先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

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    【3月16日・17日開催】スプリングS、阪神大賞典ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 3/17(日) 中山11R 芝1800m スプリングS 今週の毎日杯を残しているとはいえ、皐月賞までの日程を考えれば、最後の前哨戦と言うべき1戦。新星の台頭を期待したのだが、結論から言えば、サートゥルナーリアを脅かすような馬は登場しなかった。残念な週末だった。 1000mの通過タイムは速かったのに、走破タイムで前日のフラワーCに及ばなかった今回の勝ち時計は、前日の勝ち馬が余裕十分のパフォーマンスを見せての勝利だったことを考えても、さすがに物足りない。上位馬のどれもが距離延長を歓迎しない馬。それも評価が上がらない理由にひとつとなっている。 ただ、レースの質や皐月賞をまるで考えず、勝ち馬の血統のみを注目してみたとき、母の父がスペシャルウィークであったことは嬉しく思った。 スペシャルウィークは性格のおとなしい馬で、ゆえに自分を強くアピールすることができなかった。ゆえに種牡馬として大成功することができなかったのだが、彼が持っていた能力は、数多くいるサンデーサイレンス産駒の後継種牡馬の中でも上だったと私は信じている。 そんな彼にとって、ブルードメアのポジションは居心地がいいのだろう。母父の位置に入り、他の種牡馬をサポートする役割が、気の優しかったスペシャルウィークには合っている。今回の勝ち馬エメラルファイトだけではなく、クラシックの主役であるサートゥルナーリアの母父もスペシャルウィーク。彼らの活躍により、母父スペシャルウィークに脚光が当たることを願いたい。 3/16(土) 中山11R 芝1800m フラワーC スプリングSよりも速い勝ち時計で楽々と駆け抜けたコントラチェックの能力は、この世代でも指折りのものがあると感じた。逃げているときは耳を立て、まるで気負っている素振りがない。それでも後続は追いつけないのだ。潜在スピードが違う。この言葉通りのパフォーマンスだった。上がり3ハロンの数字は2着馬のほうが上。しかし、勝負が決まったあとの数字に意味がないことは、これまでの連載で何度も話してきたとおりだ。2着馬も強い馬と思うが、勝ち馬とはレベルが違った。 彼女の武器は豊富なスピードと加速力。1600mの桜花賞に向かっても問題は何もないだろうし、スピードで押し切れる可能性はかなりあったと思う。だからこそ、これほどのレベルの馬を桜花賞に出走させないことが、私には理解できない。私なら迷わず出走させていた。 厩舎の事情やオーナーサイドの考えがあることはわかる。しかし、それが桜花賞までの日程にあるとするならば、私はまるで問題ないと答えるだろう。パドックを周回する馬の雰囲気を見れば、阪神への長距離輸送を経ても、下手なイレ込みをすることはない──。そんなイメージを持てたからだ。 先ほども述べたが、この馬の魅力は豊富なスピードと加速力。それが2400mの距離に合っているのかどうかも未知数。すべてにおいて桜花賞のほうが計算しやすいように思えたのだが、読者の皆さんはどのように感じたのだろうか? もったいない。そんな言葉しか浮かばない。 3/16(土) 中京11R 芝1400m ファルコンS NHKマイルCの前哨戦だが、このレースに出てくる馬のほとんどは、マイル以下の距離に適性がありそうなタイプであり、ゆえにマイルGIで好勝負が可能なイメージを持つこともできない。ハッピーアワーの見せた切れは確かに素晴らしかった。しかし、彼の末脚の切れは短距離の差し馬のそれであり、テイルオブザキャット、ヨハネスブルグなどが近親にいる血統が証明してもいる。スプリンターだろう。 さらに言えば、446キロと牡馬にしては小柄な馬体もネック。むしろ、次走以降を考えたとき、可能性を感じたのは2着グルーヴィットのほうだった。14キロ減でも486キロの馬体重。しっかりとした馬体の馬だった。父ロードカナロア、母父スペシャルウィーク。3代前にはエアグルーヴが入る血統背景も魅力だ。注目して損はないと思う。 〈古馬重賞〉 3/17(日) 阪神11R 芝3000m 阪神大賞典 1年ぶりの1戦となったAJCCで負かした相手は前年の菊花賞馬フィエールマン。それを考えれば、シャケトラにとって今回の1戦は、あまりにも戦いやすい相手だった。4コーナーを回ってくる瞬間の手応えを見れば、シャケトラとそれ以外の馬との力量差がはっきりとわかっただろう。5馬身差も当然の結末だった。 次走の天皇賞(春)に向けた手応えを得られるかどうか。これのみが重要な1戦であり、ゆったりと走れていた前半の部分などを見れば、折り合いを欠くような印象を持つことは極めて難しくなった。もちろん、無理に急かせるような競馬をすることもしないだろう。3200mは確実に持つ。騎手も陣営も意を強くしたはずだ。 天皇賞(春)が大阪杯のそれを上回るレベルになることはないと聞いている。そんなメンバー構成も含めて考えれば、まず好勝負持ち込めると考えてよさそうだ。 〈オープン戦〉 3/16(土) 阪神11R 芝2000m 若葉S 勝ったヴェロックスのみが評価の対象。クラシック路線でも通用する能力は持っていると思うが、その一方で馬の完成度がそこまで高くないと感じている。その理由をこれから話そう。 今回だけでなく、これまでの競馬を見ての感想なのだが、この馬は手前を替えるのがあまり上手でないというか、替えるべき必要のないところで手前を替えてしまうので、好位から抜け出してくるレース内容ほどの安定感がない。個人的には「右手前で走るのが好きな馬」という印象を持っている。得意なコース、得意な形態があるかもしれない。 多頭数の競馬は枠や展開によって、状況が大きく変化するものだ。その変化に対応する力も競走馬の持っている能力のひとつと考えれば、無駄に手前を替えてしまうヴェロックスは多頭数の競馬で走りがバラバラになってしまう可能性がある。ゴチャついてしまったときにどうなるのか? それを確認できないまま、本番へ向かうことに対し、私は不安を感じているわけだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【3月9日・10日開催】フィリーズR、金鯱賞ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 3/10(日) 阪神11R 芝1400m フィリーズR 正直、チューリップ賞のように本番に直結するレースではなく、内容もそこまでのレベルになかった。今回の上位馬を見てもわかるように、阪神内回りの1400mはスプリント寄りのスピード馬でも勝負になってしまう舞台。外回りの桜花賞にリンクするはずのない1戦を評価することはありえない。 しかし、そんな舞台での勝利だからこそ、私はノーワンを評価した。なぜ? それは彼女の血統背景が1400mに適したと思えないものだからだ。 母系の3代前にいるサンプリンセス。英オークス、ヨークシャーオークスにセントレジャーを勝った彼女自身が有名な存在だが、日本ではバレークイーンの母としてのほうが認知度は高いだろう。ダービー馬フサイチコンコルドを筆頭に多くの活躍馬を出したバレークイーンと、ノーワンの祖母ステージストラックは全姉妹。父にサドラーズウェルズを持つ彼女たちの血統の方向性はスタミナのはずだ。 480キロの恵まれた馬体、4月2日の遅生まれで父はハーツクライ。これだけでも可能性を感じるところだが、彼女は母系にも大きな可能性がある。母父には柔軟性に富むカーリアン。パッと見ただけなら、オークス向きと言えるほどの血統だろう。なのに、彼女には短距離線に対応するスピードと切れがあった。この馬の本質が血統通りの中距離以上にあるとすれば…。 私は常日頃から「競走馬はスピードが命」と言ってきた。それは長い距離を走る馬でも同様だ。むしろ、長い距離を走る馬が短距離に通用するスピードを示した場合のほうが、その期待値は高い気がする。 1着同着のプールヴィルも父はルアーヴル。母父ケンダルジャンはカラムーンの系統なので、これもスタミナはそれなりにあるだろう。しかし、ノーワンほどの重厚さはなく、馬体重も418キロ。詰まった間隔に耐えられるかどうかの疑問も残る。ゆえに2頭の評価ではノーワン上位としたわけだ。 〈古馬重賞〉 3/10(日) 中京11R 芝2000m 金鯱賞 これまでのディープインパクト産駒は、父と同じように末脚の切れを活かすタイプが多かったと思うが、ダノンプレミアムは楽にポジションを取り、スピードの持続力で勝負を決めてしまうタイプ。キタサンブラックがそうだったように、この手のタイプのほうが、安心して競馬を見ていられる。 直線一気の差し切りのほうが見栄えはいい。しかし、馬群をさばくという行為は、他馬の状況にも左右されるため、安定して力を出し切れるとは言い難い。差す競馬をする馬は「常にリスクを抱えて走っている」と以前から思っていたが、外国人騎手の登場とスローペース症候群などによって、以前よりも競馬がタイトになった近年は、特にその傾向が強くなったと感じている。 スタートセンスが良く、楽に3番手を取った段階でダノンプレミアムにとって、今回は楽な競馬になったと思う。逃げたのはタニノフランケル。この馬の逃げではタフな展開になるはずもなく、実際に1000m通過は61秒ジャスト。長期休養明けの馬にとって、理想的なスローペースだ。もちろん、展開に恵まれての勝利などではなく、ダノンプレミアムが強い4歳世代のトップにいる馬という認識を持ったうえで話をしている。彼のような馬が追い出すタイミングだけを計る競馬ができれば、結果がついてきて当然。ひと言で言えば、順当勝ちというレースだろう。 どこのレースに出走でも次走は主役級だろう。安田記念との話も聞くが、これまでのレースぶりから1600mはベストかもしれない。同世代のアーモンドアイとの対戦を見てみたい気もするが、マイルから2000mの距離にこだわっていくようなら、2頭の対決は実現しないだろう。これは少し残念なことだ。 GI馬が多数出走したので、2着以下の馬についても触れておきたい。 リスグラシューは出遅れを克服し、最後はしっかりとした伸びも見せて2着に。1月生まれということもあり、その成長力に疑問符をつけていたのだが、彼女に関しては晩成のハーツクライ産駒という血の影響力のほうが強かったようだ。環境の変化には牝馬のほうが強いと私は考えており、実際にリスグラシューは昨年末の香港で結果も残した。予定される春の遠征でも期待できると思う。 3着のエアウィンザーに私は期待していたが、結果は少し残念なものに。しかし、それは同馬の能力が通用しなかったからではなく、通用するかどうかの判断ができなかったことが残念だったのだ。 母父にサンデーサイレンスの名はあるものの、キングカメハメハ産駒で全兄にエアスピネルがいる彼は、そこまで切れるタイプではない。このペースであれば、ダノンプレミアムの位置か、それよりも前。悪くても半馬身程度しか離されていない位置での競馬をしてほしかった。その状況から突き放されれば、力が足りていないと認識できるだろうし、馬券を買っているファンも納得しただろう。仕上がり良好で馬場が渋った今回こそ、それを確認する最適の1戦になると思ったのだが…。 4着のペルシアンナイトと5着のアルアインは馬体診断のために写真をチェックしている段階から、今回は軽視でOKだろうと考えていた。中2週で迎える大阪杯を見据え、余裕を残して出走させてくると踏んでいたからだ。 実際、パドックでの馬体には余裕があり、それが実戦での内容につながったわけだが、この1戦で簡単に評価を落としてはいけない。池江厩舎は大レースを何度も勝っている厩舎であり、金鯱賞はあくまで前哨戦。そこを割り切って出走させている。マイルがベストのペルシアンナイトは距離的に微妙だが、2000mの高速決戦が得意のアルアインはうるさい存在になる──。それが今回の1戦を見た私の感想だ。 3/9(土) 中山11R 芝1800m 中山牝馬S 中山の中距離レースはコーナーでソコソコのスペースがあっても、直線では進路がなくなるケースが少なくなく、ゆえにスムーズな競馬ができるかどうかが、大きなポイントになってくる。1番人気だったノームコアは完全にスペースを失くし、最も大事なところで加速できなかった。まあ、参考外だろう。 勝ったフロンテアクイーンを含め上位にいた馬のほとんどがスムーズに加速し、最後までブレーキを踏むシーンがなかった。それに尽きると思う。中山での結果が軽さとスピードの要求される東京のGIに直結するとは思えず、あくまでハンデGIIIの牝馬限定戦。その感覚で捕らえておけばOKだ。 最下位に敗れたミッキーチャームについてのみ、取り上げておきたい。当日のパドックを見た方は敗因を知っていると思うが、その周回は「気が散っている」「集中力を欠いている」と表現するのが適当なほどで、2着に残った秋華賞のそれと比較しても大きな違いがあった。長距離輸送がネックなのだろう。 慣れてくれば違うのかもしれないが、仮にこのままの状況で東京のGIへと向かうのであれば、それは大きな不安材料。能力以前の問題となってしまうだろう。 〈オープン戦〉 3/10(日) 中山11R 芝1600m アネモネS いかに手薄なメンバー構成だったとはいえ、一つ前に行われた古馬OPの勝ち時計が1分34秒2。そのレースと比較すれば、ルガールカルムの勝ち時計1分34秒4は悪くない数字。桜花賞組を凌駕するほどの迫力は感じなかったが、前を自分から競り潰した内容にも、着差以上の価値がある。 半兄フルーキーはリダウツチョイスの産駒。ロードカナロアよりも短距離色の強い種牡馬を付けて、中距離まで持たせた母系はなかなかのスタミナを持っていると考えていいだろう。阪神までの輸送を考えなくてはならない関東馬。別路線組よりも優位と言い切ることはできないが、そのイメージよりも強い馬である可能性はありそうだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【3月2日・3日開催】弥生賞、チューリップ賞ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 3/3(日) 中山11R 芝2000m 弥生賞 正直、このレースの結末は読めなかった。人気を集めていたラストドラフト、ニシノデイジー、カントルのいずれかが勝つだろうと考えていたのだが、どれも3着以内にすら入れず。私の見立ては見当違いだったわけだ。しかし、この結末を生んだ最大の理由は、雨の影響を強く受けた馬場。ハナを切っていたラストドラフトが、馬場の内側を開けて4コーナーを回ってきたシーンに、それは出ていたと思う。 では、今回の結果は皐月賞とリンクしないものなのか? この判断は実に難しい。そうとも言えるし、そうでないとも言えるだろう。 雨の弥生賞を勝つ馬は馬場の恩恵を受けた場合が多く、アグネスタキオンのような力の抜けた馬でなければ、本番で軽視されてしまう。今回のメイショウテンゲンもそうだろう。 フットワークを見ても、血統背景からも道悪が上手そうなタイプ。この1戦を契機にし、本番でも主役に──。そんな声は聞こえてこないだろうし、私自身の感覚も同様だ。例えば、ホープフルSを勝ったサートゥルナーリアに勝てるかと聞かれれば、おそらくは難しいと答えると思う。 しかし、まるで用事がないわけではない。雨の影響を受けた中山はパワー優先の馬場になることが多く、そのような天候が続けば、連続開催の最終週に行われる皐月賞にも、小さくない影響を及ぼすことになる。道悪と荒れ馬場はまた違うものだが、力のいる馬場をこなしたという事実は確か。今後の馬場状態の推移を見ながら、本番でも台頭できるのかどうかを見定めたいと思う。 2着以下についてもサラッと。シュヴァルツリーゼはスタートで出遅れ、4コーナーは大外。馬場のいいところを通れたという見方もできるが、ロスの多い競馬であったことは確か。キャリア2戦で頑張っていると思う。まだ粗削りだが、今後が楽しみな1頭と言えそうだ。 3着のブレイキングドーンは通ったコースも良かっただろうし、道悪への適性も高そうに見えた。それを考えれば、もっと走って良さそうだが…。主役を張れるレベルではないかもしれない 馬場をこなせると思っていたニシノデイジーの4着は案外だった。終わってみれば、前に行った馬は総崩れ。意外にペースが厳しかったのかもしれない。4着のカントル、7着のラストドラフトは道悪に泣いたクチだろう。良馬場なら違う結果だったと思う。 3/2(土) 阪神11R 芝1600m チューリップ賞 ダノンファンタジーの強さが際立った1戦。桜花賞での好勝負は約束されたも同然だろう。上がり3ハロンの数字だけを言えば、2着シゲルピンクダイヤと3着ノーブルスコアのほうが速いが、レースが決まってからの追い込みに大きな意味はない。1馬身の着差以上に力量差はある、と私は見た。 パドックでの落ち着きは十分。スタートも抜群だったが、それが他の馬に絡まれそうになる原因を作ってしまったのかもしれない。鞍上が手綱を短く持ち、頭を上げるようなシーンに少しヒヤッとしたのは確か。しかし、脚はしっかりと残っていた。これが同馬の強さだろう。 直線でさばきにくくなる瞬間もあった。これで脚がたまったという見方もあるが、私が注目したいのはそこではなく、進路を確保してからの加速の速さ。これが並の馬とGIを勝つ馬の差に見えた。あの厳しい形にも対応できるのであれば、フルゲートの1戦にも不安はないだろう。本番で信頼できる要素がまたひとつできた、と言えそうだ。 スピードがあり過ぎるほどある馬。オークスの2400mはどうかという声も上がっているが、それについては桜花賞のレースを見たあとに話をしたい。ダノンファンタジーはまだ成長中。さらに良化してくる可能性が高いことが、結論を先延ばしにした理由だ。 〈古馬重賞〉 3/2(土) 中山11R 芝1200m オーシャンS スパイツタウンの速さは世界共通認識。これにダンジグ産駒のビロングトゥミー。これも速い。モズスーパーフレアのスピードが血統の裏付けで説明できるものであり、このような特化した特徴を持っている馬こそが、大舞台でも強さを発揮できると私は思っている。 前半の600mを32秒3のペースで飛ばしながら、楽々と逃げ切った今回の1戦は、同馬の持っているポテンシャル──それはスピードという言葉で言い替えてもいいだろう。モズスーパーフレアが気持ちよく走れるスピードが他馬と大きく違っていたことを意味するもの。近年、重賞という舞台で、潜在スピードの違いをここまで見せた馬は珍しいのではないだろうか。 次は直線の長い中京が舞台になる。普通に考えれば、逃げ馬にとって不利なコース変更。しかし、スピードの突出している馬にとって、そこまで大きな減点材料にならないと私は考えている。 他の出方を見る競馬ができるわけではない。自分だけでタイムアタックをしているようなもの。速いペースで飛ばし、速い時計で走りきった自分を捕まえられる馬がいるかどうか──。それだけのことでしかない。 スピードを殺されるような馬場になったとき、その結果がどうなるかはわからない。しかし、仮に高速決着となりそうな状況とすれば──。本番でもかなり有力ではないだろうか。それだけの血統的なポテンシャルを、私はこの馬に感じるのだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【2月23日・24日開催】中山記念、阪急杯ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 2/24(日) 中山11R 芝1800m 中山記念 GI馬5頭が出走する豪華メンバーとなった今年の中山記念。しかし、GI馬はどれも結果を出すことができず、勝ったのはGIタイトルを持たないウインブライト。しかし、最内枠で得意の中山芝1800mであれば、この結果も不思議はない──と私は考えていた。同じような意見を持つ読者の方も、多いのではないだろうか。 どれも悪くない仕上がりには見えた。しかし、今後を見据えた馬、ここを目標にしてきた馬とでは、中身に違いが出てきて当然。競走馬の仕上げとはそういうものであり、常日頃から言っているように、レースは点でなく、線で見るべきなのだ。それが証明された1戦だった、と私は思う。 ウインブライトの目標も次走のGI・大阪杯だろう。しかし、他の馬と違い、最も得意とする今回の舞台で負けてしまった場合、次走の可能性は限りなく低くなってしまう。 ここを勝つことが前提。ここを勝って初めて、次のレースの話ができる。ゆえに勝つための仕上げをしなくてはならない。それがウインブライトの置かれていた状況であったということだ。 今回のメンバーで、この内容なら大阪杯でも通用する。そう考えるファンも少なくないだろう。 しかし、前述したような背景を考えたとき、プラスと考えられる要素が、今回よりも少なくなる大阪杯で、この馬を中心に据える気持ちは起こらない。勝負圏内に加われる力を持った1頭。その程度の認識でいいのではないか、と思う。 2着はラッキーライラック。パドックを周回している段階から、秋華賞との違いを感じさせた。パドックの外側を歩く馬は状態がいい。そんな表現もされるが、今回はそれを感じさせる周回ができていたと思う。馬体も良かったが、なによりも気持ちが乗っていた。非常にいい雰囲気で歩けているように見えたのだ。 同世代のライバル・アーモンドアイは強すぎる馬。あの馬との比較は無意味だ。ラッキーライラックの持っている能力を考えれば、ここで好勝負を演じても不思議はなかったということだろう。 一方で、53キロの斤量が恵まれていたことも確か。仮に大阪杯へ向かうことになったとして、主役級の扱いをするべきかどうか? 正直、そこまでのインパクトは残せなかったと思う。となれば、前述したウインブライトに近い扱い──主役を食う可能性がある1頭。そんな程度の評価になるだろう。 昨年のマイルCSの覇者ステルヴィオは差のない3着。中距離でも問題なく走れるのか? それとも、ベストの距離がはっきりとわかるようになってしまっているのか? その判断が難しい競馬になってしまった。 交わしきっていれば、問題と考えることができただろうし、まとめて交わしそうな雰囲気もあった。しかし、ゴール直前で少し脚色が鈍ってしまった。それが坂による影響なのか、それとも距離なのか…。 中距離をこなせないと断定するほどの結果ではないが、私の目には「マイルのほうがベター」に見えた。大阪杯よりも安田記念のほうがチャンスの大きい馬と思う。 4着がスワーヴリチャード。私はこの馬を馬券の対象から外していた。 理由は不得手の右回り。デムーロ騎手は最初から馬場の内側だけを狙っており、ラチを頼らせて走らせたいという思惑が、透けて見える騎乗に徹していた。この競馬をして、結果がついてくれば儲けもの。そんな印象のレース運びだ。 なぜ、そのような乗り方をしたのか? 先ほども述べたが、この馬は右回りが苦手だ。勝ちに行くのなら、来週の金鯱賞を走るべき。 しかし、スワーヴリチャードの最大目標はドバイであり、金鯱賞では間隔が詰まり過ぎてしまう。それが得意としていない条件への参戦を決めた理由だろう。多くの馬がそうしてきたように、ドバイへの前哨戦として考えたとき、日程的にベストのレースは中山記念。だから、ここを使ってきたに過ぎない。 この馬のローテーションを線で考えてほしい。今回の1戦は線の始まりに過ぎず、最初から結果にこだわるレースではなかった。それがスワーヴリチャードに対する評価を下げた理由だ。 14キロ増という数字ほどの太めはなかったが、それでも14キロ増は14キロ増。中山まで輸送し、なおかつ2桁の体重増で走らせることが、今回は重要だったと考えることはできないだろうか。結果を二の次にすれば、ミッションはほぼ成功。この着順は私のイメージ通りのものだったのだ。 誤算だったのは5着のエポカドーロと6着のディアドラだ。 まずは5着のエポカドーロ。この1戦への適性が高い馬と戦前は考えていた。大阪杯が最大目標であったとしても、得意の中山でそれなりの走りができなければ、先も見えてこない。ウインブライトと同じ立場と考えていたのだ。 それだけに、ラッキーライラックも捕まえられず、後続の馬に先着を許した結果は不満が残る。評価を下げる必要があるかもしれない。 ディアドラの立場はスワーヴリチャードに近い。ゆえに負けても不思議はなかったが、勝ち馬から3馬身以上も離された負け方がひと息。正直、これではドバイに遠征しても…と思うのだが、この馬は昨年も京都記念で1秒差の6着と大きく負けながら、ドバイでは3着に好走した。 牝馬でも500キロの大型馬。冬の寒い時期に仕上げるのが難しいタイプなのかもしれない。ドバイなら変わる要素あり、ということにしておきたい。 2/24(日) 阪神11R 芝1400m 阪急杯 中山記念のような豪華なメンバーではなく、すでにピークを過ぎた印象のレッツゴードンキが2着。完璧な取り口をしたこともあるが、同馬が好走できるメンバー構成だった、ということが前提にある。正直、この路線の新星はダノンスマッシュ程度しか見当たらない。さびしい状況だ。 開幕週の芝1400mで、ここまで派手な追い込みを見ることは滅多にない。スマートオーディンのパフォーマンスは素直に賞賛すべきだろう。 しかし、このような形の競馬しかできないという事実を考えたとき、断然の主役としてGIの舞台に立つことも、また難しいと思う。 このあとは京王杯SCに向かうと聞いた。1400mに連続して出走し、そこから距離を延ばしての安田記念は、東京の1600mがタフな舞台であることを認識したとき、あまり好まれるローテーションではない。 それは陣営も認識していると思うが、折り合いを重視した競馬を1400mの距離で、もう一度試してみたいのだろう。そのようなレース選択をしなくてはならない現実を考えておく必要がある。 脚がたまったときの瞬発力は素晴らしく、いかにも東京コース向きという感じがした。主役には推せない一方で、争覇圏の1頭には入る。そのような認識で現状はいい。 〈オープン戦〉 2/24(日) 阪神10R 芝2200m すみれS セレクトセールで2億7000万円。超が付く高額馬のサトノルークスが、2番手からアッサリと抜け出して3勝目をマークした。 皐月賞を考えたとき、このような競馬ができたことは意味があること。ディープインパクト産駒でも、母系にはスタミナの血が流れている同馬は、スローの瞬発力勝負よりも、タフな流れで心肺能力を問うレースのほうが向いている可能性が高い。ペースが流れやすい皐月賞向きの馬ではないか、というのが現在の私の見立てだ。今回の馬体重は472キロ。このくらいのサイズが負担も小さく、ベストと言えるのかもしれない。 2着アドマイヤジャスタのレース内容は、自身のキャリアを考えると、不満の残るものであったかもしれないが、スローの流れで前半は行きたがる素振りを見せていた。極端にペースの遅いレースは、どの馬も脚を残している場合が多く、ゆえに前半の負担が最後の脚色にも出てしまう。度外視というわけにはいかないが、いいわけの出来る敗戦ではあった、と話を締めておきたい。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【2月16日・17日開催】フェブラリーS、ダイヤモンドSほかレース解説

    〈古馬重賞〉 2/17(日) 東京11R ダ1600m フェブラリーS 勝ったインティのポテンシャルの高さが、2着ゴールドドリームの総合力を上回った1戦と言えるだろうか。 先週の馬体診断の際にも話をさせてもらったが、横から見たときの同馬の体型は正方形に近く、それは中距離よりもマイルを得意とする馬に近いもの。ワンターンのコース形態やスタート直後の芝をこなすかどうかなど、これまでに経験をしてこなかった諸条件を課題とする声も戦前はあったようだが、戦前から同馬の適距離は1600mだろうと私は見ていた。それは体型を理由にしたものであったわけだ。 インティの勝利はペース配分などの展開に恵まれたものではなく、必然の勝利であったと思う。そして、私は今回のレースを見て、こうも感じた。「このような馬にこそ世界に目を向けてほしい」と。それはダートの本場・アメリカでのチャレンジを意味するものであり、それだけの資質をインティという馬に感じたのだ。 日本では「道中では脚をため、最後に脚を伸ばす」という騎乗が良しとされ、それがレースでの自在性につながるという認識がある。しかし、アメリカのダート競馬で、その考え方は通用しない。 スピードで押し切ろうとする競馬をして、なおかつ最後にもいい脚を使える。それをする馬こそが強い馬という認識だ。だからこそ、アメリカの競馬は別次元なのであり、そこで活躍した馬たちの血が世界に広まっていく。スピードこそが絶対の世界だ。 インティとゴールドドリームとの差はクビ。2頭の能力は大きく変わらないかもしれない。しかし、この2頭の間にある大きな差──前者はアメリカでも通じる可能性があり、後者にはそれがないのだ。 先ほども述べたが、日本的な勝ち方をしている馬では、アメリカのダートで競馬をさせてもらえない。相手に合わせる競馬をしている時点で、すでに「世界レベル」ではないからだ。 武豊騎手がアメリカに腰を据えて騎乗していた時代。彼は帰ってくるたびに「スピードが違いますわ」と肌で感じる日本との違いを話してくれたものだ。 持って生まれた資質の違いが勝敗を決する世界。インティのようなスピード馬には、その舞台で走っても通じる可能性がある。だからこそ、私はこのような馬の出現を非常に嬉しく思う。 しかし、遠征に踏み切るとなれば、そこには様々な障害も出てくるだろう。 一番はスパイク鉄。「スパイクを履く」とメディアは簡単に表現するが、スパイクを履くことによるリスクは相当なものだ。 ならば、普段からスパイク鉄を履き、環境に慣らせばいいのでは?と簡単に言う人間もいる。しかし、慣らすための場所は馬場の上だけではない。 最も怖いのはアスファルト。アメリカに遠征すれば、スパイクを履いた状態で移動しなくてはならない。どこを通って馬場に入り、どこを通って帰ってくるのか? そこまでの綿密なリサーチをしても、異常は出てしまうものだ。 もちろん、坂路でしか調整していない馬が、アメリカの馬場でどのように調整していくのか? それもポイントになってくるだろう。 海外遠征のフレーズを聞くとすぐに「エルコンドルパサーのような長期遠征を」と口にする人間もいるが、馬には個体差があり、海外の環境に慣れてしまう前に走らせたほうがいい場合もある。普段と異なる調整に不安を覚える馬は特にそうだろう。 日本で仕上げ、海外では軽くしか乗らない。かつて、ジャパンCに来日した多くの外国馬が取っていた手法であり、これは世界各国に遠征する欧州が現在も行っているスタンダードな調整法。前哨戦を使わずに挑むことが、必ずしもマイナスになると私は思っていない。 インティは簡単に出てこないタイプの名馬だ。遠征におけるリスクは大きく、このレベルの馬を遠征させるのはもったいない。そう考えるのが普通だが、私はインティのような馬にこそ、アメリカで勝負をしてほしいと思う。仮に遠征に踏み切ることがあるようなら、その1戦を現地で観戦したいと考えるほどだ。 今年のブリーダーズCの舞台はサンタアニタ。位置的にもコース的にもチャンスはあると思う。 藤田菜七子騎手の騎乗で沸いたコパノキッキングについてもひと言。最後の伸び脚は目立っており、通ったコースを考えれば、最速上がりをマークしたゴールドドリーム以上の脚を使ったと考えることもできるだろう。この馬の強さを再確認したレースと言えたのではないだろうか。 追い出しを我慢した乗り方もあるだろうが、最後はひと伸びしたレース内容から、戦前の評価よりも距離の融通性はあった。いい競馬はしたと思う。 藤田騎手にとっては初のGI。大事に乗ったことは評価したいが、一方で「勝つための乗り方」ではなかった。もっとペースが流れていれば、勝つチャンスはあったかもしれない。しかし、それは結果論。今回は他人任せの競馬であり、自分から勝ちにいくという乗り方ではなかった、と私は思う。 私は彼女を女性騎手ではなく、大レースに乗った一人の騎手として話をしている。だからこそ、厳しい言い方になっているわけだが、今度は「勝つための乗り方」と「勝てるかもしれない乗り方」の違いを認識して乗ってもらいたい。 位置を取る、馬群に突っ込む──それは怖い乗り方だ。今回のような結果を出せず、着外に敗れてしまうかもしれない。しかし、どの馬にとってもGIを勝てるチャンスは多くない。ダート馬がJRAのGIを勝ちたいと思っても、1年に2回しかない。だからこそ、中途半端な着順ではなく、あくまで1着だけを狙う騎乗をしてほしいと陣営は考えている。少なくとも、私はそうだった。 後悔のない乗り方をしてほしい。あの乗り方で負けたのなら納得がいく。そう思う乗り方をしてほしい。 それが馬を送り出し、レースでは騎手に託すしかない私たちの気持ちだ。 2/16(土) 東京11R 芝3400m ダイヤモンドS ユーキャンスマイルが直線でアッサリと抜け出して快勝。だが、抜け出してからもフラフラとするなど、この馬の課題であるモタれる面は完全に払拭されてなかったように思う。相手が軽かったからこその勝利と見ることもできるだろうし、それは間違いない事実であると私も思う。 しかし、その一方で天皇賞(春)でも面白い存在になる予感もした。 前述したような走りしかできなかったユーキャンスマイルが、まだ完成された馬でないこと。それが5月の遅生まれであることと関係しているように思えたことが、今後の伸びしろとして考えられたからだ。 彼はキングカメハメハの産駒だが、彼に強い影響を与えているのは母父ダンスインザダーク。ダンシングキイを母に持つ長距離でこその血統だ。この馬の血が騒ぎ出せば、淀の長丁場で大仕事をする可能性もあると私は思う。 2/16(土) 京都11R 芝1400m 京都牝馬S あくまで個人的な見解ではあるが、今回の1戦から春のヴィクトリアマイルで主役を狙うような馬は現われなかったと感じている。上位陣はノーザンファーム、社台ファーム生産のクラブ所有馬ばかり。GIIIで覇を競うレベルの馬たちへの期待は、繁殖牝馬となる数年後に移っているかもしれない。そんなことを思った1戦だった。 さて、勝ったデアレガーロの馬体重は前走比で32キロ増。前走までに馬体を減らしていたという背景があったにしても、ちょっと驚いてしまう数字だろうし、この数字を見て買い控えた方もいるだろう。しかも、彼女は美浦からの長距離輸送。好走を期待するほうが難しい数字だ。 だが、パドックに登場した彼女の姿は決して太く感じなかったし、歩様もしっかりとしていた。前に進んでいく気持ちも見えた。この印象だけで言えば、彼女の馬体は大幅に馬体を増やした馬のそれではなかったのだ。 私は馬体重を大事にするタイプの人間だ。まだ馬体重の把握が一般的でなかった厩務員の時代から、数字をノートに取り、体調管理の目安としていた。だからこそ、数字のアップダウンには誰よりも気を使う。 しかし、それは見た目と合致した数字であること──その事実を前提としている。大事なのは実際に馬を見て、どのように感じるかだ。 テレビの映像でも構わない。可能な限りパドックをチェックすることで、数字から受ける印象と実際の見た目との違いを判別することができるようになるはずだ。それが可能になれば、競馬をさらに面白く見ることができるだろう。 2/17(日) 小倉11R 芝1800m 小倉大賞典 9歳馬が逃げ、3着に粘ったレース。レースのレベルは高くない。57キロを背負って勝ったスティッフェリオは次のステップに進んでいくことになるだろうが、GIを狙う馬たちを相手に今回のような競馬ができるかどうか──。成長は感じるが、馬体のさらなるボリュームアップがなければ、厳しい戦いになるかもしれない。 2着タニノフランケルはウオッカの仔として、初めてと言っていい成功例となりつつあるが、今回の結果を受けて重賞級との判断はできない。次走以降も展開の恩恵が好走の条件になるだろう。 ウオッカの仔は大型に出やすく、器用さもない。ゆえに完成するのに時間がかかるのだろうが、ほとんどの場合はそこまで待ってもらえないもの。ある意味ではオーナーに恵まれているとも言えるが、彼女を外に出さず、ディープインパクトと配合しておけば、もっと軽くて器用な馬が出るのではないか、とも思う。 シーザスターズにフランケルは確かに超一流の名馬だが、ウオッカとの配合が合うのかどうか──。多くの方が疑問に感じていることかもしれない。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【2月9日・10日・11日開催】京都記念、共同通信杯ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 2/10(日) 東京11R 芝1800m 共同通信杯 2歳王者のアドマイヤマーズが始動したが、今回は2着止まり。無敗の連勝は4で止まってしまったが、スピードの違いでハナに立っただけでなく、単純な瞬発力勝負ではディープインパクト産駒に敵わないダイワメジャー産駒らしい負け方をしただけで、3着には4馬身の決定的な差もつけた。評価を著しく下げるような内容の競馬ではなかっただろう。ダービーはともかく、2000mの皐月賞ならチャンスは十分にある馬で、その次に予想されるNHKマイルCでは主役級の評価が必要になってくるはずだ。 さて、そのアドマイヤマーズに勝ち、3戦3勝でクラシック路線に乗ったダノンキングリー。この馬の評価が今回のポイントだ。 2歳王者を差し切った決め手は素晴らしかった。この部分だけを見れば、GIで勝ち負けすることのできる馬であると思える。ただし、最内枠を利用して脚をため、この馬にとって最高の展開と馬場になったことは事実。今回のようなレースを2400mの距離でもできるのか?となると、私の評価も微妙なものとせざるをえない。 父の違うダノングッドはともかく、父が同じディープインパクトの姉兄たちでさえも距離をこなせなかった。「もう少し落ち着きが欲しいな」と思わせた今回のパドックでの姿が、血統を背景にしたものであるならば、今後はアドマイヤマーズと同じように、距離の壁と戦っていかなくてはならなくなるはずだ。自分から競馬を作っていくタイプでもなく、常に折り合いが付くかどうかもわからない。ダービーを目指していくことも考え、今回はあえて辛口の評価をさせてもらった。 2/11(月) 東京11R 芝1600m クイーンC 上位2頭と3着以下の力量差がはっきりと出たレースだった。勝ったクロノジェネシス、2着ビーチサンバが阪神JF上位組であることを考えれば、年が明けても勢力図は変わっていないという結論でいいだろう。 今回、クロノジェネシスのパドックは落ち着きがなかったが、これは土曜→月曜にスライドした順延競馬の影響を受けたもので、東京に運んでもプラスだった馬体重も順延競馬が理由であったと思う。異なる環境に3日も滞在して結果を出せたことは素晴らしい。しかし、このプラス体重を見て東京遠征を完全にクリアしたということにはならないはずだ。 もっとも、この2頭はともに東京コースで結果を出した実績が過去にあり、輸送の影響を考えなくてはならないのは、減らした馬体を回復させる必要がある遠征後。じっくりと間隔を取り、地元の阪神で走れる桜花賞に関しては問題ないと思う。短期放牧に出しての再調整なら、話題にすらならないかもしれない。 さて、2頭の比較で言えば、馬格のないクロノジェネシスよりも470キロ台のビーチサンバのほうが連戦に耐えられる馬であるように思うだろう。しかし、パドックでの周回からトモの甘さというか、馬体のバランスさに欠けていた後者のほうが、安定して走れない印象を私は受けた。 それを伸びしろと捉えるか、それとも弱点と判断するかは個人の考え方だ。しかし、私はクロノジェネシスのほうが桜花賞でも上位を期待できる馬であると思う。バランスのいい走りをできるかどうかは、多頭数で激しいレースになったときのほうが差の出るものなのだ。 〈古馬重賞〉 2/10(日) 京都11R 芝2200m 京都記念 ゴール前は接戦。上位陣の実力差はそこまでないのかもしれないが、まずは勝ったダンビュライトから話を進めたい。京都の2200mは先行馬有利のイメージがあり、この馬自身も非常にスムーズな競馬ができていた。並ばれてから、もうひと脚を使えたあたりは評価したいところだが、返し馬でテンションが上がりやすいタイプと聞いており、特に馬場入場でダートを横切るGIのスタイルが合わないのだとか。大舞台で走れる能力はあっても、そこに様々な条件を必要とする馬がタイトルを獲得することは難しい。長きに渡って競馬の世界に身を置いている私の経験をベースにすれば、今後も勝ったり負けたりのレースを繰り返すのではないだろうか。信頼度は高くないタイプだろう。 2着のステイフーリッシュは私が戦前から注目していた馬で、明け4歳を迎えたステイゴールド産駒なら、成長力で突き抜けられると考えていた。実際、一瞬は差し切りそうなシーンもあったのだが、最後は脚色が一緒に。まだ完成は先ということなのだろう。パドックでの歩きはしっかりとしており、雰囲気も持っていた。GIの舞台に上がって通用するかはさておき、そこで走ることのできる能力は示したと言えそうだ。 3着のマカヒキも格好は付けた。徐々によくなっているのは確かだ。しかし、パドックでの周回からトモの甘さを感じたのも事実で、これは8着に敗れたタイムフライヤーにも通じること。トモが甘いので、大事なところで加速していくことができない。この部分が改善されない限り、以前のような走りを取り戻すことは難しいだろう。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【2月2日・3日開催】東京新聞杯、きさらぎ賞ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 2/3(日) 東京11R 芝1600m 東京新聞杯 勝ったインディチャンプの能力が一枚上といった印象のレースだった。 もちろん、恵まれた面はある。これだけの速い時計が出れば、外を回る競馬では届かない。馬群をさばく選択肢になる2枠2番が当たった運もあっただろうし、折り合いに気を使う必要のない流れになったことも大きかった。 しかし、仮に外枠を引いていたら今回のような結果を得ることが出来なかったかと聞かれれば、そんなことはないと私は思う。 福永騎手は追い出しをかなり我慢していた。抜け出すとソラを使ってしまう癖があることが理由のようだが、追い出しを我慢していたにもかかわらず、簡単に抜けてきてしまった。それは一瞬の脚の速さが他の馬とは明らかに違うことを意味している。単純に能力が違ったのだ。 最大目標に置いている安田記念がどのようなレースになるかわからないが、今回のような高速決着になった場合、距離のロスをできるだけ少なくする騎乗を求められることになるだろう。馬群をさばく競馬で結果を出したことは、レースでの選択肢を増やしたという意味で大きな財産となるのではないだろうか。 リアルインパクトにネオリアリズムを輩出したトキオリアリティーを祖母に持つ血統背景。この馬は母父にキングカメハメハがおり、前述した馬たちよりも速い馬場に強く、また力強さが出てくるはずである。王者の定まっていないマイル路線の主役候補となりえる存在だろう。 2着のレッドオルガは5歳の牝馬だが、現在こそが最盛期といった印象を受けた。エリモピクシーの産駒が東京の1600mに強いだけでなく、成長力に富むというか、高齢になってもパフォーマンスを簡単に落とさず、ハイレベルの舞台で走り続けることができる。しかも、同馬の場合は4月26日の遅生まれ。ヴィクトリアマイルの有力候補を考えていいのではないだろうか。 〈3歳重賞〉 2/3(日) 京都11R 芝1800m きさらぎ賞 クラシックの権利を獲得した馬には無理をさせず、できるだけ少ないレース数で本番を迎えるのが最近の傾向。フレッシュな状態を保つという面では賛成できる考え方だが、その影響は10頭にも満たない出走頭数という形で表面化しており、これが今回のきさらぎ賞に限った問題でないことにも注目すべきではないか、と私は思う。日本の競馬がファンの売り上げに支えられているという側面を考えた場合、このような状況をポジティブに捉えることは難しい。打開策が必要ではないだろうか。 さて、今回のきさらぎ賞だが、勝ったダノンチェイサーが実にスムーズな競馬をして、あっさりと勝ちきった。母サミターは愛1000ギニーを勝ったロックオブジブラルタルの産駒。この部分だけを考えれば、確かにマイラー色の強い血統ということになるのだろうが、この馬はその先にレインボウクエストを持つ。現在の京都の芝は非常にタフで、軽さを武器にするディープインパクト産駒は苦戦傾向にあるのだが、ダノンチェイサーは実にあっさりと抜け出してきた。もしかしたら、レインボウクエストの影響が強いのではないか? それが正しい仮説であれば、周囲が考えるイメージよりも距離は持つかもしれない。 サートゥルナーリア、アドマイヤマーズのレベルまでは達していないが、その下のレベルにはあるというのが私の現在の評価だ。 〈3歳戦〉 2/2(土) 京都10R 芝1600m エルフィンS エルフィンSを勝ったアクアミラビリスはエリザベス女王杯を勝ったクイーンズリングの半妹。姉よりもひと回り小さいサイズの馬体で、使い減りしそうな雰囲気を持っているのが気になる材料だが、その勝ちっぷりは素晴らしかった。高い素質を持っているのは間違いなく、阪神の外回りで楽しめそうな馬とまずは言っておく。 歯に物が詰まったような言い回しをしたのは、発情期を迎える4月は牝馬にとって難しいシーズンであり、それは前述した馬格のなさにリンクしてくるため。この時期の牝馬は一般的に飼い葉を食べなくなる。ゆえに食いが細くなっても耐えられる馬体をしているかどうかが重要になってくるのだ。 走りっぷりや雰囲気からアクアミラビリスは姉のクイーンズリングに似たところがあると思う。そして、クイーンズリングは桜花賞前のフィリーズレビューで体を大きく減らしていた。中山への長距離輸送から阪神への当日輸送へと条件が好転していたにも関わらず、体を減らしてしまったのだ。 そのような状況がアクアミラビリスにも起こった場合、姉よりも馬格に恵まれていない同馬が対処できるのか? 私はそこに課題を感じている。 2/3(日) 東京9R 芝2400m ゆりかもめ賞 全兄サトノダイヤモンドとの比較は別にして、パドックを周回するサトノジェネシスの姿は実に雰囲気があった。走る馬のそれと言えばいいのだろうか。成長途上の若さは感じるが、無駄な仕草がなく、体の動きというか、使い方にセンスを感じる。素直に“いい馬”と思った。 その印象通りのレースだった。非常に伸びやかに走り、追い出してからの反応もしっかりとしたもの。抜け出してしまったゴール前では耳を立てる仕草を見せるなど、まだまだ余裕のある勝ちっぷりと言えるだろう。 今後のレース選択をどうしていくのかだが、ダービーには出走しているだろう。そんな予感がしたレースだった。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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    【1月26日・27日開催】シルクロードS、根岸Sほかレース解説

    〈古馬重賞〉 1/27(日) 京都11R 芝1200m シルクロードS 勝ったダノンスマッシュの強さだけが際立った1戦だった。当然ながら、検証する対象も同馬だけになるが、その結論も至極簡単だ。 高松宮記念で勝負になるかどうか? 答えはイエス。それくらいに抜きん出た強さを感じさせるレースと言えたのではないか。 追い出しを待つ格好になった直線の状況は、敗戦を覚悟するレベルのもの。仮に前を捕まえられずに終わっていたら、鞍上への批判も避けられないところだったと思う。なにせ、外から追い込んできたティーハーフあたりに、一度は前に出られるほどだったのだ。普通の馬なら負けている。 そんな厳しい状況を覆したばかりか、終わってみれば1馬身以上の差をつけて完勝していた。差のつきにくいスプリント戦であることを考えても、この内容はちょっとズバ抜けている。2着以下はわからないが、勝ち馬だけは何度走っても変わらないはずだ。 結果的に差し切り勝ち。しかし、最初の数百メートルの手応えを見れば、スピード面でも上位と考えることができるだろう。枠に応じた競馬ができるスピードとセンス、それに末脚の切れ。スプリンターとしての資質の全てを兼ね備えている。それこそ、父のロードカナロアを見るようだ。 アーモンドアイに代表されるように、これまでのロードカナロアの一流馬は距離を克服し、中距離でも優れた末脚を発揮してきた。それはロードカナロアが母系のいい部分を引き出すことを意味している。一流の種牡馬になれる最大の要素とも言えるだろう。 ダノンスマッシュの母父ハードスパンの産駒実績は短距離に集中している。しかし、私は実際にこの馬を見ており、思っている以上に伸びのある馬体をした馬だな、と思った。もしかしたら、距離をこなすことができるのではないかと感じたものだ。 そう考えると、この馬はロードカナロアの一流馬には珍しい父の影響を強く受けたタイプなのかもしれない。本格化を果たしたあかつきには、父と同じようにマイルの距離も克服していくのだろうか。いずれにせよ、次走以降も主役候補として扱って問題ないだろう。 1/27(日) 東京11R ダ1400m 根岸S 私の血統好きは多くの読者が知るところだろうし、その部分に期待して私のコラムを読んで頂いていると思うのだが、だからこそ、今回に関しては先に謝罪しておく(苦笑)。 コパノキッキングの父スプリングアットラスト。私はこの馬を知らない。記憶になかったと言ったほうが正解だろうか。 ドバイのゴドルフィンマイル、アメリカのドンハンデを勝った実績はネットで調べた。もちろん、シルヴァーデピュティ×ダイナフォーマーという同馬の血統表を見れば、一定のイメージを持つことはできるが、それだけでコパノキッキングの今後を語るわけにはいかない。 なので、今回は根岸Sのレースぶりから、フェブラリーSに向けた私なりの展望を話すこととした。 騎乗したマーフィー騎手は「ベストは1200mで1400mはギリギリ」とコメントしたそうだ。その可能性は十分にあると私は思う。あまりにもスピードが豊富であり、反応も早すぎるほど早いためだ。 しかし、その事実だけを持って「マイルは無理」と決めつけることはできないと私は思う。なぜか? それは彼の勝ったレースが単なる1400mのレースではなく、東京の1400mだからだ。 逃げ馬にしろ、差し馬にしろ、東京の1400mを勝つことは難しい。単純なスピードだけは押し切れず、末脚の切れだけでは届かない舞台だからだ。 私が管理したメイショウボーラーは中山のガーネットSでダートに挑戦させ、根岸Sを経由してフェブラリーSを勝った。最初のレースこそ違うが、中山ダート1200m→東京ダート1400m→東京ダート1600mという流れは今回のコパノキッキングと同じ。そして、私がフェブラリーSへの手応えを持ったのは、根岸Sを勝ったときだった。 芝ではマイルを克服していたが、本質的にはスプリンターの可能性もあった馬。ガーネットSでそれを感じさせていたが、東京の1400mを勝ったことで不安は払拭され、フェブラリーSでも勝ち負けできる自信を持つことができた。本番と距離が違っても前哨戦は前哨戦。そこに意味はあるのだ。 スピード、切れよりもスタミナが問われるレースになると厳しいかもしれない。しかし、冬場のダートは夏場のそれよりも湿気を含み、スピードに乗りやすい場合が多い。メイショウボーラーが勝ったフェブラリーSがまさにそうだった。 様々なタイプの有力馬がおり、ここで結論を出すのは早計。レースまでの過程、当日の気配などをしっかりと吟味する必要はあるだろう。しかし、コパノキッキングは数多くいる有力馬の中の1頭。それだけは頭に入れておいてほしい。 ちなみに中2週という日程は厳しいと言われることも多いが、管理している立場からすれば、実は調整のしやすい日程なのだ。 1/26(土) 中京11R 芝2000m 愛知杯 勝った馬よりも2着馬を評価しなくてはならない1戦がある。その典型例が今回の愛知杯。スタートで躓き、そこに1000m通過は62秒2という厳しい状況が重なったノームコアの2着は非常に強い2着。少なくとも、このメンバーでは一枚上の能力を持っているということが決定的になった。 ただし、この後の同馬がどのレースを目指していくのか、となると少し微妙だ。この血統でもヴィクトリアマイルを目指していくのだろうか? 個人的には2000m以上でこそ真価を発揮するように考えているのだが…。 勝ち馬のワンブレスアウェイはスローペースがピタリとハマり、予想以上の結果を手にした。牝馬の6歳。最後の最後にタイトルを手にし、繁殖牝馬となって以降のチャンスも拡大したのではないか。 年齢的に先を見据えることのできない勝利に対し、私が感じたことをひとつだけ。ステイゴールド、ストームキャットという気性の激しいもの同士の掛け合わせであっても、牝馬の6歳ともなれば落ち着いていくものなのだろうか。 それとも、4月9日の遅生まれという事実が晩成傾向の強いステイゴールドの特徴と相まって、気性の難しさを上手にブレンドしたのだろうか。 パドックを力強く歩く同馬の姿を見て、そんなことをふと考えてしまった。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』

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