いたくない夏のレースに出走させてきたのも、すでに勝負付けが済んでいる同世代を相手にした重賞レースが「おいしい」と感じたからにほかならない。 もちろん、あれほどの苦しい立場になりながら、残り100mだけで3着に押し上げたエピカリスの走りには凄みがあったし、出走取消明けというネガティブな結果に終わったアメリカ遠征のダメージを感じさせない仕上がりで出走できたことも収穫ではあった。 だが、裏を返せば、どこかで息を入れることを念頭に置いていたからこそ、これほどまでにきっちりと仕上げて、陣営は挑んできたのだろうし、まさか2着まで外してしまうとは思ってもなかったはずだ。 次を使うにしろ、少し休むにしろ、本番前の1戦を前哨戦と割り切ることが出来ず、結果を出さなければならない状況にしてしまったのは痛い。この1戦の結果が今後を左右することにならなければいいのだが。 ローズプリンスダムの勝利にケチを付けたくはないが、エピカリスの“凡走”があったからこその勝利であることは明らかで、パドックの振る舞いひとつをとっても、古馬相手の重賞で通用するようなレベルには達していない。正直、パドックの時点でエピカリスとの差はかなり感じた。地味な勝ち時計も含め、上位馬の実力は例年の水準に達していないと思う。 〈古馬重賞〉 8/6(日) 小倉11R 芝2000m 小倉記念 今年の小倉記念を制したのは52キロの最軽量ハンデだったタツゴウゲキ。傑出馬がおらず、軸の選定も難しいとされる下馬評が正しかったことを証明する結果になっている。 今回の勝因は軽ハンデだけでなく、3番手のインという絶好のポジションにしっかりと収まったことにあると思う。2着のサンマルティンは3コーナーから捲り気味に外を進出し、長く脚を使わされる形の競馬になった。一方で、タツゴウゲキは直線まで追い出しを待機し、距離ロスのない内を一気に突くという競馬。どちらが楽なレースをしたかは言うまでもないだろう。 この1戦を見て「強い」と感じたのは2着のサンマルティン。ただし、その走りは平坦小回りに適しているように思え、直線の長いコースに替わってどうかの疑問は残る。これは勝ったタツゴウゲキに関しても同様だ。 サマーシリーズ最終戦の新潟記念に行くにしろ、秋に備えるにしろ、今回と同じような結果を保証できるレベルにはない。厳しい言い方になるが、今年の小倉記念はそのようなレースだった。 〈新馬戦〉 8/6(日) 新潟5R 芝1800m メイクデビュー新潟 先週の新馬戦で最も記憶に残るレースをしたのは新潟の芝1800mを勝ったロックディスタウン。今年が産駒デビューの新種牡馬オルフェーヴルの仔で、栗毛の馬体も父と一緒ということもあり、今回は同馬を取り上げてみた。 馬込みでしっかりと我慢し、追い出してからしっかりと伸びたレース内容は悪くない。上がり32秒5の数字はスローペースの賜物だろうが、着差以上に余裕を感じさせる走りにスケールも感じた。今後もこのレースを続けることができれば、将来は明るいかもしれない。 しかし、この馬を語るときに見逃せないのが母父ストームキャットの存在。オルフェーヴルの激しい気性が成功のカギと考えられているのは周知の事実だが、ストームキャットの血にも負けず劣らずの激しさがある。 競走馬は使いながら良くなっていくものと考える人間は多いだろうし、実際にそういう馬は多いが、一方で競馬を使うたびに悪くなっていく馬も少なくない。そうなってしまう一番の理由は気性。この馬にはその不安があるのだ。 今回のパドックでは我慢が利いていたが、次走も大丈夫とは言い切れない。そのパフォーマンスには及第点の評価を与えながらも、血統的な不安要素は常に考えておく──。これが大事なことではないだろうか。 〈条件戦〉 8/5(土) 新潟10R 芝2000m 信濃川特別 前走時も高評価を与えたキセキが前走をはるかに超えるパフォーマンスで、古馬相手の1000万下も楽に突破した。1分56秒9という勝ち時計もさることながら、大物感が漂うパドックでの振る舞い、迫力満点のフットワークと一流になれる可能性を随所に感じる。 あまりにも飛びが大きい走りなので、器用さに欠けるようなところがあるかもしれないが、折り合いに気を使うようなところがないので、距離延長に対しての不安もなさそう。次走は神戸新聞杯とのことだが、そこにはレイデオロも出走を予定していると聞く。楽しみな1戦となりそうだ。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は8月17日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【7月29日・30日開催】クイーンS、アイビスSDほかレース解説

    〈古馬重賞〉 7/30(日) 札幌11R 芝1800m クイーンS 古馬相手にはなるが、斤量の恩恵を受ける3歳馬が勝ちやすいレースだ。しかし、アエロリットの今回のレースぶりは斤量だけが勝因と言えないものだと私は思う。この結果を受け、秋は秋華賞へ向かうことになると聞いたが、いい勝負になるだろう。その根拠をいくつか述べたい。 まずは18キロ増だった馬体重。これは大きい。先を見据え、メイチの作りでなかったのは確かだろうが、パドックに登場した彼女の馬体は余裕が残っていたのではなく、ボリュームアップしたという表現のほうが正しいもの。フェアリーSで2着に負けた年明けの段階で「アエロリットは5月の遅生まれ。成長期が来るのは夏以降だろうし、現時点でここまで走っていることに価値がある」というニュアンスの評価をさせてもらった。その考えに間違いがなかったことを改めて確認できた1戦と言えるのではないだろうか。 パドックでの所作もそうだ。例えば、1番人気だったアドマイヤリードはステイゴールド産駒らしい気性の難しさをレース前から覗かせていた。この性格が改善されることは年齢的にもうないはずだ。展開や洋芝、小回りコースが合わなかったのは確かだろうが、パドックで見た段階でアエロリットとの差も感じた。レースに挑む前の段階での落ち着きは、常に力を出せるかどうかという信頼にも繋がる。アエロリットの安定した成績は彼女の性格によるところが大きいが、その精神的な部分が春よりも一段と成長したように見えたのだ。 横山典騎手は自信満々にアエロリットを誘導した。相当な自信があったのだと思う。一貫したラップを刻んでの逃げ切り勝ちは、同じ小回りコースに該当する京都内回り2000mの秋華賞にメドを立てるものだっただろうし、アエロリットの持っている潜在的なスピードが歴戦の古馬相手でも1枚上であることも証明した。同世代が相手なら、もっと戦いやすいだろう。 もちろん、好位に控えても問題がない馬。今回の結果を受け、周囲がアエロリットの出方を考えなくてはならなくなったことも大きい。ソウルスターリングが天皇賞(秋)へと向かうのであれば、彼女が本番で本命視される可能性も大きそうだが、その期待に応えられる馬だと思う。 2着トーセンビクトリーは走ったり、走らなかったりと掴みにくい面があるようだ。前走が不可解な凡走で、今回が同馬の能力と考えるのが妥当。しかし、勝ったアエロリットとの能力差は埋めがたいものがあると私は見た。乗り方やコース取りなどで着差は詰まるかもしれないが、着順が変わるまでには至らない。GIを勝つ馬とそうでない馬の差は前哨戦のようなレースであっても、如実に表れるものなのだ。 7/30(日) 新潟11R 芝1000m アイビスSD 勝ったラインミーティアは私が管理したメイショウボーラーの産駒で、JRAの平地重賞を勝ったのは今回が初めて。素直に嬉しい勝利だった。 メイショウボーラー自身には直線競馬を走った経験はないが、彼の武器は傑出したスピード。仮に直線競馬に出走する機会があったのなら、おそらくは結果を残すことができたのではないかと思っていたのだ。産駒が直線競馬の重賞を制したことで、そんな私の考えも正解だったのかと考えると、それだけで感慨深いものがある。 ただし、ラインミーティアが見せたパフォーマンスはスピードを全面に押し出していた父と違い、スタート直後は脚を溜め、末脚で勝負するスタイル。父とも違うが、直線競馬のセオリーともまた違う。鮮やかだった勝ちっぷりに目がいってしまいがちだが、このような競馬でアイビスSDを勝ったということには注目したいし、メイショウボーラーが仮に脚を溜める形の競馬をしていたのなら、このような脚を使うこともあったのだろうかと思った。このような事象が起こったときに、私は競馬の面白さ、奥深さを痛感する。 ラインミーティアの母系はひと言で「渋い」と表現されるもの。母父はフェアリーキング産駒のオース。祖母アラマサキャップの父はオグリキャップだ。その先にもニルコス、パーソロン…。このような血統の馬から現代競馬に最も必要なスピードを競う1000mの重賞を勝つ馬が出るのだから、これも競馬の面白さ、奥深さと言えるだろうか。 だが、秋のGI路線に繋がる1戦だったかと問えば、その結論は時期尚早。少なくとも、今回の1戦でその手応えを得ることは出来なかったと言っていいだろう。2着のフィドゥーシアも含め、次走以降のレースでそれなりのパフォーマンスを見せることが重要になってくると思う。 〈新馬戦〉 今週はいつもより多めの4鞍を取り上げる。理由は簡単。大きいところを狙うような大器が出現したからだ。 7/30(日) 札幌5R 芝1800m メイクデビュー札幌 まずは日曜の札幌芝1800mを勝ったレイエンダ。すでに新聞各紙で絶賛されていたので、詳しいレースぶりは省かせてもらうが、全兄レイデオロに匹敵する大物だと私も思う。 私があげるポイントは2つ。まずはスタート直後に行きたがっていたことについて。もちろん、何もせずに走ってくれるのが1番だが、この遅いペースでもまるで行きたがらないようでは、ペースの速くなる今後の競馬に対して逆に不安になってくる。その後にしっかりと折り合っていたのだから、問題はまるでない。祖母がスプリンターだったレディブロンド。その非凡なスピード能力を受け継いでいることを示したことを好意的に考えたい。 もうひとつは遅いペースにも全く動じず、最後方からレースを進めたルメール騎手のレース運びについて。このレベルの騎手になれば、調教に乗っただけで馬のレベルを理解するもの。自信タップリだった彼のレース運びが、レイエンダという馬の将来性を証明しているわけだ。 レイエンダの曾祖母はディープインパクトを産んだウインドインハーヘアで、この馬の能力の起源もこの馬にあると私は考える。つくづく優秀な繁殖牝馬だと改めて思った次第だ。 7/30(日) 札幌6R ダ1700m メイクデビュー札幌 レイエンダの登場に興奮冷めやらぬ札幌の6R。ダート1700mの新馬を勝ったハヤブサマカオーもまた重賞を勝てる素材であることを、今回のわずか1戦で示した馬だ。 ダートの大差勝ちをする馬というのは本当に強い馬で、今回レースを見ればわかると思うが、他馬はハヤブサマカオーの作るペースについていけず、枯れ葉が落ちるように脱落していく。これこそが真に強い馬が見せるパフォーマンスなのだ。 手応えに余裕を十分に残しながら、続く7Rの古馬500万下と同じ走破時計で走ってしまった彼の将来性は非常に高いが、今後の問題はダート馬であるがゆえの番組選択の難しさ。ご存知のようにJRAの2歳戦は芝をメインとした番組作りがされており、彼のような馬に適した番組は数えるほどしかない。これほどの能力を持っている馬であれば、昨年のエピカリスのようにUAEダービーを目指してもいいと思うし、仮に私が同馬を管理していればそうするだろう。となれば、使うべきレースはおのずと限定されてくる。最適ステップとされる2月のヒヤシンスSに向けて、出走する番組をどう選定していくか。これがポイントになってくるだろう。 7/29(土) 札幌5R 芝1500m メイクデビュー札幌 土曜の札幌5Rはエイジアンウインズを母に持つロードカナロア産駒のメジェールスーが1番人気になっていたが、勝ったのは2番人気のタワーオブロンドン。現段階での完成度の違いがあったかもしれないが、直線でのフットワークを比較すれば、後者が勝つのは必然だったように思う。 「走りっぷりがいい馬」。これが私の感じた印象。イルーシヴクオリティを父に持つレイヴンズパスは確かにマイル色の強い馬で、その血を受け継いだと感じるスピードを見せたわけだが、母父はダルシャーン産駒のダラカニで、祖母シンコウエルメスはサドラーズウェルズとドフザダービーの間に生まれた馬。ドフザダービーは英愛ダービーとキングジョージを制したジェネラスの母として知られている。中距離くらいまでなら十分に距離は持つだろう。 7/30(日) 新潟5R 芝1600m メイクデビュー新潟 新潟の芝1600mを勝ったオーデットエールはハーツクライの産駒。直線を向いた段階で鞍上の手綱は持ったまま。ここまでのレースぶりはレイエンダにも近いものだが、抜ける瞬間の脚の速さがレイエンダとは違う。見た目には完勝。血統的に晩成の可能性もありそうなので、これからも注目はされていくだろうし、オープンで競馬をしていく馬になるかもしれない。だが、わずか1戦でクラシックを勝つレベルであることを感じさせたレイエンダとは明確な差があったことは事実。これはしっかりと明記しておく。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は8月10日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【7月22日・23日開催】中京記念、函館2歳Sほかレース解説

    〈古馬重賞〉 7/23(日) 中京11R 芝1600m 中京記念 勝ったウインガニオンは3連勝で重賞制覇。条件戦ならいざ知らず、オープンでの3連勝は力がなければできないことで、仮に展開などの恩恵があったとしても、一定以上の評価が必要だと思う。 しかも、今回の1戦はスムーズにハナを切れたわけでも、ペースの恩恵を受けたわけでもなかった。むしろ、スタート直後に首を左右に振り、流れに乗り損ねてしまっていたほどだ。離れた2番手の位置と荒れてはいても内が残る馬場を読みきった鞍上のファインプレーは考慮しなければならないが、57キロのハンデを背負っていたことも、また忘れてはならない事象。次走に予定される関屋記念に関しての見解は後述するが、フロックでの勝利でないことは記憶しておいて欲しい。 2着グランシルクは本当に勝ちきれない馬だ。この結果を良しとするのであれば、特に変化を加える必要はないが、競馬は勝ってナンボの世界。おそらく陣営は歯がゆい気持ちでいるだろうし、調教などでの工夫を考えることもあると思う。もちろん、それが口で言うほど簡単ではない。しかし、何かをしなければ、この馬は永遠に“善戦マン”で終わってしまう。私にも経験があるが、何かに挑戦し、そこで結果を出したときの喜びは格別なものだ。陣営の英断を期待したい。 ちなみにウインガニオンとグランシルクは、脚質も馬のタイプも大きく違うように見えるが、ともに悪い馬場を苦にしないステイゴールド産駒。今回の馬場はステイゴールド産駒に向くような印象を私は持った。高速馬場の新潟とはまた違うので、次走に関屋記念が選択された場合は、芝の状況をしっかりと観察することを推奨したい。 3着ブラックムーンは本質的に綺麗な馬場での瞬発力勝負を好む馬だと思う。最内を通る選択をし、上がり最速をマークさせたデムーロ騎手の手腕は評価しなければならないが、今回のレースは芝の状態がこの馬に合わなかった。能力は見せており、次走での巻き返しは十分にあると思う。 〈2歳重賞〉 7/23(日) 函館11R 芝1200m 函館2歳S もう20年近くも前の話になるが、リザーブユアハートという馬で函館2歳Sを勝ったことがある。表現が悪いが、早いうちに稼いでおくしかないくらいの早熟で、前田幸治オーナーに「パッパと重賞を勝たせますわ」と嘯(うそぶ)いたくらいだった。月日は流れ、函館の開催は6週間に短縮。成長をうながしている余裕はまるでなくなり、これまで以上に早熟馬の台頭するレースになったように思う。 今年は目を見張るような勝ち方をした馬がおらず、戦前から小粒なメンバー構成という評価だったが、レースが終わったときの印象も大差がない。暮れのGIに繋がるような1戦でなかったのは確かだ。 勝ったカシアスは先行集団を見ながら、ゴール前で先に抜け出した馬を捕まえる上手な競馬をした。この勝ち時計を評価することはできず、長い距離に対応できそうな馬体もしていないが、この日のレース内容は完勝と呼べるもの。少なくとも今回のメンバーでは力量が上だったと見るべきだ。 父がキンシャサノキセキで母系にはゴーンウエスト。この配列はスプリンターのそれだが、異色の存在として同馬の血統にアクセントを加えているのが母父のディラントーマス。凱旋門賞馬だった父の影響が多少でも出てくれば、これより先のレースにも楽しみが出てくると思う。 〈新馬戦〉 7/22(土) 中京5R 芝1600m メイクデビュー中京 先週は血統馬のトゥザフロンティアが勝ち上がった。その単勝オッズからすれば、順当勝ちと言えなくもないが、勝負どころで最初に手が動き、直線は内にモタれる仕草。まだまだ子供で競馬をわかっていない。いや、走ることをわかっていないという表現のほうが妥当だろうか。 この手の馬を評するときに「この状況で勝ってしまうのだから、相当に奥がある」と考えるべきか、それとも「勝ったとはいえ、この状況のままでは上で苦しむ」と判断するのかが難しい。次も能力だけで勝ってしまうことがあるからだ。しかし、管理する立場にいた人間の考えを言わせてもらえば、前者のコメントはリップサービスに過ぎず、浮き彫りになった課題をどのようにクリアしていくか。それに頭を悩ませる。これだけの血統馬なら、なおさらと言えるかもしれない。 どのように矯正していくかが重要。私なら3頭併せの真ん中にでも入れて、まずはしっかりと走ることを教えるかもしれない。上手にハミを取れるようになれば、今度は併せ馬の内に入れたい。彼は左回りで内にモタれていた。右回りでも内へ行くのか。それとも左側に馬を置けば、それは大丈夫なのか。その確認をしたいからだ。 いずれにしろ、その調整過程も含め、次走は注目のレースになる。そこで矯正されていないようなら、それ以上の活躍を望むことは難しそうだ。 7/22(土) 中京6R 芝1400m メイクデビュー中京 新馬戦からもう1鞍。次の中京芝1400mを勝ったアーデルワイゼについて。直線入り口から半ばまでは少しモタモタしたが、ゴール前の切れは父エイシンフラッシュの影響を感じさせるもの。そして、今回のテーマは同馬ではなく、新種牡馬のエイシンフラッシュの可能性についてだ。 キングズベストはそこまで結果を残せたと言えないが、同じキングマンボ産駒であるキングカメハメハはサンデーサイレンス系と抜群の相性を示し、その地位を確立している。キングマンボを祖父に持つエイシンフラッシュもサンデーサイレンス系との掛け合わせで成功する可能性があり、アグネスタキオン肌の繁殖と配合された馬が新馬勝ちしたことは、その観点から非常に意味がある。 中距離から2400mの距離までこなしたエイシンフラッシュは距離への融通性も高く、キングカメハメハよりも鋭い決め手を持っていた。2歳戦に強い早熟性までアピールすることができれば、人気種牡馬に成長していく可能性も十分にあるだろう。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は8月3日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【7月15日・16日開催】函館記念ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 7/16(日) 函館11R 芝2000m 函館記念 ハンデが明暗を分けることも多いレースだが、今年はあいにくの雨となり、ハンデだけでなく、馬場の巧拙の差も出たような印象がある。上位馬に外枠の馬ばかりが並んでいるが、勝った馬が外を回ったのに対し、2、3着馬は馬場の最内を立ち回った先行馬と逃げ馬。これといった勝因を見定めにくいレースだったと言えるだろう。つまりは今回の結果が出走馬の能力通りだったわけではないということだ。 勝ったルミナスウォリアーは55キロのハンデも良かっただろうし、函館でじっくりと調整されて状態も良かったようだ。輸送競馬が主流になった現在でも滞在競馬がマッチするタイプは存在しており、この馬はその傾向があるのかもしれない。ただし、完勝ではあったものの、前述したようにハンデと馬場のサポートがあったのは事実。良馬場の決め手勝負になった場合でも上位争いをできるようなら本物だが、今回のレースにそこまでのインパクトは感じなかった。 2着には7歳馬のタマモベストプレイ、3着も重賞では足りない印象のあるヤマカツライデン。このことからも馬場の影響は大きかったと推察できる。 ゆえに1番人気で6着に負けたサトノアレスについての答えも持ち越しでいいのではないだろうか。経験値の低い3歳馬にとって、道悪の内枠も厳しい条件だった。大きく負けているわけではない。次走での巻き返しに期待したいところだ。 〈新馬戦〉 7/16(日) 中京5R 芝2000m メイクデビュー中京 今後も注目されるであろう中距離の新馬戦が各地で組まれていたが、取り上げるべきレースは1つでいい。日曜中京の芝2000m。勝ったワグネリアンと2着のヘンリーバローズが3着以下を5馬身も離し、ハナ差のマッチレースを繰り広げた1戦だ。 勝ったワグネリアンはスプリンターだったブロードアピールの孫にあたる馬。血統的には距離が延びていいタイプではなく、2000mという距離を克服できるかどうかがひとつのカギだったと思うが、結論から言えば、まるで問題がなかった。 1000m通過が67秒0という超スローペースにも折り合い、直線までじっくりと末脚を温存。2着のヘンリーバローズも上がり3F32秒8というとんでもない脚を使っているが、同馬のそれは32秒6というのだから、ちょっとケタ違いだ。ブロードアピールの持っていた決め手を、父のディープインパクトがさらに増幅させたイメージと表現したらいいだろうか。無事でさえあれば、大きいところを走る馬になると思う。 ただし、当日の馬体から受けた印象は、2着だったヘンリーバローズのほうが私には良かった。確かに切れでは負けてしまったかもしれない。しかし、ワグネリアンにはない重厚さが同馬にはあり、兄シルバーステートにも通じるスピードも感じた。今回のレースでは、瞬発力により秀でていたワグネリアンに差されはした。しかし、この馬が使った末脚も素晴らしいものだ。こちらも無事でさえあれば、重賞を狙う素材と評価しておきたい。 〈オープン特別〉 7/16(日) 中京11R ダ1800m 名鉄杯 日曜中京の名鉄杯を勝ち、4連勝でオープン特別も突破したオウケンワールド。馬の充実がなければ、このような成績を収めることができず、そこはポジティブに受け止めていいだろう。 問題は同日に行われた500万下のレースよりも0秒2も遅かった勝ち時計にある。正直、この部分の判断は難しい。今回と同じオープン特別であれば、現在の充実ぶりのほうを重視すべきだと思う。出走馬のレベルがそこまで高くならないからだ。 一方で重賞に挑戦する際には、この時計に対して疑問を持つべきだろう。重賞を勝つためには勢いに加えてのプラスアルファが欲しいものだが、同馬は今回の1戦でそれを示すことができなかった。過剰な人気になっていると思うのであれば、今回よりも前のレースにさかのぼって考えてみることを、私はオススメしたい。 〈条件戦〉 7/15(土) 中京8R 芝2000m 3歳上500万下 最後に土曜中京の8Rを勝ったキセキについて。同馬は新馬戦のパフォーマンスが評価され、一時はダービー候補の呼び声も上がった存在。陣営の期待もそれに順ずるものだったと聞く。 しかし、ダービーの開催日はおおむね5月末で決まっており、その日程に合わせての調整──つまりは賞金を加算するための出走を繰り返すことで、その馬が持っている能力を発揮できない状況に陥ることも少なくない。キセキはそのパターンにハマッてしまった1頭だろう。 このような馬が立て直され、力を発揮できる状態で出走してきたとき、今回のようなワンサイドの競馬をしてみせることがある。「馬肥ゆる秋」という言葉があるが、それを最も具現化するのは3歳牡馬だ。 本来の力を取り戻した素質馬は、それ以降も止まることなく進化し続け、一気に重賞の舞台まで駆け上がってしまうことも少なくない。夏の始まりに真価を発揮した今回のキセキは、これ以降も追いかけて価値のある存在と言えるのではないだろうか。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は7月27日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【7月8日・9日開催】プロキオンS、七夕賞ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 7/9(日) 中京11R ダ1400m プロキオンS キングズガードが内をさばいて初の重賞制覇を飾った。前半からラップが緩まず、追い込み馬に有利な展開になったことも確かだが、その末脚の切れ…特にゴール前の伸びは際立つもの。パドックでの周回も実に落ち着いたもので、6歳を迎えて完全に本格化したと考えていいだろう。 2着のカフジテイクはドバイ遠征後の初戦だったが、遠征によるダメージは感じさせず、むしろ余裕残しに感じたほどの馬体の作り。キングズガードに伸び負けした格好にはなったが、海外遠征帰りでもしっかりと脚を伸ばしたのだから、評価を下げるに値しない。むしろ、さすがに能力があると改めて感じた。 問題は上位2頭の今後だ。当然ながら、狙うべきはマイル前後のGIとなるのだろうが、JRAでの適当な番組はフェブラリーSくらいしかない。地方交流でも南部杯くらいだが、ここは出走するための賞金ボーダーが高く、ゲートインできるかどうかもわからない。レースを使わずに待機し続けるか、それとも適鞍でないレースにも挑んでいくか──。 ダートのトップホース、特に短距離馬は条件が上がり、走るステージが高くなればなるほど、選択肢がなくなるという悪循環に陥る。これは番組面の欠陥と言えるかもしれない。GIの数をさらに増やせとまではいわないが、ダートの番組に関しては、もう少しバリエーションがあってもいいのではないか。おそらくは1400mがベストと思える2頭のパフォーマンスを見て、そんなことを改めて思った。 7/9(日) 福島11R 芝2000m 七夕賞 先週の馬体診断の際には「腹袋がしっかりとした体型は父のディープインパクトではなく、母父であるブライアンズタイムの影響が強い」と書いたゼーヴィント。しかし、当日のパドックではかなりシャープになっていた。この部分は訂正しておかなければならないだろう。ただし、多くのディープインパクト産駒と違い、切れよりも持久力を要する競馬に強いというイメージは、今回の競馬を見ても変えなくていい。いや、それこそが正解という思いはさらに強くなった。 テンからペースが流れ、道中のラップ構成に緩みはない。ラストの200mに12秒9を要したレースは前述したように、切れよりもスタミナを必要とする流れだ。ゼーヴィントはそのほとんどのレースを中山と福島で走り、2つの重賞はともに福島。東京や阪神外回りのような直線の長いコースでの決め手勝負に強いイメージのディープインパクト産駒だが、この馬は小回りで仕掛けどころが早くなるレースのほうに適性がある。馬体面に関しては若干の訂正をさせてもらったが、そのレースぶりはブライアンズタイムの影響が色濃い。これは覚えておきたい項目だ。 〈新馬戦〉 7/8(土) 中京5R 芝1600m メイクデビュー中京 中京の1600mを勝ったミッキーマインドはダートのスプリンターであるダノンレジェンドの半弟。全姉のミッキーグッドネスもダートに転じて以降のパフォーマンスが良かっただけに、この母系はダート色が強いのかとの危惧も合ったのだが、ディープインパクト×ストームキャットという血統構成を単純に受け取れば、その守備範囲は芝のマイル以上。この条件から始動するのもある意味では当然と言えるかもしれない。 レースを見た印象もそうだ。スプリント色の強い馬であれば、これだけのスローペースで行きたがる素振りを見せて当然。しかし、同馬にそれはなかった。むしろ、勝負どころからは鞍上が前へとうながしていくくらいの追走。いい意味でのズブさを見せたのがいい。ラストの2Fが11秒3-11秒7という競馬を差し切れるのは、ディープインパクトの切れがあればこそ。いい勝ち方をしたと思う。 7/9(日) 中京5R 芝1400m メイクデビュー中京 2着に5馬身の差をつけたシンデレラメイクは派手な勝ちっぷりをした。ディープブリランテにキャプテンスティーヴ、リアルシャダイという血統構成であるにもかかわらず、芝の1400mでこのパフォーマンス。芝の荒れた内にも躊躇なく突っ込んだ鞍上の騎乗は、こんな馬場でもこなせるという自信があればこそで、予想よりもスタミナの問われるレースだったのかもしれない。もちろん、距離の延長には対応できるだろう。楽しみな素材と言えそうだ。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は7月20日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【7月1日・2日開催】CBC賞、ラジオNIKKEI賞ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 7/2(日) 中京11R 芝1200m CBC賞 サマースプリントシリーズの第2戦。勝ったのは2番人気のシャイニングレイだった。伸び上がるようなスタートになり、道中の位置取りは後方から2、3番手。先行した2頭が残ってしまう競馬だったのだから、展開が向いたとも思えないのだが、直線で抜けてくるときの脚はケタ違い。2着のセカンドテーブルとの着差はハナでしかないが、2頭の力の開きは相当に大きいと考えていいだろう。 今後はGIを賑わす馬になるのではなかろうか。そう考える理由は2つ。ひとつはGIの舞台に出ても見劣りしない素晴らしい馬体。ディープインパクト産駒ではあるが、線の細さがまるでなく、その走りも含めた印象はパワフル。母父であるクロフネの影響が大きいのかもしれない。 もうひとつは5月22日の遅生まれに加え、わすかに7戦しかないキャリアの浅さ。後者に関して言えば、故障による長期の休養明けの影響によるものではあるのだが、それが同馬の伸びしろを否定することはない。キャリアの浅さが粗削りなレースの内容に出ているのであれば、今後は良化しかないと考えるほうが自然だ。次走の内容、結果次第ではスプリンターズSの主役となりえるかもしれない。 〈3歳重賞〉 7/2(日) 福島11R 芝1800m ラジオNIKKEI賞 秋に向けて賞金を加算したい3歳馬が出走するレース。だからこそ条件は等しくあるべきで、同世代の重賞をハンデ戦にする理由が私には理解できない。仮に自分の管理馬が重いハンデを課され、軽ハンデ馬に僅かな差で負けた場合──。今後のローテーションが厳しくなることを考えれば、納得のいかない気持ちになるだろう。ハンデ戦は古馬との混合になってからで十分。能力の高い馬を排除するようなレースを作るべきではないというのが私の考えだ。 勝ったセダブリランテスは54キロのハンデ。1番人気に支持されたサトノクロニクルが57キロを課されていたのだから、ハンデの恩恵は大きかったと思われるし、今回の重賞勝利が大舞台での好走を約束するものでないとも思う。 ただし、この馬に関してのみの話をすれば、ナリタブライアンやビワハヤヒデなどを出したパシフィックプリンセスの血統背景に加え、母父ブライアンズタイムに似た体型。勝負どころで一度は手が動いたズブさは、3000mという距離に対する可能性を感じさせるものだ。まだキャリアは3戦。完成もしていない。クラシックで走ってきた馬と五分の評価をするのは早いが、持っているものは確かなようだ。長い目で見ていきたい。 〈新馬戦〉 今週は中京から2鞍。 7/2(日) 中京5R 芝1600m メイクデビュー中京 まずはロードカナロア産駒がワンツーを決めた日曜の芝1600m。勝ったトロワゼトワルだけでなく、2着のレッドシャーロットもあっさりと好位をキープ。このスピードに加え、直線でもしっかりと伸びるところが、ロードカナロア産駒の強みと言えるかもしれない。 勝ち馬の母父はハーツクライだが、距離が延びていいはずの種牡馬を父に迎えても、これだけの豊富なスピードを見せる。種牡馬ロードカナロアが自身の特徴を産駒に伝える影響力は、かなり強いと考えていいかもしれない。 7/2(日) 中京6R 芝1400m メイクデビュー中京 もう1戦はタイセイプライドの勝った芝1400m。正直、時計は目立つものではなかったが、勝ち馬は追うことなく勝っている。坂路で50秒台の時計をマークできる脚力は2歳馬らしからぬもので、父がヨハネスブルグなら勝負は早い段階。2歳戦でこそのタイプだろう。小倉2歳Sあたりが視野に入ってくると思われるが、今回のレースぶりならマイルも克服できそうだ。 〈オープン特別〉 7/2(日) 函館11R 芝1800m 巴賞 函館の巴賞を取り上げたい。勝ったサトノアレスは昨年の2歳王者。着差はわずかで時計も取り上げるレベルにないが、我々の言葉で言えば「どこまで行っても変わらない」クビ差。このメンバーが相手では力が違った。先を見据えた10キロ増の馬体と外を回る安全運転の騎乗。函館記念でも有力馬の1頭となるだろう。もちろん、注目すべきは同馬のみで、他の馬では厳しいと思う。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は7月13日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【6月24日・25日開催】宝塚記念ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 6/25(日) 阪神11R 芝2200m 宝塚記念 圧倒的な支持を受けたキタサンブラックの9着惨敗。多くのファンが驚いたと思うが、私も予想だにしない結果に衝撃を受けた一人だ。 前走から6キロ増だった馬体が、少し余裕残しに見えたのも確か。道中で口を割るなど、キタサンブラックらしからぬ走りだったのも否定はしない。 どんなに強い馬であっても、常に勝ち続けることは非常に難しいことで、負けるということに関してだけを言えば、特に驚くべきことでないと思う。 そう、これが単なる敗戦であれば、大きな問題とはならなかったはずだ。 しかし、今回は名馬と呼ばれている馬が「負けていい」とされる範囲を超え過ぎている。 勝ったサトノクラウンから1秒3差。自身より前にいたシャケトラを交わすところまでいかなかったのも、大いに不満の残るところだろう。この事実があることにより、展開を敗因とすることができなくなってしまった。 馬券対象になれない敗戦だったとしても、シャケトラを交わしての4着──。圧倒的な1番人気だったキタサンブラックにとって、これが最低限の仕事だったように思うのだ。 なぜ、こんなにも負けてしまったのか? 現段階で明確な敗因は報道されておらず、その敗因を探ることは難しいと私も思う。 しかし、推測であることを断ったうえで、私なりの考えを話させてもらえば、キタサンブラックという馬は、夏の暑さに弱いタイプなのではないだろうか。 厳しい展開で3着に粘ったとはいえ、昨年の宝塚記念で馬体を見たときの印象も決して良くなかった。3歳秋のセントライト記念も勝ちはしたが、状態そのものは満足のいくものでなかったと聞く。私も経験があるが、この時期の調整はとにかく難しい。それは、名馬と呼ばれる馬も同じなのだ。 これが理由であったとしても、キタサンブラックの今回の敗戦は、理解できる範囲を超えている。安定感をセールスポイントにしていた馬だけに、その衝撃は他の馬以上に大きかったと言えるだろう。 秋は国内専念となったようだが、大事なのは復帰初戦。これまでのどのレースよりも、注目される1戦となるかもしれない。 勝ったサトノクラウンは好走と凡走を繰り返すタイプで、その見極めは難しいと誰もが思うだろうが、今回の1戦で同馬の判断基準が私には見えた。 競走馬には様々なタイプがいて、細いくらいに見せているときのほうが走る馬もいれば、太いくらいのほうが走る馬もいる。サトノクラウンは完全に後者。馬体をフックラと見せているときのほうが、馬に元気があって、結果も出しやすい。 先週の馬体診断では「太め残りに感じるくらい」と述べているが、彼はこれでいいのだ。いや、太めが残るくらいでなければ、ダメな馬なのだろう。 もうひとつ勝因を加えるのなら、やはり馬場ということになる。彼のような小さい爪の持ち主は、道悪馬場をまるで苦にしない。サトノクラウンが道悪巧者であることは、すでに周知の事実ではあるが、今回の1戦で多くのファンが再認識したはず。雨が降れば、評価を上げる。これは忘れずにいたい。 2着には一昨年のグランプリホースであるゴールドアクター。前走までとは状態が違っていたようだ。負けはしたが、能力の高さを示す2着。まだトップクラスでやれることを示した1戦だったと言えるだろう。 〈新馬戦〉 6/25(日) 阪神5R 芝1800m メイクデビュー阪神 阪神の芝1800mを勝ったダノンプレミアム。その走りを実際に見たが、素晴らしいフットワークをする馬だと感じた。 このレースは素質のある馬が揃っていて、メンバーレベルが高いと戦前から考えていたのだが、その中での4馬身差は非常に価値が高く、1分48秒7という走破時計も優秀。クラシック候補と呼んで差し支えないと思う。ディープインパクトにレッドランサム産駒のインティカブ。その血統も魅力だ。 このレースの2着スプリングスマイルも見た目のいい馬だった。今回は相手が悪かったが、すぐに勝ち上がる馬だろうし、このレースに出走した馬の次走はチェックして損はないと思う。 6/25(日) 東京5R 芝1800m メイクデビュー東京 東京の芝1800mはエイシンフラッシュ産駒のスワーヴエドワードが勝利。今年が初年度になるエイシンフラッシュにとって、本格的なセールの時期を前に貴重なアピールをすることになったと思う。 勝負どころで少しズブいように見えたのは、母父ダンスインザダークの影響ではないだろうか。サンデーサイレンス系との相性の良さをアピールできたことも、今後に繋がるはずだ。 〈条件戦〉 6/24(土) 阪神11R 芝1800m 垂水S 前走でも取り上げたシルバーステートが昇級戦の垂水Sも楽勝した。クラシック候補と呼ばれ、その素質の高さを評価されていたとはいえ、1000万下から1600万下への昇級はそれなりのハードルがあるもの。これをほぼ馬なりでクリアしてしまうのだから、もう疑う余地はないだろう。 同馬の能力は重賞級だ。母系にシルヴァーホーク、ニジンスキーという底力を十分に秘めた馬の名があるディープインパクト産駒。とにかく無事にいってほしいと願うだけだ。 6/24(土) 東京10R 芝1800m 八ヶ岳特別 もう1戦は土曜東京の1000万下を勝ち、3連勝を決めたリカビトス。休み明けの昇級戦で、初の古馬相手だったにもかかわらず、きっちりと差し切ったのだから、秋華賞路線の新星誕生と呼んでいいかもしれない。 休みながらでしか使うことができず、今回の馬体重も8キロ減の420キロ。大きいところで走るには、肉体面のさらなる成長が必須だろうが、この馬は5月10日の遅生まれ。ここに可能性を感じる。この夏を上手に越せば、面白い存在になるだろう。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は7月6日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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