先週の2~3歳戦や重賞レースを“調教師の視点”から解説!

記事検索

  • カテゴリ
  • 年月
  • キーワード
  • 2018年レース

    【2月10日-13日開催】京都記念、共同通信杯ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 2/11(日) 京都11R 芝2200m 京都記念 最大の注目馬はジャパンC2着以来となったレイデオロ。多くの方がご存知のように、結果は3着と人気を裏切ることになってしまったわけだが、少しチャカつくような仕草を見せるパドックでの仕草、いくつかの矯正馬具を付けていることを考えれば、簡単な馬でないことは事前に理解できる。バルジュー騎手は調教に騎乗しており、その時点ではしっかりと走れてもいたのだが、残念ながらレースで折り合いを欠いてしまった。結果論になるが、ルメール騎手の不在が響いた1戦と言わざるをえないだろう。折り合いを付けるのが上手な騎手というだけでなく、デビューから同馬の手綱を取り続けているルメール騎手は、レイデオロの長所も短所も全て知り尽くしている。これが大きい。 私にも経験がある。メイショウボーラーで挑んだ朝日杯FS。香港に遠征する主戦の福永騎手の代打として、ペリエ騎手に騎乗を依頼したのだが、これが大失敗。クビ差の2着ではあったのだが、テンで抑えることをせず、我の強いメイショウボーラーの行きたいように行かせてしまった。ペリエ騎手への手綱代わりをプラスと考えた人もいたようだが、気性の難しい馬に関していえば、そんなに簡単なものではない。馬の特徴を理解した主戦騎手が乗り続ける意味を、改めて考え直す1戦になったのではないだろうか。 レイデオロ自身に関していえば、悲観するような内容ではなかったと思う。むしろ、折り合いを欠いた状況でも3着は死守。能力の高さを改めて示したといえるだろう。ルメール騎手なら上手に折り合いをつけてくれるだろうし、次走のドバイでもチャンスはありそうだ。 遅ればせながら、レイデオロに先着を果たした上位2頭についても話していきたい。まずは勝ったクリンチャー。少し余裕があるようにも見えたが、しっかりとした踏み込みをしているだけでなく、水平首でパドックを周回できていた。心身ともに成長してきたと感じさせる気配ではなかっただろうか。 ただし、今回の結果を受け、天皇賞(春)の主役に浮上したと考えるのは早計だろう。道中のペースが速くなかったにもかかわらず、上がりのかかったレース。この馬に向いた馬場状態であったことは否めないし、高速馬場でも同じような走りができるとも思えない。次走は3000m以上の距離を走っていくことになるだろうが、単純にプラスというわけではないのだ。 2着のアルアインは思ったほど太めが残らず、まずまずの仕上がりで登場した。目標にしていたレイデオロは捕まえたが、その前に1頭いたというだけの話。勝ち馬と2キロの斤量差があったことを考えれば、勝ちに等しいレース。血統的に2000m程度が最も走りやすいだろうし、この距離では1番強い可能性もある。本番の大阪杯では主役級の扱いをしていいと思う。 〈3歳重賞〉 2/11(日) 東京11R 芝1800m 共同通信杯 このレースも1番人気のグレイルが期待を裏切ってしまったが、レイデオロと違い、こちらは7着と掲示板さえも確保できなかった。惨敗と言っていいだろう。前半で無理をさせず、末脚で勝負するスタイルが合わなかったと考える人もいるかもしれない。しかし、仮に展開が不向きであったとしても、伸び負ける形ではいけない。勝ち負けの域にまでは届かなくても、それに近い位置までは押し上げないといけない。それができなかったという意味で、少し残念なレースと言わざるえないだろう。 2番人気のステイフーリッシュはグレイルよりも下の10着。この馬の場合は12キロの体重減が大きく応えた印象だ。馬体を減らした影響でうるさいステイゴールド産駒が、さらにうるさくなってしまった。これではスタミナ不足になるのも当然。惨敗も仕方がないところだ。 人気2頭のレースぶりを振り返ったところで、上位馬の話に移りたい。勝ったオウケンムーンは休み明け2戦目で10キロ減。前走で増えた馬体をしっかりと絞り、馬を完全に作っていた。取りに来たレースをしっかりと取ったと意味では、大きな勝利だったと思うし、これでクラシック出走も安泰。余裕のあった日程を選択できることは、陣営にとって大きな利点になると思う。 しかし、私がスケールを感じたのは2着サトノソルタスのほうだ。すっきりと見せていたオウケンムーンと違い、こちらはゆとりのある馬体。これから絞っていく体をしていた。休み明けだっただけでなく、デビュー2戦目。簡単なレースではなかったと思う。 本来、長い休養明けの馬はチャカつくか、頭を下げてやる気を見せないかのどちらかに分類されるものだ。だが、この馬には落ち着きもあったし、しっかりと頭を上げて歩けてもいた。優れた精神面を示す周回だったと思う。そのレースぶりもさることながら、常に力を出し切れる可能性を感じたという意味で、私は高い評価をしたいのだ。 2/12(月) 東京11R 芝1600m クイーンC このレースは非常に中身の濃いレースだった。阪神JF3着のマウレアが登場し、注目を集めていたのだが、結果は0秒5差の5着。周囲は走れなかった理由を探すだろうが、私の目には力負けのように見えた。すなわち、この馬よりも上の着順で走ってきた馬は、阪神JFの上位2頭に迫る力を持ち、桜花賞でも注目が必要な馬ということになる。特に上位2頭はそう感じた。 勝ったテトラドラクマと3着アルーシャはほぼ変わらない位置から競馬を進め、その後ろに5着のマウレアがいた。そして、この1戦はレースの2F目から11秒台のラップが続き、1000mの通過が57秒8と厳しい流れにもなった。実力がそのままストレートに出る展開になったと思う。ゆえに3頭の序列は着順通りでいいと私は考える。 さて、勝ったテトラドラクマだが、この馬のスピードの持続力は相当なものがありそうだ。東京の1600mは逃げ切りが困難なコースで、それがハイペースともなれば、普通は失速して仕方のない状況。だが、この馬はアルーシャの追撃をあっさりと振り切ってしまった。道中でチグハグになってしまった前走のフェアリーSは1番人気で6着。スムーズに流れに乗る、もしくは作る必要はありそうだが、前述したように持っているポテンシャルは高い。桜花賞でも有力だと思う。 2着は11月のデビュー戦以来となったフィニフティ。しっかりと作り込んでの出走は厩舎の手腕だろうが、実戦から離れたキャリア2戦目の馬が、イレ込まずにしっかりと歩けていたのは同馬の精神面が優れているからで、この点では共同通信杯で2着だったサトノソルタスに通じるものがあるかもしれない。新馬戦とはまるで違う速い流れになったにも関わらず、最後まで末脚を伸ばせたのは能力があればこそで、さすがはステファノスの全妹といった印象を持った。この馬も大きいところを狙える馬だ。 阪神JFの上位2頭にシンザン記念を勝ったアーモンドアイ、フェアリーSを制したプリモシーンに今回の上位2頭。桜花賞の輪郭が見えてきた気がする。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2018年レース

    【2月3日・4日開催】きさらぎ賞、東京新聞杯ほかレース解説

    〈3歳重賞〉 2/4(日) 京都11R 芝1800m きさらぎ賞 逃げたサトノフェイバーが勝ち、スローペースを見越して早めに動いたグローリーヴェイズが2着。結果は尊重するものの、「行った行った」の単調な決着だったことは間違いなく、上がりタイムがとてつもなく速かったわけでもない。 勝ったサトノフェイバーの父が、瞬発力勝負に弱いゼンノロブロイということを考えても、そこまでレベルの高い1戦ではなかった、というのが私の結論になる。 勝ち馬は現在の荒れた馬場があったのだろうし、差し切れそうな雰囲気で差し切れなかった2着馬には、逆の考え方もできるだろう。この2頭の着順は芝の状態、展開などでいくらでも入れ替わりそうだ。 とはいえ、どちらもクラシックで上位を争うレベルの実力は持っていない。ダノンプレミアムにワグネリアンなど、今年の牡馬は粒が揃っており、よほどのインパクトを本番までのレースのどこかで残さない限りは、主役級の期待をすることは難しいように思う。 1番人気に支持されたダノンマジェスティはアルアインの全弟という血統馬で、見た目も非常にいい馬なのだが、残念なことに今回は競馬の形になっていなかった。 前半から折り合いに苦労しており、コーナーでは外へと張っていく始末。直線を向いてもまだ外へ逃げようとしていた。なかなかの重症だ。 左回りを選んでレースを使っていくプランもあるようだし、それも一つの方法ではあると思う。それと同時に色々な馬具を試したほうがいいだろう。ハミだけでなく、チークピーシーズやブリンカーなどを調教で試し、併せ馬でも外をあえて走らせるようなことをしてみてはどうだろうか。 調教でできないことが実戦でできるはずもないのだから、まずは矯正に時間を割くべきだと思う。弱点のある馬ではクラシックで大望を望めない。 〈古馬重賞〉 2/4(日) 東京11R 芝1600m 東京新聞杯 ハーツクライの産駒は距離が延びていいと思われているが、リスグラシューに関して言えば、これまでの重賞2勝はともにマイル戦で、阪神JFと桜花賞でも2着に好走していた。代表産駒のジャスタウェイがそうだったように、実はマイルこそがベストの可能性も否定できないだろう。それくらいのインパクトを感じる勝利だった。当然ながら、同じ東京の1600mで行われるヴィクトリアマイルでも有力な1頭となる。 リスグラシューはレースの週に坂路で49秒8という好時計をマークしていた。その調教には武豊君が乗っていたと聞いている。彼ほどの騎手になれば、しっかりとした体内時計を持っているので、数字が大幅に狂うことはないはずだが、騎乗した馬が彼の予想を超えた動きをしてしまった場合は別だ。 私にも経験があるが、サッと流しておいてくれと指示を出したのに、予定よりも速い時計で走ってきてしまった馬がいる。「そんなに速い感じはしなかったんですけどね」が彼の返事だったが、その馬こそがスペシャルウィーク。一流騎手の体内時計を狂わせてこそ一流馬と言えるかもしれない。 彼女は1月18日の早生まれ。晩成タイプのハーツクライを極端に早く種付けさせることで、リスグラシューのようなクラシックの時期でも間に合う馬が誕生するわけだが、この馬は4歳を迎えた現在も成長し続けているようだ。極端に大化けするようなことはないだろうが、しばらくは高いレベルで走っていけるだろう。 1番人気だったグレーターロンドンについても一言。いつものような後方待機策ではなく、今回は好位を取って競馬を進めた。スローペースだったこともあり、脚は溜まっていたと思う。実際、直線を向いたときの手応えは抜群で、どれほど伸びるのかと思わせたほどだ。 にもかかわらず、あの程度の走りしかできないとあれば、作戦うんぬんよりも状態面などに問題があるのではないかと思ってしまう。仮に状態に問題がないのであれば、期待ほどの実力を持っていないということになるだろう。この馬の評価を考え直す時期が来ているのかもしれない。 〈オープン戦〉 2/3(土) 京都10R 芝1600m エルフィンS 土曜の京都では3歳牝馬のオープン戦「エルフィンS」が行われた。勝ったのはディープインパクト産駒のレッドサクヤ。この馬自身は切れを感じさせる走りをしていたし、内容そのものは悪くないと思うのだが、走る馬に共通する迫力というか、GⅠの舞台でもやっていけると確信できるようなインパクトを私は感じられなかった。 その血統を見れば、この距離でこその印象。桜花賞こそが勝負の馬のように思う。にもかかわらず、現有勢力を覆すインパクトを残せなかったのだから、辛口の表現になってしまうのも仕方がないところ。今後は桜花賞のトライアル、もしくはそれに準じたレースを走ることになるのだろうが、そこでパフォーマンスを上げないことには、本番の見通しは立たないと思う。 〈条件戦〉 2/4(日) 東京9R 芝2400m ゆりかもめ賞 日曜の東京では芝2400mの「ゆりかもめ賞」があった。勝ったブラストワンピースは1頭だけ力の違うレースをしたと思うし、走りっぷりも悪くなかったが、この時期の3歳馬が2400mの500万下を使う理由を、改めて考えてみてほしい。 ダービーを狙っているから? 距離を経験することは悪いことではないが、それは3歳のこの時期にすべきことではないだろう。むしろ、2000m前後の距離でも通用するスピードと切れを確認すること。これこそが大事。 近年のクラシックホースの経歴を振り返れば、私の言っていることがわかってもらえるだろう。スピードのない馬では、GⅠを勝つことなどできないのだ。 この時期に2400mの500万下を使う理由は、それ以下の距離に対応できるスピードがないからにほかならない。狭いところを割った勝負根性を褒める声もあるだろう。しかし、それは重賞などの高いレベルであった場合だ。500万下の2400mなら大外から豪快に突き抜ける──。それくらいの馬でなければ、ダービーがどうこうと言えるレベルではないと思う。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2018年レース

    【1月27日・28日開催】根岸S、シルクロードSほかレース解説

    〈古馬重賞〉 1/28(日) 東京11R ダ1400m 根岸S 去勢後はなかなか結果が伴わなかったノンコノユメだが、その理由は去勢の影響でトモの肉が落ちてしまったことにあったと思う。私が管理したライブコンサートも去勢をしている馬だったが、去勢をした直後はトモの筋肉が落ちてしまった。ノンコノユメはその回復に思いのほか、時間がかかってしまったという印象だ。 この日のノンコノユメは10キロ増の馬体重。牡馬にしては薄くて力強さを感じにくいタイプという面では相変わらずだが、この何年かの中ではトモの厚みを十分に感じた。いい頃の体に戻った。そう表現していいかもしれない。 このような馬体に戻りさえすれば、今後は去勢をした効果のみが表れてくるだろう。余計なことに力を使わなくなり、レースで持てる力をフルに発揮できるようになる。去勢をしたことで出てくる精神面の変化が、大きなメリットとなって返ってくるわけだ。 すでに今年で6歳。3歳の武蔵野Sを勝ってから、復活までに時間を要してしまった。もうピークは過ぎたと考える有識者もいるかもしれない。だが、この馬が能力を見せるのはこれからではないだろうか。それくらい価値のある勝利だったと思う。 この勝利のもうひとつのトピックスは、レコードタイムと速い上がりの数字。ノンコノユメがマークした上がり3Fの数字は34秒2。芝のレース並みだ。この数字を58キロという重い斤量を背負ってマークしたこと。これは素直に賞賛していい。3着カフジテイクが昨年のフェブラリーSでも3着に好走していることを考えれば、ノンコノユメだけでなく、2着のサンライズノヴァも本番で上位争いができる馬と言えるかもしれない。 ただし、脚抜きのいい馬場というのは、末脚を武器にする馬にとって都合がよく、これほどの上がりの数字はパサパサの良馬場で出すことはできない。前半のペースが速かったこともあっただろうが、上位馬のすべてが差し馬という結果を演出したのは、多分に重馬場の影響が大きかったと思うのだ。 ゆえにフェブラリーS当日も、馬場の影響を考える必要があるだろう。テイエムジンソクのようなパワータイプの先行馬は良馬場の競馬に強い。力のいる馬場で、彼のような馬が持久戦に持ち込めば、後続はなし崩しに脚を使わされてしまう可能性が高い。 一方、脚抜きのいい馬場になれば、後ろで脚を溜めている馬たちは、それほど苦労せずに追走できることになる。そのような状況になれば、今回の上位馬が浮上してくることになるのではないだろうか。 最後にひと言。乾燥した夏のダートよりも、霜が降り、脚抜きが良くなる冬場のダートのほうがスピードと切れを活かしやすい。私はフェブラリーSをメイショウボーラーで勝っているが、このレースに挑戦させた大きな理由は施行時期にあった。読者の皆さんが馬券を買ううえで、この考え方がヒントになってくれれば幸いだ。 1/28(日) 京都11R 芝1200m シルクロードS ファインニードルは2着のセイウンコウセイに2馬身の差をつけての勝利。スプリント戦でこの差は決定的なもので、2着以下との能力差を明確にする数字と言っていい。 今回のポイントは2つ。1つはファインニードル自身のことで、基本的な同馬の調教コースは坂路。しかし、今回はレースの週にCWで長めから追い切っている。馬体を絞りたい──このような調整をする真意は、これで間違いない。 休み明けで息を作るためなら、1週前に長めから追い切っていただろう。それをレースの週にやる。おそらくは見た目も数字もかなり太かったと思うのだ。実際、当日の馬体重は18キロ増。数字のうえではかなり重い。 ただし、長めから追い切っていることで、シルエットはそれなりに整っていた。数字は著しく増えていても、この体なら走れると私は思った。長距離を走る馬は体を絞る必要があるが、ノーブレスで走る短距離馬は、多少の太めでも走れてしまう。長距離馬はプラス体重に警戒し、短距離馬はマイナス体重を危険サインと考える。この2点を頭に入れておくだけで、休み明けの馬のジャッジがしやすくなるだろう。 もう1つのポイントは血統面。ファインニードルだけでなく、2着のセイウンコウセイ、3着のフミノムーンはどれもアドマイヤムーンの産駒である。どちらかというとパワー型で、胸前の発達したタイプが多いアドマイヤムーン。現在の京都のような荒れた馬場は、彼の得意とするところと考えていい。 3頭の母父は順にマークオブエスティーム、カポーティ、サンダーガルチ。明確な共通点を見つけにくい顔触れだ。つまり、アドマイヤムーンは母系よりも自身の特徴を強く伝える種牡馬で、それもジャパンCや宝塚記念を制した自身の成績よりも短い距離で活躍する。アドマイヤムーンの…というよりも、アドマイヤムーンの父であるエンドスウィープが強く出てきている印象。いわゆる「隔世遺伝」が同馬の産駒には出やすいように思う。 〈3歳戦〉 東京で行われた2鞍を取り上げたい。 1/27(土) 東京10R 芝1400m クロッカスS 土曜日のクロッカスSはリョーノテソーロが勝利。初めての芝ということで、人気はあまりなかったようだが、この馬は未勝利を速い時計で勝っていた実績を持っていた。それがダートであったとしても、スピードを裏付ける何かがあるのなら、芝で通用してもおかしくないわけだ。もちろん、その理由はスピードであるのだから、短い距離のほうが通用しやすい。 ダートで走ってきた馬が芝に路線を変更した場合、そのジャッジに悩むと思うが、私の経験から言わせてもらえば、ダートでぶっちぎりをしたことのある馬は、芝でも通用してしまう可能性が高い。ぶっちぎりでの勝利も、豊富なスピードの証明となることが多いからだ。このリョーノテソーロを新馬戦で8馬身もちぎってしまったミスターメロディ。この馬は芝でも面白いかもしれない。 1/28(日) 東京9R 芝1800m セントポーリア賞 もう1頭はセントポーリア賞を勝ったハッピーグリン。スローペースだったとはいえ、上がり33秒3の数字はなかなかのもの。2着馬が勝ちそうな流れを差し切ったのだから、それなりの評価をしていいだろう。北海道競馬の馬が東京まで遠征してきて勝ったということも、価値の高いものだと思う。 一方で、クラシックで通用するレベルである確信は持てなかった。その走りや馬体に大物感がない。もちろん、これは現時点でも私の印象で、これから成長していく3歳馬なら、いい方向に変わっていく可能性も十分にある。祖母のメイプルジンスキーは自身が2勝しているだけでなく、GI9勝の名牝スカイビューティの母として知られている馬。血統的なバックボーンは十分にあるのだ。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2018年レース

    【1月20日・21日開催】AJCC、東海Sほかレース解説

    〈古馬重賞〉 1/21(日) 中山11R 芝2200m AJCC 人気の3頭は明暗を分ける結果になった。 もちろん、最も収穫が大きかったのは、勝った2番人気のダンビュライト。展開が向いたのは否定しないし、中山の2200mという条件は時に今回のような競馬になりやすい。1000mの通過が61秒3。このペースで縦長の展開になること自体が不思議なのだが、競馬とはそういうことが起こりえるもの。ペースを理解できる騎手が鞍上にいたということも勝因になるのだろう。 だが、そのような騎乗を可能にしたのは、前で競馬ができる自在性をダンビュライトが持っているからで、サンデーサイレンスの血が入ってはいるものの、一瞬の切れに乏しいルーラーシップ産駒にとって、後半の1000mが一貫して速かった今回のような展開のほうが向いている。それがわかったことも収穫だったと思う。 振り返れば、父のルーラーシップもこのレースの勝ち馬。飛びの大きいフットワークから、東京のような広いコース向きと思われることが多いが、実際は持久戦に強いパワータイプなのだろう。 2着は1番人気のミッキースワロー。勝ち馬とは逆に展開に泣いた1頭と言っていいだろう。後方集団で最も先に動き、それでも最後まで脚色は鈍っていなかった。力を示したレースだったと思う。ほどよく気合いが乗り、トモに十分な丸みもあったパドックの気配も素晴しかった。勝ったダンビュライトと同じ4歳馬。GIでも確実に通用するとまでは言えないが、ともに成長次第で今年の競馬を牽引するレベルに到達できると思う。 問題は最下位に敗れた3番人気でグランプリホースのゴールドアクター。実は今回のレースに至る報道を読み、もしかしたら危ないのではないかと戦前から思っていた。私も経験しているが、これだけの実績馬を満足のできない状態で出走させなくてはならないとき──。番組などの関係でそのレースを使わなくてはならないときがどうしてもあるのだが、その場合のコメントは「それなりに」のようなニュアンスを使う場合が非常に多い。そして、そのコメントを裏付けるような調教しかゴールドアクターはできていなかった。 レースの週に79秒台をマーク。一見すると意欲的に見えるが、ラストは13秒の後半。「息を作る」と呼ばれるこのような調教は、遅くても1週前までに済ましておかなくてはならない。レースの週は全体時計よりもラストの時計を重視。せめて12秒台でまとめるくらいでなくては、その仕上がりに不安ありと考えるべきなのだ。特にゴールドアクターは休み明けで、その調教過程から仕上がりを判断するしかなかった。このようなタイプの人気馬は危険と察知するだけで、このレースへのアプローチもずいぶんと変わってくるはずだ。 1/21(日) 中京11R ダ1800m 東海S 充実期を迎えたテイエムジンソクとそれ以外の馬とに明確な力量の差を感じたレース。ゆえに彼がフェブラリーSでも好走できるのか。その一点について、今回は話を進めてみたい。 能力的には十分にチャンスがあると思う。ただし、フェブラリーS当日の馬場状態や、レース展開に大きく左右されるだろう。 私が管理したメイショウボーラーはフェブラリーSを逃げ切っているが、あの馬とテイエムジンソクではタイプが違う。脚抜きのいい馬場で、持ち前のスピードをフルに活かせる状況だったメイショウボーラーは、逃げ切って不思議のない要素を持っていたが、東京の1600mは逃げ切るのが難しいコースだ。同じ先行タイプでもバリバリのダート馬で、最大の武器が持久力のテイエムジンソクにとって、このコースの攻略は簡単ではないだろう。コーナーが4回の1800mのほうが、ワンターンで息を入れにくい東京の1600mよりも間違いなく逃げ切りやすいはずだ。 しかも、この馬は仮に逃げたとしても、スローに落とし過ぎて瞬発力勝負を誘発することは避けなくてはならない。然るべきペースで進め、然るべきタイミングでスパート。周囲が思うほど、簡単ではない。 ただし、この馬は馬群の中では競馬ができないとか、位置を下げることがマイナスになるとかの弱点を持っていないように思う。父のクロフネがそうだったように、ロングスパートからの持久力戦に持ち込む──。このような形を取ることができれば、チャンスは十分だろう。 〈オープン戦〉 1/20(土) 京都10R 芝2000m 若駒S ディープインパクト産駒の2頭がだらしなかったこともあるが、現在の荒れた京都の芝はハービンジャーなのだと改めて思い知らされた。勝ったケイティクレバーの母父がディープインパクトなのが面白いところだが、それでも同馬はハービンジャーの影響を感じさせるタイプ。荒れた馬場や道悪競馬で強さを発揮するのだろうし、逆に高速決着や上がりの速い競馬は良くない。ダービーよりも皐月賞のタイプだろうか。 ただし、1000mの通過が63秒0のペースでの逃げ切りはそこまで強調するものではない。クラシックで勝ち負けできるかどうかを論じるのは早計だろうし、様々な恩恵を受けたときに初めて結果を出せる馬だと考えている。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2018年レース

    【1月13日・14日開催】日経新春杯、京成杯ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 1/14(日) 京都11R 芝2400m 日経新春杯 競馬が盛り上がる材料のひとつに異世代の対決──若い世代の台頭というものがあるが、昨年末のステイヤーズSなどもそうだったように、長距離路線の停滞感はやや深刻。その最大の原因は明け4歳馬の不在にあると思う。牧場の調教施設が整い、競馬を使いながら状態を上げていく必要のない現在の競馬において、紛れのある冬場のハンデ戦を積極的に使う理由がないということなのかもしれないが、例えばレイデオロやアルアイン、モズカッチャンなどの出走が予定されている来月の京都記念と比較したとき、この1戦がGIIの格にふさわしいメンバー構成だったのかとなると微妙なところだ。 そのような意味では、6歳でもキャリアの浅いパフォーマプロミスの勝利は数少ない収穫と言えるかもしれない。斤量の恩恵があったにしろ、前をしっかりと捕まえたレース内容もそれなりに見どころがあった。斤量の恩恵を失い、さらにメンバーが強化されたレースでも、今回と同じように走れるのかどうかの確信は持てないが、頭打ち感のある馬たちよりも、先に期待を持てる馬が勝ち上がったことを今回は喜ぶべきなのだろうか。 それにしても、この日のミルコ・デムーロ騎手の騎乗は冴え渡っていた。「京都金杯で大外からの追い込みを久しぶりに見た」というような話を先週にさせてもらったと思うが、その状況が一週間で一変。昨秋の影響で荒れていた内の馬場が踏み固められ、内を立ち回る馬がどのレースでも上位にきていたのだが、その状況を誰よりも早く察知したデムーロ騎手の判断力には驚かされるばかり。追えるのはもちろんだが、それだけではトップに立つことはできないということだ。 〈3歳重賞〉 1/14(日) 中山11R 芝2000m 京成杯 1000m通過はホープフルSより0秒1遅く、逆に勝ち時計は0秒2速かった。今回のレースがGIレベルにあったのか、それともホープフルSがGIIIのレベルでしかなかったのかの判断は難しいところだが、京成杯とホープフルSの間にレベル差はほとんどなく、今回の勝ち馬が暮れのGIで好勝負を演じた馬に近い能力を持っていることは認識しておいたほうがいい。 勝ったジェネラーレウーノは豊富なスピードを生かして楽に2番手。行きたい馬がいるのならどうぞ…といった感じのレース運びだったが、道中は逃げていた馬との距離があり、目標を前に見ながらもハナを切っているのと変わらない形。レースはしやすかったのではないだろうか。 もっとも、決して前に有利ではなかった状況で、自分から前を捕まえに言っての勝利。最後は半馬身ほどの差まで詰め寄られたが、すべての力を出し切ったとは思えない脚色でもあった。着差以上の完勝だったと考えていい。 そのレース運びは昨年末で引退したキタサンブラックに似ていた。今回は外枠からスッと先行したが、どの枠であっても楽に先行できるだけのスピードをこの馬は持っている。そのスピードの源になっているのは母父のロックオブジブラルタルであり、3代前にいるストームキャットだろう。これは母父サクラバクシンオーからスピードを受け継いでいたキタサンブラックと同じ。加えて言えば、ジェネラーレウーノの見た目は短距離馬のそれではなく、むしろ胴長の中距離体型。非常にしなやかで柔らかい筋肉の持ち主でもある。それが同馬の可能性の大きさであるように私は感じる。 自分から競馬を作れる馬の取りこぼしが少ない。ジェネラーレウーノのように行くだけの馬ではなく、好位で構えられるタイプの馬はさらに崩れない。中山の2000mで結果を出し続けているが、伸びやかなフォームで走る馬。キタサンブラックがそうであったように、東京でもまるで問題はないと思う。皐月賞に直行するという報道も見たが、ヨーロッパでは当たり前の光景。力のある馬は前哨戦などを使わず、フレッシュな状態でGIに挑んでいく。それを可能とするレベルに日本の牧場も達したということだ。 2着コズミックフォースは先週のパドック診断でも話をさせてもらったが、非常に見た目のいい馬で、実際に素質の高い馬ではあると思う。しかし、今回の1戦で言えば、勝ち馬との差を感じる内容ではなかっただろうか。それなりのペースで流れ、実力がそのままダイレクトに出た展開。先ほども述べたように勝ち馬にはまだ余裕が感じられた。この差を逆転するためには、勝ち馬を上回る成長が必要になってくるだろう。 〈オープン戦〉 1/14(日) 京都10R 芝1400m 紅梅S 日曜の紅梅Sを勝ったモルトアレグロは阪神JFの5着馬。貫禄を見せた格好にはなったが、勝因は相手関係よりも1400mへの距離短縮にあったと思う。父スペイツタウンはスプリンターに近いタイプの種牡馬で、1600m以上の適性が必要になってくる阪神外回りのマイル戦ではやや厳しい。内ラチ沿いを狙ったデムーロ騎手の手腕も加味すれば、完勝という結果も予想の範囲内だろう。 むしろ、圧倒的な人気で4着に終わったシグナライズのだらしなさのほうが目立ったレースと言えないだろうか。勝ち馬とほぼ同じポジションから競馬を進め、少し外へと進路を取る形にはなった。とはいえ、前を捕まえきれないだけなら、展開とコース選択で片付けることもできるが、後ろの馬に差されてしまっては弁解の余地がない。桜花賞に向け、トーンダウンの結果とするほかないだろう。 〈条件戦〉 1/13(土) 中山9R 芝1600m 菜の花賞 中山土曜の菜の花賞は人気のオハナが勝利。祖母にノースフライトを持つ血統馬なので注目をしているし、押し切る形に持ち込んだ2着馬を坂で一気に捕まえた伸び脚は、412キロの小柄な馬体を考えれば、まずまずの評価ができるもの。持っている能力は高そうだ。 だが、同馬の目標が桜花賞と考えた場合、この小さな体は課題になってくるだろう。2勝馬では出走確実と言えず、現状はどこかで賞金を加算するなり、出走権利を獲得する必要があるが、ガサのない馬が関西圏への輸送を短期間に2回もするのは厳しい。となると2月の東京か、3月の中山──。どちらかで出走権を獲得としたとしても、関西への長距離輸送を本番の桜花賞で行うことになってしまう。どのような選択をしたとしても、不安材料は残るのだ。 1/13(土) 京都6R 芝1600m 3歳500万下 特別戦ではないが、切れのある走りを見せた土曜京都のインディチャンプにも触れておきたい。スプリント色の強い母系だが、祖母のトキオリアリティーは香港のQEIIを勝ったネオリアリズムを出し、同馬と同じ父ステイゴールドのレアリスタも2000mの距離をこなしている。パドックでの仕草にステイゴールドらしいテンションの高さは感じたが、レースでの折り合いにも不安がないようだ。ダービーが行われる2400mはともかく、2000mくらいまでなら問題なくこなすように思う。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2018年レース

    【1月6日・7日・8日開催】京都金杯、中山金杯ほかレース解説

    〈古馬重賞〉 1/6(土) 京都11R 芝1600m 京都金杯 大外から直線一気の差し切りでブラックムーンが勝利。過去の京都金杯は内ラチ沿いを伸びてくる馬が多かったが、雨に祟られた昨秋の開催の影響が大きかったのか、今年の芝にグリーンベルトと呼ばれる部分はなかった。さすがというべきか、武豊君はそこを狙ってきたわけだ。 公開されているパトロールフィルムを見れば、ブラックムーンが通ってきた場所とそれ以外の部分の芝状態の違いがはっきりする。馬場の中ほどまでは蹴り上げた芝が飛び散っているが、ブラックムーンの通った大外はそれがない。それは彼が芝の荒れていない箇所を狙っているからだ。 京都の坂はゆっくり上り、ゆっくりと下るのが定石。当然、武豊君もそれを熟知しており、仕掛けるポイントは三分三厘と決めた乗り方。残り600mのところで誰よりも早く動き、他の馬の蓋をしながら外を上って行ったわけだが、この乗り方をされてしまうと他の馬はブラックムーンよりもいい場所を通ることが難しくなり、そこを通ろうと思えば、ブラックムーンよりも追い出しを待つことになってしまう。ブラックムーンは確かに切れたが、それを呼び起こしたのは武豊君で、誰が乗っても勝っていたというレースではなかったと私は考えている。 2着のクルーガー、3着レッドアンシェルも含め、それなりのハンデを背負って結果を出した上位馬は評価しなくてはならない。しかし、レースのレベルが高かったかというと、そこまでではなかったのではないだろうか。少なくとも、マイルCSの上位馬を脅かすようなパフォーマンスを見せた馬はいなかったと考えている。 1/6(土) 中山11R 芝2000m 中山金杯 ある程度のポジションから押し切りを狙った上位の2頭とそれ以下の馬との間には、明確な力量差があると考えていい。評価できるのは明け4歳の2頭のみだろう。 勝ったセダブリランテスはナリタブライアンやキズナなどを輩出したパシフィックプリンセスの系統。父はディープブリランテで母父はブライアンズタイム。瞬発力を武器にするタイプではなく、しぶとさを生かす競馬で真価を発揮する馬と考えてよさそうだ。この勝利が大舞台での活躍を約束するものではないが、これだけの馬格がありながら、いい位置をキープできるスピードとセンスがあるのは強みで、キャリアもまだ5戦しかない。1月の早生まれながら、今後の伸びしろにも期待できそうだ。 2着のウインブライトは5月生まれで父も晩成傾向の強いステイゴールド。ミスゲランを祖に持つ血統背景もしっかりしている。こちらも決め手勝負に課題を残しそうだが、まだまだ成長の余地がある馬。飛躍の1年とする可能性もありそうとの見解で締めておきたい。 〈3歳重賞〉 1/7(日) 中山11R 芝1600m フェアリーS 中山の芝1600mは圧倒的に外枠が不利で、今回のレースを見ても外枠から位置を取りに行くことは難しいという事実を痛感させられる。1番人気に支持されたテトラドラクマにはそんな不運もあったか。 勝ったプリモシーンも外枠からのスタート。序盤は位置を取れなかったが、それを気にすることもなく、中団あたりを追走。勝負どころで徐々に動いていくという競馬を選択した。一度は2着馬に前に出られそうなシーンもあったのだが、坂下で一気に突き放した内容は上々。純粋に力の違いを感じるレースだったと思う。 いかにもディープインパクト産駒らしい切れとファストネットロック、ストラヴィンスキーから受け継いだスピード。ディープインパクト産駒の中でもハイレベルな素質馬というのが、今回のレースを見た私の印象だ。今年の牝馬路線にはそこまで大物のディープインパクト産駒がいなかったのだが、桜花賞を狙えるレベルの馬がいよいよ登場したと考えていいだろう。今回は中山のマイル戦で勝ったが、直線の長い阪神外回りのほうが同馬には向くだろう。その動向を注目したい馬だ。 1/8(月) 京都11R 芝1600m シンザン記念 勝ったアーモンドアイの母はフサイチパンドラ。彼女を管理した私の立場からすれば、ようやくフサイチパンドラの血にふさわしい大物を出してくれたかという気持ちだが、アーモンドアイとフサイチパンドラはタイプが少し異なっているように思う。 フサイチパンドラはサンデーサイレンスよりも母父のヌレイエフの影響を感じるスピードとパワーがセールスポイントの馬。一方、このアーモンドアイはフサイチパンドラよりもサイズがひと回り小さいこともあり、パワーではなく、切れを武器にしているように感じる。その切れはロードカナロアでも、キングカメハメハでもなく、フサイチパンドラの父であるサンデーサイレンスに近い。これが隔世遺伝というやつだろうか。 その勝ちっぷりから、今回のメンバーではワンランク上の能力を持っていたことは間違いないだろう。GIを勝てるレベルの馬かもしれない。実際、パドックで見せた雰囲気は素晴らしく、水平首で身のこなしも柔らかい。素晴らしい馬という印象を改めて持った。 しかし、それでも同馬を桜花賞最有力候補と呼べない理由。それは今回のレースでも見せてしまったゲート難だ。 少頭数で力の違いが大きいレースなら、そこまで問題にならないかもしれない。しかし、桜花賞のように多頭数で、実力も接近するレースではスタートのロスが大きく響いてくる。思い出すのは私が管理したダンスパートナー。彼女もゲート難を抱えた状態で桜花賞に挑み、出遅れが響いて2着に惜敗。非常に悔しい思いをした。あの教訓があるからこそ、他馬にハンデを与えるような状況ではいけない。単に能力があるだけではダメということを、声を大にして言っておきたい。 キタサンブラックのように…とまでは言わないが、常に能力を発揮できる状況を自ら作れること。これこそが真の強さと私は考えている。それを身につけることができるかどうかで、この馬の未来も大きく変わってくるのではないだろうか。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2017年レース

    【12月28日開催】昨年の総括、ホープフルSのレース解説

    〈2歳重賞〉 12/28(木) 中山11R 芝2000m ホープフルS 前回の京都2歳Sのときも指摘したが、タイムフライヤーはパドックで尾を巻き込みながら歩く。このような歩様の馬は腰が甘く、パワーのすべてを伝達できないタイプが多い。実際に前走は決め手勝負で敗れてしまっており、今後も瞬発力に課題を残す可能性はあるだろう。 今回の勝利は先行勢が競り合ったことで生まれた厳しいペースの恩恵を受けたものと考えることもできる。父がハーツクライで、母系はダートで活躍したタイムパラドックスを生んだ血統。その特徴が豊富なスタミナであろうことは、血統に詳しい方なら誰もが想像することだ。 しかし、仮にそうであったとしても、中山の小回りを差し切りで勝利するのは難しいこと。その事実については素直に評価すべきと私は思う。ゆえに前述したような状況であっても、私はタイムフライヤーをクラシック候補の1頭と高評価した。2月1日の早生まれで、これからの伸びしろがどこまであるかがポイントになってくるが、血統そのものは晩成傾向。腰の部分がパンとしてくれば、さらに上のパフォーマンスを見せるかもしれない。 ジャンダルムは外枠からのスタートで中団待機し、勝ち馬よりも先に仕掛けていく競馬をしての2着。見どころは十分にあったと思うし、10キロ増の馬体重が太め残りだったと考えれば、勝ち馬と同等の評価をしてもいいほど。母がビリーヴということで距離への限界を常に指摘されるが、少なくとも、皐月賞が行われる2000mまでは全く問題がないと考えていいし、その舞台で勝ち馬と立場を逆転させることも可能であると思う。タイムフライヤーが早生まれなのに対し、こちらは4月25日の遅生まれ。成長の余地も大きいだろう。 3着以下の馬で私が注目したのは4着のサンリヴァル。ハイペースで前が止まる状況だったにも関わらず、最後まで粘り込もうとしていた。9月の芙蓉Sを勝って以来のレースだったことを思えば、このパフォーマンスはなかなか強烈だ。見栄えのする好馬体の持ち主で、資質はかなり高そうとの話を以前にさせてもらったと思うが、それを証明する内容。先はかなり明るい。 〈昨年の中央競馬を振り返って〉 1年の最初ということで、私なりに昨年の中央競馬の振り返りをしてみたい。 まずは1年を通じて中央競馬を牽引したキタサンブラックについて。有馬記念の検証でかなりの行数を割いたので、あまり長くならない程度に話をさせてもらうが、キタサンブラックという馬の登場によって、自分で競馬を作れる馬こそが本当の強さを持った馬なのだということを、多くの競馬ファンが認識したと思う。私はそれが嬉しかった。それが私の持論でもあったからだ。 スピードにパワーを兼備しているだけでなく、高い精神力を持ったキタサンブラックなら海外でも十分に通用したという思いがある。あのエネイブルをキタサンブラックが負かすようなことがあれば、それこそ歴史に残る馬となっただろう。これほどの馬が世界に出て行くことなく、キャリアを終えてしまったことは少し残念だ。 しかし、古馬の王道路線と呼ばれるレースに全て出走し、多くの競馬ファンを喜ばせた。彼の存在がなかったら、この1年の中央競馬はどうなっていたのだろうか? そんなことを改めて考えたとき、キタサンブラックのこの1年を否定することはできない。むしろ、彼を称える言葉しか私には出てこない。 キタサンブラックというスターホースを失い、その後が少し心配なファンもいるだろう。しかし、大丈夫。この世界は常に新しいスターを求めており、それに応えるような名馬が登場してくれる。ダノンプレミアム、ラッキーライラックにタイムフライヤーなどが、新しいスターホースとして活躍してくれることを願いたい。 次に通年で発売された海外馬券について。テレビ放送がある凱旋門賞とそれ以外の売り上げに差はあるみたいだが、最初のうちはそれでいいと私は思う。 凱旋門賞の発売があったからこそ、エネイブルという馬の破格の強さを誰もが知ることができたのだし、彼女がサドラーズウェルズの2×3という近親交配だったことで、世界で流行する配合パターンを認識することもできた。キタサンブラックがそうであったように、ある程度のポジションを取り、自分の力で抜け出してくることができる馬こそが強い馬なのだということを、彼女も教えてくれた。役目は果たしたと思う。 競馬は常にグローバルなものだった。流行すると思われる血統を先取りし、時には世界経済の流れさえも読んで、私はセリの場へと積極的に足を運んだ。その世界がどれほど奥深く、また素晴らしいものなのか──。 これまでは知る機会がなかった、知ろうとも思っていなかった人たちに、その魅力を伝える契機となってくれることを私が期待している。世界で行われている競馬のすべてが、次の時代の競走馬を生み出すことになるということを、多くの方に知ってもらいたい。 昨年はキタサンブラック、エネイブル、そしてオーストラリアではウィンクスというスターホースが大活躍した。このような名馬の誕生をライヴで見られることも、一人の競馬ファンとして何よりも嬉しいことだ。このような喜びをみなさんと一緒に共有できれば、これほどの幸せはない。 最後に昨年度に登場したGI競走について。大阪杯とホープフルSが格上げという形でGIレースとして施行された。だが、この2つのレースには大きな違いがあると私は思う。存在意義の違いと言っていいかもしれない。 GIの数が増え過ぎることを私は歓迎していない。アメリカもそうだし、ヨーロッパもそうだが、格に値しないレースのグレードは変化していくべき。日本においても同様。必要なGIとそうでないレースは区別すべきときが来ていると思う。 しかし、ホープフルSというレースは違う。クラシックを意識した馬が朝日杯FSを回避して出走し、距離体系をこれまで以上に明確にするという意味において、存在する意味のあるレースだ。いずれは朝日杯ではなく、こちらが本流になる可能性まである。タイムフライヤーが昨年のレイデオロに続くようなパフォーマンスをクラシックで見せるようなら、このレースを選択する陣営はこれまで以上に増えるだろう。 一方、大阪杯の格上げに関しては疑問を感じる。海外競馬への流出を避けたい意味合いがあったのかどうかは定かではないが、宝塚記念と同じ阪神内回りで古馬の中距離GIを作る理由がわからないし、仮にこの競馬場でやるにしても古馬のGIが1つもない外回りで施行するとか、もっと違った選択があったのではないかと私は思う。GIレースをすれば馬券は売れるし、メンバーもそれなりには揃う。しかし、安易な格上げと批判されても仕方がない。 一貫して言ってきたことだが、同じ中距離のGIを作るのなら、札幌記念を格上げして欲しかった。馬産のある場所で大きなレースが行われれば、それが生産者にとっても励みになるし、この地に住む人々やこの地を訪れた人々の目が競馬だけでなく、馬産にも向く。人々の関心が競馬の未来を生み、さらに世界を発展させることになるのだ。 大阪には敵わないかもしれないが、札幌もGIレースを行うに値する大きな都市だ。夏の大一番を開催したとして、それに応えられるだけの力がこの街にはあると思う。アメリカのサラトガでは「真夏のダービー」と呼ばれ、クラシックに次ぐ大レースとして認知されているトラヴァーズSというレースが行われているが、日本でもこのようなレースが行われていいと私は常に考えている。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

  • 2017年レース

    【12月23日・24日開催】有馬記念、阪神Cのレース解説

    〈古馬重賞〉 12/24(日) 中山11R 芝2500m 有馬記念 大団円のフィナーレに満足したファンも多かったのではないだろうか。わたしも同様だ。レース前のパドックでは北島三郎さんと記念写真も取らせてもらったし、レース後に祝福の言葉をかけることもできた。残念ながら馬券は外してしまったが、満足のいく有馬記念であったと思っている。 多くのメディアですでに回顧され、評論もされている今回の1戦を深く振り返る必要はないだろう。キタサンブラックは今回の1戦で現役を退き、私たちの前で走ることは二度とない。キタサンブラックは強かった。武豊騎手はさすがだった。それだけで十分だ。 ゆえに今回はレースの総括ではなく、キタサンブラックという1頭の馬を私なりの視点で掘り下げてみることにした。 キタサンブラックは誰もが認める名馬。しかし、彼は生まれ落ちたその日から将来を嘱望され、クラシック候補としてデビューした馬ではない。常に距離の不安を取り沙汰され、本当に強い馬なのか?と疑問を持たれることも少なくなかった。 父はディープインパクトではなく、全兄のブラックタイド。母父サクラバクシンオーという血統背景を理由にし、菊花賞と天皇賞(春)では私も評価を下げてしまった。いまとなっては、これもキタサンブラックの奥深さを伝えるエピソードと言えるだろうか。 血統という観点で言えば、ディープインパクト、ブラックタイドの母であるウインドインハーヘアの凄さを改めて認識させてくれた馬であり、サクラバクシンオーのようなスピード血統を入れていかなければ、それが3200mのレースであっても、これからのGIでは勝ち負けできないことを教えてくれた馬でもあった。地味な血統と表現されることも多い馬だったが、現代競馬のニーズに合っていた。それを考えさせられた馬でもある。 キタサンブラックはデビュー当時から完全無欠の馬だったのではなく、時間の経過とともに強くなっていった。その部分に目を向ければ、キタサンブラックの強さの秘密とは、ハードな調教をしても壊れることのなかった屈強な肉体。欠点らしい欠点が一つもなかった馬体にあったと私は思う。 首から胸囲にかけての逞しい筋肉、美しい背中のラインに柔らかい繋。見ていて惚れ惚れするような馬体の持ち主だったが、パドックなどで歩かせたときにこそ、この馬の本当の素晴らしさを私は知ることができた。 前脚がスラッと伸び、曲がっている部分が全くない。脚が曲がっていても走る馬はいるが、膝が曲がった馬は脚を振り回して歩いたり、走ったりすることが多く、まっすぐな脚をしている馬に比べてダメージを受けやすい。つまり、それだけ故障をする可能性があるということだ。 トモから飛節にかけての部分。ここがまた素晴らしい。「O状姿勢」という形になっており、このような馬は力がしっかりと伝達することができる。ゆえに余計な負担が脚にかからない。ここが「X状」になっている馬もいるが、このような馬は競馬で走らないだけでなく、故障もしやすい。脚が湾曲している馬というのは、それだけで大きなマイナス材料を抱えているわけだ。 キタサンブラックはハードな調教を繰り返すことにより、凄みを増していった馬。そして、それができた最大の理由は、強気な調教にも耐えることのできる脚を持っていたことにある。競走馬にとって、脚の形というのはなによりも重要。私も馬を探すときには、できるだけ足元に不安の少ない馬を探していたのだが、キタサンブラックのような脚を持つ馬を見つけることは、そんなに簡単なことではない。しかも、有馬記念に出走した時の馬体重は540キロ。これほどの馬格がありながら、故障と無縁の競走成績を残した。なぜ、それが可能だったのか? キタサンブラックの馬体に改めて注目し、その素晴らしさを認識することで、この馬の本当の凄さを認識することができると私は思うのだ。 最後にこれだけの名馬を管理しながら、攻めの姿勢を崩さなかった清水調教師に賛辞を送りたい。この名馬を作り上げた最大の功労者は、キタサンブラックの長所を生かした若き調教師だったのではないだろうか。 2着以下についてもサラッと触れておく。2着のクイーンズリングも今回が引退レース。内枠を生かし、機を伺ったルメール騎手の手腕なしでは語れない競馬だったと思う。最後の直線で他馬の邪魔をしたとの指摘もあるが、あの狭い箇所を抜け、横の馬と併せたルメール騎手の行為に非はない。内にモタれてきたスワーヴリチャードとはまるで違うタイプのものだ。 3着シュヴァルグランは道中の位置取りが悪すぎた。最初のコーナーからメインスタンド前を通過した際の彼の位置と、2着クイーンズリングのそれを比べてみればわかること。武豊騎手が自分のペースに持ち込んでしまったことも踏まえれば、不利を受けながらも最後まで頑張ったレースだと思う。来年も主役の1頭として活躍してくれるはずだ。 4着のスワーヴリチャード。枠が悪く、位置が後ろになってしまったのはシュヴァルグランと同様。問題はやはり右回りだろう。コーナリングそのものに問題はないが、この馬は右回りだと手前をなかなか替えない。今回もそうだった。当然のことではあるが、同じ手前で走り続ければ、馬はそれだけ疲れてしまうし、右脚が疲れれば、内側にモタれてしまう。つまり今回の件は偶然ではなく、この馬の特徴として必然的に起こったものだ。このままでは走られる条件が左回りに限られてしまうし、仮に天皇賞(春)を目標にするようなら、この部分が大きな課題として残ってしまうだろう。先に不安を残したレースだった。 12/23(土) 阪神11R 芝1400m 阪神C このレースも引退を表明していたイスラボニータの勝利で終わった。結果論になるのだが、もしかしたら彼の適性距離は1400mだったのではないだろうか? 狭いスペースを割り、2着のダンスディレクターをきっちりと捕まえた彼のレースぶりを見て、そんなことを考えてしまった。 2着のダンスディレクターは久々に馬券対象になる走り。負けはしたが、今後の方向性が見えた競馬だったように私は思う。1200mでは置かれてしまうことも少なくない馬。折り合いがつくのであれば、位置が取れる1400mのほうがいいと思うし、この競馬ができるようなら、マイル戦に挑戦しても面白いのではないだろうか。距離は克服できると私は睨んでいる。 3着のサングレーザーは使い込んでいるにも関わらず、馬体が減らない。成長期に入っているということなのだろうが、実に大した馬だ。レース内容も安定しており、来年はこの路線の主役となる馬だと思う。 4着がモズアスコット。条件戦を勝ち上がったばかりの馬にとっては、今回のメンバーは厳しかったと思うし、ハイペースに戸惑っているシーンもあった。少し強引な競馬をしたことも、最後の伸びを欠いた理由かもしれない。とはいえ、キャリアの浅い3歳馬。負けても4着なら恥ずかしい結果ではないだろうし、この馬も来年の主役候補の1頭になるだろう。 『アカデミック連載 -最強の競馬学-』『血統診断 -白井式ブラッドマニュアル-』『馬体診断 -鬼才の眼 フィジカルメソッド-』『人気記事』 などもお楽しみください。

メニュー

閉じる