先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

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    【6月17日・18日開催】ユニコーンS、函館スプリントSほかレース解説

    〈3歳重賞〉 6/18(日) 東京11R ダ1600m ユニコーンS 勝ったサンライズノヴァの強さばかりが目立ったレースだった。スタートで少し遅れ、道中は後方から。直線でも外を回す格好になったが、前を捕まえるときの走りが、他の馬とは明らかに違って見えた。後ろから競馬を進めて4馬身差は、相当な力の差がなければ無理な芸当。実際にラスト2Fのラップタイムは12秒1-11秒9とゴールに近づくに連れて速くなっている。大舞台で活躍することが多いユニコーンSの勝ち馬だが、今年の勝ち馬もその資格を持っていると考えていいだろう。 今回の馬体重が526キロ。馬格にも恵まれており、パドックでの佇まいにも大物の相がある。キタサンブラックのそれを見ればわかるように、走る馬というのは、往々にして水平首で周回しているもので、この馬もそうだった。 ちなみに同馬はキタサンブラックと同じヤナガワ牧場の生産馬。この牧場の血統は一見して地味に見えても、その実は優秀というものが多く、この馬で言えば、リアルシャダイ産駒だった祖母のリアルサファイヤが利いていると私は思っている。キャリアはわずかに7戦。重賞はフラワーCを勝っただけだが、この馬が実にいい馬だったのだ。 4馬身も離された2着以下の馬が、次も確実に走るかと問われれば、それをジャッジすることは少し難しいかもしれない。走る条件が違えば、好走できる馬もおのずと変わってくるからだ。 今回の結果で改めて確認できたこと。それは東京ダートの1600mで結果を残すためには、マイル以上の適性が必要になってくるということだろう。血統の重要性を示した1戦だったように私は思う。 2着のハルクンノテソーロは母系にトウカイテイオーを輩出したトウカイナチュラルを持ち、3着サンライズソアの母父はスペシャルウィーク。中距離にも対応できる血を体内に持っていた。一方、1番人気で7着に敗退したリエノテソーロの父はスペイツタウン。この馬の本質はスプリンターだ。NHKマイルCで2着に好走し、距離への対応を見せたように感じさせていたが、スピード化が顕著な最近の芝のマイル戦はスプリンターでも距離を克服していく。同じ東京の1600mでも芝とダートは分けて考えるべき。それを再確認したレースだった。 〈古馬重賞〉 6/18(日) 函館11R 芝1200m 函館スプリントS 時計がかかる印象があった以前の函館とはまるで違う開幕週だった。見た目に素晴らしい状態で、どの馬も気持ち良さそうに走っていた函館の芝を悪く言うつもりがないが、これだけの速い時計が出てしまうと、やはり足元への不安は拭い去れない。走りやすい馬場だからこそ、馬が能力以上に走ってしまい、その影響が裏スジなどに出てしまう。素晴らしい馬場であることがすべてでないということも、ファンの方には知っておいてもらいたい。 レコードタイムをマークして優勝したジューヌエコールに対しては、相応の評価をすべきだろう。もちろん、50キロという軽過ぎる斤量の恩恵を受けたことは否定できない。しかし、この距離での2馬身半は完勝というべき着差だ。追い出してからの反応、フットワークを見れば、距離短縮が大幅なプラスに働いたことも一目瞭然。秋のスプリンターズSを狙えるレベルにあると思う。それにしても、ソニックレディがいる母系は非常に優秀だ。日本の競馬にマッチしたこの血統からは、今後も活躍馬が出てくるに違いない。 2着以下の馬では4着に敗退したセイウンコウセイに触れておきたい。前半の600mは32秒2。確かに速いペースではあったし、逃げたシュウジを2番手でマークした同馬の失速も仕方のない面はある。しかし、GIを勝った馬に対しては、苦しい状況を克服する走りを期待するもの。今回の結果は少し期待はずれのようにも感じるもので、この路線の主役とするには時期尚早のようにも思えた。評価は次走に持ち越し。それくらいの気持ちでいいと思う。 〈新馬戦〉 今週は2鞍を取り上げたい。 6/18(日) 阪神5R 芝1600m メイクデビュー阪神 まずは阪神の芝1600mを勝ったコスモインザハート。レースぶりもさることながら、この馬の血統は父がハーツクライで母父はサドラーズウェルズ産駒のバラシア。距離延長に対する不安がまるでない反面、スピード化の進んだ現代競馬にマッチできるのかどうか。そこがポイントになるようなことを血統診断の際に述べた。違う視点から言えば、クラシック向きの血統で1600mをクリアすることができるようなら、その前途はかなり明るい──。1分34秒0という速い時計をマークしての勝利は、単なる1勝以上の価値があるように思う。 6/18(日) 東京6R 芝1400m メイクデビュー東京 東京の芝1400mを勝ったムスコローソも先週の血統診断で取り上げた馬で、その本質はスピードだと述べた。父はヘネシー産駒のヘニーヒューズで、祖母のカーリーエンジェルからは高松宮記念勝ち馬のオレハマッテルゼが出ている。2着馬を5馬身も突き放した今回の結果は、同馬の血統の確かさを証明するものだったように思う。スピードタイプだけに距離には限界があるだろうが、母父のアドマイヤムーンからはダート向きの産駒も出ている。ヘニーヒューズも芝、ダート兼用なところがある種牡馬。二刀流も面白いかもしれない。 〈条件戦〉 500万下条件のダート戦を2鞍取り上げたい。 6/18(日) 函館7R ダ1700m 3歳以上500万下 まずは函館のダート1700mを1分44秒6という速い時計で勝ったハヤブサナンデダロ。滞在競馬で小回りの平坦。函館のこの条件だけを得意にする馬がいることは確かだが、この馬はそのレベルでないように思う。522キロの恵まれた馬格も素晴らしいが、なによりも走りっぷりがいい。まだ3歳でダートのキャリアも今回で4戦目。活躍を期待できる馬だと思う。 6/17(土) 東京12R ダ1600m 3歳以上500万下 もう1鞍が東京の土曜最終レース・ダートの1600mを勝ったソレイユドパリ。未勝利を楽勝した前走でも触れた馬。予想できた勝利ではあったのだが、今回はあえて苦言を。素晴らしい能力を持っていることは確かだが、キャリアが浅いためなのか、頭が高く、体をしっかりと使った走りができていないように見えた。重心の低いフットワークでしっかりと伸びるハヤブサナンデダロとの違いはここだ。能力的に1000万下はあっさりと通過するかもしれないが、このままではどこかで壁に当たるかもしれない。とはいえ、まだキャリア4戦でダートは2戦2勝。走り方を覚えてくれば、高いレベルの舞台で走れる馬ではあるだろう。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は6月29日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【6月10日・11日開催】エプソムC、マーメイドSほかレース解説

    〈古馬戦〉 6/11(日) 東京11R 芝1800m エプソムC 1000m通過が59秒7。前に行く馬が同馬主のマイネル2頭だったことで、予想された以上に前が有利な競馬になった。脚質に先入観を持たず、積極的に位置を取りにいったジョッキーの判断が、明暗を分けたレースと言えるかもしれない。 勝ったダッシングブレイズは、先行馬を見る形の好位でレースを進めた馬。直線は内に潜り込んでくる形になったが、これは先行したマイネル2頭が、馬場の悪い内を避けるコース取りをしたためだ。とはいえ、やむを得ずに最内を通らされたわけでなく、内ラチから何頭分かの離れたポジション。ダッシングブレイズが通った箇所の芝は、そこまで悪くなかったように思う。浜中騎手のインサイドワークが勝因の1つと言えるかもしれない。 今回の1戦で初重賞制覇を果たしたダッシングブレイズの可能性だが、GIで勝ち負けをする馬ではないというのが私の率直な意見。だが、それには「現段階で」という言葉を付け足してもらいたい。マイルまでしか勝ち鞍のなかった馬が1800mの距離で勝ったことは大きいし、5歳という年齢でも成長の余地がまだあるように見える。現状はローカル重賞の主役、GIIで主役を脅かす立場に過ぎないが、もうひと皮むければ、上の舞台で走れるかもしれない。 2着は1番人気のアストラエンブレム。早めに位置を取りにいったデムーロ騎手の手腕はさすがだったが、最後のひと伸びが足りなかった。この馬の馬体を見て常に思うのだが、牡馬にしては線が細く、特にトモのボリュームは重賞を勝つレベルのものに達していない。まだまだ成長途上といった印象なのだ。もちろん、1年前と比較すれば、格段に良くなっているのだろうが、大きいレースを勝とうと思えば、さらなるパワーアップが必須になってくる。 6/11(日) 阪神11R 芝2000m マーメイドS 牝馬限定のハンデGIII。高いレベルのレースにはなりにくく、今年の結果も例年通りだった。ただし、マキシマムドパリは55キロとそれなりのハンデを背負って勝っており、スローペースを見越して早めに動いていく形の競馬もできた。自分から動くことができる馬の強さを、私は何度も指摘しているが、それほど目立つレース内容でなくても、自分から競馬を動かして勝った馬のその後は注目して損はない。他の上位馬に関しては、それほど評価することはできないが、この馬だけは「次走も注目」としておきたい。 1番人気で負けたトーセンビクトリーについてもひと言。少し行きたがる面を見せてはいたが、許容範囲のレベルであったし、このような形で中山牝馬Sを勝っている。なにより、直線でモタれるような仕草を見せていたことを考えれば、全能力を出し切った1戦だったようには思えないのだ。難しい面があるのは確かなようで、常に力を出し切るタイプではないのかもしれない。いずれにしろ、馬券的にはアテにしづらい馬と言えそうだ。 〈2歳戦〉 6/11(日) 東京5R 芝1800m メイクデビュー東京 日曜東京の芝1800mを勝ったジナンボー。父にディープインパクト、母にアパパネという三冠馬同士の配合で生まれた超の付く血統馬について、私の考えを述べておきたい。 パドックでは馬っ毛を出しかけるシーンもあり、全体的にうるさかった。まだ若いというのが率直な感想で、これはレースにいっても同様。前半は少し行きたがる面を見せていたし、はたして我慢が利くのかな…といった感じ。しかし、そこで暴走せず、しっかりと収まる馬は、今後の伸びしろに期待できる。同馬はその典型と言える存在だろう。 デムーロ騎手の拳の位置は他のジョッキーと異なった場所にあり、これは余裕が十分にあるときのサイン。行きたがっていたように見えたのに、追い出してからスッと動けるのは、我慢が利いていればこそだ。新馬戦で行きたがる=スピードがあるからこそとも考えられるわけで、心身ともに成長すれば、大きい舞台を走れる馬になるだろう。 欲を言えば、馬体がもうひと回り大きくなってほしい。ディープインパクト産駒なら…と思わなくもないが、小さい馬は使い減りしてしまう心配が付きまとう。夏を越しての成長に期待したい。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は6月22日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【6月3日・4日開催】安田記念、鳴尾記念ほかレース解説

    〈古馬戦〉 6/4(日) 東京11R 芝1600m 安田記念 1分31秒5の速い時計で決着した今年の安田記念だが、勝ったサトノアラジンから5着のエアスビネルまでの着差がすべてクビ。優秀な勝ち時計は上位馬の能力が高いからではなく、高速馬場の恩恵を受けたものとジャッジすべきだと思う。同じメンバーの同じ条件で競馬をしても、展開ひとつで着順は大きく入れ替わる──。主役不在と言われて久しいマイル路線だが、今回のサトノアラジンもそこまでのアピールはできなかった。 同馬は好走に条件が付くタイプで、今回はそのすべてが味方した印象だ。高速馬場に加え、ある程度のペースで流れ、スムーズに外へと出せた展開。これが大きかった。「勝つときはこんなもの」という見方もできるが、少しでも歯車が狂ってしまえば、道悪競馬の内枠だった京王杯SC(9着)のように惨敗もする。ゆえに同馬をマイル路線の新チャンピオンという認識を持つことが私はできない。もちろん、走れる条件が揃えば、今回のようにGIで結果を出せる可能性はある。しかし、どんなときでも無条件に推せる馬でないことは、頭に入れておきたい。 顔触れの変わらないマイル路線で、今後の期待を感じさせたのは4着のグレーターロンドンだろう。初めてのGI挑戦ということももちろんだが、爪の不安でレースの間隔があいていた。今回はこれが大きなマイナス材料だった。爪に不安のある馬を速い時計の出る馬場で走らせるのは怖い。ゆえに大きな期待をかけることはできないと戦前は思っていたのだが、私の見解の上をいく馬だったようだ。コーナーから直線へとスムーズに加速できた勝ち馬と違い、グレーターロンドンは直線での追い出しがやや遅れた。そこがスムーズなら、勝っていた可能性まであったと思う。順調に調整をし、然るべきステップを踏んで挑むことができれば、GIの舞台でも勝負になる馬。それを認識した1戦だった。 1番人気だったイスラボニータはもったいない競馬をした。ルメール騎手は春競馬のほとんどで素晴らしい騎乗をしてきたが、この1戦は動くタイミングが少しだけ遅れ、それが致命傷になって、直線では前が壁になってしまった。イスラボニータはその戦績が示すように、一瞬の脚を持っているわけでも、他の馬より速い脚を使うわけでもない。あくまでトータルバランスが優れている馬だ。最後もそれなりに伸びてはいるが、あの形では力を出すことができない。サトノアラジンと同様に好走の条件が付く馬で、今回はマイナス面のほうが出てしまったと考えるべきだろう。評価を大きく下げる必要がない反面、この路線の核にはなりえない馬ということを示してしまったレースと言えるかもしれない。 イスラボニータ以上にもったいない競馬だったのは5着のエアスピネルだ。この馬も直線で進路を見出せず、追い出すタイミングがかなり遅れてしまった。その状況からでもイスラボニータには先着しており、勝ったサトノアラジンとの差も0秒2。能力の高さを改めて示したと言えるだろう。馬体を見ても、まだ成長の余地がある4歳馬。“マイル路線の主役”と持ち上げるまではできないが、グレーターロンドンと同等レベルの可能性は感じさせたのではないか。ポテンシャルを評価している馬でもあり、この秋こそは真価を発揮して欲しいと思う。 6/3(土) 阪神11R 芝2000m 鳴尾記念 1000m通過が61秒6。絶妙なペースで逃げた武豊騎手のステイインシアトルが勝利を飾ったが、位置取りと直線の伸び脚を見れば、2着だったスマートレイアーのほうが強さを感じさせたレース。 宝塚記念の前哨戦という位置付けで、この時期に行われているのだろうが、王道のGIを狙う馬の走るレベルにあったとは思えない。勝ち馬の近い目標は夏の中距離重賞になっていくのだろうし、スマートレイアーも秋の牝馬限定GIになってくるはずだ。 宝塚記念ではなく、夏競馬の前哨戦と思えば、ステイインシアトルの台頭は注目に値するものだが、マイペースの競馬ができなかったときにどうなのか? その答えはまだ出ていない。 〈2歳戦〉 注目すべき馬が登場した場合には、このコーナーでも取り上げていこうと考えていたのだが、2歳戦の始まった最初の週から多くの行数を割くことになった。嬉しい誤算と言えるかもしれない。 6/4(日) 東京5R 芝1600m メイクデビュー東京 まずは東京の芝1600mを勝ったステルヴィオ。高速馬場だったとはいえ、この時期の2歳新馬の勝ち時計が1分34秒8なら、GIを意識する素材と高く評価しても問題ない。今年が初年度のロードカナロア産駒で、母系はシンボリルドルフを輩出したスイートルナへと繋がる日本古来の血統。トウショウボーイにサンデーサイレンスと重ね合わせた血統構成には、戦前から興味を持っていた。唯一の懸念材料は成功したとは言えない母父ファルブラヴの存在だったのだが、その父はスピード豊富なフェアリーキング。この母系でそれなりのパフォーマンスを見せられないようでは…という血統構成の馬だったのかもしれない。 この1戦で感じたことを2つほど。ロードカナロア産駒の持っているスピードは現代競馬にマッチしたもので、道中のレース運びや直線でしっかりと伸びた内容から、父ロードカナロアよりも長い距離をこなす産駒が出ても不思議はないということ。このステルヴィオもその可能性を持っている馬だ。 もうひとつは1番人気に支持されたサトノオンリーワンもまた走る馬と感じさせたこと。道中の手応えはひと息で、直線で入ってきた場所も馬場の荒れている最内。伸び切れなくても仕方がないと思ったのだが、最後までしっかりと脚を使っていた。こちらは距離が延びて良さが出てくるディープインパクト産駒。レースを見た印象も同様だ。中距離以上のGIで活躍する馬になるかもしれない。 6/3(土) 阪神5R 芝1600m メイクデビュー阪神 土曜の阪神で勝ち上がったケイアイノーテックも戦前から注目していた馬だった。母のケイアイガーベラは私が見初めた馬で、その適性はダートの短距離。豊富なスピードを持つ母に、ディープインパクトの切れとしなやかさが追加されれば、おのずとクラシック候補になるとのイメージを持っていたのだ。 毛色は母と同じ栗毛だが、直線で抜けてくる瞬間の速さ、その後のフットワークは父ディープインパクトの影響を感じるもの。これはプラス材料と考えたい。母のイメージだけで見れば、距離を克服することが課題に思えてくるが、ディープインパクトはスプリンターとの配合でも距離を持たすことができる種牡馬で、ケイアイガーベラ自身のことを言えば、同馬の父のスマーティージョーンズは距離をこなす。そこまで神経質になる必要はないと思う。 6/4(日) 阪神5R 芝1400m メイクデビュー阪神 最後に日曜の阪神を勝ったヴァイザー。先週の血統診断のときにも触れたが、同馬の父のノヴェリストは一見して「素晴らしい馬」と感じるほどの馬体をしており、2400mで実績がある馬とは思えないほど、豊富なスピードを秘めていると考えていた新種牡馬。この手の予測が当たると、私は本当に嬉しい。 2400mで結果を残していた馬の産駒が1400mで勝ったというのも、今後に向けて大きいのではないだろうか。大物と言える存在をいきなり輩出してきたロードカナロアほどのフィーバーにはならないだろうが、この馬の産駒も今夏のセールで注目される存在となるはず。いや、注目したいと思う。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は6月15日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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    【5月27日・28日開催】日本ダービー、目黒記念ほかレース解説

    〈3歳戦〉 5/28(日) 東京10R 芝2400m 日本ダービー 騎手の手腕が生きるのは長距離戦と昔から言われてきたが、最近はその傾向が強くなっている印象がある。トップグループに属する騎手の中でさえも技術の差が生まれ、それが結果に反映されているように感じるのだ。私の意見に同調する読者の方も、おそらくは少なくないだろう。 今年の日本ダービーを振り返るとき、勝ち馬のレイデオロとともに、騎乗したクリストフ・ルメール騎手の名前も同時に出てくるだろう。そのような1戦だったように私には見えた。1000m通過が63秒2で、勝ち時計は2分26秒9。同日に行われた古馬1000万下の青嵐賞より3秒も遅い決着になると戦前に予想していた方は少数だろう。少なくとも、先週のオークスをしのぐ高速決着になると私は考えていた。 人気の馬が上位を占め、一見すると力通りの決着になったかのように見えた1戦だが、本当にそうなのだろうか? ゆえに今回は視点を少し変え、スタートから時系列でレースの流れを追ってみたい。そのような検証の仕方をすることで、今年のダービーの本質が見えてくる。少し長くなると思うが、お付き合い願いたい。 スタートから1コーナー。最もいいポジションに付けていた人気馬は皐月賞馬のアルアインだった。パドックでの気配も良く、状態の良さを存分に感じさせていた馬。精神面が充実しているからなのか、道中の折り合いも付いていた。自分から動いていけるはずの位置をキープした時点で、この馬の凡走をイメージするのは難しいと感じたほどだ。 次にいい位置を取っていたのは2枠4番のスワーヴリチャード。前に先行集団を見て、なおかつ後ろのライバルには数馬身のアドバンテージを取っていた。動きやすいポジションにこの時点ではいたと思う。 一方で、大外枠がゆえに位置を取れず、1コーナーを17番手で回っていったのが1番人気のアドミラブル。しかし、この時点で枠を言い訳にすることはできないだろう。勝ったレイデオロもアドミラブルと差のない位置。その差は1、2馬身ほどしかなかった。そう考えれば、2コーナーへと入っていく時点では、アドミラブルにもチャンスはあったはずなのだ。 問題の2コーナーから向こう正面。今年のダービーの肝ともいえる部分がここ。レイデオロが一気にポジションを上げていったことで、レースそのものが動く予感がした。だが、実際に動いたのはルメール騎手だけで、他の騎手は超がつくスローペースでも動くことをしなかった。 パトロールを見ればわかることだが、レイデオロのすぐ後ろにいたアドミラブルも同じところを通ってポジションを上げることができた。しかし、デムーロ騎手はそれをしなかった。本来は思い切りのいい騎乗をする騎手だが、その瞬間に少し躊躇してしまったのだろうか? わずかな隙を見せた瞬間、横を確認したペルシアンナイトの戸崎騎手がレイデオロの後ろにスッと入り、上がっていける位置を取る。レース後のデムーロ騎手は「あそこで動くと馬群のかなり外を通ることになる」と話したそうだが、彼のいう「外」は3コーナー過ぎからのことを差しているだろう。仮にレイデオロとともに動いていれば、ペルシアンナイトがいた4コーナー3番手の位置を取っていたのは、アドミラブルだったのかもしれない。 ルメール騎手は捲りきって先頭に立つことをせず、2番手の位置でレイデオロを止めた。加速を始めた馬をここで止める技術。これはさすがというべきだろうか。スローペースがゆえに高速上がりの決着になった今年のダービーだが、上がり3Fに入る前のラップは12秒7。しっかりと制御が利き、外を一気に上がっていたにもかかわらず、馬には負担がまるでかかっていなかった。この時点でほぼ勝負あり。それくらい、レースを掌握していた騎乗だったように思う。 正直、この日のレイデオロはひと叩きしたことで気合いが乗り過ぎているように感じていたのだが、レースでのコントロールに問題はなかった。後述するが、この騎乗には馬に対するルメール騎手の信頼感もあったと思う。 では、改めて勝負どころにおける他馬の状況に目を転じてみたい。アドミラブルは前述したように位置を上げることができず、レイデオロとはかなり遠い位置にいた。外を回ることを嫌いながら、結果的に大外を回さざるえない状況。ここまでのペースを考えれば、早々に勝負圏内から外れてしまっていたといえるだろう。同馬の可能性については、あとで触れてみたい。 いい位置をキープしていたはずのアルアインは、レイデオロが動いたことにより、周囲を馬に固められ、自分から動いていける位置でなくなってしまっていた。4コーナー5番手という位置は悪くないが、加速をしていくのに時間のかかる馬。直線を向き、他馬と同時に追い出すような競馬は避けたかったはずなのだ。レイデオロに機先を制され、追い出すタイミングまでコントロールされていたのだから、さすがに厳しかったといえるかもしれない。 ペルシアンナイトは悪くない位置にいたと思う。だが、勝ちにいくのであれば、レイデオロよりも先に動いていくべきだった。しかし、これは仕方のないことだろう。初めての2400mを迎えるにあたり、馬の特徴を知っているかどうかは騎手の判断に大きく影響する。テン乗りだった戸崎騎手からすれば、ゴールまで持たせられる確信がない以上、セオリー通りの競馬に徹するしかないのだ。すでに馬が完成し、キャリアの多くで特徴を示してきた古馬のテン乗りとは大きく違う部分。しかも、それが特別なレースであるダービーなら、なおさらだ。話は逸れるが、私はダービーでのテン乗りに関しては否定的。大きなマイナス材料になると考えている。 スワーヴリチャードの立ち回りは悪くなかった。ただし、レイデオロにプレッシャーを与えることの出来ないインの5番手。ペルシアンナイトが早めに動いてくれれば…という思いが四位騎手にはあると思うが、戸崎騎手が動くに動けないのは、すでに説明したとおり。ゆえに彼は直線を向き、自分から前を捕まえにいく選択をした。馬に対する信頼関係は、キャリアのすべてで手綱を取ってきたことも影響していると思う。これはルメール騎手とレイデオロにも言えることだ。 直線の攻防はシンプルだった。実力上位の馬が猛然と襲いかかったが、余力を十分に残しているレイデオロを捕まえるには至らず。そもそも、直線を向いた段階でレイデオロが先頭にいる競馬を、私はイメージすることができなかった。おそらくはほとんどの騎手もそうだろう。スローペースは考えていても、レイデオロが早々に先頭に立って押し切ってしまう競馬──。それを実行したルメール騎手の手腕には脱帽するほかないが、ゴール前の伸びを見れば、このメンバーで最も強い馬は明らかだ。 その馬はアドミラブル。中3週続きで3度目の2400m。しかも、東京への輸送も続いた。展開もまるで向いていない。同じ位置にいたサトノアーサーやカデナのように、惨敗しても不思議はなかった。にもかかわらず、出走馬最速の上がり33秒3を駆使し、勝ち馬には0秒3差。私が考えていた以上の能力を持っていた馬だった。 上位馬のほとんどは神戸新聞杯、もしくはセントライト記念から菊花賞というステップを踏む秋競馬になるだろう。2000mの天皇賞(秋)に行くことも取り沙汰されているレイデオロだが、同世代との3000mのほうが異世代相手の適距離よりも戦いやすいというのが私の見立て。しかも、この馬は母父シンボリクリスエス。3000mにも対応できるとは思う。 だが、同じく母父にシンボリクリスエスを持つアドミラブルも距離延長に不安がない馬だ。ダービーに向かった際の日程まで考えれば、今回の1戦は同馬の強さが浮き彫りになったレース。無事でさえあれば、世代の頂点に立つ秋になると思う。 2着のスワーヴリチャードも距離が延びていいハーツクライ産駒。秋の可能性を残した結果だった。 その一方で、本質が浮かび上がってくる秋に不安を残したのはアルアイン。この馬の体型や血統を考えれば、路線変更をしてくる可能性も低くないと思う。 いい位置にいたのに伸び切れなかったペルシアンナイトはシンプルに力負けだった。菊花賞での逆転は考えにくく、この馬も路線を変更してくる可能性がありそうだ。 〈古馬戦〉 5/28(日) 東京12R 芝2500m 目黒記念 ダービーデーの最終レースに行われた目黒記念は、ルメール騎手が騎乗した7歳馬のフェイムゲームが制した。58キロの斤量を背負っていた同馬の頑張りは賞賛に値すると思うが、これ以上の活躍を期待できるかと問われれば、さすがに厳しいと言うほかない。 2着には1番人気のヴォルシェーブ。直線を向くまでは上手な競馬をしていたと思うが、直線で馬群をさばく際に少し手間取ってしまった。 スムーズに加速をしてきたフェイムゲームと、進路を探しながらの競馬になってしまったヴォルシェーブ。1馬身ほど前にライバルを見ながら、いつの間にか自分の進路を確保し、相手には抜け出すスペースを与えない。この1戦もルメール騎手の技術の確かさを見ることができたレースではなかっただろうか。 余談だが、同じ2500mのGIIでも目黒記念とアルゼンチン共和国杯には明確な差がある。それは夏競馬へと向かっていく前者に対し、体を絞りにくい冬へと入る後者の違い。日程的に厳しいのはジャパンC→有馬記念と続く秋競馬だが、調整が難しいのは暑さとの戦いになる宝塚記念のほうだ。一度、減ってしまった馬体を回復させるのは難しく、太めが残るのは当然と割り切ったくらいの状態で前哨戦は使いたい。これは大きなレースに限った話ではないだろう。前走で大きく体を減らしている馬に関しては、疑いを持った目で見る──。これは夏競馬のなによりのセオリーだと思う。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は6月8日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2017年レース

    【5月20日・21日開催】オークス、平安Sほかレース解説

    〈3歳戦〉 5/21(日) 東京11R 芝2400m オークス まずは東京競馬場で行われた牝馬クラシック2戦目のオークスを検証したい。 勝ったのは1番人気のソウルスターリング。 ごまかしの利かない2400mに距離が延び、能力減退に繋がる道悪競馬を避けられた時点で、相応の競馬をしてくれるとは思っていたが、彼女が見せてくれたパフォーマンスは、私たちの期待に沿うものだった。強い馬が万全のレース運びをして勝利した1戦。その結果に納得したファンも多かったのではないだろうか。 万全のレース運びという表現をさせてもらったが、実はこれができる競走馬はそこまで多くない。傑出した身体能力だけでなく、展開に左右されない競馬をできる強さ。これは現役最強馬のキタサンブラックにも共通する部分で、ある程度のポジションを楽に取れる馬こそが本当に強い馬だと私は思う。崩れる可能性が極端に低くなるからだ。 今回のレースで言えば、スローの2番手をキープし、ある程度の折り合いを付けていた時点で勝負アリ。直線半ばで2着のモズカッチャンに迫られそうなシーンはあったが、そこからアッサリと突き放したパフォーマンスを見れば一目瞭然だろう。その時点での余力が2着馬とは違っていたのだ。 同世代でソウルスターリングを逆転できる馬はおらず、仮に秋華賞へ向かうようなら断然の本命馬となるだろう。 報道にあったように、天皇賞(秋)で古馬の牡馬に挑戦するようなら──。確実に好勝負できるとまでは言わないが、ファンの興味を引く面白い挑戦になる。1600mと2400mのGIを勝ったソウルスターリングだが、その中間の2000mこそがベストというのが私の見立て。後者の選択を個人的には見てみたい。 では、仮にソウルスターリングが古馬の牡馬相手に戦っていくとして──。ウオッカやブエナビスタ、ジェンティルドンナのような男勝りの活躍を見せることができるのか? それを私は確約できない。 今回の結果を受け、桜花賞の敗因は道悪で確定した。それはそれでいい。牝馬を相手に競馬をしていくのであれば、そのレベルでも格好はつけられるだろう。しかし、牡馬相手の厳しいGIで戦っていくレベルを求めるのならば、同世代の牝馬相手に弱点をさらすようでは困る。道悪は苦手。それでも、同世代相手になら負けないくらいでなければ、牡馬相手に好勝負を続ける馬にはなれないだろう。 ソウルスターリングの目指すステージがそこならば、さらなるパワーアップが必要。それが今回の1戦を見たうえでの私の結論だ。 2着モズカッチャンが好走できた1番の理由は枠番かもしれない。だが、着実に力を付けていることもまた事実だ。フローラSを見た時点では「さすがに厳しい」と思っていたが、初のGIでソウルスターリングに迫る瞬間があった。秋に期待の繋がるレースと言えるだろう。 3着アドマイヤミヤビは前走の惨敗が道悪であることを証明できたものの、今度は外枠に泣いてしまった。最後こそ来ているが、直線に至るまでのどのシーンを切り取っても、勝ち負けに参加できそうなところがなかった。自在な競馬ができない馬の弱みと言えるかもしれない。 5着のリスグラシューには道中で行きたがる面があった。2400mというレースは少しのロスでも避けたいレース。体力のついていない3歳牝馬なら、なおのことだろう。あの時点で勝ち負けから遠ざかってしまったのだ。 〈古馬戦〉 5/20(土) 京都11R ダ1900m 平安S 土曜の京都で行われた平安Sは、馴染みのメンバー構成に加わったダートの新星があっさりと結果を出したレースだった。その馬の名はグレイトパール。 2着のクリソライトを4馬身もちぎったパフォーマンスは衝撃的なもので、おそらくは次世代のGI候補として、今後は大きく取り上げられると思う。その能力の高さを十分に認識したうえで、あえて苦言を述べさせてもらいたい。 この馬には大きな弱点がある。飛びが大き過ぎるがゆえ、加速に余計な時間がかかってしまうのだ。スタートから押しているにもかかわらず、なかなか位置を取れなかった。向正面から早々と手を動かしていたのも、勝負どころが来る前にトップスピードに乗せたいからだろう。 速いペースで流れ、それなりに馬群がバラけた今回の1戦はこれでいい。だが、ダートの強い馬は遅かれ早かれ、小回りコースで行われる地方交流重賞を走ることになる。 この飛びの大き過ぎる馬が、地方のコーナーでトップスピードを維持できるのだろうか? 川崎や船橋のようなコースでトップスピードに乗せることが、そもそも可能なのだろうか? その不安が解消できないまま、人気でこの馬の馬券を買うことは少し危険かもしれない。 重賞初挑戦となった今回の1戦でも、その馬体には余裕があった。これから良くなっていく馬だ。前述したような不安を払拭し、どんな競馬場でも結果を出せるスターホースになってくれることを私は望んでいる。 5/20(土) 京都12R 芝1800m オーストラリアT 重賞ではないレースだが、素晴らしい馬が1年7カ月という長い休養をものともせずに勝ち上がっているので、ここで紹介しておきたい。 土曜の京都12RオーストラリアTを勝ったシルバーステート。 持ったままで勝利した事実ももちろんだが、この馬はとにかく駆けっぷりがいい。父ディープインパクト、母父にシルヴァーホーク、その先はニジンスキーという血統背景も一流。無事でさえあれば、早い段階で大きいところを走る馬になると思う。もちろん、無理は禁物。 しかし、クラシックが終わってしまえば、多くの陣営は馬に合わせた調整に切り替える。足元に不安のある馬に無理をさせることなどないだろう。なにせ、4歳でキャリアはまだ4戦。このコーナーの常連になる可能性までありそうだ。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は6月1日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2016年新馬戦

    【新馬戦・総集編】アルアインなどがデビューした10月-12月編

    過去2回に渡ってお伝えした【新馬戦・総集編】も今回が第3弾。総集編の最後としてお伝えするのは、アルアインなどがデビューした10-12月編。今回も勝ち上がった馬の中から白井元調教師の「レース当時の評価」を基に、今後の活躍も期待される各馬の新馬戦を振り返っていく。 ■「走りっぷりに大物感がある」 10月に突入したこの日、白井元調教師が注目したのはサトノアーサー(阪神芝2000m)。1着同着で勝ち上がった同馬に対して、「跳びの大きいフットワークの馬で、内回りだと少し動きにくいのか、勝負どころの反応がスズカフロンティア(※同着馬)よりもズブかった。坂の手前でエンジンがかかると、そこから鋭い伸び。同着だが、ポテンシャルの差は見せた」という戦評とともに、「能力はこちらのほうが上というジャッジで、走りっぷりに大物感もある。オープンクラスで競馬をするであろう馬で、成長次第では重賞路線でも活躍できそうだ」と将来性を評価した。 次走も勝利して連勝。続くきさらぎ賞と毎日杯は連続2着。着実に賞金を加算し、ダービーを予定。今後も活躍を期待するファンは多いはずだ。 ■「重賞レースで活躍できる馬」 毎日王冠の行なわれたこの日。白井元調教師の眼に留まった1頭にレイデオロ(東京芝2000m)。「直線を向いた段階でも手応えは十分で、しっかりと進路を確保してから追い出した。目立つ着差はつけなかったが、重馬場で上がり3ハロンの数字は34秒6。1倍台の単勝オッズに応える快勝だった。見どころのある競馬」という戦評とともに、「キングカメハメハ産駒は距離に融通性があり、この馬はクラシックディスタンスが合いそうなレースぶり。センスもいいし、スケールも大きい。重賞レースで活躍できる馬だろう」と将来性を評価。 デビューから3連勝でホープフルSを制すると春にはクラシック戦線へ。皐月賞5着から日本ダービーを予定している。大一番での活躍に期待しているファンも多いだろう。 同日、京都の新馬戦を勝ち上がった中から白井元調教師の興味を惹いたのはエーティーラッセン(芝1800m)。「厳しい状況からのレースとなり、直線を向いた段階でも9番手の最後方だった。それが直線だけで全馬をごぼう抜き。頭数がそこまで多くないことも幸いしたとはいえ、最近では珍しい派手な勝ち方だったのではないだろうか」という戦評とともに、「祖母ダンシングゴッデスの産駒を管理した経験があるのだが、この馬はニジンスキーの直子。私の大好きなニジンスキーの5×3というクロスを持っているのは魅力だ。父のイメージはダートでも、この母系が芝のレースでの切れを生み出しているのだと思う」と自身の経験を語った。そして、「まだまだ若さの残るレースぶりではあったが、逆に荒削りな魅力がある。馬体のサイズも悪くなく、私自身が目をつけていたニジンスキー直子のダンシングゴッデスの血が入っている馬。成長力があることを期待して、将来性は少し甘めの評価にしてみた。化ける可能性はあると思う」と将来性に期待を寄せた。 3歳の春に入って、ゆきやなぎ賞(2着)、アザレア賞(3着)と芝2400m路線で好走。まだ成長途上のようだが、将来に大きな可能性を秘めているかもしれない。 ■「日本に根付いた血統」 10月下旬。白井元調教師が語った1頭のコマノインパルス(東京芝2000m)。「直線入り口でガラッとあいた最内を突き、直線半ばでは早々に抜け出す形。切れるというよりも長く脚を使うレースぶりで、2着馬の追撃をクビ差で振り切った」という戦評とともに、「父のバゴは大物を出す反面、安定性に欠けるイメージの種牡馬。祖父のナシュワンがジリッぽいタイプで、そこをフジキセキのスピードで補完しようという意図が、この馬の血統構成には見える。母系で注目したいのはエリザベス女王杯を勝ったリンデンリリーがいること。日本に根付いた血統ではある」と語った。そして将来性については、「切れが必要になってくる大きな舞台で好勝負するのは難しいタイプで、戦評や血統よりも将来性が低くなったのも、それが理由」とジャッジした。 2走目の葉牡丹賞でレイデオロの2着と好走するとGIIIの京成杯を勝利。弥生賞(6着)と皐月賞(14着)と厳しい結果となったが、この馬を応援するファンは巻き返しを期待しているだろう。 ■「大物を輩出しておかしくない血統構成」 サトノダイヤモンドが菊花賞を勝利したこの日、白井元調教師の評価した1頭の外国産馬にベストアプローチ(京都芝2000m)。「マイペースの逃げを打っていた3着馬が粘りそうな気配もあったが、これを一気に捕まえて、初勝利を挙げている。決め手はなかなかのもの」という戦評とともに、「ダンスパートナーにも通じるネイティヴパートナーが母系にいる。底力のある血統だ」と評価した。また、「2000mの距離で勝った。これは大きなポイント。様々なタイプの活躍馬を輩出する祖父ガリレオの血は偉大で、父のニューアプローチも大物を輩出しておかしくない血統構成。私も実は注目していた馬だ。中団で待機し、切れを生かしたレース内容も言うことなしで、オープンで走る素材だと思う」と将来性を評価した。 3歳になって弥生賞4着、青葉賞2着と重賞で好走するベストアプローチ。今後の飛躍も期待されている。 ■「ぜひ種牡馬になってもらいたい」 新馬戦の勝利後に“競走馬引退後”の期待感すら込めたのはアルアイン(京都芝1600m)。「勝負どころの手応えや加速は2着馬の方が上に見えても、追ってからが違う。いかにもディープインパクトといったフットワークをする馬だ。勝ち時計は1分34秒9。水準以上のレベルをしっかりとキープしている」という戦評とともに、「パドックを見た段階での私の評価は太め残り。この状況で結果を出しているので、高い能力を持っているのだろう。叩いた次はもちろん、これからどんどんと馬が良くなっていくはずで、重賞レースでの活躍も期待できる素材。母はスプリント系だが、ディープインパクト産駒はこのような配合でも距離をこなす。クラシックが目標になるだろう」と将来性を期待した。さらに血統面については、「母のドバイマジェスティはアメリカのチャンピオンスプリンターで、スピード血統にディープインパクトというセオリー通りの配合を成立させている。ダート色を感じさせる母系だが、エーピーインディの血統は芝もこなせる。S級の血統馬といっていい馬だ。体内にクロスがひとつもない、きれいな血統。ぜひ種牡馬になってもらいたい」と高く評価した。 新馬後も勝利を重ねたアルアインは皐月賞を勝利。引き続きの活躍を期待しているファンは多いはずだ。 ■「化ける可能性がありそう」 11月に入って白井元調教師が期待を込めた1にダイワキャグニー(東京芝1800m)。「前とは少し距離のある状態をキープしたまま直線へと向いた。1000m通過が61秒6なら押し切られても仕方ない流れだが、先に抜け出した2着馬との差を徐々に詰め、ゴール直前でこれを捕らえている」という戦評とともに、「祖母のトリプルワウはいわゆるクズを出さない繁殖で、母のトリプレックスもその流れを受け継いでいる」と血統についても触れた。また、「484キロ。馬体のサイズは良く、血統的にもオープンにいっていい馬だと思うが、ラストの脚は3着馬の方が目立っており、上のクラスで切れ負けする可能性もゼロではない。この部分をクリアすれば、化ける可能性がありそう」と、その後の成長に期待を寄せた。 次走も勝利して連勝したダイワキャグニー。3歳春にはプリンシパルSも制してダービーの優先出走権を獲得。一戦毎に着実な進化を見せている。 ■「血統通りのパワータイプ」 この日、白井元調教師が注目したのは、キタサンブラックなどを輩出したヤナガワ牧場の生産馬サンライズノヴァ(東京ダ1600m)。「前を行った馬が渋太かったこともあり、残り200mでは届かないような脚色だったが、ゴールが近づくに連れて真価を発揮。最後は1馬身半の決定的な差をつけて勝ち切っている」という戦評とともに、「調教で抜群に動いていたようだが、これだけの大型馬を初戦からしっかりと仕上げるのは難しい。余裕のあった体が締まってくれば、これ以上のパフォーマンスができるだろう。血統や馬格から活躍の場はダートに限るが、それでもオープンクラスで走る馬に育っていくのではないか」と将来性を評価した。 1月に2勝目を上げると4月の伏竜S(OP)では2着。今後もダート路線での活躍が楽しみだ。 ■「クラシック路線に名乗りを上げるかも」 エイシンヒカリの輩出した本田牧場の生産馬カワキタエンカ(京都芝1800m)。「雨の影響もあって1000m通過がかなり遅かった。直線を向いて逃げ馬の外に出したが、そのときの手応えも抜群。追い出すと期待通りの反応を見せた」という戦評とともに、「パワー型の母系の影響もあったと思われるが、それでもディープインパクト産駒の真骨頂は良馬場での瞬発力勝負のはずだ。オープンクラスで走る素材と判断。成長次第ではクラシック路線に名乗りを上げることもあるかもしれない」と将来性を語った。 君子蘭賞で2勝目を挙げて桜花賞へ駒を進めたカワキタエンカ。今後の成長にも注目だ。 ■「スピードに溢れた内容でセンスもいい」 初戦で好センスの内容から白井元調教師の眼を惹いたのはファッショニスタ(阪神ダ1400m)。「道中は好位の4番手で抜群の手応え。無理に動いていくことはせず、あえて砂を被らせている印象すらあった。追い出しも直線を向いてから。抜け出す脚の速さは抜群で、最後は手綱を抑えて流す余裕まで見せている」という戦評とともに、「父ストリートセンス、母父コロナドズクエスト。ダートに特化した血統だ。ストリートセンスは父ストリートクライにパワー、母父ディキシーランドバンドの柔軟性を合わせ持った種牡馬。スピード豊富なミスタープロスペクターの4×4のクロスが発生しているのも好印象」という血統面の印象を語った。さらに「スピードに溢れた内容でセンスもいい。ダートに限定した話になるが、重賞レースで活躍できる馬になると思う」と将来性に期待を込めた。 次走で2着になると、デビュー3戦目に500万下を勝利したファッショニスタ。着実にクラスの階段を登っている。近い将来に大きな舞台で走る姿を見られるかもしれない。 後の皐月賞馬などのデビューを振り返った「10-12月編」。 既に大きな所を勝った馬。またはこれからの活躍を期待できそうな各馬。今後もそれぞれの馬に注目だろう。 ※過去2回の【新馬戦・総集編】はこちら ⇒【新馬戦・総集編】ソウルスターリングなどがデビューした6月7月編【新馬戦・総集編】レーヌミノルなどがデビューした8月9月編

  • 2017年レース

    【5月13日・14日開催】ヴィクトリアマイル、京王杯SCほかレース解説

    先週は土曜日に京王杯SC、日曜日にヴィクトリアマイルが行われた。ともに雨の影響を受ける競馬。 今回はこの2つのレースについて検証していくわけだが、その結果を難しく感じたファンも多かったのではないだろうか?  実は私もそのうちの一人なのだが(苦笑)。 まずは自分の馬の状態を確認し、その後にライバルと思われる馬の気配をチェックする。レース当日の装鞍所では、どの調教師も似たようなことをすると思うが、良馬場の競馬であれば、これだけで十分。 しかし、雨の影響を受ける馬場となると、チェックするポイントも一気に増えてくる。 自分の管理馬に関しては把握しているが、他厩舎の馬となると話は別。爪の形や繋の長さなど、実際に自分の目で見て確認し、それを頭に入れ直した状態でライバルになりえる馬なのかどうかを、改めて考えなければならない。作業が単純に増えるため、好走できるかどうかの予測も難しくなる。 ゆえに調教師を引退し、ほとんどの馬の脚元を知らない現在において、雨のレースほど厄介なものはないのだ。 例えば、桜花賞のソウルスターリング。あの馬の脚元を見れば、雨馬場が苦手なことはイメージできる。しかし、その血統背景も鑑み、相手関係を考慮したうえでの結論まで導くとなると、その難易度は格段に上がってくるのだ。 同馬の雰囲気は他馬と明らかに違う。だが、道悪で能力がどれほど減退するのか? それによって、他馬に逆転を許すのか? この世界に何十年もいる私でも、その予測は難しい。「走ってみないとわからない」という言葉を口にする調教師は多いが、実はそれが本音であったりもするのだ。 道悪競馬はそれほどに予測不能ということを理解してほしい。 〈古馬戦〉 5/13(土) 東京11R 芝1400m 京王杯SC 土曜日に行われた京王杯SC。逃げたのは横山典弘騎手が騎乗したヒルノデイバローだったが、その進路取りは逃げ馬としては明らかに異質だった。 内ラチ沿いを大きく開け、5頭分は外になるところを、彼は選んで通っている。つまりは馬場の影響がそれほどまでに大きい状況だったということ。 競馬において距離のロスというものは想像以上に大きい。馬場に差のない状況であれば、最短距離の内ラチ沿いを走ったほうが得に決まっている。 だからこそ、名手と呼ばれる騎手がセオリーと違う進路を走っていたとき──。 それは馬場状況に差があることを疑ったほうがいい。 その状況で馬券を買うファンが考えるべきことは何か? これは覚えておいたほうがいいだろう。そのようなときは、枠の影響が大きい競馬になるということだ。 「与えられた枠で頑張るのみ」と戦前は誰もが言う。調教師時代の私もそうだったが、実際は枠によって、関係者は一喜一憂しているもの。 当然のことながら、枠によって作戦のイメージも大きく変える。これはどの陣営でも同じだろう。 これほどの雨が降った今回であれば、明らかに内枠が不利。最も厳しい状況に置かれてしまったのは、1番人気に支持されたサトノアラジンだ。 寝繋で飛びの大きいフットワーク。良馬場で伸び伸びと走らせたいタイプなのに、内枠であるがゆえに、悪い馬場を窮屈な状態で走らされ続けた。 あの状況で勝ち負けを演じろと言われても、さすがに無理な話。残念だが、雨の内枠という時点で、今回の彼には運がなかった。 実際、上位馬を見てほしい。自分で走る場所を選択できたヒルノデイバローこそ4着に残っているが、上位馬はすべて外を走ってきた外枠の馬。 距離のロスよりも馬場のいいところを走ってきた利のほうが大きかった。それを証明した結果と言えるのではないだろうか。 勝ったレッドファルクスがマークした上がり3Fは33秒7。道悪と思えない数字だが、これは現在の馬場管理が進化し、雨の影響があっても時計は出る状況になっているためだ。 現代競馬において、道悪適性と走破時計は必ずしもリンクしない。 しかし、この馬は相当な道悪巧者のようだ。加えて、京王杯SCが行われている1400mという距離は、スプリンターでもこなせる領域。 安田記念の前哨戦という位置付けのレースではあっても、京都の開幕週で行われたマイラーズCのように、この1戦が本番に繋がるという感覚は持つことができなかった。 レッドファルクスはスプリンターという意識を私は持っており、スプリント戦のスピードに慣れていることがマイル戦でマイナスに働くことは少なくないとも思っている。 あくまで注目馬の1頭という認識。次走で本命視する可能性は極めて低いだろう。 他の上位馬に関しても同様のことが言える。1400mという距離で枠の恩恵を受けた着順だ。 むしろ、この組で注目するのなら、前述したサトノアラジンのような大敗組かもしれないが、いずれにしろ次の安田記念に関して考えるのなら、度外視してもいいくらいのレース。着順の先入観を持たないようにしたい。 5/14(日) 東京11R 芝1600m ヴィクトリアマイル 日曜のGIヴィクトリアマイルは土曜競馬よりも回復した馬場で行われたが、出走馬の進路取りを見れば、難しい馬場状況だったことがよくわかる。 この1戦も馬場適性や通ったコースの差が出たレースではなかっただろうか。 それだけに1番人気で負けたミッキークイーンの負け方は、レースから数日が経った現在でも不可解だ。この日のパドックの周回は悪くなかった。落ち着きもあり、適度な丸みもある。決して悪い状態ではなかったと思うのだ。 位置取りがいつもより前だったことを疑問視する声も出ているようだが、折り合いも付いていたし、流れにも乗れていた。浜中君の騎乗に落ち度はなかったと思う。 前走を道悪で勝っている馬なので、馬場を理由にするのも難しい。直線で手前を何度か替えるシーンも確かにあったが、その時点でデンコウアンジュに交わされているのだから、これも直接の敗因にはならないだろう。 ゆえに私は“不可解”という言葉を使ったのだ。 一方で馬場の悪いところを通らされた2番人気のルージュバック、1200mのレースに慣れてしまったことで、スローペースのマイル戦に対応できなかった3番人気のレッツゴードンキ、流れには乗れていたが、内枠と決め手勝負の流れに泣いた4番人気のスマートレイアーは、その敗因を推測できる負け方だった。 このような敗戦のほうが、次走に気持ちを切り替えやすく、条件の合ったレースを探しやすい。ゆえに、そこまで神経質になる必要はないだろう。 ミッキークイーンのそれとは違うというのが、私の考え方だ。 勝ったアドマイヤリードは荒れた馬場を気にしないタイプ。本来であればマイナスである内枠を利し、誰もが嫌う場所を通ってきた。そういった意味では運も味方した勝利と言えるかもしれない。 422キロしかない馬で、ステイゴールドの仔らしい気難しさをパドックでも感じさせる。今週、管理する須貝尚介君とも話をしたが、彼は「状態を維持することが難しい馬なんです」と言っていた。 本当にその通りだと私も思う。 体重のない牝馬を東京へ連れて行き、力を発揮させることはファンの方が思う以上に難しいし、他の馬の何倍も気を使うものだ。 ルメール騎手の騎乗は確かに巧みだったが、今回の1戦で賞賛すべきは、このようなタイプの馬を東京で勝たせた陣営の手腕。そこにスポットライトが当たることを私は望む。 これでアドマイヤリードは晴れてGI馬となった。秋も大きいところでの活躍が期待されるだろう。 しかし、前述したようにコンスタントに力を発揮できるかどうかが不透明な馬だ。 できれば、あとひと回りは体が増えてほしいところ。そうなれば、様々なリスクを考えなくていい馬になると思うのだが。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は5月25日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2017年レース

    【5月6日・7日開催】NHKマイルC、京都新聞杯ほかレース解説

    〈3歳戦〉 5/7(日) 東京11R 芝1600m NHKマイルC 先週の日曜日に行われたのは、3歳限定のマイルGIであるNHKマイルC。入場人員は5万人程度だったようだが、仮にも日本で最も観客が入る東京競馬場で行われるGI。この人数は少ないように思う。盛り上がったかと聞かれれば、その答えに困るところだろう。 だが、これは栗東トレセンにいた週央から感じていたことだ。ちなみに今週のヴィクトリアマイルも同様の雰囲気。天皇賞(春)のときに感じた高揚感が、この2レースにはまるでなかったのだ。 必要ないとまでは言わないが、少なくともGIとして扱われている以上、この2つのレースを盛り上げるために何をすべきなのか? 考える時期が来ていると思う。 では、レースの検証に移ろう。このレースを制したのは牝馬のアエロリット。私はこの1戦を観戦したのだが、パドックを見た瞬間に「やられた」と思った。それほど、馬の雰囲気が他の馬と違ったのだ。 イレ込みもなく、極端に馬体を減らすでもない。適度な高さにある首の位置が、集中した状態であることも示していた。このような馬は、常に高いパフォーマンスを見せることができる。大きく崩れることのないタイプとして、今後も活躍していくはずだ。 レースを見て、まず誰もが「?」と思うであろう横山典騎手のコース取りについて、私なりの考えを話しておきたい。 あれだけの好スタートを切ったのなら、コースロスのない最内へと馬を誘導することもできたはず。しかし、彼はそれをしなかった。 なぜか? おそらくは内から数頭分はあった馬場の悪い部分を、嫌ったのではないだろうか。スタートからコーナーまでは直線。ここはわかる。 だが、いかに馬場が悪くても、距離のロスが大きくなるコーナーの部分だけは、少しでも内に入れて走りたいところだ。 しかし、彼はここでも馬場のいいところを選んで走っている。パトロールフィルムが公開されているので、視聴が可能な方は、横山騎手の騎乗ぶりをぜひチェックしてほしい。かなりの外を走っていることが、わかってもらえるはずだ。 パドックを見た瞬間に「やられた」と感じたと書いたが、おそらくは騎乗している彼も同様だったのではないだろうか。 距離ロスがあっても「勝てる」という自信──。 ゆえに馬場の悪いところを走るリスクを避けた。そういう意味では、外枠もプラスに働いたと言えるかもしれない。 1分32秒3の速い時計は、現在の東京の高速馬場の恩恵を受けたものかもしれず、普通は額面通りに受け取れない。しかし、これだけの距離ロスがありながらの数字とあれば、話も変わってくる。 特にアエロリットは5月17日の遅生まれ。これからの成長も期待できる馬だ。この1戦を持って3歳のトップに立ったとまでは言えないが、少なくともトップクラスの1頭であることは証明した。一線級の馬を相手に活躍していくレベルの馬だと思う。 2着馬のリエノテソーロは申し訳ないが、完全にノーマークだった。芝、ダートを兼用で走る馬もいるが、この馬の歩様はどちらかというとダート寄り。父のスペイツタウンは完全なスプリンターで、母系も短距離色が強い。見逃してしまう材料が多かったわけだ。 しかし、最近はスタミナ型よりもスピード型が幅を利かすことのほうが明らかに増え、それは確かなスタミナが必要とされてきたGIでも同様。私を含め、血統論者はこれまでの認識を改め、現在の傾向から来る新しい認識を追加していく必要がありそうだ。 3着のボンセルヴィーソは1勝馬。しかし、見どころ十分の競馬をしたと思う。 向正面までは馬場のいいところを走らせていたが、ハナを切っていた馬。さすがにコーナーでは同じようなことができず、結果的に馬場の悪いところを走らされる結果になってしまった。 内から伸びた馬が1頭もいないレースにおいて、内を通って粘っていた同馬の頑張りは評価すべきもので、同時に「いずれはタイトルを取る馬」という認識を持った。 パドックでも落ち着いた周回の出来る馬で、おそらくは惨敗の少ないタイプ。覚えておいて損はないと思う。 人気で負けてしまった馬について、少しだけ触れておきたい。 1番人気のカラクレナイは馬体重こそ4キロ増だったが、腹が巻き上がってしまい、またテンションも高かった。あれでは走れなくても仕方がない。この1戦が実力ではないと思う。 3番人気のモンドキャンノは結果的に距離が長かったということだ。それなりに折り合っていたが、本質はスプリンター。今後に期待したい。 4番人気のアウトライアーズはパドックの雰囲気が素晴らしかった。アエロリットの次はこれと思ったくらいだ。それだけに13着に惨敗するとは考えもしなかったのだが、あえて敗因を探すなら内枠で馬場の最内を通らされたことだろうか。見た目はいい馬。この1戦だけで見限りたくない。 5/6(土) 京都11R 芝2200m 京都新聞杯 土曜の京都新聞杯はプラチナムバレットが制したが、レース翌日に骨折が判明してしまい、無念のリタイア。 管理している河内君の気持ちを思うと残念でならないが、遅生まれのこの馬は、古馬になってからでも活躍ができるはずだ。姉には息の長い活躍を続けるスマートレイアー。弟もそれに続いてほしいと思う。 2着サトノクロニクルは賞金的にダービー出走が微妙なようだが、持っている能力は確か。4コーナーで進路を切り替えるようなシーンがあり、このロスが痛かった。 条件戦ならすぐにでも勝ち上がれるだろうし、仮にダービーに出走できたとしても、まずまずの結果を残せるかもしれない。 5/6(土) 東京11R 芝2000m プリンシバルS 東京のプリンシバルSはダイワキャグニーが勝利。2馬身半の着差は完勝のレベルだが、追ってからの加速が少し遅いのが難点。 ダービーを勝つような馬は瞬時にギアを上げられるタイプが多く、その点においてトップレベルと差があるように思う。本番で好勝負をすることは難しいだろう。 〈古馬戦〉 5/7(日) 新潟11R 芝2000m 新潟大賞典 古馬の重賞はローカルの新潟大賞典のみ。条件戦で力を付け、ようやく本格化を果たしたサンデーウィザードの勝利は素直に讃えたいが、ハナ差で競り落としたマイネルフロストとは2キロのハンデ差があった。 そのマイネルフロストが古馬のトップクラスと呼べない馬だけに、GIのような大きな舞台でサンデーウィザードが勝ち負けをするシーンはイメージしにくい。 ローカル重賞からステップアップしていく馬は、そこに至るまでの過程も極めて順調である場合が多い。一方で、それなりにキャリアを重ねた馬の伸びしろは、それが初重賞制覇であっても、もうそれほど残されていないのだ。 ローカル重賞でなら、今後も注目していく必要があるだろう。しかし、例えば宝塚記念のようなレースに対しては、さすがに厳しいと言わざるをえない。 ※次回の【先週のレース解説 -調教師の着眼点-】は5月18日(木)の公開予定となります。 ・『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

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